訪問看護師とは? 仕事内容やメリット・デメリットを詳しく解説
訪問看護師は、訪問看護ステーションなどに勤務し、患者さんの居宅へ訪問して看護ケアを行う看護師のことを指します。訪問看護師のメリットとして、患者さんとそのご家族さんに寄り添った看護ができるほか、ワークライフバランスが取りやすいなどが挙げられます。
訪問看護の仕事に興味はあるものの、詳しい仕事内容や自分に向いているか分からないという看護師さんも多いのではないでしょうか。当記事では、訪問看護に関する基礎知識や訪問看護で行う主な看護内容、訪問看護師に向いている特徴などを解説します。看護師としてのキャリアを広げたい方はぜひご覧ください。
- 1.訪問看護師とは?
- 1-1.訪問看護師が働く場所
- 1-2.訪問看護師になるには?
- 2.訪問看護は医療保険と介護保険が適用される
- 3.訪問看護で行う主な看護内容
- 3-1.浣腸・摘便
- 3-2.じょく瘡の予防・処置
- 3-3.服薬管理
- 3-4.人工呼吸器の管理
- 3-5.胃瘻の管理・経管栄養
- 3-6.吸引
- 3-7.患者さんや家族の生活支援・精神的サポート
- 4.訪問看護師のメリット
- 4-1.患者さん一人ひとりに寄り添った看護ができる
- 4-2.ワークライフバランスが取りやすい
- 4-3.幅広い分野の医療に携われる
- 5.訪問看護師のデメリット
- 5-1.一人で対応するためプレッシャーを感じる
- 5-2.オンコール対応が大変
- 5-3.体力的にきつい
- 6.訪問看護師に向いてるのはどんな人?
- 6-1.訪問看護師に向いている人
- 6-2.訪問看護師に向いていない人
- 7.訪問看護の将来性
- まとめ
1.訪問看護師とは?
訪問看護とは、病気やケガ、障がいのある方が住み慣れた地域・自宅で「その人らしい」療養生活を送れるよう支援するサービスのことです。病院や診療所、訪問看護ステーションに勤務する看護師が患者さんの自宅などを訪問し、主治医の指示に基づいた看護ケアや、自立に向けた支援などの必要なサポートを行います。
訪問看護を利用する理由は患者さんによって異なりますが、要支援者・要介護者では「循環器系の疾患」や「筋骨格系および結合組織の疾患」の患者さんが多い傾向です。また、40歳未満の方など医療保険で訪問看護を利用する方では「神経系の疾患」「精神および行動の障がい」の患者さんが約6割を占めています。
訪問看護師は、利用者宅や介護施設など、地域で療養生活を送る方に訪問看護サービスを提供する職業です。医療と生活の両面で、患者さんの「その人らしい暮らし」をサポートする役割を果たしています。
(出典:厚生労働省「訪問看護」)
1-1.訪問看護師が働く場所
訪問看護を行う看護師の就業場所には「訪問看護ステーション」「病院や診療所・クリニック」の2種類があります。
訪問看護ステーションとは、訪問看護業務を行う看護師や助産師、保健師、理学療法士といった医療関係者が所属する事業所のことです。職員・スタッフは訪問看護ステーションから患者さんの自宅などへ訪問し、主治医が作成する「訪問看護指示書」をもとに看護ケアなどの必要なサービスを提供します。
訪問看護ステーションの数は年々増加傾向にある一方で、訪問看護を行う医療機関は減少傾向にあります。このことから、訪問看護ステーションは今後も訪問看護において重要な役割を担うと考えられるでしょう。
(出典:厚生労働省「訪問看護」)
1-2.訪問看護師になるには?
訪問看護師として働くには、看護師または准看護師の資格を取得したうえで、訪問看護ステーションや訪問看護を行う医療機関に所属する必要があります。施設や地域によっては自動車で患者さんを訪問するケースもあるため、必要に応じて運転免許を取得しておくとよいでしょう。
訪問看護は一人で業務を担当することも多いため、一定の看護スキルや臨床経験・実務経験が求められるケースもあります。しかし、最近では経験不問とする事業所も増えています。訪問看護の教育体制も整備されつつあるので、新卒看護師さんや訪問看護未経験の看護師さんも安心して訪問看護師にチャレンジできるでしょう。
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2.訪問看護は医療保険と介護保険が適用される
訪問看護サービスは、公的保険制度である「医療保険制度」または「介護保険制度」が適用されます。利用する患者さんの年齢や疾患の種類によって、適用される制度が異なる点に注意しましょう。
【医療保険と介護保険の違い】
医療保険 | 介護保険 | |
---|---|---|
利用対象者 |
|
|
支給限度額 | なし | 要介護度に応じて異なる |
自己負担額 | かかった医療費の1~3割 ※年齢や所得によって異なる |
かかった医療費の1~3割 ※支給限度額を超える利用分は全額自己負担 |
(出典:厚生労働省「訪問看護」)
(出典:厚生労働省「医療費の一部負担(自己負担)割合について」)
(出典:厚生労働省「介護保険制度について」)
(出典:厚生労働省「サービスにかかる利用料 | 介護保険の解説」)
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3.訪問看護で行う主な看護内容
訪問看護では、一人または少人数で患者さんの居宅を訪問し、必要なケアやサポートを提供します。排泄関連のケアや、じょく瘡の予防・処置、人工呼吸器や胃瘻の管理など、訪問看護師の仕事内容は多岐にわたることを押さえておきましょう。
ここでは、下記出典の「要介護度別の訪問看護の実施状況②(医療処置に係る看護内容)」をもとに、訪問看護師が行う代表的な看護業務を7つ紹介します。
(出典:厚生労働省「訪問看護」)
3-1.浣腸・摘便
訪問看護を利用する方のなかには、「自力で排泄することが難しい」「思うように排泄できない」など、排泄に関する悩みを抱える方も多い傾向です。訪問看護師は、自力での排泄が困難な患者さんに対し、浣腸や摘便などの処置を施します。
浣腸や摘便といった排泄ケアは、患者さんの不快感や看護師・介護者の負担を大きくしないよう、なるべく効率よく行うことが必要です。便の状態や患者さんの状況に応じて、患者さんの体を傷つけないようにスキルを磨きましょう。
3-2.じょく瘡の予防・処置
訪問看護では、寝たきりの患者さんや自力での体位変換が難しい患者さんのケアにあたる機会も少なくありません。じょく瘡が発生するリスクが高い患者さんに対しては、訪問の際に体位変換や寝具・寝衣の交換、摩擦が起こりやすい部位の保護などの予防ケアを行います。
また、患者さんにじょく瘡が発生した場合は、主治医の指示に基づいて治癒に向けたケア・処置を施します。訪問看護師による訪問がない日もケアが継続できるよう、患者さんの家族や連携するデイサービスなどの職員さんに、訪問頻度に応じたケアや処置の方法を伝えることも大切です。
3-3.服薬管理
患者さんが入院している状態であれば、必要な薬を適切なタイミングで提供し、服薬をサポートすることもできます。しかし、訪問看護では服薬のタイミングで毎回支援に入ることはできません。訪問看護を利用する患者さんは薬を服用している方も多いため、薬の種類や服用方法、残薬の確認などの服薬管理を行うことも、訪問看護師の仕事の1つとして挙げられます。
訪問看護で服薬管理を行う際は、薬の飲み忘れや過剰内服を避けるため、患者さんや家族の方、介護サービスの方などが服薬状況を確認できる環境を整えることが大切です。患者さんと一緒に服薬管理を行うことで、患者さんの自尊心を守りつつ、適切な服薬を促しましょう。
3-4.人工呼吸器の管理
訪問看護では、在宅人工呼吸器を装着した患者さんのケアを行うことも少なくありません。訪問看護師は、患者さんや家族の方が求めるケアについてアセスメントし、ニーズや必要性に応じて環境調整や感染管理、リハビリテーションなどの看護や支援を提供します。
また、人工呼吸器に関連して起こりうる状況・事態を、事前に主治医と確認し合っておくことも大切です。状況変化が起こった場合に、迅速な処置が施せるよう備えておきましょう。
(出典:日本呼吸療法医学会「人工呼吸」)
3-5.胃瘻の管理・経管栄養
口からの栄養摂取が困難な方や、誤嚥による肺炎を起こしやすい方のなかには、胃にカテーテルを取りつけて栄養補給を行う「胃瘻」を選択する方もいます。訪問看護師は、胃瘻を選択した方の訪問看護にあたる場合、カテーテル周囲をチェックし、胃瘻の清潔維持やカテーテル抜去の予防といった胃瘻ケアも行います。
また、経管栄養によるケアも訪問看護師の仕事です。そのため、経管栄養剤や服用指示のあった薬の注入、器具の洗浄といった一連の流れを実施できるようにしておくことが大切です。経管栄養のみの患者さんの場合でも、誤嚥性肺炎や口臭の発生を防ぐため、口腔ケアを忘れないようにしましょう。
3-6.吸引
気管についたホコリや細菌が粘膜にくるまれたものである痰は、健康な方であれば咳によって体外へと排出されます。しかし、訪問看護を必要とする方のなかには、嚥下機能や呼吸機能が正常に働かない方や痰の排出が困難な方も少なくありません。訪問看護師は、痰の排出が困難な患者さんに対し、必要に応じて喀痰吸引(痰の吸引)を行います。
患者さんのアセスメントにより吸引が必要と判断される場合は、患者さんになるべく苦痛を与えないよう実施することが大切です。ケアがスムーズに進むよう、喀痰吸引の基本的な知識や看護技術を身につけておきましょう。
3-7.患者さんや家族の生活支援・精神的サポート
訪問看護では、医療的なケアや健康状態の確認などの療養における指導を行うだけでなく、患者さんが自宅などで快適な療養生活を送るための生活支援も行います。患者さんや家族の方にアセスメントを行ったうえで、「食事や排泄のケア」「スキンケア」「浮腫ケア」「移動・移乗のサポート」など、必要な支援を実施しましょう。
また、患者さんが自宅などで快適な療養生活を送るためには、家族の方との関わり方も重要です。患者さんのご家族が介護・看護のケアで体調を崩さないよう、利用できるサービスの紹介や困りごとの確認など、対話を通して家族の精神的サポートを行いましょう。
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4.訪問看護師のメリット
訪問看護師は、さまざまな疾患・ケガ・障がいのある患者さんの看護ケアに従事することから、幅広い分野の医療に携れます。ワークライフバランスが取りやすい職業でもあるため、訪問看護師の仕事に興味がある方も多いでしょう。
ここでは、訪問看護師として働くことのメリットについて紹介します。
4-1.患者さん一人ひとりに寄り添った看護ができる
病棟勤務・病院勤務では多数の患者さんに対応する必要があるため、「一人ひとりに寄り添った看護が難しい」という悩みを持つ看護師さんもいるでしょう。
訪問看護では、一人の患者さんと接する時間が1回あたり30〜90分 と長く、患者さん一人ひとりにじっくり関われるというメリットがあります。1日に対応する患者さんの数も病棟勤務・病院勤務に比べて少ないため、「一人ひとりに寄り添った看護をしたい」という看護観を大切にできるでしょう。
4-2.ワークライフバランスが取りやすい
訪問看護師として働くことには、働く時間の融通が効きやすいというメリットもあります。「1日3時間・週3日勤務」「午前中のみ出勤」といった勤務形態も取りやすいため、家庭との両立もしやすいでしょう。
また、「土日休み」「夜勤なし」といった訪問看護事業所も多くあります。残業や早出も少ないため、ワークライフバランスを取りやすいでしょう。
4-3.幅広い分野の医療に携われる
訪問看護では、さまざまな疾患・ケガ・障害のある方に対して生活の場をベースとしたケアや支援を行います。幅広い分野の症例に携われるため、看護師としての知見も深められるでしょう。
少子高齢化が進む日本では、訪問看護などの在宅医療・地域医療のニーズは今後ますます高まることが考えられます。訪問看護経験を重ねることや、ケアマネジャーや地域の医師、行政などと関わりを持てることは、看護師として今後も働き続けるうえでの強みにもなるでしょう。
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5.訪問看護師のデメリット
訪問看護の仕事には、多くのメリットがある一方で、「一人で対応するケースが多い」「オンコール対応がある」など、人によってはデメリットに感じる側面もあります。病棟勤務においてもいえることではありますが、訪問看護でも精神面・体力面での強さはある程度必要となることに留意しましょう。
ここでは、訪問看護師として働くうえで考えられるデメリットについて紹介します。
5-1.一人で対応するためプレッシャーを感じる
同僚の看護師がいる病棟勤務とは違い、訪問看護では在宅療養する患者さんのケアを、基本的には自分一人で行う必要があります。「処置は適切か」「患者さんに異常がないか」などの判断も自分で行わなければならないため、特に経験の浅い看護師さんにはプレッシャーに感じることも珍しくありません。
訪問看護の経験が少なく、「責任の大きさに緊張する」という方は、まず先輩看護師に同行してもらうことを希望しましょう。事業所やほかの看護師に情報を共有し、連絡や相談をしながら徐々に仕事に対する自信をつけることが大切です。
5-2.オンコール対応が大変
訪問看護では夜勤がほとんどないものの、患者さんや家族の方からの緊急呼び出しに対応する「オンコール対応」はあります。訪問看護師が当番制で専用の電話を携帯し、当番日には自宅待機をしつつ緊急時の対応に備える必要があります。そのため、オンコール当番の日は人によっては気が休まらず、辛く感じるケースもあるでしょう。
しかし、最近ではオンコール対応の負担を軽減させる施策を行う事業所も増えています。「給料やオンコール手当が充実している」「オンコール対応の翌日は休みになる」など、自分にとって負担になりにくい事業所を選ぶとよいでしょう。
5-3.体力的にきつい
働き方にもよりますが、訪問看護では1日に4〜5件の訪問を行うことが一般的です。訪問先によって異なる環境下で、決められた時間内に医療的な処置や体位変換などのケアをする必要があるため、体力面でのタフさが求められます。
体力面での不安を感じる方は、まずは少ない訪問件数からスタートし、様子を見てシフトを増やす方向で勤務先に相談しましょう。「1日の移動距離が短くなるよう訪問先を調整する」「事業者に社用車の使用を認めてもらう」など、移動を楽にする工夫も重要です。
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6.訪問看護師に向いてるのはどんな人?
訪問看護の仕事はやりがいや魅力が多いものの、人によっては「合わない」「向いていない」と感じるケースもあります。
ここでは、訪問看護の仕事に向いている人・向いていない人の特徴について解説します。自身の適性を考慮したうえで、訪問看護師への就職・転職を検討しましょう。
6-1.訪問看護師に向いている人
訪問看護師に向いている人の特徴として、下記の3点が挙げられます。
- コミュニケーション能力に自信がある
訪問看護師には、患者さんや家族の方を中心として、主治医やケアマネジャーなど関係職種の方とも良好な信頼関係を築けるコミュニケーション能力が求められます。 - 臨機応変な対応ができる
訪問看護では、担当する患者さんの病状や生活環境に応じて、臨機応変に適切な対応を取る必要があります。 - 責任感がある
訪問看護は一人で業務を行うことが多いため、自分の仕事に責任を持てる方が求められます。
6-2.訪問看護師に向いていない人
訪問看護師は、介護や支援を必要とする方が地域で療養生活を送るための看護ケア・サポートを担う職業です。下記のような特徴にあてはまる方は、訪問看護師以外のキャリアを検討してみるとよいでしょう。
- 高度な医療処置に関わりたい
訪問看護では、状態が落ち着いている患者さんが多く、療養上のケアや基礎的な医療的ケアが中心となります。高度医療に関わる機会は少ないと考えておきましょう。 - 主体的に行動できない
訪問看護は、訪問先において自身で判断すべきことも多い仕事です。主体的に行動することに自信がない方は、経験やスキルを身につけてからの転職を検討しましょう。 - 潔癖症で衛生面を気にする
訪問先の状況はさまざまです。衛生的な問題を抱える家庭を担当する可能性もあるため、衛生面が気になりやすい方は避けたほうがよいでしょう。
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7.訪問看護の将来性
訪問看護の事業所は年々増加傾向にありますが、訪問看護ステーションの全職員に占める看護職員の割合は低下傾向にあります。これは、訪問看護の需要の増加ペースに対して看護職員の供給ペースが間に合っていないことを意味しています。自宅でのケアを望む高齢者や重症患者が増えつつあるなかで、訪問看護師の存在意義はさらに高まると考えられるでしょう。
(出典:厚生労働省「訪問看護」)
また、日本看護協会の資料によると、看護師さんが働いてみたい職場のトップとして「訪問看護」が挙げられています。訪問看護業界は今後さらなる発展が見込まれる領域であるため、看護師として活躍し続けたい方が輝ける場ともいえるでしょう。
(出典:日本看護協会「2017年 看護職員実態調査 結果報告」)
まとめ
訪問看護師は患者さん一人ひとりに寄り添った看護ができるほか、幅広い分野の症例に携われるのがメリットです。基本的には一人で患者さんの看護ケアにあたるため、責任感を持って主体的に行動できる方に向いている仕事といえるでしょう。
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