転職をする上で大切なのは、「どう働くか」だけでなく「どう生きるか」というライフプランも考えるということです。不規則なシフトの中で身を削るようにして患者のために働く看護師という仕事は、やりがいが大きい分、肉体的にも精神的にも疲弊しやすい職種です。長く働き続けるためには、自分の働きに見合った評価をしてもらえているかという実感や、プライベートと両立できるワークライフバランスなどが欠かせません。 「毎日忙しくてなかなか自分の内面を見つめる時間がない」という人や「悩みを解決しながら、やりがいも維持できるような職場が見つからない」という人は、転職のプロフェッショナルであるキャリアアドバイザーに相談してみることをおすすめします。 また、転職活動自体の期間は1カ月足らずですが、転職成功への道はそのずっとまえから始まっています。「とにかく今の職場を辞めたい」というような、一時的な感情による転職は失敗のもと。「近い将来、転職を考えている」という人はもちろん、「今のところ転職までは考えていないけど、現状を変えたいと思っている」という人も、普段から転職も視野に入れて働きましょう。 「転職したい!」と思ったら、ぜひこのガイドラインを読み返して、後悔のない転職を実現してください。
看護師のキャリアパスは、方向性に応じていくつかのパターンが考えられます。
・認定看護師や専門看護師の資格を取り、特定分野のエキスパートを目指す
・管理職を目指してリーダー研修やマネジメント研修を受け、組織の中でステップアップしていく
・病院で臨床経験を積んだあと、家庭や育児、趣味などと両立するために自由度の高いクリニックや訪問看護へ転職
・看護師としての経験を活かし、介護業界や製薬会社など異業種へ転職
・保健師、助産師などの国家資格を取り、専門性を高めて転職
看護師の活躍の場は、病院やクリニックから特別養護老人ホーム・老人保健施設などの施設、訪問看護、一般企業、保育園まで幅広く、それぞれ求められる勤務のあり方もさまざまです。親の介護や病気療養などで一時的に現場を離れてブランクが生じたり、急な生活の変化で働き方を変えざるをえなかったりした場合にも、「昼間だけ訪問看護で働く」「土日にしっかり休めるクリニックで働く」など、比較的柔軟に働き方を変えることができます。 看護師は求人数が多く、即戦力となる経験者に対するニーズも高いので、自分に合うキャリアプランを見つけることさえできれば、無理なく働き続けることができるでしょう。
年齢を問わず、多くの看護師が「今より良い環境で働きたいから」という理由で転職を希望しています。「今より良い環境」の定義は人によって異なりますが、どのような求人を指していることが多いのでしょうか。人気の「好条件な求人」を見ていきましょう。
現職で働きに見合った収入を得られていないと感じている人は、年収を目安に転職を考えることが多いようです。年収だけでいえば、夜勤のある病院、超高齢社会の到来でニーズが高い回復期リハビリテーション病棟、療養病床、在宅ケア、訪問看護、美容系のクリニックなどが比較的高めです。
収入と並んで、転職を考えるきっかけになりやすいのが人間関係のトラブルです。アットホームでフレンドリーな職場を求めるなら、大きな病院より地域に根差した診療がモットーのクリニックが適しているかもしれません。一方、少人数ならではの複雑な人間関係に悩まされているなら、患者さんと向き合う時間がメインの訪問看護や高齢者施設のほうがいいでしょう。
結婚や育児、親の介護といった生活の変化に応じて働きたいという場合、プライベートと両立しやすい、ワークライフバランスを保てる職場こそ「好条件」ということになります。 「年収は落としたくないから病院で働きたいけど、勉強会などで残業が多いと難しい」という場合は、残業や勉強会が少ない慢性期病院、主婦の看護師が多い病院を選ぶといいでしょう。収入を維持することよりワークライフバランスを優先するなら、「昼だけ」「子どものお迎えまで」といった働き方も可能な訪問看護という選択肢もあります。
では、「好条件」とされる求人では、どのような人材が求められているのでしょうか。どんな働き方を目指すにしても、転職する際に必ずチェックされるのは「臨床経験」です。 取得しているだけで他者との差別化につながる認定看護師、専門看護師などの資格を取得している場合を除いて、即戦力としての活躍が期待される中途採用の現場では、誰もが一度は「臨床」という物差しで平等に評価されると考えましょう。特に大きな病院では、「臨床経験3年以上」といった条件を設けているところが目立ちます。大学病院、総合病院などを目指すなら、臨床経験は長めに積んでおきましょう。
将来的に進みたい分野が明確な場合は、臨床経験を積みながら専門の資格取得を目指すのもいいでしょう。看護師の資格には、保健師や助産師のほか、公益財団法人日本看護協会が認定する「専門看護師」「認定看護師」があります。
「がん看護」「精神看護」「地域看護」「老人看護」「小児看護」「母性看護」「慢性疾患看護」「急性・重症患者看護」「感染症看護」「家族支援」「在宅看護」の分野において、専門的かつ卓越した看護ができると認められた看護師に与えられる資格です。 専門看護師になるには、看護系大学院で特定の専門看護分野を学び、資格審査に合格する必要があります。将来的に目指したい分野、興味のある分野が決まっている場合は、あらかじめ取得しておくとスムーズにキャリアを構築できます。
認定看護師について、日本看護協会は「特定の看護分野において、熟練した看護技術と知識を用いて水準の高い看護実践ができること」と定めています。認定看護師になるには、5年以上の臨床経験に加え、6カ月・600時間の教育を受けて認定試験に合格しなくてはなりません。現場を離れて勉強する必要があるため、職場の上司などの推薦がないと取得は困難ですが、持っていれば転職にはかなり有利です。 「認定看護師にチャレンジしたいけど、時間的にも立場的にも難しい」という場合は、糖尿病や生活習慣病、透析患者の増加を受けてニーズが増している「糖尿病療養指導士」などに目を向けてみるのもひとつの手です。自身の方向性に加えて、時代背景なども考慮して有効な資格を取得しましょう。
長期的に働き続けるためには、委員会での活動なりリーダー業務なり、現職で与えられたチャンスは受けておくことも大切です。病棟の立ち上げに参加した経験なども評価につながりますので、機会があれば積極的にチャレンジしましょう。 また、転職市場においては、消化器系や循環器系に携わった経験があり、アセスメントを行える能力がある人も人気があります。特定の診療科に特化するより、全身管理の経験を意識して積んでおくことをおすすめします。
看護師のキャリア形成において注意すべきポイントは、以下の2点です。
・臨床経験を積む ・資格取得を目指す ・全身管理に携わっておく ・委員会や勉強会に積極的に参加する ・率先してリーダー業務を引き受ける
ポイント2 ライフステージの変化に応じてキャリアを見直す
ライフステージの変化に応じて ・今の自分にとってベストな環境とは何か ・それを実現できる職場はどこか を考える。 自分の望む働き方を実現する方法や、キャリアプランの立て方に迷ったら、キャリアアドバイザーに相談してみましょう。「今すぐ転職しようと思っているわけじゃないけれど、結婚や育児を視野に入れたキャリアプランのアドバイスがほしい」「いつか転職する日のために、今できることを教えてほしい」という相談も可能です。 ライフスタイルに合った満足度の高い職場で働き続けられるよう、ぜひ転職のプロを活用してください。