2021年度(第111回)
看護師国家試験 過去問・解答 午前
第113回看護師国家試験 採点除外等問題の対象は6問です。
L午前の問題:[5][23][25] L午後の問題:[2][11][21]
午前
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第1問
日本の令和元年(2019年)の死亡数に近いのはどれか。
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1.98万人
- 解答・解説
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2019年(令和元年)の死亡数は138万1,093人であり、前年の136万2,470人より増加しています。なお、死亡率(人口千対)は11.2で、これも前年の11.0より上昇しています。
よって、1.(×)、2.(×)、3.(○)、4.(×)、となります。
第2問
日本の令和元年(2019年)の死亡数に近いのはどれか。
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1.98万人
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2.118万人
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3.138万人
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4.158万人
- 解答・解説
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2019年(令和元年)の死亡数は138万1,093人であり、前年の136万2,470人より増加しています。なお、死亡率(人口千対)は11.2で、これも前年の11.0より上昇しています。
よって、1.(×)、2.(×)、3.(○)、4.(×)、となります。
第3問
シックハウス症候群(sick house syndrome)に関係する物質はどれか。
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1.アスベスト
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2.ダイオキシン類
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3.放射性セシウム
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4.ホルムアルデヒド
- 解答・解説
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シックハウス症候群は、住宅の建材などから発生する化学物質による室内空気汚染の影響で生じる健康被害です。
1.(×)アスベスト(石綿)の曝露により、長い潜伏期間の後に肺線維症(じん肺)、悪性中皮腫、肺癌を発症することがあります。
2.(×)ダイオキシンは、ごみの焼却などで発生する有機塩素化合物であり、甲状腺機能低下や免疫機能低下を引き起こすことがあります。
3.(×)放射性セシウムは、原発事故や核実験などにより環境中に放出されます。汚染された農地土壌で生産された農畜産物の摂取により、発癌性を示すことがあります。
4.(○)ホルムアルデヒドは、合成樹脂の原料や接着剤、塗料などに広く用いられています。毒性が強く、ヒトの粘膜を刺激するため、シックハウス症候群の原因となる代表的な有機化合物です。
第4問
後期高齢者医療制度の被保険者は、区域内に住居を有する( )歳以上の者、および65歳以上( )歳未満であって、政令で定める程度の障害の状態にあるとして後期高齢者医療広域連合の認定を受けた者である。 ( )に入るのはどれか。
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1.7
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2.75
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3.8
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4.85
- 解答・解説
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後期高齢者医療制度は、2008年(平成20年)、高齢者の医療の確保に関する法律に基づき創設されました。後期高齢者医療制度の運営主体は、各都道府県の全市町村が加入する広域連合です。制度の対象となるのは、75歳以上の後期高齢者と、65歳以上75歳未満であって、厚生労働省令で定める程度の障害の状態にあると後期高齢者医療広域連合の認定を受けた前期高齢者です。
よって、1.(×)、2.(○)、3.(×)、4.(×)、となります。
第5問
患者の選択権の行使を最も促進するのはどれか。
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1.父権主義
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2.医師の裁量権
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3.コンプライアンス
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4.インフォームド・コンセント
- 解答・解説
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1.(×)父権主義(パターナリズム)は、当人の利益のために、強い立場にある者が、当人に代わって意思決定することです。
2.(×)医師の裁量権とは、医師が患者のために最も有効であると判断した医療行為を、医師の判断において実施できる権利のことです。
3.(×)コンプライアンス(法令遵守)は、法令や規則、社会で守られているルールなどを守ることです。
4.(○)インフォームド・コンセントは「十分な情報を得て納得した上での同意」を意味する概念です。医療者には、患者の自己決定権を尊重し、選択権の行使をサポートするという立場での振る舞いが求められます。
第7問
胎児循環で胎児から胎盤に血液を送るのはどれか。
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1.総頸動脈
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2.肺動脈
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3.臍動脈
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4.臍静脈
- 解答・解説
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胎児循環は胎児期の間に限って存在する血液循環であり、通常は出生後速やかに成人型循環へ移行します。
1.(×)総頸動脈は、左総頸動脈と右総頸動脈の総称であり、左心から拍出された動脈血を頭部へ送ります。
2.(×)肺動脈は、右心から拍出された静脈血を肺へ送ります。心臓から拍出されるため「動脈」ですが、静脈血が流れています。
3.(○)臍動脈(臍帯動脈)は、胎児体内の静脈血を胎盤へ運びます。胎児の心臓から拍出されることから「動脈」と呼ばれますが、静脈血が流れています。
4.(×)臍静脈(臍帯静脈)は、胎盤から胎児体内へ酸素化された動脈血を送る静脈です。胎児の心臓に向かうため「静脈」と呼ばれますが、動脈血が流れています。
第8問
学童期の脈拍数の基準値はどれか。
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1.50~70/分
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2.80~100/分
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3.110~130/分
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4.140~160/分
- 解答・解説
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1.(×)成人の脈拍数としても少なく、60/分未満では徐脈と判断されます。
2.(○)学童期(6~12歳)の脈拍数の基準値は80~100/分です。
3.(×)110~130/分は乳児の脈拍数の基準値です。
4.(×)新生児の脈拍数の基準値より多い数値です。成人では100/分以上で頻脈と判断されます。
第9問
日本の女性における平均閉経年齢に最も近いのはどれか。
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1.30歳
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2.40歳
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3.50歳
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4.60歳
- 解答・解説
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閉経は、卵巣の活動性が消失し、月経が永続的に停止した状態です。無月経が12か月以上続いた場合に、その1年前を振り返って閉経と判断します。
1.(×)満40歳未満での閉経は、早発閉経と呼ばれます。
2.(×)閉経年齢は個人差が大きいため40歳代の可能性もあり、この年代は閉経に向けて心身の変化が現れ始める時期となります。
3.(○)日本の女性における平均閉経年齢は約50歳です。なお、閉経の前後5年の合計10年間が更年期とされます。
4.(×)満55歳以降での閉経は、遅発閉経と呼ばれます。
第10問
令和元年(2019年)の国民生活基礎調査で次の世帯構造のうち最も少ないのはどれか。
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1.単独世帯
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2.三世代世帯
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3.夫婦のみの世帯
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4.夫婦と未婚の子のみの世帯
- 解答・解説
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「単独世帯」と「夫婦と未婚の子のみの世帯」はほとんど同程度の世帯数となっており、今後の推移が注目されます。
1.(×)単独世帯は1490万7000世帯であり、全世帯の約28.8%を占め、2019年(令和元年)の国民生活基礎調査で初めて最多の世帯構造となりました。
2.(○)三世代世帯は262万7000世帯であり、全世帯の約5.1%と最も少なくなっています。
3.(×)夫婦のみの世帯は1263万9000世帯であり、全世帯の約24.4%となっています。
4.(×)夫婦と未婚の子のみの世帯は1471万8000世帯で、全世帯の約28.4%となっています。
第11問
右大腿骨前面を図に示す。 大腿骨頸部はどれか。
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1.①
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2.②
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3.③
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4.④
- 解答・解説
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1.(×)大腿骨の大転子部です。
2.(×)大腿骨の骨頭部です。
3.(○)大腿骨頸部を指しています。大腿骨を支える股関節のくびれた部分であり、高齢者の転倒などで容易に骨折します。
4.(×)大腿骨の小転子部です。
第12問
有害物質を無毒化し排泄する臓器はどれか。
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1.胃
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2.肝臓
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3.膵臓
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4.大腸
- 解答・解説
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1.(×)胃は、一時的に食物を収納し、胃液を混ぜて消化・吸収しやすい状態にした後、徐々に十二指腸へ送り出します。
2.(○)肝臓の主な働きは、(1)身体に必要な蛋白の合成と栄養の貯蔵、(2)有害物質の解毒・分解、(3)消化に必要な胆汁の合成・分泌の3つです。例えば、アンモニアやアルコールを分解して尿中へ排泄することが(2)に相当します。
3.(×)膵臓は、血糖値を調節するホルモン(インスリンやグルカゴンなど)を分泌する内分泌機能と、十二指腸へ消化酵素を分泌する外分泌機能を併せ持ちます。
4.(×)大腸は、小腸で消化された食物残渣から残りの水分や電解質などを吸収し、便塊を形成して肛門へ送ります。
第13問
黄疸のある成人患者にみられる随伴症状はどれか。
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1.動悸
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2.難聴
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3.関節痛
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4.掻痒感
- 解答・解説
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1.(×)動悸は、貧血や不整脈などの随伴症状となります。
2.(×)難聴の進行に伴って、耳鳴、めまい、耳閉感などの随伴症状がみられます。
3.(×)関節痛は、インフルエンザなどの随伴症状となります。
4.(○)黄疸は、血液中のビリルビンが上昇し、皮膚などの組織に沈着して黄色く目視される状態です。ビリルビンは皮膚の末梢神経を刺激するため、強い掻痒感を引き起こすことがあります。そのほか、便秘なども黄疸の随伴症状となります。
第14問
左前胸部から頸部や左上肢への放散痛が生じる疾患はどれか。
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1.胃潰瘍(gastric ulcer)
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2.狭心症(angina pectoris)
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3.胆石症(cholelithiasis)
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4.尿管結石症(ureterolithiasis)
- 解答・解説
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痛みの原因部位とは別の場所に生じる痛みである関連痛のうち、原因部位から大きくかけ離れた場所に生じる痛みを放散痛といいます。
1.(×)胃潰瘍では、食後の心窩部痛や、背部への放散痛が生じます。
2.(○)左前胸部から頸部や左上肢(左上半身)への放散痛が生じるのは、狭心症です。また、狭心症では労作時に胸部中央の胸痛や絞扼感が生じます。
3.(×)胆石症では、食後の右季肋部痛や、右背部や右肩への放散痛が生じます。
4.(×)尿管結石症で結石が尿管に詰まり、尿の流れが不良となった場合は、側腹部から胸背部に疝痛が生じます。
第15問
成人女性の赤血球数の基準値はどれか。
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1.150~250万/μL
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2.350~450万/μL
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3.550~650万/μL
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4.750~850万/μL
- 解答・解説
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赤血球数は血液1μL当たりに含まれる赤血球の数で、骨髄の造血機能を反映しています。成人女性の赤血球数の基準値は350~450万/μL程度、成人男性では420~550万/μL程度とされています。
よって、1.(×)、2.(○)、3.(×)、4.(×)、となります。
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第16問
Open-ended question〈開かれた質問〉はどれか。
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1.「頭は痛みませんか」
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2.「昨夜は眠れましたか」
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3.「気分は悪くありませんか」
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4.「自宅ではどのように過ごしていましたか」
- 解答・解説
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自由な回答ができる質問をopen-ended question(開かれた質問)といい、「はい/いいえ」や限定された選択肢の中から答えられる質問をclosed question(閉じられた質問)といいます。
1.(×)「痛い/痛くない」の2択で答えられるclosed questionです。
2.(×)「眠れた/眠れなかった」の2択で答えられるclosed questionです。
3.(×)「悪い/悪くない」の2択で答えられるclosed questionです。
4.(○)回答者の言葉で自由に答えられるopen-ended questionです。話題が広がり、質問者が想定していなかったことも含めた情報を引き出せる可能性があります。
第17問
深部体温に最も近いのはどれか。
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1.腋窩温
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2.口腔温
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3.鼓膜温
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4.直腸温
- 解答・解説
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1.(×)腋窩は簡便に測定可能で日常的に用いられますが、外気温の影響を受けやすい部位です。
2.(×)口腔は口を閉じることで閉鎖腔となりますが、閉口の程度などにより測定温度の誤差が出やすい部位です。
3.(×)鼓膜は外気温の影響を受けにくいものの、手技の正確性や耳垢の存在などにより測定温度の誤差が出やすい部位です。
4.(○)直腸は粘膜が密着して完全な閉鎖腔が形成された部位であるため、直腸温の測定に一定の時間をかけることで最も深部体温に近くなります。腋窩温より約1℃高くなるとされています。
第18問
呼吸パターンを図に示す。 Cheyne-Stokes〈チェーン-ストークス〉呼吸はどれか。
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1.(1)
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2.(2)
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3.(3)
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4.(4)
- 解答・解説
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1.(○)無呼吸時間があり、呼吸が漸増・漸減を繰り返していることから、チェーン-ストークス呼吸の典型的なパターンです。
2.(×)無呼吸や深く速い呼吸などを不規則に繰り返していることから、ビオー呼吸です。
3.(×)規則的な深く速い呼吸であることから、クスマウル呼吸です。
4.(×)呼吸の深さに変化がみられない徐呼吸です。
第19問
高齢者の義歯の取り扱い方法で正しいのはどれか。
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1.就寝時に外す。
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2.熱湯で洗浄する。
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3.保管時は乾燥させる。
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4.総義歯は奥歯を起点に外す。
- 解答・解説
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1.(○)口腔粘膜や歯肉を圧迫から解放するため、就寝時には義歯を外します。なお、小さな部分義歯の場合は、就寝時に装着していると誤飲のリスクもあります。
2.(×)熱湯での洗浄は、変形の原因となるため行いません。
3.(×)乾燥はひび割れや破折の原因となるため、水の入った容器で保管します。
4.(×)総義歯は、前歯を起点とし、義歯と歯肉の間に空気を入れるよう徐々にずらして外します。
第20問
使用後の注射針を廃棄する容器のバイオハザードマークの色はどれか。
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1.赤
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2.黄
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3.黒
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4.橙
- 解答・解説
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1.(×)赤色のバイオハザードマークの容器には、血液などの液状または泥状の感染性廃棄物を分別します。
2.(○)黄色のバイオハザードマークの容器には、使用後の注射針などの鋭利な感染性廃棄物を分別します。耐貫通性の密封容器であることが必要です。
3.(×)感染性廃棄物の識別を目的としたバイオハザードマークに、黒色の設定は存在しません。
4.(×)橙色のバイオハザードマークの容器には、血液が付着したガーゼや手袋などの固形状の感染性廃棄物を分別します。
第21問
成人の静脈血採血で適切なのはどれか。
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1.採血部位から2、3cm中枢側に駆血帯を巻く。
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2.血管の走行に合わせ60度の角度で刺入する。
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3.採血後は刺入部位を圧迫しながら抜針する。
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4.刺入部位は5分以上圧迫し、止血する。
- 解答・解説
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1.(×)駆血帯は、採血部位から7~10cm中枢側に巻きます。
2.(×)針の刺入角度は15~30度とします。60度では血管を貫通し、神経を損傷するリスクがあります。
3.(×)採血後は軽くアルコール綿を当てた状態で抜針し、その後に圧迫します。疼痛を伴うため、強く圧迫しながら抜くことは不適切です。
4.(○)採血後は、5分程度を目安に刺入部位を圧迫し、止血を行います。出血傾向がある場合は、5分以上かけて圧迫します。
第22問
1回の気管内吸引を30秒以上実施した場合に生じるのはどれか。
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1.嘔吐
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2.感染
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3.低酸素血症
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4.気道粘膜の損傷
- 解答・解説
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1.(×)嘔吐反射は、吸引カテーテルの挿入による物理的刺激により生じます。
2.(×)気管内吸引では無菌的操作を行いますが、チューブを介した感染リスクが高いため留意する必要があります。
3.(○)1回の気管内吸引を30秒以上実施すると、気管内の酸素まで大量に吸引してしまい、低酸素血症を招きます。1回の吸引操作で10秒以上の陰圧をかけないようにし、挿入開始から終了まで15秒以内とすることが推奨されています。
4.(×)吸引圧をかけた状態でチューブを挿入すると、気道粘膜を損傷する可能性があります。
第23問
上腕出血時の間接圧迫止血の部位はどれか。
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1.腋窩動脈
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2.尺骨動脈
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3.大腿動脈
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4.橈骨動脈
- 解答・解説
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間接圧迫止血は、出血部の直接圧迫で止血できない場合に、出血部位より中枢(心臓)側の止血点を手指で圧迫して止血する方法です。
1.(○)上腕出血であれば、上腕動脈より中枢側の腋窩動脈を圧迫します。
2.(×)尺骨動脈は前腕部を走行しているため、手指など末端の出血時に選択されます。
3.(×)大腿動脈は大腿の前面(鼠径部)を走行しているため、下肢の出血時に選択されます。
4.(×)橈骨動脈は前腕部を走行しているため、手指など末端の出血時に選択されます。
第24問
成人に対する一次救命処置〈BLS〉において、胸骨圧迫と人工呼吸の回数比は( ):2である。 ( )に入るのはどれか。
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1.5
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2.1
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3.3
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4.5
- 解答・解説
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一次救命処置〈BLS〉は、心肺停止または呼吸停止した傷病者に対して、特別な器具がなくても実施できる心肺蘇生法であり、呼吸と循環をサポートする一連の処置です。成人に対するBLSでは、30:2を1サイクルとして胸骨圧迫に人工呼吸を加えます。人工呼吸を2回行う間の胸骨圧迫の中断はできるだけ最小限、長くても10秒までとします。
よって、1.(×)、2.(×)、3.(○)、4.(×)、となります。
第25問
感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律<感染症法〉において、結核が分類されるのはどれか。
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1.一類
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2.二類
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3.三類
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4.四類
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5.五類
- 解答・解説
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1.(×)一類には、エボラ出血熱やペストなどが該当します。
2.(○)結核、ジフテリア、中東呼吸器症候群(MERS)などは、二類に分類されます。二類感染症は、一類感染症ほどではないものの、比較的危険性が高い感染症とされています。
3.(×)三類には、コレラ、細菌性赤痢、腸管出血性大腸菌感染症などが含まれます。
4.(×)四類は動物や飲食物などを介した感染症であり、狂犬病や日本脳炎などが該当します。
5.(×)五類には、全数把握疾患(麻疹、風疹など)と、定点把握疾患(季節性インフルエンザ、RSウイルス感染症など)があります。
第26問
正常な心臓で心拍出量が減少するのはどれか。
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1.心拍数の増加
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2.大動脈圧の上昇
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3.静脈還流量の増加
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4.心筋収縮力の上昇
- 解答・解説
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1.(×)心拍出量は、左心室からの1回心拍出量に、1分間の心拍数を掛けた値です。心拍数が増加すると、心拍出量も増加します。
2.(○)大動脈圧の上昇は左心室から拍出される血液への抵抗(後負荷)となることから、心拍出量は減少します。
3.(×)静脈還流量が増加すると、心臓内の血液量が増加するとともに、心室の筋が伸展するため、心拍出量は増加します。
4.(×)心筋収縮力の上昇により1回心拍出量が増加するため、心拍出量は増加します。
第27問
ワクチン接種後の抗体産生について正しいのはどれか。
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1.ワクチン内の抗原を提示するのは好中球である。
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2.抗原に対して最初に産生される抗体はIgAである。
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3.抗原に対して血中濃度が最も高くなる抗体はIgMである。
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4.同じワクチンを2回接種すると抗原に対する抗体の産生量が増加する。
- 解答・解説
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1.(×)抗原提示を行うのは、主にマクロファージや樹状細胞です。
2.(×)抗原に対して最初に産生される抗体はIgMであり、後からIgGが産生されます(一次応答)。
3.(×)抗原に対して血中濃度が最も高くなる抗体は、IgGです。
4.(○)同じワクチンを2回以上(ブースター)接種すると、抗原に対する抗体(主にIgG)が速やかに、大量かつ長時間産生されます。この二次応答により、強い免疫が維持されます。
第28問
B細胞が抗原認識によって分化した抗体産生細胞はどれか。
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1.マクロファージ
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2.形質細胞
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3.肥満細胞
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4.T細胞
- 解答・解説
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1.(×)マクロファージは、血液中の単球が分化したものであり、異物を認識して貪食し、抗原提示を行います。
2.(○)B細胞が抗原を認識すると、ヘルパーT細胞の働きを受けて活性化し、形質細胞に分化。この形質細胞が抗体(免疫グロブリン)を産生します。
3.(×)肥満細胞(マスト細胞)は、アレルゲンの侵入を受けて活性化し、ヒスタミンを放出してI型(即時型)アレルギーを引き起こします。
4.(×)T細胞は、感染防御に関わるリンパ球です。ヘルパーT細胞、制御性T細胞、キラー(細胞障害性)T細胞などに分化します。
第29問
皮膚筋炎(dermatomyositis)の皮膚症状はどれか。
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1.環状紅斑
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2.蝶形紅斑
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3.ディスコイド疹
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4.ヘリオトロープ疹
- 解答・解説
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1.(×)環状紅斑は、同心円状に拡大する境界明瞭な紅斑で、悪性腫瘍、リウマチ熱、膠原病(特にシェーグレン症候群)などでみられます。
2.(×)蝶形紅斑は、蝶が羽を開いたように頬の両側に広がる赤い発疹であり、全身性エリテマトーデスでみられる特徴的な皮膚症状です。
3.(×)コインやディスクのように見えるディスコイド疹(円盤状紅斑)は、円板状エリテマトーデスや全身性エリテマトーデスに特徴的な発疹であり、顔面や耳介、頭部、関節背面などによくみられます。
4.(○)皮膚筋炎では、上眼瞼部に生じるむくみを伴った紫紅色のヘリオトロープ疹がみられます。なお、「ヘリオトロープ」は、ピンクがかった紫色をした花の名前に由来しています。
第30問
育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律?〈育児・介護休業法〉?における介護休業の取得で正しいのはどれか。
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1.介護休業は分割して取得することはできない。
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2.介護の対象者1人につき半年を限度に取得できる。
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3.要介護状態にある配偶者を介護するために取得できる。
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4.介護老人福祉施設に入所している家族の面会のために取得できる。
- 解答・解説
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1.(×)3回までを限度として、分割して取得できます。
2.(×)介護の対象者1人につき通算93日(約3か月)を限度として取得できます。
3.(○)要介護状態にある家族を介護するための休業であり、対象となる家族は配偶者、父母、子、祖父母、兄弟姉妹、孫ならびに配偶者の父母とされています。
4.(×)原則として、要介護状態にある対象家族を労働者自身が介護するための休業となります。したがって、家族の面会のためには取得できません。
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第31問
社会福祉法に基づき社会福祉協議会が推進するのはどれか。
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1.がん対策
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2.男女共同参画
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3.就労の支援活動
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4.ボランティア活動
- 解答・解説
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社会福祉法人は、地域福祉の推進を図ることを目的とする、社会福祉法に基づく民間組織(社会福祉法人)です。
1.(×)がん対策基本法に基いてがん対策推進基本計画を政府が策定し、それに基づいたがん対策を国や地方公共団体が推進します。
2.(×)男女共同参画は、男女共同参画基本法に基づいて国や地方公共団体が推進します。
3.(×)就労の支援活動を推進するのは、国が設置する公共職業安定所(ハローワーク)などです。
4.(○)社会福祉協議会が推進する具体的な活動としては、ボランティアや市民活動の支援、日常生活自立支援事業、共同募金運動への協力などが挙げられます。
第32問
日本の平成30年(2018年)の健康に関する指標の記述で正しいのはどれか。
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1.女性の死因の第3位は老衰である。
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2.男性の死因の第3位は肺炎(pneumonia)である。
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3.女性の平均寿命は89年を超えている。
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4.男性の平均寿命は83年を超えている。
- 解答・解説
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1.(○)女性の死因の第1位は悪性新生物、次いで心疾患、老衰の順となっていました。
2.(×)男性の死因の第1位は悪性新生物、次いで心疾患、脳血管疾患、肺炎の順となっており、肺炎は第4位でした。
3.(×)女性の平均寿命は87.32年でした。
4.(×)男性の平均寿命は81.25年でした。
第33問
労働衛生の「3管理」とは、作業環境管理と作業管理と( )である。 ( )に入るのはどれか。
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1.健康管理
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2.総括管理
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3.労務管理
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4.出退勤管理
- 解答・解説
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作業環境管理、作業管理、健康管理の3つは「労働衛生の3管理」であり、労働衛生管理の中核を成すものとなります。また、この3つに総括管理と労働衛生教育を合わせて「労働衛生の5管理」という言い方がされることもあります。なお、総括管理とは、労働衛生管理体制の構築、労働衛生関係諸規程の整備、年間計画の策定など、労働衛生管理の基盤整備を行うことを指します。
よって、1.(○)、2.(×)、3.(×)、4.(×)、となります。
第35問
地域連携クリニカルパスの目的はどれか。
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1.医療機関から在宅までの医療の継続的な提供
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2.地域包括支援センターと地域住民との連携
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3.地域医療を担う医療専門職の資質向上
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4.患者が活用できる社会資源の紹介
- 解答・解説
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1.(○)地域連携クリニカルパスは、地域内で担当の医療機関が共有する全体的な診療計画です。医療機関の連携(例えば、急性期病院と回復期病院の連携)を促進し、入院から在宅まで継続的な医療の提供をめざします。
2.(×)地域包括支援センターは、高齢者の総合相談窓口です。
3.(×)医療専門職の資質向上を目的とはしていません。
4.(×)患者が活用できる社会資源については、医師、看護師、社会福祉士、相談支援専門員などが説明や指導を行います。
第36問
集団指導が望ましいのはどれか。
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1.胃全摘出術後の患者への退院指導
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2.1型糖尿病(type 1 diabetes mellitus)の学童を対象とした療養指導
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3.子宮頸癌(cancer of the uterine cervix)の術後の神 経因性膀胱の患者への間欠的自己導尿の指導
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4.ヒト免疫不全ウイルス〈HIV〉感染者(human immunodeficiency virus infection)への生活指導
- 解答・解説
-
1.(×)胃全摘出術後は、年齢、理解力、術式などにより退院指導の内容が異なるため、個人指導が望ましいといえます。
2.(○)集団指導は、参加者が体験を共有し、良い影響を与え合うことを期待して実施されます。1型糖尿病の学童を対象とした療養指導は、個別性が高くなく、対象者を1か所に集めやすいため、集団指導が適切であると考えられます。
3.(×)同じ疾患を持つ患者であっても、間欠的自己導尿の指導にはプライバシーへの配慮が求められるため、集団指導は不適切です。
4.(×)HIV感染者に対する生活指導は、プライバシー保護の観点から個人指導が適切です。
第37問
上肢のフィジカルアセスメントの立位での実施場面の写真を別に示す。 手のひらを上にして、肩の高さで水平に前方に両腕を伸ばしてもらった。その後、閉眼してもらうと、左腕が回内しながら下がっていった。 アセスメントの結果で正しいのはどれか。
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1.位置覚の異常
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2.錐体路の障害
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3.小脳機能の異常
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4.関節可動域の障害
- 解答・解説
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1.(×)位置覚は、四肢の位置を感知する深部感覚の一つです。評価には、再現法や模倣法が用いられます。
2.(○)バレー徴候が認められることから、錐体路の障害があると考えられます。上肢のバレー徴候が陽性の場合は、上肢の回内・下降が起こります。
3.(×)小脳機能の異常は、鼻指鼻試験や踵膝試験などで評価します。
4.(×)関節可動域は、ROM(関節可動域)テストなどで評価します。
第38問
臥床患者の体位変換とボディメカニクスの原則との組合せで正しいのはどれか。
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1.仰臥位から側臥位―トルクの原理
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2.仰臥位から長座位―摩擦力
-
3.ベッドの片側への水平移動―力のモーメント
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4.ベッドの頭部への水平移動―てこの第1種の原理
- 解答・解説
-
1.(○)仰臥位から側臥位にする場合は、患者の腕を組んで膝を立て、踵を殿部に近づけると、トルクの原理(力のモーメント)により小さな力で回転させることができます。
2.(×)仰臥位から長座位にする場合は、支点・力点・作用点の3点の関係を利用するてこの原理により、小さな力で動かすことができます。
3.(×)ベッドの片側への水平移動では、患者の膝関節を屈曲させ、支持基底面を小さくして摩擦力を減らすことで移動させやすくなります。
4.(×)てこの第1種の原理は、シーソーのように支点が力点と作用点の間にあるてこであり、ベッドの頭部への水平移動には用いられません。
第39問
Aさん(24歳、男性)は急性虫垂炎(acute appendicitis)の術後1日で、ベッド上で仰臥位になり右前腕から点滴静脈内注射が行われている。Aさんは左利きである。 病室外のトイレまでAさんが移動するための適切な療養環境はどれか。
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1.履物はAさんの左手側に置く。
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2.ベッド柵はAさんの右手側に設置する。
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3.輸液スタンドはAさんの左手側に置く。
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4.ベッドは端座位時にAさんの足底が床につく高さにする。
- 解答・解説
-
1.(×)右前腕から点滴静脈内注射が行われていることから、履物もAさんの右手側に置き、ベッドの右手側から降りるようにします。左手側から降りると、ルートの事故抜去や転倒のリスクが高まります。
2.(×)ベッド柵を右手側に設置すると、移動する際の障害物になってしまいます。
3.(×)左手側に輸液スタンドを置くと、ルートが身体の上を通過する位置関係となり、寝返りなどによる事故抜去のリスクが高まります。
4.(○)転倒・転落を予防するため、端座位で足底が床につく高さに調整することが適切です。
第40問
全介助が必要な臥床患者の口腔ケアで適切なのはどれか。
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1.スポンジブラシは水を含ませた後、絞って使用する。
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2.頸部を後屈した体位で実施する。
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3.終了後は口腔内を乾燥させる。
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4.舌苔は強くこすって除去する。
- 解答・解説
-
1.(○)スポンジブラシに多くの水を含ませると、その水により誤嚥リスクが高まるため、絞ってからケアを開始します。
2.(×)頸部を後屈させると、咽頭軸と喉頭軸が直線上に位置し、水分が気道へ入りやすくなります。
3.(×)口腔内を乾燥させると傷つきやすく、舌苔付着の原因にもなるため、保湿することが適切です。
4.(×)舌苔の除去は、力を入れすぎないように優しく行います。
第41問
術後1日の手術創の正常な治癒過程として正しいのはどれか。
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1.創部の浮腫が起こる。
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2.肉芽組織が形成される。
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3.コラーゲンが成熟し瘢痕組織となる。
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4.血管内皮細胞が新しい血管を形成する。
- 解答・解説
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一般的な創傷の治癒過程は「出血凝固期(止血期)→炎症期→増殖期→成熟期」の順で進みます。
1.(○)術後1~3日ごろは炎症期であり、炎症により血管透過性が亢進するため、血漿成分などが滲出して浮腫が生じます。
2.(×)肉芽組織が形成されるのは、術後3日~2週間の増殖期です。
3.(×)コラーゲンが成熟して瘢痕組織となるのは、術後2週間~数か月の成熟期です。
4.(×)血管内皮細胞が新たな血管を形成するのは、肉芽組織形成と同時期の増殖期です。
第42問
平成29年(2017年)の患者調査において医療機関を受診している総患者数が最も多いのはどれか。
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1.喘息(asthma)
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2.糖尿病(diabetes mellitus)
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3.脳血管疾患(cerebrovascular disease)
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4.高血圧性疾患(hypertensive disease)
- 解答・解説
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1.(×)喘息は111万7000人で、9番目に多い疾患でした。
2.(×)糖尿病は328万9000人で、3番目に多い疾患でした。
3.(×)脳血管疾患は111万5000人で、10番目に多い疾患でした。
4.(○)総患者数が最も多いのは、993万7000人の高血圧性疾患でした。
第43問
解離性大動脈瘤(dissecting aortic aneurysm)の破裂直後に出血性ショック(hemorrhagic shock)となった患者の症状として正しいのはどれか。
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1.黄疸
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2.浮腫
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3.顔面紅潮
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4.呼吸不全
- 解答・解説
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1.(×)重度の肝障害を伴わない限り、解離性大動脈瘤破裂後の出血性ショックで黄疸が生じることはありません。
2.(×)出血性ショックは循環血液量が減少している状態であり、浮腫は生じません。
3.(×)顔面紅潮は、血管の拡張により生じます。出血性ショックでは、循環不全や貧血のため顔面蒼白となります。
4.(○)ショックの5徴候(5P)は、顔面蒼白(pallor)、虚脱(prostration)、冷汗(perspiration)、呼吸不全(pulmonary insufficiency)、脈拍微弱(pulselessness)です。循環血液量が低下し、組織への酸素供給量が減ることで代謝性アシドーシスをきたし、呼吸不全となります。
第44問
Aさん(60歳、男性)は大動脈弁置換術を受け、ワルファリンの内服を開始することになった。 Aさんが摂取を避けるべき食品はどれか。
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1.海藻
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2.牛乳
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3.納豆
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4.グレープフルーツ
- 解答・解説
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1.(×)海藻はヨウ素を多く含みます。ワルファリンとの相互作用はありません。
2.(×)テトラサイクリン系抗菌薬は、牛乳に含まれるカルシウムと結合すると血中薬物濃度が低下して効果が減弱します。
3.(○)ワルファリンは抗凝固薬であり、ビタミンKの働きを抑制することで血液凝固因子の生成を阻害します。納豆はビタミンKを多量に含むため、摂取すると作用が拮抗してワルファリンの薬効が減弱します。
4.(×)グレープフルーツは、肝臓の薬物代謝酵素(CYP3A4)を抑制します。CYP3A4で分解されるカルシウム拮抗薬の服用時には、血中薬物濃度が上昇して薬効が増強するため、グレープフルーツの摂取を避けます。
第45問
慢性膵炎患者(chronic pancreatitis)の食事療法で制限が必要なのはどれか。
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1.蛋白質
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2.カリウム
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3.食物繊維
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4.アルコール
- 解答・解説
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慢性膵炎では、消化が良好で栄養価の高い食事が基本となります。また、脂質の摂取により膵液分泌が活性化し、疼痛を引き起こすことがあるため、低脂肪食を心がけます。
1.(×)蛋白質制限は、腎不全などの場合に行われます。
2.(×)カリウム制限は、腎不全などの場合に行われます。
3.(×)食物繊維の制限は特に必要ありません。
4.(○)アルコール摂取により膵臓障害を引き起こす可能性があるため、禁酒となります。
-
-
第46問
血中濃度の測定にあたり食事の影響を考慮すべきホルモンはどれか。
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1.グルカゴン
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2.メラトニン
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3.コルチゾール
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4.バゾプレシン
- 解答・解説
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1.(○)グルカゴンはランゲルハンス島α細胞から分泌されるホルモンで、空腹(血糖低下)時、グリコーゲン分解によりグルコースを放出させ、血糖値上昇に働きます。空腹時には高値を示し、食後では低値となります。原則として、グルカゴンの血中濃度は空腹時に測定します。
2.(×)メラトニンが食事の影響を受けることはありません。
3.(×)コルチゾールには日内変動があり、朝は高値を示し、夜間は低値となります。また、ストレスによっても過剰に分泌され、高値を示します。
4.(×)バゾプレシン(抗利尿ホルモン)は、血液の浸透圧低下や血圧低下により分泌が促進されます。
第47問
脳血管造影を行う患者の看護について適切なのはどれか。
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1.前日に頭部の剃毛を行う。
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2.検査中は患者に話しかけない。
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3.穿刺部末梢側の動脈の拍動を確認する。
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4.検査30分前まで食事摂取が可能である。
- 解答・解説
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1.(×)カテーテル刺入部には鼠径部などが選択されるため、頭部の剃毛を行う必要はありません。
2.(×)医師の視点からは患者が確認できないため、看護師は患者の傍らで悪心などが生じていないか状態を観察すると同時に、不安を感じないよう必要に応じて声かけします。
3.(○)血管造影では、合併症として穿刺部末梢側の動脈に閉塞をきたす可能性があるため、検査後に拍動を確認することが重要です。
4.(×)造影剤を用いる検査であることから、悪心や動悸、頭痛などの副作用に備えて検査数時間前から禁飲食とします。
第48問
Aさん(32歳、男性)は慢性副鼻腔炎と診断され経過観察をしていたが、症状が改善せず手術を受けることになった。 Aさんへの術後の生活についての説明で適切なのはどれか。
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1.咽頭にたまった分泌物は飲み込んでも良い。
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2.物が二重に見えるときは看護師に伝える。
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3.手術当日から入浴が可能である。
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4.臥床時は頭部を低く保つ。
- 解答・解説
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1.(×)咽頭にたまった分泌物を飲み込むと、悪心・嘔吐を引き起こすおそれがあるため、吐き出すよう説明します。
2.(○)術後、眼窩内に浮腫が起こり、複視、視力障害、眼球運動障害などを引き起こすことがあります。速やかな対処を要する術後合併症であり、こうした症状がみられたらすぐに看護師に伝えるよう説明します。
3.(×)患部を刺激せず安静を保つ必要があるため、医師から指示があるまでは入浴や洗髪を控えます。
4.(×)出血、分泌物誤嚥、悪心・嘔吐などを予防するため、臥床時は頭部を高めに保ちます。
第49問
幻肢痛について正しいのはどれか。
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1.術前から発症する。
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2.抗うつ薬は禁忌である。
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3.細菌感染が原因である。
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4.切断し喪失した部位に生じる。
- 解答・解説
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幻肢痛とは、切断により喪失した四肢が現存しているかのような幻覚を抱き、その実際には存在しない部位にしびれ感や絞扼感、灼熱感などの痛みが生じる状態です。
1.(×)幻肢痛は四肢の切断後に発症します。
2.(×)幻肢痛は鎮痛薬で軽減できない痛みであり、薬物療法としては抗うつ薬が有効です。また、義肢や義手の早期装用による改善も期待できます。
3.(×)細菌感染とは関係ありません。
4.(○)選択肢の通りです。痛みの感じ方は「電撃が走るよう」「ねじられるよう」「締め付けられるよう」など人によりさまざまです。
第50問
乳房超音波検査を受ける女性患者への説明で正しいのはどれか。
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1.「検査当日は起床時から飲食をしないでください」
-
2.「乳房を器具で挟んで検査します」
-
3.「月経中は検査ができません」
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4.「仰向けで検査を行います」
- 解答・解説
-
1.(×)消化器系に関わる検査ではないため、絶飲食にする必要はありません。
2.(×)乳房を器具で挟むのはマンモグラフィ検査です。乳房超音波検査では、ゼリーを塗った乳房の表面にプローブという小さな器具を当て、反射波を画像化して内部を観察します。
3.(×)月経は乳房超音波検査に影響しません。
4.(○)乳房超音波検査は、基本的に仰臥位で行います。
第51問
Aさん(54歳、女性)は甲状腺機能亢進症(hyperthyroidism)と診断され、放射性ヨウ素内用療法を受けることとなった。 看護師の説明で正しいのはどれか。
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1.「治療前1週間は海藻類を摂取しないでください」
-
2.「治療中は体を固定します」
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3.「治療後の副作用に脱毛があります」
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4.「治療後1週間は生野菜を摂取しないでください」
- 解答・解説
-
放射性ヨウ素内用療法は、放射性ヨウ素をカプセルで服用し、甲状腺に集積させることで、甲状腺機能亢進症を治療する方法です。
1.(○)海藻類はヨウ素を多く含むため、治療前に摂取すると放射性ヨウ素の甲状腺への取り込みが低下し、治療効果を低下させる可能性があります。そのため、治療1週間前からは海藻類を含む食品の摂取制限を行います。
2.(×)身体固定の必要はありません。
3.(×)脱毛を含め、副作用や合併症がほとんどみられない治療法として知られています。
4.(×)治療前にヨウ素摂取制限を実施する以外、食事制限の必要はありません。
第52問
老年期の発達課題を引退の危機、身体的健康の危機および死の危機の3つの段階で示したのはどれか。
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1.エリクソン(Erikson,E.H.)
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2.レビンソン(Revinson,D.J)
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3.ペック(Peck,R.)
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4.ユング(Jung,C.G.)
- 解答・解説
-
1.(×)エリクソンは、心理社会的発達理論を提唱し、人間の発達段階を8つに分けました。そして、各発達段階で見舞われる心理社会的危機を乗り越えることで獲得できる力(要素)を示しました。
2.(×)レビンソンのライフサイクル論は、発達段階を人生の四季になぞらえ、4つの発達期とその間にある3つの過渡期に着目しています。
3.(○)ペックは、エリクソンが指摘した老年期の課題をさらに3段階に分け、各段階での心理的課題と危機を示しました。
4.(×)ユングは、人生を一日の太陽の動きになぞらえて日の出から日没までの4つの時期に分けてとらえ、40歳代を「人生の正午」と形容しました。
第53問
介護保険制度における施設サービスはどれか。
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1.介護医療院サービス
-
2.小規模多機能型居宅介護
-
3.サービス付き高齢者向け住宅
-
4.認知症対応型共同生活介護〈認知症高齢者グループホーム〉
- 解答・解説
-
1.(○)現在、介護保険制度における施設サービスには、介護老人福祉施設(特養)、介護老人保健施設(老健)、介護医療院、介護療養型医療施設(療養病床)の4つがあります。介護療養型医療施設は、2024年3月末での廃止が決定しています。
2.(×)小規模多機能型居宅介護は、介護保険制度における地域密着型サービスの一つです。
3.(×)サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)については、高齢者の居住の安定確保に関する法律(高齢者住まい法)に規定されています。
4.(×)認知症対応型共同生活介護〈認知症高齢者グループホーム〉は、介護保険制度における地域密着型サービスの一つです。
第54問
30歳を100%とした生理機能と比較して、老年期において機能の残存率の平均値が最も低下するのは次のうちどれか。
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1.基礎代謝率
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2.最大換気量
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3.細胞内水分量
-
4.神経伝導速度
- 解答・解説
-
30歳における生理機能を100%として加齢変化をみると、老年期でも機能の残存率が最も高いのは神経伝導速度であり、次いで基礎代謝率(生命維持に必要な、一日当たりの最低限のエネルギー量)、細胞内水分量の順となっています。これらの機能が80歳代でも80%以上を維持しているのに対して、腎機能や呼吸機能は大きく落ち込み、最大換気量は40%程度にまで低下します。
よって、1.(×)、2.(○)、3.(×)、4.(×)、となります。
第55問
高齢者の健康障害の特徴で正しいのはどれか。
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1.症状の出現は定型である。
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2.治療の効果が現れやすい。
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3.疾患の発生に心理的要因の影響は少ない。
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4.薬物の副作用〈有害事象〉が発生しやすい。
- 解答・解説
-
1.(×)高齢者の症状は非定型で個人差も大きいことから、健康障害の発見が遅れやすくなります。
2.(×)加齢に伴って薬物への反応性や身体の回復力が低下するため、治療の効果は現れにくいといえます。
3.(×)配偶者や友人との死別など、心理的な要因が大きく影響します。
4.(○)加齢に伴って薬物の代謝や排泄能が低下するため、血中濃度の半減期が延長し、副作用(有害事象)が発生しやすくなります。
第56問
Aさん(83歳)は寝たきり状態で、便意を訴えるが3日間排便がみられない。認知機能に問題はない。昨晩下剤を内服したところ、今朝、紙オムツに水様便が少量付着しており、残便感を訴えている。 このときのAさんの状態で考えられるのはどれか。
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1.嵌入便
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2.器質性便秘
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3.切迫性便失禁
-
4.非急性感染性下痢
- 解答・解説
-
1.(○)寝たきり状態で3日間排便がなかった高齢者であり、嵌入便であると考えられます。嵌入便は、直腸性便秘の一つで、肛門の手前で硬い便が貯留し、自力排出が困難になった状態です。Aさんの少量の水様便は、下剤で一部軟化した便が排泄されたものと考えられます。
2.(×)器質性便秘であれは、腹部膨満感、腹痛、嘔吐などの症状がみられます。
3.(×)切迫性便失禁は、突然の強い便意が生じ、トイレまで我慢できずに便失禁してしまう状態です。
4.(×)水様便が少量付着しているのみで下痢の症状はみられないため、非急性感染性下痢は否定できます。
第57問
発育と発達に遅れのない生後6か月の男児。BCG接種の翌日に接種部位が赤く腫れ次第に増悪して膿がみられたため、母親は接種後4日目に医療機関に電話で相談し、看護師が対応した。児に発熱はなく、哺乳や機嫌は良好である。 このときの看護師の説明で適切なのはどれか。
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1.「通常の反応です」
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2.「速やかに来院してください」
-
3.「1週間後にまた電話をください」
-
4.「患部をアルコール消毒してください」
- 解答・解説
-
1.(×)通常は、接種後10日ごろから発赤や膿が生じ、接種後1~2か月で最も強い反応が出ます。その後、かさぶたとなり、接種後3か月ごろには小さな跡が残るのみという流れになります。
2.(○)BCG接種の翌日に接種部位が赤く腫れ、次第に増悪して膿もみられていることから、結核感染児にBCGワクチンを接種した際の反応であるコッホ現象が疑われます。結核菌の感染有無を確認する必要があるため、速やかに受診するよう説明することが適切です。
3.(×)救急車を呼ぶまでの緊急性はありませんが、できるだけ速やかに受診すべき状態であり、不適切な対応です。
4.(×)患部は刺激せず、そのまま受診します。
第58問
新生児の出血性疾患で正しいのはどれか。
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1.生後48時間以内には発症しない。
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2.母乳栄養児は発症のリスクが高い。
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3.予防としてカルシウムを内服する。
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4.早期に現われる所見に蕁麻疹(urticaria)がある。
- 解答・解説
-
1.(×)新生児は易出血傾向にあるため、生後48時間以内でも出血性疾患を発症することがあります。
2.(○)新生児はビタミンKの貯蔵量が少なく、母乳のビタミンK含有率も低いことから、人工乳(ビタミンK添加)よりも母乳栄養のほうが新生児・乳児ビタミンK欠乏性出血症の発症リスクが高くなります。
3.(×)予防として、経口用の活性型ビタミンK(ビタミンK2シロップ)を投与します。
4.(×)新生児メレナではタール便や吐血、血小板減少症では点状出血や紫斑がみられます。
第59問
入院中の小児のストレス因子と発達段階の組合せで正しいのはどれか。
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1.見慣れない環境―新生児期
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2.プライバシーの侵害―幼児期
-
3.病気の予後への不安―学童期
-
4.母子分離―思春期
- 解答・解説
-
1.(×)見慣れない環境がストレス因子となるのは、幼児期以降です。
2.(×)プライバシーの侵害がストレス因子となるのは、学童期以降です。
3.(○)学童期には、知的活動が発達し、論理的思考が深まります。病気の予後への不安を感じ始めるのもこのころです。
4.(×)母子分離がストレス因子となるのは、乳幼児期です。
第60問
A君(小学6年生)は病院に併設された院内学級に通いながら骨肉腫(osteosarcoma)の治療を続けていた。現在、肺転移があり終末期にある。呼吸障害のため鼻腔カニューレで酸素(2L/分)を吸入中である。A君の食事摂取量は減っているが意識は清明である。1週後に院内で卒業式が予定されている。A君は「卒業式に出席したい」と話している。 看護師のA君への対応として適切なのはどれか。
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1.両親に判断してもらおうと話す。
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2.今の状態では出席は難しいと話す。
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3.出席できるように準備しようと話す。
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4.出席を決める前に体力をつけようと話す。
- 解答・解説
-
1.(×)A君は小学6年生であり、自分で意思決定が可能であると考えられます。両親に相談することも間違いではありませんが、本人の意思を尊重した対応が望まれます。
2.(×)A君の意思を否定する対応であり、前向きに生きようとする姿勢を失わせるおそれがあります。
3.(○)院内の卒業式であれば想定されるリスクに対してもさまざまな準備が可能であり、A君の希望を尊重した適切な対応だといえます。
4.(×)終末期において体力をつけることは困難です。むしろ、食事摂取量が減っており、体力も大きく低下していると考えられ、非現実的な目標を掲げることにしかなりません。
-
-
第61問
ジェンダーの定義について正しいのはどれか。
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1.生物学的な性
-
2.社会的文化的な性
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3.自己認識している性
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4.性的指向の対象となる性
- 解答・解説
-
1.(×)生物学的な性(sex)は、外性器や内性器、性染色体、性ホルモン分泌などにみられる生物学的特徴から決定される性です。
2.(○)ジェンダー(gender)は、社会的・文化的に形成される性別のことです。「男性/女性はどうあるべきか」というジェンダー規範により個々の生き方を縛るような息苦しさが生まれるなど、マイナスの側面が指摘されることが多いといえます。
3.(×)自己認識している性とは、性自認(gender identity)のことであり、こころの性とも呼ばれます。
4.(×)性的指向の対象となる性とは、その人の恋愛や性愛の対象となる性を意味します。
第62問
日本の周産期の死亡に関する記述で正しいのはどれか。
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1.新生児死亡は生後1週未満の死亡をいう。
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2.死産は妊娠満12週以後の死児の出産をいう。
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3.妊産婦死亡は妊娠中又は妊娠終了後満28日未満の女性の死亡をいう。
-
4.令和元年(2019年)の人口動態統計では自然死産数が人工死産数よりも多い。
- 解答・解説
-
1.(×)新生児死亡は、生後4週(28日)未満の死亡のことです。
2.(○)厚生労働省は、妊娠満12週(妊娠第4月)以後における死児の晩出(出産後においても心臓拍動、随意筋の運動および呼吸のいずれをも認めない)を死産と定義しています。
3.(×)妊産婦死亡は、妊娠中または分娩後42日未満の妊婦または褥婦の死亡です。
4.(×)令和元年(2019年)の人口動態統計では、自然死産数8997胎に対して人工死産数1万457胎であり、人工死産数のほうが多くなっています。
第63問
避妊法について適切なのはどれか。
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1.経口避妊薬は排卵を抑制する。
-
2.コンドーム法の避妊効果は99%以上である。
-
3.基礎体温法は月経が不順な女性に有用である。
-
4.子宮内避妊器具〈IUD〉は性交のたびに挿入が必要である。
- 解答・解説
-
1.(○)経口避妊薬は、性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)の分泌を抑制し、下垂体からの卵巣刺激ホルモン(FSH)や黄体化ホルモン(LH)の分泌を減少させることで、排卵を抑制します。
2.(×)コンドーム法による1年間の失敗率は、理想的な使用方法で数%、一般的な使用方法では10%以上とされています。
3.(×)基礎体温法は、月経周期が規則的で、基礎体温が二相性を示す女性に適しています。
4.(×)子宮内避妊器具〈IUD〉は、子宮内に挿入して受精卵の着床を防ぐものであり、一度挿入すれば、そのままで数年間効果が期待できます。
第64問
マタニティブルーズ(maternity blues)について正しいのはどれか。
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1.意欲低下が主症状である。
-
2.症状は2週間以上持続する。
-
3.好発時期は産後1か月ころである。
-
4.産後のホルモンの変動が要因となる。
- 解答・解説
-
マタニティブルーズと産後うつ病は混同されがちなので、違いを理解しておきましょう。
1.(×)主症状は、涙もろさや気分易変性などの精神症状、疲労感や頭痛などの身体的不調となります。なお、意欲低下がみられるのは産後うつ病です。
2.(×)症状は一過性であり、数日~1週間程度で消失します。2週間以上持続するのであれば、産後うつ病が疑われます。
3.(×)産後3~10日ごろに好発します。なお、産後うつ病は、産後2~3週間から数か月が好発時期です。
4.(○)エストロゲンやプロゲステロンなどのホルモンが産後急激に減少し、自律神経に影響を与えることが要因の一つであると考えられています。
第65問
精神保健における一次予防はどれか。
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1.職場でうつ病(depression)患者を早期発見する。
-
2.自殺企図者に精神科医療機関への受療を促す。
-
3.統合失調症(schizophrenia)患者の社会参加のための支援を行う。
-
4.ストレスとその対処法に関する知識の啓発活動を行う。
- 解答・解説
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一次予防は健康増進・疾病予防、二次予防は早期発見・早期治療、三次予防は再発防止と社会復帰の促進を意味します。
1.(×)うつ病など精神疾患の早期発見・早期治療は、二次予防に該当します。
2.(×)受療を促すことは早期発見・早期治療につながるため、二次予防に該当します。
3.(×)社会復帰・社会参加に向けた支援は、三次予防に該当します。
4.(○)正しい知識の普及などにより健康増進・疾病予防を図る啓蒙活動は、一次予防に該当します。
第66問
認知行動療法で患者に期待できる効果はどれか。
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1.物事の捉え方のゆがみが修正される。
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2.自ら催眠状態に導くことができるようになる。
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3.過去の自分の態度についての自己洞察が深まる。
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4.自分の状態をあるがままに受け入れることができるようになる。
- 解答・解説
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1.(○)認知行動療法は、思考や行動の癖を把握し、認知・行動パターンを整えていくことで、気持ちを楽にしたり、ストレスを軽減させたりする精神療法です。うつ病の治療法として開発されましたが、その後は精神科に限らずさまざまな領域で取り入れられるようになっています。
2.(×)選択肢の内容は、自律訓練法で期待される効果です。
3.(×)選択肢の内容は、内観療法で期待される効果です。
4.(×)選択肢の内容は、森田療法で期待される効果です。
第67問
Aさん(22歳、統合失調症(schizophrenia))は父親、母親、妹との4人暮らし。高校卒業後、アルバイトをしていたが、症状の悪化によって初めて精神科病院に入院した。退院後に一般企業で働きたいと希望している。 看護師がAさんに提案するサービスで適切なのはどれか。
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1.行動援護
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2.就労移行支援
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3.自立生活援助
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4.地域定着支援
- 解答・解説
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本問の選択肢は、いずれも障害者総合支援法に基づくサービスです。
1.(×)行動援護では、知的障害や精神障害により一人での行動が困難である場合に必要な支援を行います。
2.(○)就労移行支援は、一般企業への就職をめざし、それに必要な知識や能力を習得するための訓練を実施するものであり、Aさんに提案するサービスとして適切です。
3.(×)自立生活援助では、障害などにより判断能力が不十分な人が自立した生活を送れるよう支援します。
4.(×)地域定着支援では、居宅で一人暮らしをする障害者に対して、常時連絡体制を確保し、必要な支援を行います。
第68問
Aさん(80歳、女性)は1人暮らし。要介護2の認定を受け、長男(50歳、会社員)、長男の妻(45歳、会社員)、孫(大学生、男性)と同居することになった。長男の家の間取りは、洋室5部屋、リビング、台所である。Aさんは同居後に訪問看護を利用する予定である。訪問看護を利用するにあたりAさんの家族から「在宅介護は初めての経験なのでどうすればよいですか」と訪問看護師に相談があった。 訪問看護師の説明で最も適切なのはどれか。
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1.「Aさんの介護用ベッドはリビングに置きましょう」
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2.「Aさんの介護に家族の生活リズムを合わせましょう」
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3.「活用できる在宅サービスをできる限り多く利用しましょう」
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4.「特定の同居家族に介護負担が集中しないように家族で話し合いましょう」
- 解答・解説
-
1.(×)介護用ベッドを設置する場所は、生活動線などを考慮し、家族で話し合って決めるべきです。必ずしもリビングが適切とは限りません。
2.(×)Aさんを含めた家族全員の生活リズムを考慮し、無理のない介護のリズムを作ることが大切です。
3.(×)在宅サービスは、必要なものを効率的に活用します。
4.(○)特定の1人に負担が集中すると、心身や社会生活へ影響を及ぼし、在宅介護が破綻する可能性が高まります。家族で話し合い、継続的な介護ができる協力体制を整えることが適切です。
第69問
Aさん(73歳、男性)は慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease)で在宅酸素療法〈HOT〉を受けている。受診時にAさんが「1人でお風呂に入っているが、息切れが強い」と訴えたため、外来看護師は入浴時の具体的な状況を確認した。 外来看護師がAさんに確認した内容で、息切れの原因と考えられるのはどれか。
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1.入浴はシャワー浴にしている。
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2.椅子に座って更衣を行っている。
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3.洗髪時に鼻カニューレを外している。
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4.浴室の扉を開けたまま入浴している。
- 解答・解説
-
1.(×)浴槽に浸かる全身浴は呼吸状態に影響を及ぼすため、負荷が少ないシャワー浴は適切な方法だといえます。
2.(×)立位よりも座位での更衣のほうが、呼吸への負荷が少なくなります。
3.(○)洗髪時は酸素消費量が増加し、呼吸に負荷がかかります。鼻カニューレを外したために酸素供給が不十分となり、息切れが生じたと考えられます。鼻カニューレを外さずに洗髪できる工夫(シャンプーハットの使用など)を考えるとよいでしょう。
4.(×)酸素療法を行ったまま入浴する場合は、チューブがつぶれないよう扉を開けておく必要があるため、冬期は居室や脱衣所との寒暖差に注意します。
第70問
気管切開下で人工呼吸器を装着している利用者に対して、訪問看護事業所が災害に備えて行うことで適切なのはどれか。
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1.人工呼吸器の予備の回路を預かる。
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2.災害時の個別支援マニュアルを作成する。
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3.医療機関から非常用の人工呼吸器を借りる。
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4.事業所内に利用者が避難できる場所を確保する。
- 解答・解説
-
1.(×)人工呼吸器の予備の回路は、必要時に速やかに使用できるよう利用者の自宅で管理することが適切です。
2.(○)災害時のさまざまなケースを想定し、個別支援マニュアルを作成しておくことが大切です。
3.(×)人工呼吸器は、利用者が医療機関を介して業者からレンタルするものであり、訪問看護事業所が医療機関から借りて常備することはしません。
4.(×)人工呼吸器を装着している利用者の非常時のケアに備え、電源などの設備が整った福祉避難施設や医療機関を事前に確保しておくことが適切です。そして、その情報を個別支援マニュアルに記載しておくとよいでしょう。
第71問
チューブ型の胃瘻の管理について、介護する家族に看護師が指導する内容で正しいのはどれか。
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1.「栄養剤の注入後に白湯を注入してください」
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2.「胃瘻のチューブはご家族で交換してください」
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3.「胃瘻のチューブは同じ位置に固定してください」
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4.「下痢のときは栄養剤の注入速度を速めてください」
- 解答・解説
-
1.(○)栄養剤の注入後に白湯で洗い流すことで、残留した栄養剤によるチューブ内の閉塞や雑菌の繁殖を予防します。
2.(×)胃瘻のチューブは医師が交換します。交換頻度は、種類によって異なりますが、おおむね1~4か月ごとです。
3.(×)同じ位置に固定すると皮膚トラブルの原因となるため、毎回位置を変えて固定します。
4.(×)栄養剤の注入速度が速いと下痢を増悪させるため、速度を遅くすることが適切です。
第72問
病棟で患者の口腔ケア改善に取り組むために担当チームを作った。 これは看護管理のプロセスのどれか。
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1.計画
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2.指揮
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3.統制
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4.組織化
- 解答・解説
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看護管理のプロセスは、計画→組織化→指揮→統制の4段階です。
1.(×)計画は、目的や基準、理念などを決めるプロセスです。
2.(×)指揮は、計画通りに活動を実施するため、教育や訓練、動機付け、リスク回避などを行うプロセスです。
3.(×)統制は、各プロセスが当初の計画通り適正に実施されたかを評価し、必要に応じて修正するプロセスです。
4.(○)目標達成に向けて、メンバーが効率的に問題解決を図ることができるような仕組みをつくっていることから、組織化のプロセスであると考えられます。
第73問
多発性骨転移がある終末期の大腸癌(colon cancer)患者(53歳、女性)が、外科病棟から緩和ケア病棟に夫に付き添われ転棟してきた。 転棟時の申し送りについて、緩和ケア病棟の看護師が外科病棟の看護師から収集する情報で最も優先すべきなのはどれか。
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1.疼痛コントロールの状況
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2.自宅の居住環境
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3.大腸癌の術式
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4.夫の面会頻度
- 解答・解説
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1.(○)緩和ケア病棟では、疼痛をコントロールし、QOLの改善を図るケアが中心となります。選択肢の中で最も収集を優先すべき情報は、疼痛コントロールの状況を含む身体症状のアセスメントです。同時に、精神的苦痛、社会的苦痛、スピリチュアルペインにも目を向ける必要があります。
2.(×)自宅の居住環境については、在宅介護を行う場合に必要となる情報です。
3.(×)現在生じている疼痛は、多発性骨転移によるものであると考えられます。過去に実施された大腸癌(原発疾患)の術式は、情報として有用とはいえません。
4.(×)夫の面会頻度などの家族情報は、疼痛コントロールの状況より優先度が高いとはいえません。
第74問
看護師等の人材確保の促進に関する法律に規定されている、離職した看護師の復職の支援に関連する制度はどれか。
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1.看護師等免許保持者の届出
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2.特定行為に係る研修
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3.教育訓練給付金
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4.業務従事者届
- 解答・解説
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1.(○)看護師等の人材確保の促進に関する法律に規定されているのは、看護師等免許保持者の届出です。保健師・看護師・助産師・准看護師が離職した場合などに、氏名や連絡先を都道府県ナースセンターへ届け出ることが努力義務化されています。
2.(×)特定行為に係る研修は、保健師助産師看護師法に規定されています。
3.(×)教育訓練給付金は、雇用保険法における失業等給付の一つです。
4.(×)業務従事者届は、保健師助産師看護師法に規定されています。2年に一度、所定の事項を就業地の都道府県知事に届け出ることが義務とされています。
第75問
災害発生時に行うSTART法によるトリアージで最初に判定を行う項目はどれか。
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1.意識
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2.呼吸
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3.循環
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4.歩行
- 解答・解説
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START(simple triage and rapid treatment)法は、短時間で迅速評価し、傷病者の最初のふるい分けを行う一次トリアージとして行われます。歩行→呼吸→循環→意識の順で確認します。
1.(×)意識の有無を確認するのは、最後のステップ4です。
2.(×)呼吸の有無や回数を確認するのは、ステップ2です。
3.(×)脈拍の判定による循環の確認は、ステップ3です。
4.(○)最初のステップ1では、歩行の可否を判定します。
-
-
第76問
日本の政府開発援助〈ODA〉の実施機関はどれか。
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1.世界保健機関〈WHO〉
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2.国際協力機構〈JICA〉
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3.国連開発計画〈UNDP〉
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4.赤十字国際委員会〈ICRC〉
- 解答・解説
-
1.(×)世界保健機関〈WHO〉は国連の保健分野専門機関であり、感染症対策、衛生統計、研究開発などを担っています。
2.(○)日本のODAの実施機関は、独立行政法人国際協力機構〈JICA〉です。有償資金協力、無償資金協力、技術援助からなる二国間援助を一元的に担っています。
3.(×)国連開発計画〈UNDP〉は、開発途上の国々がその開発目標を達成できるよう支援する国連機関です。
4.(×)赤十字国際委員会〈ICRC〉は、公平中立の独立した機関であり、人道的保護や支援を実施します。
第77問
脳の外側面を左右から見た模式図を示す。 右利きの健常成人のBroca〈ブローカ〉の運動性言語中枢はどれか。
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1.(1)
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2.(2)
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3.(3)
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4.(4)
-
5.(5)
- 解答・解説
-
右利きの人の99%は左側が優位半球であり、ブローカ野は前頭葉に位置します。ブローカ野には運動性言語中枢があり、この領域が損傷されると意味のある発話ができなくなります(失語症)。
1.(×)左利きの場合は、ウェルニッケ言語中枢の位置となります。
2.(×)左利きの場合は、ブローカ言語中枢の位置となります。
3.(×)前頭葉の連合野(前頭前野)です。
4.(○)ブローカ言語中枢です。
5.(×)ウェルニッケ言語中枢です。
第78問
眼の遠近調節を行う筋はどれか。
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1.下斜筋
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2.下直筋
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3.毛様体筋
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4.上眼瞼挙筋
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5.瞳孔括約筋
- 解答・解説
-
1.(×)下斜筋は眼球の下に位置する外眼筋の一つであり、眼球全体の動き(上転、外転、外旋)に関与します。
2.(×)下直筋は眼球の下に位置する外眼筋の一つであり、眼球全体の動き(下転)に関与します。
3.(○)毛様体筋が収縮すると、毛様体小帯がゆるんで水晶体の厚みが増し、ピントが近くに合います。逆に、毛様体筋が弛緩すると、遠くにピントが合うようになります。
4.(×)上眼瞼挙筋は、開眼するために上眼瞼を挙上させます。
5.(×)瞳孔括約筋は、瞳孔を収縮・散大させ、眼球内に入る光量を調節します。
第79問
咀嚼運動にかかわる脳神経はどれか。
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1.嗅神経
-
2.滑車神経
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3.三叉神経
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4.動眼神経
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5.内耳神経
- 解答・解説
-
1.(×)嗅神経は、嗅覚を司る感覚神経です。
2.(×)滑車神経は、眼窩内の外眼筋(上斜筋)を支配する運動神経です。
3.(○)三叉神経は、第1枝の眼神経、第2枝の上顎神経、第3枝の下顎神経の3つに分かれます。このうち、下顎神経が顔面の体性感覚と咀嚼筋を支配しています。
4.(×)動眼神経は、眼窩内の外眼筋(上直筋、内側直筋、下直筋、下斜筋)、上眼瞼挙筋、眼球内の平滑筋(瞳孔括約筋、毛様体筋)を支配する運動神経です。
5.(×)内耳神経は、聴覚と平衡感覚を支配する感覚神経です。
第80問
射出される精子が通るのはどれか。
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1.精嚢
-
2.尿管
-
3.尿道
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4.膀胱
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5.前立腺
- 解答・解説
-
1.(×)精嚢は、精液の成分を分泌しています。
2.(×)尿管は腎盂と膀胱をつなぐ尿の通り道であり、精子が通ることはありません。
3.(○)精子は、精管や精管膨大部に貯蔵され、射精により尿道を通過して放出されます。
4.(×)膀胱は、尿を一時的に貯蔵する器官です。
5.(×)前立腺は、精液の成分を分泌しています。内部で尿道と射精管が合流しますが、前立腺内部を直接精子が通ることはありません。
第81問
心電図を別に示す。心電図の記録速度は25mm/秒である。 心電図波形によって計測した心拍数で正しいのはどれか。
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1.30/分以上、50/分未満
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2.50/分以上、70/分未満
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3.70/分以上、90/分未満
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4.90/分以上、100/分未満
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5.100/分以上、110/分未満
- 解答・解説
-
心電図の記録速度から25mmが1秒であり、RR間隔が24mmであることから、「心拍数=(60秒×25mm)÷RR間隔(mm)」の式に当てはめて「1,500÷24=62.5/分」となります。
よって、1.(×)、2.(○)、3.(×)、4.(×)、5.(×)、となります。
第82問
急性大動脈解離(acute aortic dissection)において緊急手術を行うかどうかの観点で用いる分類はどれか。
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1.NYHA分類
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2.スタンフォード分類
-
3.Killip〈キリップ〉分類
-
4.DeBakey〈ドベーキー〉分類
-
5.Forrester〈フォレスター〉分類
- 解答・解説
-
1.(×)NYHA分類は、心不全の重症度を評価する際に用いられます。
2.(○)スタンフォード分類は、急性大動脈解離の重症度分類です。上行大動脈が解離しているA型と、下行大動脈が解離しているB型に分けられます。A型は死に直結する重篤な状態であり、緊急手術の適応となります。
3.(×)Killip〈キリップ〉分類は、急性心筋梗塞における心機能障害の重症度分類です。
4.(×)DeBakey〈ドベーキー〉分類は、大動脈解離における解離の範囲を示す分類です。手術の緊急度を判断する際は、スタンフォード分類が広く用いられています。
5.(×)Forrester〈フォレスター〉分類は、急性心筋梗塞後における急性心不全の状態を評価するものです。
第83問
タイムアウトによって予防できるのはどれか。
-
1.患者の誤認
-
2.抗癌薬の曝露
-
3.個人情報の漏洩
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4.ベッドからの転落
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5.血液を媒介とする感染
- 解答・解説
-
タイムアウトは、執刀医、麻酔科医、看護師など手術を担当するスタッフ全員が手を止め、患者氏名、手術部位、術式、予想出血量、患者特有の問題点などの情報共有や最終確認を行うことを指します。患者や手術部位の誤認を予防する目的で、手術開始前に実施されます。
よって、1.(○)、2.(×)、3.(×)、4.(×)、5.(×)、となります。
第84問
安静臥床による廃用症候群(disuse syndrome)で生じるのはどれか。
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1.1回換気量の増加
-
2.循環血液量の増加
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3.基礎代謝の上昇
-
4.骨吸収の亢進
-
5.食欲の増進
- 解答・解説
-
1.(×)呼吸筋の筋力低下や胸郭の可動域制限により、1回換気量は減少します。
2.(×)安静臥床による筋収縮作用低下により、循環血液量は減少します。
3.(×)身体機能が低下し、エネルギー消費量が減少するため、基礎代謝も低下します。
4.(○)廃用症候群では、活動性低下により骨が刺激されないため、骨吸収が亢進します。そのため、徐々に骨密度が低下し、続発性骨粗鬆症のリスクが高まります。また、骨成分が尿中に出て尿路結石のリスクが高まります。
5.(×)臥床姿勢での食事や、不動による便秘が要因となり、食欲は低下します。
第85問
Aさんは職場の上司に不満をぶつけたいと考えているが、それができないので、不満をぶつけやすい対象である後輩を叱責している。 Aさんの防衛機制で正しいのはどれか。
-
1.解離
-
2.昇華
-
3.合理化
-
4.置き換え
-
5.反動形成
- 解答・解説
-
1.(×)解離は、受け入れがたい感情を一時的に無意識の領域に追いやることです。
2.(×)昇華は、満たされない欲求や感情を、社会的価値が認められたものに向けることです。
3.(×)合理化は、自分の欲求を都合のいい理屈で正当化することです。
4.(○)置き換えは、満たされない欲求の対象を別のものに置き換えることで不安を軽減する防衛機制です。例えば、親に叱責された不満から自室の壁を殴ってしまう、といったことが該当します。
5.(×)反動形成は、受け入れがたい感情が抑圧され、無意識のうちに本心とは正反対の行動を取ることです。
第86問
ヘモグロビンA1c〈HbA1c〉について正しいのはどれか。2つ選べ。
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1.測定値の上限は10%である。
-
2.赤血球の寿命によって測定値は変動する。
-
3.過去1、2週間の血糖値管理の指標である。
-
4.グリコアルブミンより短期間の血糖値管理の指標である。
-
5.ヘモグロビンにブドウ糖が結合した糖化蛋白質のことである。
- 解答・解説
-
1.(×)HbA1cの基準値は4.6~6.2%ですが、血糖コントロール不良であれば10%を超えることもあります。
2.(○)赤血球の寿命(通常約120日間)により測定値が変動します。失血、溶血、貧血など赤血球の寿命が短縮する病態では、HbA1cが低値となります。
3.(×)過去1~2か月の血糖値管理の指標となります。
4.(×)グリコアルブミンは中期(過去約2週間)、HbA1cは長期(過去1~2か月)の血糖値管理の指標となります。
5.(○)ヘモグロビンに糖(グルコース)が結合した糖化蛋白質(グリコヘモグロビン)が、ヘモグロビン全体に占める割合を示したものがHbA1cです。
第87問
急性胆管炎(acute cholangitis)の代表的な3症状を示すCharcot〈シャルコー〉3徴に含まれるのはどれか。2つ選べ。
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1.黄疸
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2.嘔吐
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3.下痢
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4.発熱
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5.意識障害
- 解答・解説
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急性胆管炎でみられるCharcot3徴は、右上腹部痛(右季肋部痛)、発熱、黄疸です。
1.(○)胆汁がうっ滞することで血中ビリルビン濃度が上昇し、黄疸を呈します。
2.(×)急性胆管炎で吐き気を生じることもありますが、3徴には含まれていません。
3.(×)急性胆管炎では、白い便がみられます。
4.(○)胆汁の細菌感染により、発熱をきたします。
5.(×)急性胆管炎が重症化した場合は、ショックや意識障害をきたすおそれがあります。
第88問
高齢者の総合機能評価CGA簡易版〈CGA7〉で評価するのはどれか。2つ選べ。
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1.BMI
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2.意欲
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3.職業歴
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4.新機器の利用
-
5.日常生活動作〈ADL〉
- 解答・解説
-
高齢者の総合機能評価(CGA)は、医学的評価だけではなく、生活機能、精神機能、環境、人間関係などから高齢者の状態を包括的に評価する方法です。CGAの評価項目は、日常生活動作(ADL)、手段的日常生活動作(IADL)、認知機能、情緒・気分・幸福度、コミュニケーション、社会的環境からなります。CGA7は、高齢者の生活機能を短時間で評価するため、CGAを簡易化したものです。
よって、1.(×)、2.(○)、3.(×)、4.(×)、5.(○)、となります。
第89問
自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder)にみられるのはどれか。2つ選べ。
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1.運動性チックが出現する。
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2.計算の習得が困難である。
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3.不注意による間違いが多い。
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4.習慣へのかたくななこだわりがある。
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5.非言語的コミュニケーションの障害がある。
- 解答・解説
-
1.(×)運動性チックは、不随意な運動や発語の出現であり、チック症やトゥレット症候群などでみられます。
2.(×)特定の学習に対して習得や遂行が困難であるのは、学習障害(LD)です。
3.(×)ケアレスミスが多くみられるのは、注意欠陥・多動性障害(ADHD)です。
4.(○)こだわり行動は自閉症スペクトラム障害の大きな特徴であり、自分のやり方やペースへの固執、儀式的行動様式などが強く現れます。
5.(○)相手の心情や場の雰囲気を察知することが苦手であり、表情、視線、身振り、姿勢、抑揚、距離などの非言語的コミュニケーションに異常がみられます。
第90問
100mg/5mLと表記された注射薬を75mg与薬するのに必要な薬液量を求めよ。 ただし、小数点以下第2位を四捨五入すること。
-
計算問題です
- 解答・解説
-
「100mg/5mL」という表記は、5mLの注射薬の中に100mgの薬剤が含まれていることを意味します。これを75mg与薬するためには「100mg:5mL=75mg:xmL」を計算し、「x=3.75mL」が必要です。小数点第2位を四捨五入すると3.8mLになります。
-
-
第91問
Aさん(60歳、男性、会社員)は息子2人が独立して遠方で暮らしており、2年前に妻と死別して以来、1人暮らし。直腸癌(rectal cancer)と診断され、腹会陰式直腸切断術、人工肛門造設術を行うと外来で説明を受けた。Aさんは看護師に対して「人工肛門を作ると聞いています。便が出てくる場所がどこなのかよくわからなくてイメージできない」と話した。 人体の前面と背面を図に示す。 Aさんの人工肛門が造設される位置はどれか。
-
1.(1)
-
2.(2)
-
3.(3)
-
4.(4)
- 解答・解説
-
腹会陰式直腸切断術は、直腸癌が肛門に近い位置に生じた場合の術式で、腹部側と会陰側から直腸を切断します。肛門括約筋および肛門が切除されるため、永久的人工肛門を造設します。
1.(×)上腹部に造設された横行結腸ストーマの位置です。横行結腸から下行結腸を切除した場合に選択されます。
2.(×)右下腹部に造設された回腸ストーマの位置です。
3.(○)腹会陰式直腸切断術では直腸と肛門管が切除されるため、残存するS状結腸を用いてストーマが造設されます。
4.(×)患者本人が目視できず、セルフケアも難しいことから、基本的に背側への造設は行われません。
第92問
Aさん(60歳、男性、会社員)は息子2人が独立して遠方で暮らしており、2年前に妻と死別して以来、1人暮らし。直腸癌(rectal cancer)と診断され、腹会陰式直腸切断術、人工肛門造設術を行うと外来で説明を受けた。Aさんは看護師に対して「人工肛門を作ると聞いています。便が出てくる場所がどこなのかよくわからなくてイメージできない」と話した。 Aさんの手術は予定通り終了した。 術後1日、会陰部から挿入されたドレーンからは、淡血性の排液が10mL/時で流出していた。バイタルサインが安定していることを確認した後、Fowler〈ファウラー〉位にして15分が経過したところで、Aさんからナースコールがあった。看護師が訪室すると「おしりが濡れているような気がする」と言う。確認すると、会陰部のガーゼに淡血性の滲出液を認めた。 Aさんへの対応で最も優先度が高いのはどれか。
-
1.Fowler〈ファウラー〉位から仰臥位にする。
-
2.ドレーンの屈曲を確認する。
-
3.排液バッグを交換する。
-
4.会陰部を消毒する。
- 解答・解説
-
問題文にはドレーンが開放式か閉鎖式か記述がないものの、一般的に使用例が多い閉鎖式であるとの前提で解説します。
1.(×)仰臥位に戻すことで解決する状態なのかを確認するためにも、先に漏れの原因を究明する必要があります。
2.(○)ファウラー位にした際にドレーンが屈曲して閉塞をきたし、刺入部などから排液が漏れ出した可能性が高いため、屈曲の有無を確認することが最優先となります。
3.(×)排液バッグを交換するだけでは、状況を改善できません。
4.(×)漏れの問題の解決後にガーゼの交換を行いますが、術後1日であり、消毒は創部の治癒を阻害する可能性があるため避けるべきです。
第93問
Aさん(60歳、男性、会社員)は息子2人が独立して遠方で暮らしており、2年前に妻と死別して以来、1人暮らし。直腸癌(rectal cancer)と診断され、腹会陰式直腸切断術、人工肛門造設術を行うと外来で説明を受けた。Aさんは看護師に対して「人工肛門を作ると聞いています。便が出てくる場所がどこなのかよくわからなくてイメージできない」と話した。 術後10日、Aさんは退院日が決まり、「落ち着いたら仕事に復帰します。1人暮らしなので、自分で人工肛門を管理しないといけないですね」と述べた。 Aさんの退院に際し、人工肛門の管理に関する看護師の指導で正しいのはどれか。
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1.「面板は1日2回交換してください」
-
2.「装具の交換は滅菌手袋を使用してください」
-
3.「面板除去部の皮膚はお湯で洗浄してください」
-
4.「定期的に人工肛門の大きさを確認してください」
- 解答・解説
-
1.(×)面板を交換する目安は、面板の皮膚保護剤が5~8mm程度溶解したタイミングです。1日2回交換する必要はありません。
2.(×)個人防護具として手袋を使用するときも、排泄器官である人工肛門を滅菌管理する必要はありません。
3.(×)面板除去部の皮膚には粘着剤が付着するため、石けんと微温湯を用いて愛護的に洗浄します。
4.(○)数週間経過するとストーマ周囲の浮腫が徐々に消え、人工肛門の大きさに変化がみられます。逆に縫合部離開などの異常が起こる可能性もあります。これらの変化に応じて面板のサイズを調整する必要があるため、定期的に確認するよう指導することが適切です。
第94問
Aさん(50歳、男性、会社員)は妻と高校生の息子との3人暮らし。仕事を生きがいに働き続けていた。慢性腎不全(chronic renal failure)のため透析治療が必要になったが、本人の希望で連続携行式腹膜灌流法〈CAPD〉を導入することになり入院した。Aさんはこれからの生活がどのようになるのかを看護師に質問した。 Aさんに対する説明として正しいのはどれか。
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1.「食事療法が必要です」
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2.「通院は週に2、3回必要です」
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3.「宿泊を伴う旅行はできません」
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4.「カテーテル挿入術後の翌日から入浴できます」
- 解答・解説
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1.(○)腹膜透析の場合は、腹膜吸収エネルギーを差し引いた摂取エネルギーとなるよう管理します。また、血液透析とは異なりカリウム制限の必要はありませんが、蛋白質やアミノ酸の残腎有無を考慮した食事指導を行う必要があります。
2.(×)通院が週2~3回必要になるのは、医療機関が透析場所となる血液透析の場合であり、腹膜透析であれば通院は月1~2回となります。
3.(×)透析液などを携行すれば、宿泊を伴う旅行も可能です。ただし、あらかじめ緊急時の対応を検討しておく必要があります。
4.(×)カテーテル挿入術後の翌日は、挿入部の閉鎖が不十分であるため、入浴は禁止となります。
第95問
Aさん(50歳、男性、会社員)は妻と高校生の息子との3人暮らし。仕事を生きがいに働き続けていた。慢性腎不全(chronic renal failure)のため透析治療が必要になったが、本人の希望で連続携行式腹膜灌流法〈CAPD〉を導入することになり入院した。Aさんはこれからの生活がどのようになるのかを看護師に質問した。 Aさんはできるだけ早い職場復帰を望んでおり、入院中はCAPDの操作に熱心に取り組んでいた。退院後、CAPDを1日4回(0時、6時、12時、18時)行うことになった。 Aさんが会社の昼休みにCAPDを行うために必要な設備はどれか。2つ選べ。
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1.透析液を保管する冷蔵庫
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2.透析液を温める電子レンジ
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3.透析液の交換時に使用する個室
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4.CAPDの物品を保管する専用棚
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5.透析液の貯留中に使用するベッド
- 解答・解説
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1.(×)透析液は常温保存できます。
2.(×)透析液を電子レンジで温める必要はありません。
3.(○)透析液の交換は、Aさんが落ち着ける清潔な場所で行います。腹部にカテーテルが入っているため、プライバシーの観点からも個室を確保することが望ましいでしょう。
4.(○)透析液は常温保存できますが、直射日光が当たらず、温度や湿度の変化が少ない専用の場所に保管することが望ましいとされています。
5.(×)透析液の貯留中に仰臥位とする必要はないため、ベッドは不要です。
第96問
Aさん(50歳、男性、会社員)は妻と高校生の息子との3人暮らし。仕事を生きがいに働き続けていた。慢性腎不全(chronic renal failure)のため透析治療が必要になったが、本人の希望で連続携行式腹膜灌流法〈CAPD〉を導入することになり入院した。Aさんはこれからの生活がどのようになるのかを看護師に質問した。 Aさんは「主治医からCAPDの合併症に腹膜炎(peritonitis)があると聞きました。腹膜炎に早く気付くにはどうすればよいですか」と看護師に質問した。 Aさんに指導する観察項目はどれか。2つ選べ。
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1.腹痛
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2.体重の増加
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3.腹部の張り
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4.下肢のむくみ
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5.透析液の排液のにごり
- 解答・解説
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CAPDではカテーテルが体内に直接つながっているため、清潔操作を怠ると腹膜炎を招きます。
1.(○)腹膜炎は、腹腔内に細菌や毒素が広がって腹膜に炎症をきたした状態であり、腹痛、発熱、悪心などが出現します。
2.(×)体重の増加は排液の不良で生じるため、透析が非効率であることを示しています。
3.(×)腹膜透析では、透析液を貯留するため腹部に一定の張りが生じます。
4.(×)下肢のむくみは、除水不良などの場合に生じます。
5.(○)腹膜炎を合併すると、透析液の排液に混濁(にごり)がみられます。
第97問
Aさん(70歳、女性)は1人暮らし。夫とは1年前に死別した。近くの診療所で高血圧症(hypertension)と心不全(heart failure)と診断され、内服治療をしていた。月1回は診療所で内服薬の処方と食事指導や体重測定などの生活指導を受けていたが、時々薬を飲んだことを忘れてしまうことがあった。日常生活は自立しており、認知機能は問題ない。週2日、事務職のパートとして働いており、電車を使って通勤していた。息子(42歳)と娘(37歳)は仕事のため遠方に住んでいる。1か月前からAさんは家事や外出するときに軽い息切れを感じるようになり、2、3日前からは咳と痰が出るようになった。両足のむくみが出てきたため、診療所から自宅近くの病院を紹介され外来受診した。 身体所見:意識は清明。身長159cm、体重61.3kg。 体温37.1℃、呼吸数21/分、脈拍95/分、不整、血圧164/96mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉92%(room air)。 両下肢に軽度の浮腫を認めた。 外来看護師がAさんに対して優先して確認するのはどれか。
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1.通院の方法
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2.最近の体重の増減
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3.パートの仕事内容
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4.自宅での1日の過ごし方
- 解答・解説
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1.(×)自立した日常生活を送っており、認知機能にも問題はないため、通院の方法を確認する優先度は低いでしょう。
2.(○)Aさんは高血圧症と心不全の内服治療中であり、労作時息切れや両下肢浮腫がみられることなどから、心不全が増悪して全身にうっ血が生じていると考えられます。そのため、体重増加(1週間で2kg以上)の有無を確認することが適切です。
3.(×)週2回、パートの事務職であることは既知の情報であり、これ以上詳細な内容を知ることが有益とは考えにくいでしょう。
4.(×)自宅での様子も確認する必要はありますが、最優先される情報ではありません。
第98問
Aさん(70歳、女性)は1人暮らし。夫とは1年前に死別した。近くの診療所で高血圧症(hypertension)と心不全(heart failure)と診断され、内服治療をしていた。月1回は診療所で内服薬の処方と食事指導や体重測定などの生活指導を受けていたが、時々薬を飲んだことを忘れてしまうことがあった。日常生活は自立しており、認知機能は問題ない。週2日、事務職のパートとして働いており、電車を使って通勤していた。息子(42歳)と娘(37歳)は仕事のため遠方に住んでいる。1か月前からAさんは家事や外出するときに軽い息切れを感じるようになり、2、3日前からは咳と痰が出るようになった。両足のむくみが出てきたため、診療所から自宅近くの病院を紹介され外来受診した。 身体所見:意識は清明。身長159cm、体重61.3kg。 体温37.1℃、呼吸数21/分、脈拍95/分、不整、血圧164/96mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉92%(room air)。 両下肢に軽度の浮腫を認めた。 診察の結果、Aさんは心不全の悪化を認めたため入院することになり、個室を希望した。入院後、酸素マスクによる酸素療法や利尿薬による薬物療法、塩分制限などの食事療法が開始された。入院3日、夜勤の看護師から日勤の看護師への朝の申し送りで、昨晩のAさんは夜間全く眠っていないこと、「ここはどこですか」と繰り返し尋ねてきたこと、娘が学校から帰ってくるのを待っていると言って病室の入り口を気にしていたことが報告された。日勤の看護師は、Aさんの睡眠状況を改善する必要があると考え、Aさんへの対応について検討した。 看護師のAさんへの対応で適切なのはどれか。
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1.終日、病室を明るくする。
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2.日中眠っていたら覚醒を促す。
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3.睡眠導入薬の使用を医師に相談する。
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4.夜間覚醒している場合は、夜は眠るよう説得する。
- 解答・解説
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Aさんは、入院による環境変化などにより、せん妄を発症したと考えられます。せん妄では、見当識障害や幻覚・妄想のほか、睡眠障害がみられます。
1.(×)概日リズムを整えるためにも、夜間は照明を落として部屋を暗くします。
2.(○)日中に眠ってしまうと、夜間の覚醒が増長されて悪循環となるため、日中の覚醒を促すことが適切です。
3.(×)高齢者に対する睡眠導入薬の使用は、せん妄やふらつきのリスクとなるため、推奨されません。
4.(×)せん妄の状態にあるAさんに対して眠るよう説得しても、理解は困難であると考えられます。
第99問
Aさん(70歳、女性)は1人暮らし。夫とは1年前に死別した。近くの診療所で高血圧症(hypertension)と心不全(heart failure)と診断され、内服治療をしていた。月1回は診療所で内服薬の処方と食事指導や体重測定などの生活指導を受けていたが、時々薬を飲んだことを忘れてしまうことがあった。日常生活は自立しており、認知機能は問題ない。週2日、事務職のパートとして働いており、電車を使って通勤していた。息子(42歳)と娘(37歳)は仕事のため遠方に住んでいる。1か月前からAさんは家事や外出するときに軽い息切れを感じるようになり、2、3日前からは咳と痰が出るようになった。両足のむくみが出てきたため、診療所から自宅近くの病院を紹介され外来受診した。 身体所見:意識は清明。身長159cm、体重61.3kg。 体温37.1℃、呼吸数21/分、脈拍95/分、不整、血圧164/96mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉92%(room air)。 両下肢に軽度の浮腫を認めた。 入院後10日。入院治療により全身状態は改善し、夜間の睡眠もとれるようになったため、Aさんは退院することになった。Aさんは「入院していて体力が落ちてしまい、動くと疲れてしまう」と言っている。また、看護師に「医師から退院したら元の仕事はしてよいといわれました。これまでの生活を続けたいと思っています。また入院するのは嫌なので、今後の生活で気をつけることはありますか」と尋ねてきた。 このときの看護師の対応で適切なのはどれか。
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1.「薬の管理はお薬カレンダーを使いましょう」
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2.「通勤するときに駅の階段を使いましょう」
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3.「水分は1日2,000mL摂りましょう」
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4.「塩分を1日9g摂りましょう」
- 解答・解説
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1.(○)Aさんは1人暮らしであり、今までも時々薬を飲んだことを忘れてしまうことがあったため、お薬カレンダーを用いて自分で服薬管理ができるよう支援することが適切です。
2.(×)過度な運動で心負荷をかけると心不全の増悪リスクになるため、医師の指導の下で適度な運動を勧めます。
3.(×)心不全患者に対して過度な水分制限の必要はありませんが、高齢者の飲水による水分摂取量の目安は1,000~1,200mL/日程度であり、2,000mL/日では多すぎます。
4.(×)高血圧の食事療法としては、食塩6g/日未満が推奨されています。塩分の過剰摂取はうっ血を引き起こすため、減塩を心がけるよう指導します。
第100問
Aちゃん(生後24日、女児)は両親と3人暮らし。母親が母子健康手帳の便色カードを見て、Aちゃんの便色が気になったため、Aちゃんを連れて近所の小児科医院を受診した。Aちゃんは在胎39週、出生体重3,100g、出生時に異常はない。 現在、混合栄養で体重は3,700gである。体温37.2℃、呼吸数36/分、心拍数108/分、整、血圧78/44mmHg。眼球結膜に黄染を認める。 血液検査結果:Hb 12.6g/dL、白血球7,800/μL、血小板21万/μL、プロトロンビン時間〈PT〉88%、総ビリルビン11.3mg/dL、直接ビリルビン9.5mg/dL、AST 96U/L、ALT 126U/L。 紹介先の病院で腹部超音波検査を実施した結果、Aちゃんは胆道閉鎖症(biliary atresia)の疑いがあり入院した。 Aちゃんの便として考えられるのはどれか。
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1.褐色便
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2.灰白色便
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3.タール便
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4.イチゴゼリー様便
- 解答・解説
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胆道閉鎖症は、出生前または出生直後に、胆汁の通り道である胆管が閉塞し、肝から腸へ胆汁を排出できずに閉塞性黄疸をきたす原因不明の難治性疾患です。男児よりも女児に多い特徴があります。
1.(×)正常な便は、胆汁色素であるステルコビリンにより茶褐色となります。
2.(○)胆道閉鎖症では胆汁が胆管へ流出しないため、便が褐色を帯びず白っぽく(淡黄色~灰白色便)となります。
3.(×)タール便は、上部消化管(横行結腸より口側)の出血でみられます。
4.(×)イチゴゼリー様便は、腸重積などでみられます。
第101問
Aちゃん(生後24日、女児)は両親と3人暮らし。母親が母子健康手帳の便色カードを見て、Aちゃんの便色が気になったため、Aちゃんを連れて近所の小児科医院を受診した。Aちゃんは在胎39週、出生体重3,100g、出生時に異常はない。 現在、混合栄養で体重は3,700gである。体温37.2℃、呼吸数36/分、心拍数108/分、整、血圧78/44mmHg。眼球結膜に黄染を認める。 血液検査結果:Hb 12.6g/dL、白血球7,800/μL、血小板21万/μL、プロトロンビン時間〈PT〉88%、総ビリルビン11.3mg/dL、直接ビリルビン9.5mg/dL、AST 96U/L、ALT 126U/L。 紹介先の病院で腹部超音波検査を実施した結果、Aちゃんは胆道閉鎖症(biliary atresia)の疑いがあり入院した。 Aちゃんは入院7日に術中胆道造影検査で胆道閉鎖症と確定診断された。手術は無事に終了した。術後は絶食となり、腹腔ドレーンが挿入され、持続的点滴静脈内注射が行われている。母親は疾患や治療について理解している。術後3日、付き添っていた母親は看護師に「Aはおなかが空いて泣き止まないし、私はAを抱っこもできず、何もしてあげられません。つらいです」と涙を浮かべて話した。 看護師の母親への対応で、最も適切なのはどれか。
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1.話しかけやおしゃぶりの活用など母親ができることを伝える。
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2.早期発見だったのでAちゃんは早く退院できると説明する。
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3.心療内科の受診を勧める。
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4.患者家族会を紹介する。
- 解答・解説
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Aちゃんは術後3日の急性期であり、疼痛や絶食で苦痛を感じていると考えられます。そうしたわが子に向き合う母親への声かけには細心の配慮が求められます。
1.(○)Aちゃんの母親は、親として何もできていないと考えてつらさを感じています。子どもと関わりを持てるようなケアを具体的に提案することは、つらい気持ちを和らげる適切な対応です。
2.(×)母親は、Aちゃんの疾患や治療について理解できずにつらさを感じているわけではありません。また、看護師独自の見通しで退院の時期について言及することは不適切です。
3.(×)現時点での母親の感情は、病床にあるわが子に対する正常な反応であり、心療内科を受診する必要はありません。
4.(×)現段階で患者家族会を紹介することは、時期尚早であると考えられます。
第102問
Aちゃん(生後24日、女児)は両親と3人暮らし。母親が母子健康手帳の便色カードを見て、Aちゃんの便色が気になったため、Aちゃんを連れて近所の小児科医院を受診した。Aちゃんは在胎39週、出生体重3,100g、出生時に異常はない。 現在、混合栄養で体重は3,700gである。体温37.2℃、呼吸数36/分、心拍数108/分、整、血圧78/44mmHg。眼球結膜に黄染を認める。 血液検査結果:Hb 12.6g/dL、白血球7,800/μL、血小板21万/μL、プロトロンビン時間〈PT〉88%、総ビリルビン11.3mg/dL、直接ビリルビン9.5mg/dL、AST 96U/L、ALT 126U/L。 紹介先の病院で腹部超音波検査を実施した結果、Aちゃんは胆道閉鎖症(biliary atresia)の疑いがあり入院した。 術後5日、Aちゃんは経口摂取が可能になり順調に経過している。医師から母親に、胆汁の排泄を促すために利胆薬の内服が重要であると説明があり、散剤が処方された。母親から看護師に「赤ちゃんに粉の薬をどうやって飲ませたらよいのでしょうか」と質問があった。看護師は散剤を( )に混ぜて飲ませることを説明した。 ( )に入るのはどれか。
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1.果汁
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2.白湯
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3.人工乳
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4.はちみつ
- 解答・解説
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1.(×)Aちゃんは生後1か月未満であり、果汁を与えること自体が適切ではありません。また、グレープフルーツジュースなど一部の果汁は、薬効に影響を及ぼすことがあります。
2.(○)一度に飲み切れる少量の白湯に混ぜて飲ませることが適切です。
3.(×)人工乳に薬を混ぜると、味が変わってミルク嫌いになり、人工乳を飲まなくなる可能性があります。
4.(×)はちみつはボツリヌス菌を含むことがあるため、消化管の発達が未熟な生後1年未満の乳児に与えると、ボツリヌス症を発症するおそれがあります。ボツリヌス毒素は神経麻痺を引き起こし、呼吸筋が麻痺して命に関わることもあります。
第103問
Aさん(30歳、初産婦)はX年2月5日に妊婦健康診査のために来院した。X年2月のカレンダーにAさんの受診日と分娩予定日を示す。 看護師は、医師からAさんの母子健康手帳に受診時の妊娠週数と日数を記入するよう依頼された。 Aさんの受診時の妊娠週数および日数で正しいのはどれか。
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1.妊娠35週5日
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2.妊娠35週6日
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3.妊娠36週5日
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4.妊娠36週6日
- 解答・解説
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カレンダーより、2月28日の土曜日が分娩予定日であり、この日が妊娠40週0日です。この日から逆算すると、4週前の1月31日土曜日が妊娠36週0日であり、受診日の2月5日木曜日は、妊娠36週5日となります。
よって、1.(×)、2.(×)、3.(○)、4.(×)、となります。
第104問
Aさん(30歳、初産婦)はX年2月5日に妊婦健康診査のために来院した。X年2月のカレンダーにAさんの受診日と分娩予定日を示す。 (画像別添:カレンダー) AさんにLeopold〈レオポルド〉触診法で触診を行ったところ、第2胎向で、子宮底付近にやや柔らかい球状の塊を、恥骨結合側に硬い球状のものを触れた。 腹部前面を図に示す。 (画像別添:腹部前面) Aさんの胎児心音聴取部位で適切なのはどれか。
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1.(1)
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2.(2)
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3.(3)
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4.(4)
- 解答・解説
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Leopold〈レオポルド〉触診法は、4段階に分けて母体の腹壁から胎位、胎向、胎勢を確認する方法です。
1.(×)第1骨盤位で胎児心音が聴取できる部位です。
2.(×)この部位で胎児心音が聴取されるのは、第1頭位の場合です。
3.(○)第2胎向であるため、胎児の背中は母親の右手側にあり、恥骨結合側に硬い球状のものを触れていことから頭位(第2頭位)であると判断できます。この場合、胎児心音は胎児の背中で聴取されることから、右上前腸骨棘と臍を結ぶ右臍棘線の中央が適切な胎児心音聴取部位となります。
4.(×)第2骨盤位で胎児心音が聴取できる部位です。
第105問
Aさん(30歳、初産婦)はX年2月5日に妊婦健康診査のために来院した。X年2月のカレンダーにAさんの受診日と分娩予定日を示す。 Aさんは「自分の子どもが生まれて、どんなふうにあやすかな、とか、オムツを替えるかなと自分が子育てをしている場面を思い浮かべます」と笑顔で話している。看護師はAさんの様子をルービン,R.(Rubin,R.)が示した母親役割獲得過程に当てはめてどの段階にあるかをアセスメントした。 Aさんのアセスメントで適切なのはどれか。
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1.空想
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2.模倣
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3.取り込み
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4.ロールプレイ
- 解答・解説
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ルービンは、「模倣」「ロールプレイ」「空想」「取り込み-投影-拒絶」「悲嘆作業」という5つの認識的操作を行いながら母親役割の獲得が進むと主張しました。
1.(○)自分の子どもや子育ての状況などを思い描いており、「空想」の段階であると考えられます。
2.(×)「模倣」は、先輩母親の行動を見聞きして、母親役割のモデルとすることです。
3.(×)「取り込み-投影-拒絶」は、空想した態度や行動を母親像として自身に投影し、それを受け入れるか拒絶するかを決定する作業です。
4.(×)「ロールプレイ」は、子どもを対象として、母親役割を演じることです。
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第106問
Aさん(34歳、初産婦)は順調な妊娠経過であった。妊娠40週5日の午前8時、10分毎の規則的な子宮収縮を主訴に来院し、医師の診察の結果、入院となった。入院時の胎児心拍数基線は130bpm、胎児の推定体重は3,300gであった。 入院時のAさんと胎児の状態で正しいのはどれか。
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1.過期産である。
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2.高年妊婦である。
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3.胎児心拍数基線は正常である。
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4.低出生体重児となる可能性が高い。
- 解答・解説
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1.(×)妊娠40週5日は、正期産(妊娠37週0日~41週6日)に該当します。
2.(×)高齢妊婦とは、35歳以上で出産を迎える妊婦を指します。
3.(○)胎児心拍数基線は130bpmであり、基準範囲内(110~160bpm)です。
4.(×)低出生体重児となるのは、出生体重が2,500kg未満である場合です。
第107問
Aさん(34歳、初産婦)は順調な妊娠経過であった。妊娠40週5日の午前8時、10分毎の規則的な子宮収縮を主訴に来院し、医師の診察の結果、入院となった。入院時の胎児心拍数基線は130bpm、胎児の推定体重は3,300gであった。 午後0時、助産師が内診したところ、子宮口開大4cmであった。Aさんは陣痛発作時に腰痛を強く訴えている。Aさんの夫(37歳)は、夫婦で出産体験を共有したいと両親学級を受講しており、入院時からAさんに付き添っている。夫はAさんの陣痛発作時、心配そうにAさんの様子を見つめているが、陣痛間欠時にはうとうとしている。訪室した看護師に、夫から「妻が痛がっているのですが、どうすればよいでしょう」と質問があった。胎児心拍数基線は140bpmであった。 このときの看護師の夫への対応で最も適切なのはどれか。
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1.別室での休憩を促す。
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2.分娩経過について説明する。
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3.Aさんと病棟内を歩行するように促す。
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4.産痛を緩和するためのマッサージの実施を促す。
- 解答・解説
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1.(×)夫婦で出産体験を共有したい夫に対して別室での休憩を促すことは、本人の意向に反すると考えられます。
2.(×)分娩経過についての説明も大切ですが、夫が妻に対して今できる支援を伝えることが望ましいでしょう。
3.(×)Aさんは腰痛を強く訴えている上、「陣痛間欠時にはうとうとしている」というように疲れがたまっています。散歩よりも休息が必要です。
4.(○)産痛を緩和するための適切なマッサージ方法を伝えた上で実施を促し、妻をサポートするよう伝えることが最も適切です。これも夫にとって立派な出産体験の共有となるでしょう。
第108問
Aさん(34歳、初産婦)は順調な妊娠経過であった。妊娠40週5日の午前8時、10分毎の規則的な子宮収縮を主訴に来院し、医師の診察の結果、入院となった。入院時の胎児心拍数基線は130bpm、胎児の推定体重は3,300gであった。 Aさんの分娩は順調に進行した。午後5時に破水し、午後6時には子宮口開大8cmとなった。「便が出そうです。もう、これ以上頑張れない」と陣痛発作時には全身に力が入っている。 このときの看護師の声かけで正しいのはどれか。
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1.「リラックスするためにお風呂に入りましょう」
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2.「赤ちゃんのために我慢しましょう」
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3.「トイレに行って排便しましょう」
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4.「息を吐いて力を抜きましょう」
- 解答・解説
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Aさんは分娩第1期の極期にあり、分娩のプロセスにおいて最も苦しい段階を迎えているといえます。陣痛が増強し、努責が生じ、呼吸が浅くなりがちです。
1.(×)破水後で感染リスクがあることや、児頭が下降していることから、入浴を促すのは不適切です。
2.(×)頑張りを認めることが大切であり、我慢することのみを強制するのは不適切な対応です。
3.(×)胎児が下降したことによる努責(いきみ)感を便意として感じている状態だと考えられます。今後分娩が急速に進む可能性が高いため、トイレに移動しての排便には危険が伴います。
4.(○)まだ子宮口全開ではないため、努責を逃す必要があります。全身の力を抜いてリラックスできるように、呼吸法などを誘導する声かけが適切です。
第109問
Aさん(68歳、男性、自営業)は、妻(73歳)と2人暮らし。Aさんの就寝時刻は21時で、入眠後90分以上が経過した睡眠中に、大声で叫び、腕や足を振り回し暴れる行動が繰り返しみられたが、昼寝では夜間のような行動はみられない。日中、台所で子どもが遊んでいると言い、妻が台所を確認しても誰もいないことが何度かあった。心配になった妻がAさんとともに病院を受診し、Lewy〈レビー〉小体型認知症(dementia with Lewy bodies)と診断された。 Aさんに出現している睡眠障害はどれか。
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1.ナルコレプシー(narcolepsy)
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2.レム睡眠行動障害(REM sleep behavior disorder)
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3.睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome)
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4.睡眠・覚醒スケジュール障害(sleep-wake schedule disorder)
- 解答・解説
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1.(×)ナルコレプシーは、日中の強い眠気、睡眠麻痺、情動脱力発作、入眠時幻覚などの症状を伴います。
2.(○)レム睡眠行動障害は、レビー小体型認知症で特徴的にみられます。レム睡眠期に本来起こるべき筋緊張の脱失が生じないため、レム睡眠中にも身体活動が可能となり、夢の精神活動に伴って複雑な運動が現実に行われ、周囲の人に異常行動として認識されます。
3.(×)睡眠時無呼吸症候群では、無呼吸状態により睡眠が妨げられるため、昼間の眠気、倦怠感、頭痛などが生じます。
4.(×)睡眠・覚醒スケジュール障害(概日リズム障害)は、時差やシフト勤務などにより体内リズムが乱れた状態です。
第110問
Aさん(68歳、男性、自営業)は、妻(73歳)と2人暮らし。Aさんの就寝時刻は21時で、入眠後90分以上が経過した睡眠中に、大声で叫び、腕や足を振り回し暴れる行動が繰り返しみられたが、昼寝では夜間のような行動はみられない。日中、台所で子どもが遊んでいると言い、妻が台所を確認しても誰もいないことが何度かあった。心配になった妻がAさんとともに病院を受診し、Lewy〈レビー〉小体型認知症(dementia with Lewy bodies)と診断された。 Aさんは定期的に精神科外来を受診することになった。受診6か月後、Aさんは足の筋肉がこわばり、動きが鈍くなった。また、幻視を訴える頻度が増え、感情のコントロールができず、妻に暴言や暴力を振るうことが多くなったため、精神科病院に入院となった。入院2日、Aさんは歩行時に床に子どもが寝転んでいると訴えて、子どもをよける動作で転びそうになった。また、突然、興奮して大声で怒り出すため、同室患者が苦情を訴えた。 Aさんへの看護師の対応で適切なのはどれか。
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1.Aさんに別の病室へ移動することを提案する。
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2.歩行時は看護師と一緒に歩くように声をかける。
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3.怒りをコントロールできる方法を見つけるように伝える。
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4.床に子どもがいるように見えるのは幻視であることを説明する。
- 解答・解説
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1.(×)レビー小体型認知症では、パーキンソン症状、自律神経症状、幻視などにより転倒リスクが高まります。別の病室に移動しても転倒リスクは低下しないため、適切な対応とはいえません。
2.(○)転倒を予防する目的で、看護師と一緒に歩くようにすることは適切な対応です。気分が和らぎ、幻視や暴言・暴力の頻度が下がる可能性もあります。
3.(×)認知症であるAさん自身に感情のコントロールを強いるのは無理があります。
4.(×)幻視であることを説明しても、Aさんには現実として見えているのであり、混乱を招くばかりです。否定せず肯定的に対応する姿勢が求められます。
第111問
Aさん(68歳、男性、自営業)は、妻(73歳)と2人暮らし。Aさんの就寝時刻は21時で、入眠後90分以上が経過した睡眠中に、大声で叫び、腕や足を振り回し暴れる行動が繰り返しみられたが、昼寝では夜間のような行動はみられない。日中、台所で子どもが遊んでいると言い、妻が台所を確認しても誰もいないことが何度かあった。心配になった妻がAさんとともに病院を受診し、Lewy〈レビー〉小体型認知症(dementia with Lewy bodies)と診断された。 Aさんの入院中に妻は自営業の仕事を減らし、自宅でAさんを介護する準備を整えた。Aさんが退院し、3か月が経過したころ、Aさんの妻が3週間程度の予定で入院して手術をすることになった。Aさんは杖を使用し散歩ができるが、入浴や食事については妻が介護を行っていた。 妻の入院中にAさんに必要なサービスはどれか。
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1.短期入所〈ショートステイ〉
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2.精神科病院への入院
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3.重度訪問介護
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4.同行援護
- 解答・解説
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1.(○)ショートステイは夜間も利用可能で、食事や介護が提供されます。介護者が介護できない状態のときに入所可能であり、妻が入院予定であるAさんの利用に適したサービスだといえます。
2.(×)Aさんは現在、妻の介護で在宅療養が可能な状態であり、治療を必要とはしていないことから、精神科病院への入院は必要ありません。
3.(×)重度訪問介護は、常時介護を必要とする人が対象となります。Aさんは杖があれば自力歩行可能であり、対象とはなりません。
4.(×)同行援護は、視覚障害者が利用できる外出支援のサービスです。
第112問
Aさん(23歳、女性)は大学を卒業後、会社に就職して1人暮らしを始めた。入社後に「会社の制服が似合うようになりたい」とダイエットを始め、次第にるいそうが目立つようになった。「太るのが怖い」と言って食事を拒否するようになり、体重は1年間で10kg減少した。しかし、本人は「まだ太っているから、痩せないといけない」と話していた。久しぶりにAさんと会った母親が、過度のるいそうを心配して、内科受診を勧めた。内科ではるいそう以外に大きな異常を認めず、精神科受診を勧められた。精神科では神経性無食欲症(anorexia nervosa)と診断され、外来通院を開始した。その後、低血糖によるふらつきのため職場で頻回に転倒するようになった。それでも食事を十分に摂らないため、精神科病棟へ入院した。入院時、身長166cm、体重36kgであった。入院後、食事のほかに点滴による栄養補給が始まった。 治療開始早期に看護師が最も注意すべき観察項目はどれか。
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1.脱毛
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2.浮腫
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3.抑うつ
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4.嚥下障害
- 解答・解説
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1.(×)摂食障害では、栄養失調の段階でも、少し回復して栄養摂取が増加した段階でも、脱毛がみられます。ただし、最も注意すべき観察項目とはいえません。
2.(○)高度栄養不良の患者に急激な栄養補給を開始すると、早期に浮腫が生じる可能性があります。これは、急速な変化に身体が適応できず、水や電解質の分布異常をきたした状態であり、再栄養症候群(リフィーディング症候群)と呼ばれます。
3.(×)抑うつ傾向は、長期的な観察が必要となる項目です。
4.(×)神経性無食欲症では、器質的・機能的な原因が存在しないにもかかわらず、心理的原因による摂食・嚥下障害が生じます。ただし、治療開始早期にはみられません。
第113問
Aさん(23歳、女性)は大学を卒業後、会社に就職して1人暮らしを始めた。入社後に「会社の制服が似合うようになりたい」とダイエットを始め、次第にるいそうが目立つようになった。「太るのが怖い」と言って食事を拒否するようになり、体重は1年間で10kg減少した。しかし、本人は「まだ太っているから、痩せないといけない」と話していた。久しぶりにAさんと会った母親が、過度のるいそうを心配して、内科受診を勧めた。内科ではるいそう以外に大きな異常を認めず、精神科受診を勧められた。精神科では神経性無食欲症(anorexia nervosa)と診断され、外来通院を開始した。その後、低血糖によるふらつきのため職場で頻回に転倒するようになった。それでも食事を十分に摂らないため、精神科病棟へ入院した。入院時、身長166cm、体重36kgであった。入院後、食事のほかに点滴による栄養補給が始まった。 入院後2週が経過した。食事のときにAさんは食べ物を細かく刻み、1時間以上時間をかけるが、摂取量は全体の25%程度である。時間があるとベッド上でいつもストレッチを行っている。Aさんと話し合ったところ「私はこの病棟で太っているほうだから少しでも痩せなきゃ」と話した。 看護師の関わりとして適切なのはどれか。
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1.体重測定の回数を増やす。
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2.鏡でAさんの全身を映して見せる。
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3.痩せたいと思う気持ちについて話し合う。
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4.Aさんは他の患者よりも痩せていると伝える。
- 解答・解説
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1.(×)摂食障害の患者は、体重という数字に過剰な反応を示し、自ら何度も体重測定する傾向があります。むしろ、測定回数を減らすように関わることが必要です。
2.(×)体型に対する現実認識に歪みがあるため、どんなにやせていようとも、本人には太って見えてしまいます。
3.(○)神経性無食欲症の患者は病識に乏しく、多くはボディイメージの障害を伴っています。やせ願望に自身の抱える問題が表現されている場合もあるため、信頼関係を築いて話し合うことが最も大切です。
4.(×)それが事実だとしても、「もっと痩せなければ」と強く思い込んでいるAさんには伝わりません。
第114問
Aさん(23歳、女性)は大学を卒業後、会社に就職して1人暮らしを始めた。入社後に「会社の制服が似合うようになりたい」とダイエットを始め、次第にるいそうが目立つようになった。「太るのが怖い」と言って食事を拒否するようになり、体重は1年間で10kg減少した。しかし、本人は「まだ太っているから、痩せないといけない」と話していた。久しぶりにAさんと会った母親が、過度のるいそうを心配して、内科受診を勧めた。内科ではるいそう以外に大きな異常を認めず、精神科受診を勧められた。精神科では神経性無食欲症(anorexia nervosa)と診断され、外来通院を開始した。その後、低血糖によるふらつきのため職場で頻回に転倒するようになった。それでも食事を十分に摂らないため、精神科病棟へ入院した。入院時、身長166cm、体重36kgであった。入院後、食事のほかに点滴による栄養補給が始まった。 入院後3か月が経過した。Aさんは体重が41kgまで増加し、主治医と相談して、退院の準備をすることになった。看護師に対して、Aさんは「退院後はすぐに仕事をしたい」と話したが、母親は「ゆっくり自宅で休養してほしい」と話した。母親の面会時に、今後の仕事や生活に関する話題が出ると、Aさんはイライラして母親と口論になることが多くなった。父親は仕事が忙しいことを理由に、面会に来たのは一度のみであった。 今後導入する必要性が最も高いのはどれか。
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1.家族療法
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2.作業療法
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3.自律訓練法
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4.精神分析療法
- 解答・解説
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Aさんと母親はコミュニケーションに問題があり、父親はAさんへの関与を避けています。Aさんの退院に向けて、家族関係を円滑にするような支援が必要な状況です。
1.(○)家族療法は、家族全員を当事者として扱い、患者とその家族の相談に乗りながら問題の解決を図る方法です。
2.(×)作業療法は、日常生活に必要となる動作や、社会復帰のための訓練を行うリハビリテーションです。
3.(×)自律訓練法では、自己催眠の訓練により全身の緊張を解き、意識的にリラックス状態を作り出します。
4.(×)精神分析療法は、自由連想で進められる対面式の面接を長期間受ける必要があり、退院前に最も必要性が高いとはいえません。
第115問
Aさん(73歳、女性)は夫(73歳)と2人暮らし。6年前にParkinson〈パーキンソン〉病(Parkinson disease)と診断され、レボドパ〈L-dopa〉を1日3回内服している。Hoehn-Yahr〈ホーエン・ヤール〉重症度分類のステージIII、要介護1である。夫が付き添い神経内科外来に月1回、杖歩行で通院している。外来受診のとき、Aさんは足がすくんで転びやすくなったことを主治医に相談し、レボドパ〈L-dopa〉を1日4回に増量して様子を見ることになった。Aさんと夫は薬の副作用〈有害事象〉について外来看護師に尋ねた。 外来看護師がAさんと夫に説明する副作用〈有害事象〉の内容で正しいのはどれか。
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1.低血糖
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2.体重増加
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3.呼吸器症状
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4.不随意運動
- 解答・解説
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パーキンソン病は、脳内のドパミン不足が原因となります。このドパミンを補充する治療薬であるレボドパは、副作用として悪心や食欲不振などの消化器症状、めまいや頻脈などの循環器症状、不眠や興奮などの精神症状などを引き起こします。また、長期投与による副作用として、不随意運動(ジスキネジア)、wearing off(ウェアリング・オフ)現象、on-off(オン・オフ)現象などにも注意が必要です。
よって、1.(×)、2.(×)、3.(×)、4.(○)、となります。
第116問
Aさん(73歳、女性)は夫(73歳)と2人暮らし。6年前にParkinson〈パーキンソン〉病(Parkinson disease)と診断され、レボドパ〈L-dopa〉を1日3回内服している。Hoehn-Yahr〈ホーエン・ヤール〉重症度分類のステージIII、要介護1である。夫が付き添い神経内科外来に月1回、杖歩行で通院している。外来受診のとき、Aさんは足がすくんで転びやすくなったことを主治医に相談し、レボドパ〈L-dopa〉を1日4回に増量して様子を見ることになった。Aさんと夫は薬の副作用〈有害事象〉について外来看護師に尋ねた。 1か月後の外来受診のときに、Aさんは「いつもと違う時間に入浴したら転んでしまった。怪我をしなくてよかった」と主治医に話した。主治医から勧められ、Aさんは訪問看護を週に1回利用することになった。 今後Aさんが安全な入浴をするために訪問看護師がアセスメントする内容で最も優先するのはどれか。
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1.浴室の床の素材
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2.居室から浴室までの距離
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3.転倒による打撲痕の状態
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4.日常生活動作〈ADL〉の日内変動
- 解答・解説
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1.(×)選択肢は一般的な転倒予防のためのアセスメント項目であり、Aさんのケースに特化した情報収集を優先すべきです。
2.(×)距離が遠かったとしても、ただちに住宅改修をすることは困難であり、優先されるべき項目とはいえません。
3.(×)転倒による打撲痕の状態をアセスメントしても、今後安全な入浴をするための情報にはなりません。
4.(○)レボドパの副作用の一つに、wearing off(ウェアリング・オフ)現象があります。これはパーキンソン病の進行に伴って薬効の持続時間が短くなる現象であり、薬の効果がない時間が発生するため症状の日内変動がみられるようになります。レボドパの追加服用などで安全に対処することが可能であることから、ADLの日内変動の有無が最も優先すべき内容となります。
第117問
Aさん(73歳、女性)は夫(73歳)と2人暮らし。6年前にParkinson〈パーキンソン〉病(Parkinson disease)と診断され、レボドパ〈L-dopa〉を1日3回内服している。Hoehn-Yahr〈ホーエン・ヤール〉重症度分類のステージIII、要介護1である。夫が付き添い神経内科外来に月1回、杖歩行で通院している。外来受診のとき、Aさんは足がすくんで転びやすくなったことを主治医に相談し、レボドパ〈L-dopa〉を1日4回に増量して様子を見ることになった。Aさんと夫は薬の副作用〈有害事象〉について外来看護師に尋ねた。 3か月後、Aさんは「夫は家事を楽しんでいるようで助かっていますが、友人と外出したいと言っています。私も最近は転ぶこともなくなったので、身体を動かしたり、レクリエーションに参加してみたいです」と訪問看護師に話した。 訪問看護師がAさんに提案するサービスで最も適切なのはどれか。
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1.通所介護
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2.訪問介護
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3.訪問入浴介護
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4.短期入所生活介護
- 解答・解説
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1.(○)通所介護(デイサービス)では、送迎バスなどで介護施設に通う利用者に対して、介護や機能訓練などを提供します。身体を動かしたり、レクリエーションに参加したりすることもできるため、Aさんに提案するサービスとして最も適切です。
2.(×)訪問介護は、訪問介護員(ホームヘルパー)が利用者の居宅を訪問し、身体介護や生活援助を行うサービスです。
3.(×)訪問入浴介護は、自宅の浴槽では入浴困難である要介護者に対して、専門浴槽を用いて自宅での入浴をサポートするサービスです。
4.(×)短期入所生活介護(ショートステイ)は、短期的な介護施設入居サービスであり、在宅介護中の冠婚葬祭や旅行への対応、介護者のレスパイトケアなどを目的としています。
第118問
Aさん(28歳、女性、外国籍)は3年前に日本人の夫と結婚し来日した。簡単な日本語を話せたため、来日した半年後からコンビニエンスストアでアルバイトを始めた。最近になり、夫は仕事で帰りが遅くなることが多くなった。Aさんが「お客さんが自分の悪口を言っている」と話したが、夫は気にしなかった。その後、アルバイト先の上司から「Aさんが奇声を発している」「ぶつぶつと独り言を言って歩き回っている」と夫に連絡があった。夫が病院に付添い精神科外来を受診し、統合失調症(schizophrenia)と診断されて入院となった。入院時、Aさんの髪は乱れ、誰かに見張られている気がすると怯えていた。 入院当日に看護師が行う情報収集で最も優先するのはどれか。
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1.症状が日常生活に与える影響
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2.アルバイト先の人間関係
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3.医療用語の理解力
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4.精神疾患の家族歴
- 解答・解説
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1.(○)Aさんには、妄想や幻覚、思考障害など、統合失調症の急性期にみられる陽性症状が生じています。すでに「髪は乱れ、誰かに見張られている気がすると怯えていた」という影響が出ているので、そのほかのことも含めて、症状が日常生活に及ぼしている影響を把握することが最も優先されます。
2.(×)アルバイト先の人間関係が発症原因の一つであることも考えられますが、最優先される確認事項ではありません。
3.(×)医療用語の理解力を把握することも必要ですが、簡単な日本語での会話は可能であり、陽性症状が出現している状態で最も優先される情報ではないと考えられます。
4.(×)精神疾患の家族歴も大切な情報ですが、入院初日に優先される内容ではありません。
第119問
Aさん(28歳、女性、外国籍)は3年前に日本人の夫と結婚し来日した。簡単な日本語を話せたため、来日した半年後からコンビニエンスストアでアルバイトを始めた。最近になり、夫は仕事で帰りが遅くなることが多くなった。Aさんが「お客さんが自分の悪口を言っている」と話したが、夫は気にしなかった。その後、アルバイト先の上司から「Aさんが奇声を発している」「ぶつぶつと独り言を言って歩き回っている」と夫に連絡があった。夫が病院に付添い精神科外来を受診し、統合失調症(schizophrenia)と診断されて入院となった。入院時、Aさんの髪は乱れ、誰かに見張られている気がすると怯えていた。 入院後、担当看護師は毎日面会に来ている夫の表情が気になり声をかけた。夫は「先生から統合失調症には様々な症状があるとお聞きしました。入院して妻は落ちつきましたが、これからどう接していけばいいのか悩んでいます」と話した。担当看護師はチームカンファレンスで夫の様子を伝え、主治医の判断で、夫に家族心理教育への参加を促すことになった。 担当看護師が夫に家族心理教育を勧める声かけで適切なのはどれか。
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1.「Aさんの症状と対応について学ぶことができます」
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2.「ご家族に参加して頂くことが退院の条件です」
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3.「家族同士の自助グループです」
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4.「匿名で参加できます」
- 解答・解説
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1.(○)Aさんの夫は「これからどう接していけばいいのか悩んでいます」と話しています。精神障害についての正しい知識や情報を心理面への十分な配慮の下で提供し、患者への否定的な感情や心理的負担を軽減させる家族心理教育が必要だと考えられます。
2.(×)退院は患者の回復に伴うものであり、プログラムへの参加を条件とすることは不適切です。
3.(×)家族同士の自助グループとしては、家族会や患者会などがあります。
4.(×)匿名で実施される場合もありますが、基本的に院内での開催であり、匿名で参加することは難しいといえます。
第120問
Aさん(28歳、女性、外国籍)は3年前に日本人の夫と結婚し来日した。簡単な日本語を話せたため、来日した半年後からコンビニエンスストアでアルバイトを始めた。最近になり、夫は仕事で帰りが遅くなることが多くなった。Aさんが「お客さんが自分の悪口を言っている」と話したが、夫は気にしなかった。その後、アルバイト先の上司から「Aさんが奇声を発している」「ぶつぶつと独り言を言って歩き回っている」と夫に連絡があった。夫が病院に付添い精神科外来を受診し、統合失調症(schizophrenia)と診断されて入院となった。入院時、Aさんの髪は乱れ、誰かに見張られている気がすると怯えていた。 入院後2か月が経過した。Aさんは独り言を言うことはあったが、他の入院患者と口論になることはなかった。作業療法士から「Aさんは手先が器用で、作業療法中は楽しそうに過ごしています」と情報を得た。退院に向けた担当看護師との面談で、Aさんは「手芸が楽しかった」「家に1人でいると寂しい」と話した。 退院に向けてAさんに提案する社会資源として適切なのはどれか。
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1.共同生活援助〈グループホーム〉
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2.短期入所〈ショートステイ〉
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3.通訳のボランティア
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4.精神科デイケア
- 解答・解説
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1.(×)共同生活援助〈グループホーム〉は、施設に入居して支援を受けながら共同生活を送る場であり、夫と自宅で生活が可能であるAさんに適しているとはいえません。
2.(×)短期入所〈ショートステイ〉は短期間の施設入居であり、自宅での生活が困難な期間に利用します。
3.(×)現段階において、通訳のボランティアが必要となる場面は考えにくいといえます。
4.(○)精神科デイケアは通所施設であり、社会復帰や就労などを目的として、さまざまなプログラム活動を通して治療を進めていきます。Aさんの現状に沿った内容であり、提案する社会資源として最も適切です。
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年度別過去問題集
2015年度 (第105回)
第107回看護師国家試験 採点除外等問題の対象は10問です。
L午前の問題:[2][9][11][83] L午後の問題:[4][5][12][22][24][114]