2017年度(第107回) 看護師国家試験 過去問・解答 午後 | 看護師の求人・転職情報はマイナビ看護師

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2017年度(第107回)
看護師国家試験 過去問・解答 午後

午後

  • 第1問

    世界保健機関〈WHO〉が定義する健康について正しいのはどれか。

    • 1.単に病気や虚弱のない状態である。

    • 2.国家に頼らず個人の努力で獲得するものである。

    • 3.肉体的、精神的及び社会的に満たされた状態である。

    • 4.経済的もしくは社会的な条件で差別が生じるものである。

    解答・解説

    世界保健機関〈WHO〉による健康の定義は、世界保健機関憲章前文(以下、前文)に記載されており、「健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあること」とされています。 さらに、「各国政府には自国民の健康に対する責任があり、その責任を果たすためには、十分な健康対策と社会的施策を行わなければならない」「人種、宗教、政治信条や経済的・社会的条件によって差別されることなく、最高水準の健康に恵まれることは、あらゆる人々にとっての基本的人権の一つ」と述べられています。
    よって、1.(×)、2.(×)、3.(○)、4.(×)、となります。

    第2問

    健康日本21(第二次)で平成34年度(2022年度)の目標として示されている1日当たりの食塩摂取量はどれか。

    • 1.5g

    • 2.8g

    • 3.11g

    • 4.14g

    解答・解説

    健康日本21(第二次)では、2010年に10.6gであった食塩の1日摂取量について、2022年度までに8gまで減量することを目標として掲げています。食事摂取基準(2015年版)においてナトリウム(食塩相当量)の目標量を成人男性8g、成人女性7gへ変更したり、食品表示法においてナトリウムの量を食塩相当量として表示することを義務化するなど対策を打っていますが、目標達成にはほど遠い状況が続いています。なお、WHOによる塩分摂取量の目標値は1日5gとされており、国内の目標値よりさらに低い水準です。
    よって、1.(×)、2.(○)、3.(×)、4.(×)、となります。

    第3問

    大気汚染物質の二酸化硫黄〈SO2〉について正しいのはどれか。

    • 1.発がん性がある。

    • 2.じん肺を引き起こす。

    • 3.酸性雨の原因物質である。

    • 4.不完全燃焼によって発生する。

    解答・解説

    二酸化硫黄は、化石燃料の燃焼などで大量に排出される硫黄酸化物の一種で、酸性雨の原因となります。酸性雨とは、二酸化硫黄(SO2)や窒素酸化物(NOx)などを起源とする酸性物質が雨・雪・霧などに溶け込み、通常より強い酸性(一般的にはpH5.6以下)を示す現象です。酸性雨は、河川や湖沼、土壌を酸性化して生態系に悪影響を与えるほか、建造物のコンクリートを溶かしたり、金属に錆を発生させたりして被害を与えます。
    よって、1.(×)、2.(×)、3.(○)、4.(×)、となります。

    第4問

    仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章が策定された年はどれか。

    • 1.1947年

    • 2.1967年

    • 3.1987年

    • 4.2007年

    解答・解説

    仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章は、わが国の政労使の合意により、2007年に策定されました。社会全体で仕事と生活の双方の調和を図り、持続可能な社会を実現するため、官民一体となって取り組んでいくことが謳われています。例えば、「働きがいのある人間らしい仕事」を意味するディーセント・ワークの実現などがめざされています。同時に、本憲章に基づく具体的なガイドラインとして「仕事と生活の調和推進のための行動指針」が定められています。
    よって、1.(×)、2.(×)、3.(×)、4.(○)、となります。

    ※本問について、厚生労働省は「問題として適切であるが、必修問題としては妥当でないため、正解した受験者については採点対象に含め、不正解の受験者については採点対象から除外する」と発表しました。

    第5問

    倫理原則の「正義」はどれか。

    • 1.約束を守る。

    • 2.害を回避する。

    • 3.自己決定を尊重する。

    • 4.公平な資源の配分を行う。

    解答・解説

    看護に関わる倫理原則として、看護倫理学者のサラ・フライは「善行と無害、正義、自律、誠実、忠誠」という5つを提唱しています。
    1.(×)誠実の原則に当たります。
    2.(×)善行と無害の原則に当たります。いかなる意味でも他者に危害を加えないことを意味します。
    3.(×)自律の原則に当たります。
    4.(○)正義の原則に当たります。ただし、医療上の観点から資源を優先的に配分する必要がある場合、それを行っても正義の原則に反するわけではありません。

    ※本問について、厚生労働省は「問題として適切であるが、必修問題としては妥当でないため、正解した受験者については採点対象に含め、不正解の受験者については採点対象から除外する」と発表しました。

    第6問

    スピリチュアルな苦痛はどれか。

    • 1.手術後の創部痛がある。

    • 2.社会的役割を遂行できない。

    • 3.治療の副作用に心配がある。

    • 4.人生の価値を見失い苦悩する。

    解答・解説

    苦痛の種類は、肉体的苦痛、精神的苦痛、社会的苦痛、スピリチュアルな苦痛(魂の苦痛)に大きく分けられると考えられています。
    1.(×)肉体的苦痛に該当します。
    2.(×)社会的苦痛に該当します。
    3.(×)精神的苦痛に該当します。
    4.(○)スピリチュアルな苦痛は、死を迎えるにあたって自らの人生の意味を見出しづらくなり、「自分は何のために生きてきたのだろうか」などと苦悩することを意味します。このスピリチュアルな苦痛を理解する姿勢を持ち、少しでも軽減できるように働きかけることも、緩和ケアの範疇となります。

    第7問

    更年期の女性で増加するのはどれか。

    • 1.卵胞刺激ホルモン〈FSH〉

    • 2.テストステロン

    • 3.プロラクチン

    • 4.エストロゲン

    解答・解説

    1.(○)エストロゲンの分泌低下を受けてネガティブフィードバック機構が働き、卵胞刺激ホルモン<FSH>は上昇します。「何かが増加したことにより対象が減少する」または「何かが減少したことにより対象が増加する」というように、安定性を保つために働く機構をネガティブフィードバックと呼びます。
    2.(×)更年期では、テストステロンの分泌量は徐々に減少します。
    3.(×)プロラクチンは下垂体前葉から分泌されるホルモンで、妊娠・産褥期に上昇するほか、脳下垂体の腫瘍や薬剤の副作用などで上昇することがあります(高プロラクチン血症)。
    4.(×)卵巣の機能低下により、エストロゲンの分泌量は減少します。

    第8問

    平成25年(2013年)の国民生活基礎調査で、要介護者からみた主な介護者の続柄で割合が最も多いのはどれか。

    • 1.同居の父母

    • 2.別居の家族

    • 3.同居の配偶者

    • 4.同居の子の配偶者

    解答・解説

    1.(×)同居の父母の割合は、0.5%でした。
    2.(×)別居の家族の割合は、9.6%でした。
    3.(○)同居の配偶者の割合は、26.2%でした。少子高齢化が進む中で、在宅介護において高齢者が高齢者を介護することになる「老老介護」の増加が社会的問題となっています。
    4.(×)同居の子の配偶者の割合は、11.2%でした。

    第9問

    訪問看護ステーションの管理者になることができる職種はどれか。

    • 1.医 師

    • 2.看護師

    • 3.介護福祉士

    • 4.理学療法士

    解答・解説

    「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」(平成11年厚生省令第37号)において、「指定訪問看護ステーションの管理者は、保健師又は看護師でなければならない。ただし、やむを得ない理由がある場合は、この限りでない」と定められています。ただし、管理者は医療機関における看護、訪問看護などに従事した経験を有していなければなりません。
    よって、1.(×)、2.(○)、3.(×)、4.(×)、となります。

    第10問

    股関節の運動を図に示す。 内転はどれか。

    • 1.1

    • 2.2

    • 3.3

    • 4.4

    解答・解説

    1.(×)関節が作る角度を小さくする運動であり、屈曲です。
    2.(×)体肢を身体の中心から遠ざける運動であり、外転です。
    3.(○)体肢を身体の中心へ近づける運動であり、内転です。股関節の内転における可動域は、おおむね45~0度とされています。
    4.(×)大腿を前方に上げ、膝を曲げて下腿を体の外側へ動かしています。このとき、股関節は内旋します。

    第11問

    死の三徴候に基づいて観察するのはどれか。

    • 1.腹壁反射

    • 2.輻輳反射

    • 3.対光反射

    • 4.深部腱反射

    解答・解説

    死の三徴候とは、呼吸停止、心拍停止、瞳孔散大という3つの徴候で、これらがすべて認められたとき人の死亡を診断するものです。対光反射は瞳孔反射の一つで、瞳孔に光を当てたとき反射的に縮瞳し、その光が弱まると散瞳する反応です。光の強さに応じて瞳孔の開きを変えることで、網膜に入る光量を調節しています。対光反射が起こらなければ、瞳孔散大をきたしていると判断できます。
    よって、1.(×)、2.(×)、3.(○)、4.(×)、となります。

    第12問

    潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis)によって生じるのはどれか。

    • 1.滲出性下痢

    • 2.分泌性下痢

    • 3.脂肪性下痢

    • 4.浸透圧性下痢

    解答・解説

    1.(○)潰瘍性大腸炎やクローン病で腸に炎症が生じると、腸管粘膜の透過性が亢進し、多量の血液成分や細胞液が滲出して下痢をきたします。また、腸の炎症のため水分吸収量が低下することも下痢を助長します。
    2.(×)赤痢やコレラなどにおいて、病原微生物が腸液の分泌を促すことで分泌性下痢をきたします。
    3.(×)脂肪性下痢は、慢性膵炎などで脂肪の吸収障害をきたし、便に含まれる脂質が増加することで起こります。
    4.(×)浸透圧性下痢は、摂取した飲食物の浸透圧が高く、腸管で水分が吸収されないまま排便されるために起こります。

    ※本問について、厚生労働省は「問題として適切であるが、必修問題としては妥当でないため、正解した受験者については採点対象に含め、不正解の受験者については採点対象から除外する」と発表しました。

    第13問

    典型的なうつ病(depression)の症状はどれか。

    • 1.幻 聴

    • 2.感情失禁

    • 3.理由のない爽快感

    • 4.興味と喜びの喪失

    解答・解説

    1.(×)幻聴は、統合失調症の陽性症状としてみられます。
    2.(×)感情失禁(情動調節障害)は、感情のコントロールを失い、一般的な反応とはかけ離れた感情の発露(ささいなことで号泣するなど)があることです。脳疾患に伴ってみられることが多く、うつ病でみられる気分障害とは区別されます。
    3.(×)双極性障害の躁状態において、理由のない爽快感がみられます。
    4.(○)興味と喜びの喪失は、抑うつ気分と並んで、うつ病の典型的な症状です。以前は好きだったことに対しても興味や関心が持てず、楽しめなくなってしまいます。

    第14問

    母体から胎児への感染はどれか。

    • 1.水平感染

    • 2.垂直感染

    • 3.接触感染

    • 4.飛沫感染

    解答・解説

    病原微生物が母親の胎内で子へと伝播し、感染することを垂直感染と呼びます。出産時に産道を介して、あるいは出産後に母乳を介して感染することも垂直感染に含まれます。母子間ではないヒト-ヒト感染は水平感染と呼ばれるので、混同しないようにしましょう。垂直感染する病原微生物には、経胎盤感染するサイトメガロウイルス、経産道感染するB型肝炎ウイルス、母乳感染する成人T細胞白血病ウイルスなどがあります。
    よって、1.(×)、2.(○)、3.(×)、4.(×)、となります。

    第15問

    出血傾向を考慮し手術前に投与の中止を検討するのはどれか。

    • 1.アドレナリン

    • 2.テオフィリン

    • 3.ワルファリン

    • 4.バンコマイシン

    解答・解説

    1.(×)アドレナリンは、主に急性低血圧またはショック時、心停止時の補助治療薬として用いられます。また、手術時に局所出血の予防と治療を目的として投与されることもあります。
    2.(×)テオフィリンはキサンチン系の気管支拡張薬です。副作用として、けいれんやせん妄などの精神神経症状、悪心・嘔吐をはじめとする消化器症状などが現れることがあります。
    3.(○)ワルファリンは抗凝固薬であり、一般的には手術4~5日前から休薬します(中止後48~72時間後まで作用持続)。休薬すると支障がある場合は、ヘパリン置換(ヘパリンの経静脈投与)を行います。
    4.(×)バンコマイシンはグリコペプチド系抗菌薬であり、腎障害などの副作用が報告されています。

  • 第16問

    インドメタシン内服薬の禁忌はどれか。

    • 1.痛風(gout)

    • 2.膀胱炎(cystitis)

    • 3.消化性潰瘍(peptic ulcer)

    • 4.関節リウマチ(rheumatoid arthritis)

    解答・解説

    インドメタシンはNSAIDs(非ステロイド性消炎鎮痛薬)であり、消化器への直接刺激作用およびプロスタグランジン合成阻害作用により胃粘膜防御能が低下し、消化性潰瘍が悪化するおそれがあるため、消化性潰瘍のある患者では原則禁忌となります。そのほか、重篤な血液異常、肝障害、腎障害、心機能不全、高血圧症、膵炎、直腸炎、直腸出血がある患者などでも禁忌となります。
    よって、1.(×)、2.(×)、3.(○)、4.(×)、となります。

    第17問

    Fowler〈ファウラー〉位で食事を摂るときの姿勢で誤嚥を予防するのはどれか。

    • 1.頸部側屈位

    • 2.頸部前屈位

    • 3.頸部後屈位

    • 4.頸部回旋位

    解答・解説

    1.(×)頸部側屈位は健側傾斜姿勢ともいいます。麻痺や術後など食道に食べ物が入りにくい場合に、麻痺がない健側の入口部を下にして、重力を利用して食べ物を食道へ誘導します。誤嚥を予防する姿勢ですが、適応する状態が限られるので、正解としては頸部前屈位がより適切です。
    2.(○)頸部前屈位では、食道入口部が広がり、気道が狭くなるため、誤嚥しにくい姿勢です。
    3.(×)頸部後屈位は、気管が広がり食道が狭くなるので誤嚥を起こしやすい姿勢です。
    4.(×)頸部回旋位では、食塊が非回旋側の梨状窩から食道へ通過するように誘導されるため誤嚥しにくくなります。ただし、ファウラー位の角度と頸部回旋角度の組み合わせによっては誤嚥の可能性が高まるため、正解としては頸部前屈位がより適切です。

    第18問

    男性に導尿を行う際、カテーテル挿入を開始するときの腹壁に対する挿入角度で最も適切なのはどれか。

    • 1.30~40度

    • 2.80~90度

    • 3.120~130度

    • 4.160~170度

    解答・解説

    腹部に対して陰茎をほぼ垂直(90度)に少し引き上げるように持ち上げてから、尿道にカテーテルをゆっくりと挿入していきます。尿道を伸展させながらカテーテルを進めることが、尿道損傷を防ぐポイントです。また、尿道球部の屈曲を軽減させ、カテーテルを進めやすくすることにもなります。なお、導尿は必ず無菌操作で行います。
    よって、1.(×)、2.(○)、3.(×)、4.(×)、となります。

    第19問

    標準予防策〈スタンダードプリコーション〉において、創傷や感染のない患者への援助で使い捨て手袋が必要なのはどれか。

    • 1.手浴

    • 2.洗髪

    • 3.口腔ケア

    • 4.寝衣交換

    解答・解説

    標準予防策〈スタンダードプリコーション〉とは「感染症の有無にかかわらず、すべての患者の汗を除くすべての湿性生体物質には感染性があるものとして扱う」という概念です。湿性生体物質には、患者の血液、体液(唾液、胸水、腹水、心嚢液、脳脊髄液など)、分泌物(汗は除く)、排泄物、傷のある皮膚、粘膜が含まれます。口腔ケアは口内粘膜に触れて行うため、標準予防策の対象になります。
    よって、1.(×)、2.(×)、3.(○)、4.(×)、となります。

    第20問

    モルヒネの副作用(有害事象)はどれか。

    • 1.出血

    • 2.便秘

    • 3.高血圧

    • 4.粘膜障害

    解答・解説

    モルヒネは、激しい疼痛における鎮痛・鎮静・鎮痙、激しい咳嗽発作における鎮咳、激しい下痢症状の改善および手術後などの腸管蠕動運動の抑制に用いられます。モルヒネの副作用の中でも、投与開始時から対策が必要なものとしては悪心・嘔吐や便秘があります。他の副作用として、口渇や眠気のほか、まれながら呼吸抑制、せん妄、無気肺、気管支痙攣、咽頭浮腫、麻痺性イレウス、中毒性巨大結腸などもみられます。便秘をきたした場合は下剤を投与しますが、改善しない場合はオピオイドをフェンタニルへ変更することも検討されます。
    よって、1.(×)、2.(○)、3.(×)、4.(×)、となります。

    第21問

    ジギタリスの副作用(有害事象)はどれか。

    • 1.難聴

    • 2.悪心

    • 3.易感染

    • 4.低血糖

    解答・解説

    ジギタリスは、オオバコ科ジギタリス属の植物に含まれるジギトキシン、ジゴキシンなどの強心配糖体です(現代では化学的に合成される)。強心配糖体には強心作用があり、うっ血性心不全、心房細動や心房粗動による頻脈、発作性上室頻拍などの治療に用いられます。ジギタリスは治療有効域が狭い薬剤であり、中毒域と有効域が接近しているため、ジギタリス中毒(消化器症状、視覚症状、精神神経系症状、不整脈など)に注意が必要です。頻度が高い副作用としては食欲不振、悪心・嘔吐、下痢などがあります。
    よって、1.(×)、2.(○)、3.(×)、4.(×)、となります。

    第23問

    呼びかけに反応はないが正常な呼吸がみられる傷病者に対して、まず行うべき対応はどれか。

    • 1.下肢を挙上する。

    • 2.胸骨圧迫を行う。

    • 3.回復体位をとる。

    • 4.自動体外式除細動器〈AED〉を装着する。

    解答・解説

    1.(×)アナフィラキシーなどのショック症状がみられる場合に行うファーストエイドです。
    2.(×)呼吸がないと判断したら、胸骨圧迫と人工呼吸を行います。
    3.(○)呼びかけに反応はないが正常な呼吸がみられる傷病者に対するファーストエイドは、仰臥位のままにせず、側臥位の回復体位にすることです。回復体位とは、顎を前に出し、上側(側臥位において上になっている側)の手の甲に顔を乗せ、上側の膝を約90度曲げ、身体を安定させた状態です。気道を確保するとともに、舌根沈下や吐物などによる窒息を防ぎます。
    4.(×)呼吸が確認できないとき、AEDを使用します。

    第25問

    マズロー,A.H.〈Maslow,A.H.〉の基本的欲求階層論で最高次の欲求はどれか。

    • 1.安全の欲求

    • 2.承認の欲求

    • 3.生理的欲求

    • 4.自己実現の欲求

    • 5.所属と愛の欲求

    解答・解説

    マズロー,A.H.は、人間の基本的な欲求を5つの階層に分けました。
    1.(×)安全の欲求は第2階層で、身体的安全を求める欲求です。
    2.(×)承認の欲求は第4階層で、他者から価値がある存在だと認められたい、自己評価を高めたいといった欲求です。
    3.(×)生理的欲求は第1階層で、食事、排泄、睡眠など生存に関わる本能的な欲求です。
    4.(○)自己実現の欲求は最高次の第5階層で、自己の人生最大の希望をかなえ、自己の可能性を最大限に発揮したいという欲求です。
    5.(×)所属と愛の欲求は第3階層で、集団や家庭に所属し、愛に基づいた人間関係を築きたいという欲求です。

    第26問

    味覚について正しいのはどれか。

    • 1.基本味は5つである。

    • 2.外転神経が支配する。

    • 3.冷たい物ほど味が濃いと感じる。

    • 4.1つの味蕾は1種類の基本味を知覚する。

    解答・解説

    1.(○)基本味は味覚の基本となる5つの要素、すなわち塩味、酸味、甘味、苦味、うまみを指します。
    2.(×)舌の前2/3の領域は顔面神経が、後1/3の領域は舌咽神経が支配しています。
    3.(×)冷たい物では味覚の感度が低下します。
    4.(×)味蕾は多数の味細胞を含んでおり、1つの味蕾で複数の味を知覚することができます。一般に舌の領域により知覚できる味が異なるといわれますが、正確には領域により「ある味を知覚できる/できない」のではなく、「ある味を知覚しやすい/しにくい」領域があるということです。

    第27問

    ビタミンと生理作用の組合せで正しいのはどれか。

    • 1.ビタミンA―嗅覚閾値の低下

    • 2.ビタミンD―Fe2+吸収の抑制

    • 3.ビタミンE―脂質の酸化防止

    • 4.ビタミンK―血栓の溶解

    解答・解説

    1.(×)ビタミンAは、網膜細胞の保護や視細胞における光刺激反応に重要な物質であるレチナールに還元されます。そのため、ビタミンAの欠乏が続くと夜盲症になります。
    2.(×)ビタミンDは、カルシウムの腸管での吸収を促進、腎臓での排出を抑制し、骨の形成と成長を助ける作用があります。ビタミンDが欠乏すると、低カルシウム血症、くる病、骨軟化症、骨粗鬆症になります。
    3.(○)ビタミンEは、抗酸化物質です。ビタミンEが欠乏すると、体内の活性酸素が増えて過酸化脂質が細胞膜に増加し、老化や免疫機能の低下などを引き起こします。
    4.(×)ビタミンKは、プロトロンビンなどの血液凝固因子を活性化することにより、血液の凝固を促進する働きがあります。ビタミンKが欠乏すると、出血傾向がみられます。

    第28問

    呼吸不全(respiratory failure)について正しいのはどれか。

    • 1.喘息(asthma)の重積発作によって慢性呼吸不全(chronic respiratory failure)になる。

    • 2.動脈血酸素分圧〈PaO2〉で2つの型に分類される。

    • 3.動脈血二酸化炭素分圧〈PaCO2〉が60mmHg以下をいう。

    • 4.Hugh-Jones〈ヒュー・ジョーンズ〉分類は呼吸困難の程度を表す。

    解答・解説

    1.(×)喘息の重積発作によって生じるのは、急性呼吸不全です。
    2.(×)呼吸不全は、動脈血中の二酸化炭素分圧が正常か低下しているI型呼吸不全と、二酸化炭素分圧が上昇しているII型呼吸不全の2つに分類されます。
    3.(×)動脈血二酸化炭素分圧〈PaCO2〉ではなく、動脈血酸素分圧〈PaO2〉が60mmHg以下の状態になることを呼吸不全といいます。
    4.(○)Hugh-Jones〈ヒュー・ジョーンズ〉分類は、運動機能と呼吸困難からみた主観的な重症度をI(軽度)~V(重度)の5段階で評価したものです。なお、心不全に由来する呼吸困難についてはNYHA分類が使われます。

    第29問

    薬剤とその副作用(有害事象)の組合せで正しいのはどれか。

    • 1.副腎皮質ステロイド―低血糖

    • 2.ニューキノロン系抗菌薬―髄膜炎(meningitis)

    • 3.アミノグリコシド系抗菌薬―視神経障害

    • 4.スタチン〈HMG-CoA還元酵素阻害薬〉―横紋筋融解症(rhabdomyolysis)

    解答・解説

    1.(×)副腎皮質ステロイドの副作用には、高血糖のほか、易感染性、骨粗鬆症、消化性潰瘍、血栓症、精神症状、満月様顔貌、中心性肥満、動脈硬化、脂質異常症、高血圧症、緑内障などがあります。
    2.(×)ニューキノロン系抗菌薬の副作用には、消化器症状(下痢、悪心、食欲不振など)、中枢神経症状(けいれんなど)、血糖異常(低血糖、高血糖など)などがあります。
    3.(×)アミノグリコシド系抗菌薬の副作用には、過敏症状(発疹、発熱、掻痒感など)、腎機能障害、脳神経障害(難聴、耳鳴り、ふらつきなど)があります。
    4.(○)横紋筋融解症は、スタチン〈HMG-CoA還元酵素阻害薬〉の代表的な副作用の一つです。骨格筋細胞の壊死・融解により筋細胞内成分が血中に流出し、大量のミオグロビンが尿細管を閉塞させて急性腎不全を招きます。

    第30問

    Sjögren〈シェーグレン〉症候群(Sjögren syndrome)について正しいのはどれか。

    • 1.網膜炎(retinitis)を合併する。

    • 2.男女比は1対1である。

    • 3.主症状は乾燥症状である。

    • 4.抗核抗体の陽性率は30%程度である。

    解答・解説

    シェーグレン症候群は自己免疫疾患(膠原病)で、自身の免疫システムが主に涙腺と唾液腺を攻撃することで発症します。
    1.(×)網膜炎の合併はみられません。
    2.(×)男女比は1:14人で、女性に多く発症します。
    3.(○)腺病変として、口腔内乾燥や乾燥性角結膜炎などが生じます。なお、腺外病変としては、リンパ節腫脹、関節炎、間質性肺炎などがみられます。
    4.(×)抗核抗体は80~90%、リウマトイド因子は約70%、抗SS-A抗体は約70%、抗SS-B抗体は約30%で陽性となります。

  • 第31問

    インフォーマルサポートはどれか。

    • 1.介護支援専門員による居宅サービス計画の作成

    • 2.医師による居宅療養管理指導

    • 3.近隣住民による家事援助

    • 4.民生委員による相談支援

    解答・解説

    1.(×)介護支援専門員による居宅サービス計画の作成は、介護保険法に基づくフォーマルサポートです。
    2.(×)医師による居宅療養管理指導は、介護保険法に基づくフォーマルサポートです。
    3.(○)公的制度に依らない、家族や友人、近隣住民、ボランティアなどの非専門職によるサポートをインフォーマルサポートといいます。近隣住民による家事援助は、インフォーマルサポートです。
    4.(×)民生委員による相談支援は、民生委員法第14条に定められている活動なので、フォーマルサポートに当たります。

    第32問

    ハイリスクアプローチについて正しいのはどれか。

    • 1.費用対効果が高い。

    • 2.成果が恒久的である。

    • 3.一次予防を目的とする。

    • 4.集団全体の健康状態の向上に貢献する。

    解答・解説

    問題を持っている人に対してアプローチするハイリスクアプローチに対して、問題を持っていない大多数の人に対してもアプローチすることをポピュレーションアプローチといいます。ポピュレーションアプローチでは、対象を限定しないことで潜在的なリスクを抱えた人たちにもアプローチでき、全体の健康リスクを下げることができます。
    1.(○)問題のある対象者に絞ってアプローチするため、費用対効果が高くなります。
    2.(×)ハイリスクアプローチであれ、ポピュレーションアプローチであれ、成果を恒久的に持続させることはできません。
    3.(×)一次予防を目的とするのはポピュレーションアプローチです。すでにリスクが発見された対象者に行う検査などの二次予防を目的とするのがハイリスクアプローチです。
    4.(×)集団全体の健康状態の向上に貢献するのは、ポピュレーションアプローチです。

    第33問

    フィンク,S.L.(Fink,S.L.)の危機モデルの過程で第3段階はどれか。

    • 1.防衛的退行

    • 2.衝撃

    • 3.適応

    • 4.承認

    解答・解説

    フィンクの危機モデルは、米国の心理学者スティーブン・フィンク(Fink,S.L.)が、危機的状況に直面したときに起こる心理的変化を4段階(衝撃→防衛的退行→承認→適応)で示したものです。
    1.(×)防衛的退行は第2段階で、危機的状況を否認したり、現実逃避したりします。
    2.(×)衝撃は第1段階で、危機的状況に陥って不安や混乱、パニックを起こします。
    3.(×)適応は第4段階で、現実を乗り越えるための行動を起こすようになります。
    4.(○)承認は第3段階で、危機的状況を直視し、現実を受け入れるようになります。

    第34問

    クリティカル・シンキングの思考過程で正しいのはどれか。

    • 1.物事を否定的にみる。

    • 2.主観的情報を重視する。

    • 3.直感的にアプローチをする。

    • 4.根拠に基づいた判断を行う。

    解答・解説

    クリティカル・シンキングとは、一般的には、物事を多角的に検討して客観的・論理的に理解する批判的思考法です。
    1.(×)批判的な思考は、否定的な思考とイコールではありません。
    2.(×)主観的情報だけでなく客観的情報も収集し、多角的な視点から総合的に分析・判断します。
    3.(×)適切な情報収集、問題分析、解決方法の選択・実施、結果の評価という論理的なプロセスをたどります。
    4.(○)クリティカル・シンキングで最も重要なのは、根拠に基づいた判断を行うことです。事実や証拠の積み重ねの上に客観的・論理的な判断が成り立ちます。看護過程を展開する上でも、クリティカル・シンキングは極めて重要です。

    第35問

    学習支援として、集団指導よりも個別指導が望ましいのはどれか。

    • 1.小学生へのインフルエンザ予防の指導

    • 2.塩分摂取量が多い地域住民への食事指導

    • 3.ヒト免疫不全ウイルス〈HIV〉感染者への生活指導

    • 4.3~4か月児健康診査に来た保護者への離乳食の指導

    解答・解説

    集団指導は、課題に共通性がある多数の対象者に向けて行います。対象者同士の意見交換を取り入れることもできます。個別指導は、個々に応じた説明・相談・指導を一対一の面談形式で行います。
    1.(×)小学生へのインフルエンザ予防の指導は、集団指導が適切です。
    2.(×)塩分摂取量が多い地域住民への食事指導は、集団指導が適切です。
    3.(○)ヒト免疫不全ウイルス〈HIV〉の感染は性的接触によるものが多いこともあり、感染者への生活指導においては、とりわけプライバシーの保護が必要になります。
    4.(×)3~4か月児健康診査に来た保護者への離乳食の指導は、集団指導が適切です。

    第36問

    感染症の成立過程において、予防接種が影響を与える要素はどれか。

    • 1.病原体

    • 2.感染源

    • 3.感染経路

    • 4.宿主の感受性

    解答・解説

    病原体は病気の原因となるウイルスや細菌などのことで、感染源となります。感染が成立するためには、「感染源」「感染経路」「感染を受けやすい人(感受性のある宿主)」の3要素が必要です。感染源から感染経路を伝播して宿主に病原体が侵入したとき、その病原体の病原性の程度や、宿主の感受性(病原体に対する免疫の有無や抵抗力の程度)により感染症が発症するかどうかが左右されます。予防接種は、免疫を持っていない人にワクチンのかたちで抗原を与え、人為的に抗体を作らせるものです。
    よって、1.(×)、2.(×)、3.(×)、4.(○)、となります。

    第37問

    Aさん(85歳、女性)。左側の人工股関節置換術後10日である。日中は看護師の援助によって車椅子でトイレまで行くことは可能であるが、夜間はポータブルトイレを使用している。 Aさんの夜間の療養環境を整える上で適切なのはどれか。

    • 1.足側のベッド柵は下げておく。

    • 2.着脱しやすいスリッパを用意する。

    • 3.ポータブルトイレはAさんのベッドの右側に置く。

    • 4.移動時につかまれるようにオーバーテーブルを整える。

    解答・解説

    Aさんは転倒・転落リスクが高い状態であるため、そのリスクを下げる方法を考えます。
    1.(×)夜間はポータブルトイレを使用しており、看護師の介助なしにトイレまで移動することはないので、転落予防のため足側のベッド柵は上げておき、必要に応じて看護師が下げるようにします。
    2.(×)スリッパは脱げやすく転倒リスクが高まるため、靴を用意します。
    3.(○)左側の人工股関節置換術を受けているため、健側となるベッドの右側に設置します。
    4.(×)オーバーテーブルは動きやすいため、移動時につかまると転倒リスクが高まります。

    第38問

    1948年に、看護教育の現状等に関する大規模な調査報告書「これからの看護(Nursing for the future)」を著した人物はどれか。

    • 1.リチャーズ,L.〈Richards,L.〉

    • 2.ブラウン,E.L.〈Brown,E.L.〉

    • 3.レイニンガー,M.M.〈Leininger,M.M.〉

    • 4.ゴールドマーク,J.C.〈Goldmark,J.C.〉

    解答・解説

    1.(×)リチャーズ,L.は、米国で最初に近代看護教育を受けた人物で、イギリスに留学した折にはナイチンゲールの指導を受けました。その後、来日して京都看護婦学校の学校長として看護学生の育成に尽力しました。
    2.(○)ブラウン,E.L.は米国の社会人類学者で、看護教育に関する調査報告書「これからの看護」(ブラウンレポート)を著し、看護師養成のための高度な教育機関の必要性などを提言しました。
    3.(×)レイニンガー,M.M.は米国の看護学者で、『レイニンガー看護論――文化ケアの多様性と普遍性』を1991年に著しました。
    4.(×)ゴールドマーク,J.C.は、第一次世界大戦により低下した看護教育の質を改善するための方策を記した「ゴールドマークレポート」を1923年に発表しました。

    第39問

    ノンレム睡眠中の状態で正しいのはどれか。

    • 1.骨格筋が弛緩している。

    • 2.夢をみていることが多い。

    • 3.大脳皮質の活動が低下している。

    • 4.組織の新陳代謝が低下している。

    解答・解説

    1.(×)骨格筋の弛緩は、レム睡眠時において強く起こります。
    2.(×)夢をよくみるのはレム睡眠時です。レム睡眠時の脳波活動は比較的活発で、血圧や脈拍も変動しており、心身ともに覚醒への準備状態にあるといえます。
    3.(○)ノンレム睡眠時は、副交感神経が優位になり、心拍数や体温、代謝などが低下するとともに、大脳皮質の活動も低下します。
    4.(×)ノンレム睡眠時は、エネルギー消費が低下する一方で、組織の修復や新陳代謝などに関係する成長ホルモンは分泌されます。組織の新陳代謝が低下しているわけではないので不適切です。

    第40問

    麻薬の取り扱いで正しいのはどれか。

    • 1.看護師は麻薬施用者免許を取得できる。

    • 2.麻薬を廃棄したときは市町村長に届け出る。

    • 3.アンプルの麻薬注射液は複数の患者に分割して用いる。

    • 4.麻薬及び向精神薬取締法に管理について規定されている。

    解答・解説

    1.(×)麻薬施用者は、都道府県知事の免許を受けて、疾病の治療の目的で、業務上麻薬を施用し、もしくは施用のため交付し、または麻薬を記載した処方箋を交付する者です。その免許を取得できるのは、医師、歯科医師、獣医師に限られます。
    2.(×)麻薬を廃棄したときは、30日以内に都道府県知事に届け出ます。
    3.(×)アンプルの麻薬注射液を複数の患者に分割して用いると、管理面や衛生面で問題となることがあるため、推奨されません。
    4.(○)麻薬及び向精神薬取締法は、「麻薬及び向精神薬の輸入、輸出、製造、製剤、譲渡し等について必要な取締りを行うとともに、麻薬中毒者について必要な医療を行う等の措置を講ずること等により、麻薬及び向精神薬の濫用による保健衛生上の危害を防止し、もつて公共の福祉の増進を図ることを目的」としています。

    第41問

    成人に対する一次救命処置〈BLS〉において、胸骨圧迫と人工呼吸との回数比で正しいのはどれか。

    • 1.20対1

    • 2.20対2

    • 3.30対1

    • 4.30対2

    解答・解説

    「JRC蘇生ガイドライン2015」では、成人に対する胸骨圧迫と人工呼吸の割合は30:2(胸骨圧迫を30回したら、人工呼吸を2回)となっています。この割合は、「JRC蘇生ガイドライン2020」でも変更なく引き継がれました。ただし、人工呼吸の技術に習熟していない場合などは、必ずしも心肺蘇生において人工呼吸を実施する必要はないとされています。不慣れな人工呼吸に戸惑って救命処置が遅れるようなら、人工呼吸なしで絶え間なく胸骨圧迫を続けるほうが救命率が高くなると考えられるからです。
    よって、1.(×)、2.(×)、3.(×)、4.(○)、となります。

    第42問

    成人男性に対する全身麻酔下の膵頭十二指腸切除術が9時に開始されてから40分間の経過を表に示す。 9時40分の時点で、間接介助の看護師が医師に確認の上、実施することとして適切なのはどれか。

    • 1.輸血を準備する。

    • 2.下半身を心臓より高くする。

    • 3.加温マットの設定温度を上げる。

    • 4.次の尿量測定を40分後に実施する。

    解答・解説

    1.(×)循環血液量に対する出血量の割合が20%未満の場合は、原則として輸血の適応はありません。
    2.(×)患者の血圧が低下しており、これが出血性ショックによるものであれば下半身を心臓より高くすることが適切です。しかし、収縮期血圧が108mmHgあることから出血性ショックは考えづらく、麻酔の影響で血圧低下をきたしていると考えられます。
    3.(○)手術中は麻酔導入の影響で体温低下をきたすため、体表面をブランケットなどで覆うとともに、加温装置で体温を維持します。設問の患者は手術開始後40分で体温が1.6℃低下しているため、加温マットの設定温度を上げることが適切です。
    4.(×)尿量測定のことよりも、体温低下への対処が優先されます。

    第43問

    インスリン製剤について正しいのはどれか。

    • 1.経口投与が可能である。

    • 2.冷凍庫で長期保存できる。

    • 3.皮下注射は同じ部位に行う。

    • 4.飛行機に搭乗する際は手荷物として持ち込む。

    解答・解説

    1.(×)インスリンは蛋白質なので、胃の消化作用で分解されてしまいます。現在、経口インスリン製剤は開発途上です。
    2.(×)冷凍庫に保存すると、インスリンの性状変化が起こるだけではなくカートリッジが破損するおそれもあります。長期保存には、直射日光を避け、2~8℃の場所(例えば冷蔵庫)が適しています。
    3.(×)注射部位は、毎回少しずつずらして変えるようにします。同じ部位に注射を続けると、リポハイパートロフィー(注射部位の脂肪の肥大)が起こって硬結をきたします。硬結部位に注射をすると、痛みは少なくなるものの効果は低下します。
    4.(○)飛行機の貨物室は氷点下になるおそれがあるので、搭乗する際は手荷物に入れて持ち込みます。

    第44問

    廃用症侯群(disuse syndrome)を予防する方法で正しいのはどれか。

    • 1.関節固定後の等張性運動

    • 2.ギプス固定後からの等尺性運動

    • 3.下腿の中枢から末梢へのマッサージ

    • 4.足底板の装着による下腿三頭筋の収縮

    解答・解説

    1.(×)等張性運動(アイソトニック運動)は関節の動きを伴うので、関節固定後は等尺性運動が適切です。
    2.(○)等尺性運動(アイソメトリック運動)は、関節を一定の角度に固定しながら筋肉を収縮させる方法です。関節がギプスなどで外固定された場合や運動時に関節の痛みがある場合の筋力トレーニングとして有用で、廃用症侯群を予防することができます。
    3.(×)マッサージは、末梢から中枢に向けて行います。
    4.(×)足底板を装着して下腿三頭筋を収縮させないことで、尖足を予防することができます。

    第45問

    造影CTの際に最も注意が必要なのはどれか。

    • 1.閉所に対する恐怖がある患者

    • 2.気管支喘息(bronchial asthma)の既往がある患者

    • 3.ペースメーカーを装着している患者

    • 4.既往に上部消化管造影検査後の腹痛がある患者

    解答・解説

    1.(×)造影CTはX線を使った検査で、放射線検査室の中で行われます。閉所に対する恐怖がある患者で注意が必要なのは、狭い装置の中に入るMRI検査です。
    2.(○)造影CTで使用されるヨード造影剤は、副作用としてアナフィラキシーショック、造影剤腎症、腎性全身性硬化症などを引き起こすおそれがあります。特に気管支喘息の既往がある場合、重篤な副作用の発症確率が高いので注意が必要です。
    3.(×)MRI検査では強力な磁気を利用するため、ペースメーカーを装着している患者は禁忌となります。造影CTには当てはまりません。
    4.(×)上部消化管造影検査では、服用した硫酸バリウムが停滞して腹痛を招くことがあります。造影CTには当てはまりません。

  • 第46問

    下垂体腺腫(pituitary adenoma)について正しいのはどれか。

    • 1.褐色細胞腫(pheochromocytoma)が最も多い。

    • 2.トルコ鞍の狭小化を認める。

    • 3.典型的な視野障害として同名半盲がある。

    • 4.代表的な外科治療として経鼻的な経蝶形骨洞法による下垂体切除術がある。

    解答・解説

    1.(×)褐色細胞腫は、副腎髄質や副腎外の傍神経節に存在する腫瘍から、アドレナリンなどの血圧を上昇させるホルモンが過剰分泌されて生じる疾患です。下垂体腺腫は、脳下垂体に発生する腫瘍で、多くはホルモンを分泌しないホルモン非分泌性腺腫に分類されます。
    2.(×)下垂体腺腫では、トルコ鞍は拡大します。
    3.(×)同名半盲は、脳梗塞や脳出血などで大脳が障害されて生じます。下垂体腺腫では、腫瘍が大きくなると視力・視野に関わる視交叉を下方から圧迫するため、両耳側半盲が生じます。両耳側半盲は、視野の外側(左右の耳のある方向)が見えなくなった状態です。
    4.(○)経鼻的な経蝶形骨洞法による下垂体切除術(ハーディ手術)は一般的な方法で、副鼻腔から脳下垂体の直下にアクセスします。

    第47問

    緑内障(glaucoma)と診断された患者への説明で適切なのはどれか。

    • 1.「治療すれば視野障害は改善します」

    • 2.「水晶体の代謝が低下して起こる病気です」

    • 3.「自覚症状がなくても進行しやすい病気です」

    • 4.「眼瞼のマッサージが眼圧降下に効果的です」

    解答・解説

    1.(×)緑内障の治療は悪化を防ぐためのものであり、喪失した視野や視力を改善することはできません。
    2.(×)主に加齢を要因として、水晶体の代謝が低下して起こる病気は白内障です。
    3.(○)わが国における緑内障の多くは、原因が同定できない原発開放隅角緑内障で、その進行は緩徐です。しかし、自覚症状がないので、視野障害が進行して悪化してから自覚するようになります。眼圧は、高値のこともあれば、基準範囲内のこともあります。
    4.(×)眼瞼のマッサージをすると眼圧が一時的に高くなり、緑内障を悪化させるおそれがあります。

    第48問

    梅毒(syphilis)について正しいのはどれか。

    • 1.ウイルス感染症である。

    • 2.感染経路は空気感染である。

    • 3.治療の第一選択薬はステロイド外用薬である。

    • 4.梅毒血清反応における生物学的偽陽性の要因に妊娠がある。

    解答・解説

    1.(×)梅毒の病原体は、梅毒トレポネーマという細菌です。
    2.(×)感染経路の多くは、感染部位と粘膜や皮膚が直接接触することによるヒト-ヒト感染です。特に性的な接触がリスクとなります。胎盤を介して妊婦から胎児へ感染し、先天梅毒となることもあります。
    3.(×)治療の第一選択薬はペニシリンです。経口合成ペニシリン剤(アモキシシリンなど)を長期間投与することが推奨されています。
    4.(○)脂質抗原を用いる梅毒血清検査(STS)は早期診断に適していますが、病原とは直接関係ない脂質を抗原としているため生物学的偽陽性反応を呈し、梅毒以外の感染症や膠原病に罹患している場合や、妊娠している場合などに陽性となることがあります。

    第49問

    老年期の加齢に伴う生殖器および生殖機能の変化で正しいのはどれか。

    • 1.卵巣が肥大する。

    • 2.腟壁が薄くなる。

    • 3.精液中の精子がなくなる。

    • 4.男性はテストステロンが増加する。

    解答・解説

    1.(×)卵巣は萎縮します。
    2.(○)腟壁は薄くなります。
    3.(×)加齢によっても、精液中の精子は皆無になるわけではありません。しかし、精液量や精子の数の減少、精子活動性や精子正常形態率の低下がみられます。その結果、妊孕力が下がる一方、自然流産の確率が高まります。
    4.(×)精巣の萎縮に伴い、精巣で産生されるテストステロンの分泌量も低下します。

    第50問

    高齢者の薬物動態の特徴で正しいのはどれか。

    • 1.薬物の吸収の亢進

    • 2.薬物の代謝の亢進

    • 3.薬物の排泄の増加

    • 4.血中濃度の半減期の延長

    解答・解説

    1.(×)加齢に伴い消化管の働きが低下するので、薬物の吸収も低下します。
    2.(×)加齢に伴い肝機能が低下するので、薬物の代謝も低下します。
    3.(×)加齢に伴い腎機能が低下するので、薬物の排泄も減少します。
    4.(○)薬物血中濃度が半分に低下するために必要な時間を半減期といい、代謝・排泄にかかる時間が短いほど半減期も短くなります。高齢者の場合、加齢に伴い代謝能と排泄能が低下しているので、半減期は延長します。そのため、高齢者に対する薬物療法では、成人とは違ったコントロールが必要になります。

    第51問

    子どもの権利について述べている事項で最も古いのはどれか。

    • 1.児童憲章の宣言

    • 2.児童福祉法の公布

    • 3.母子保健法の公布

    • 4.児童の権利に関する条約の日本の批准

    解答・解説

    1.(×)児童憲章は、日本国憲法の精神に基づく児童の権利宣言として、1951年に制定されました。
    2.(○)児童福祉法は1947年に公布されました。第1条に「全て児童は、児童の権利に関する条約の精神にのつとり、適切に養育されること、その生活を保障されること、愛され、保護されること、その心身の健やかな成長及び発達並びにその自立が図られることその他の福祉を等しく保障される権利を有する」とあり、子どもの権利が謳われています。
    3.(×)母子保健法は1965年に公布されました。
    4.(×)児童の権利に関する条約の日本の批准は、1994年のことでした。

    第52問

    ピアジェ,J.(Piaget,J.)の認知発達理論において2~7歳ころの段階はどれか。

    • 1.感覚-運動期

    • 2.具体的操作期

    • 3.形式的操作期

    • 4.前操作期

    解答・解説

    スイスの心理学者ジャン・ピアジェは、子どもの認知的能力の発達を4つの段階に分け、その過程で同化と調節を繰り返しながら、認知の枠組みであるシェマを広げていくという認知発達理論を提唱しました。
    1.(×)感覚-運動期は生後から2歳までで、感覚と運動が表象(物事を思い浮かべること)を介さず直接的に結び付いている段階です。
    2.(×)具体的操作期は7~11歳の時期で、数量の概念が確立されます。
    3.(×)形式的操作期は11~15歳の時期で、抽象的思考が発達します。
    4.(○)前操作期は2~7歳の時期で、まだ他者の視点が理解できず、自己中心性に支配されています。

    第53問

    乳歯について正しいのはどれか。

    • 1.6~8か月ころから生え始める。

    • 2.5~7歳ころに生えそろう。

    • 3.全部で28本である。

    • 4.う蝕になりにくい。

    解答・解説

    1.(○)最初の乳歯は生後6~8か月ころから生え始めます。多くの場合、下側の前歯が最初に顔をのぞかせ、次いで上側の前歯が生えてきます。
    2.(×)乳歯は2~3歳で生えそろいます。
    3.(×)乳歯は上下10本ずつの計20本です。永久歯は全部で28本(親知らずを入れると32本)です。
    4.(×)乳歯は歯質(歯を構成するエナメル質、象牙質、セメント質など)が薄く、う蝕になりやすいため、注意が必要です。乳歯を失うと、顎が十分に発達せず、永久歯が生えてきたときに歯並びが悪くなる可能性があります。

    第54問

    乳児への散剤の与薬について、親に指導する内容で適切なのはどれか。

    • 1.ミルクに混ぜる。

    • 2.はちみつに混ぜる。

    • 3.少量の水に溶かす。

    • 4.そのまま口に含ませる。

    解答・解説

    1.(×)ミルクに混ぜると味が変わるので、全部飲まなかったり、ミルク嫌いになったりするおそれがあります。
    2.(×)はちみつにはボツリヌス菌が含まれている場合があり、乳児は腸内環境が整っていないため、ボツリヌス症を発症するおそれがあります。厚生労働省は「1歳未満の赤ちゃんにハチミツやハチミツ入りの飲料・お菓子などの食品は与えないようにしましょう」と注意喚起しています。
    3.(○)少量の水に溶かしてスプーンで与えるか、少量の水(1~3mL程度)で練ってペースト状にしたものを上顎や頬の内側などに塗って与えます。
    4.(×)そのまま口に含ませると、むせたり咳き込んだりして、指示量を飲むことができなくなるおそれがあります。

    第55問

    入院中に陰圧室に隔離すべき感染症はどれか。

    • 1.麻疹(measles)

    • 2.風疹(rubella)

    • 3.手足口病(hand,foot and mouth disease)

    • 4.流行性耳下腺炎(mumps)

    解答・解説

    1.(○)麻疹に対しては、接触感染予防策に加えて、感染者を陰圧個室に隔離する空気感染予防策が必要になります。医療従事者はN95マスクを着用し、感染者にはサージカルマスクを着用させます。他に空気感染予防策が必要な感染症には結核や水痘があります。
    2.(×)風疹に対しては、飛沫感染予防策を行います。
    3.(×)手足口病に対しては、接触感染予防策を行います。
    4.(×)流行性耳下腺炎に対しては、飛沫感染予防策を行います。

    第56問

    閉経について正しいのはどれか。

    • 1.月経は永久に停止する。

    • 2.子宮機能の低下で生じる。

    • 3.原発性無月経(primary amenorrhea)のことである。

    • 4.月経が3か月みられない時点で閉経と判定する。

    解答・解説

    1.(○)卵巣の活動性が次第に低下し、やがて月経が永久に停止した状態を閉経と呼びます。閉経前後の数年間は、エストロゲン濃度が大きく変動して月経が不規則になり、ホットフラッシュ(ほてり)などの症状が現れます。
    2.(×)子宮機能の低下ではなく、卵巣機能の低下によって生じます。
    3.(×)原発性無月経は、18歳まで初潮のなかった場合をいうので、閉経とは異なります。
    4.(×)月経が12か月以上停止したことをもって閉経と診断されます。

    第57問

    正常な胎児の分娩機転について正しいのはどれか。

    • 1.骨盤内嵌入時、胎児の背中は母体の背側にある。

    • 2.胎児の前頭部が先進する。

    • 3.胎児の顔は母体の背側を向いて娩出される。

    • 4.肩甲横径が骨盤の横径に一致する方向で娩出される。

    解答・解説

    胎児は、4回の回旋運動をしながら産道を通過します。
    1.(×)骨盤内嵌入時、胎児の背中は母体の右側か左側にあります。
    2.(×)胎児の前頭部が先進するのは回旋異常です。正常な第3回旋では、胎児の後頭部が先進します。
    3.(○)胎児の顔は母体の背側を向いて娩出されます。
    4.(×)肩甲横径は母体の骨盤前後径に一致する方向で娩出されます。娩出直後、後方を向いていた児の顔面は母体の側方へ向き、肩甲に対する頭のねじれが回復します。

    第58問

    母子保健施策とその対象の組合せで正しいのはどれか。

    • 1.育成医療―結核児童

    • 2.養育医療―学齢児童

    • 3.健全母性育成事業―高齢妊婦

    • 4.養育支援訪問事業―特定妊婦

    解答・解説

    1.(×)育成医療の対象は障害児で、生活の能力を得るために必要な自立支援医療費を支給します。
    2.(×)養育医療の対象は1歳未満の未熟児(出生時の体重が2000g以下の新生児または医師が入院での養育が必要と判断した新生児)で、医療保険の自己負担分を支給します。
    3.(×)健全母性育成事業の対象は思春期の男女で、思春期特有の医学的問題に関する相談に応じたり、妊娠・出産・育児に関する啓発活動を行ったりします。
    4.(○)養育支援訪問事業の対象は、妊娠・出産・育児に関して支援を必要とする家庭の児童およびその養育者です。特定妊婦(若年の妊娠、望まない妊娠、妊婦健康診査未受診などで妊娠期からの継続的な支援を特に必要とする妊婦)も対象に含まれます。保健師、助産師、保育士などが居宅を訪問し、養育に関する指導や助言などを行います。

    第59問

    精神保健活動における二次予防に該当するのはどれか。

    • 1.地域の子育てサークルへの支援

    • 2.休職中のうつ病(depression)患者への復職支援

    • 3.企業内でのメンタルヘルス講座の開催

    • 4.学校を長期間欠席している児童への家庭訪問

    解答・解説

    1.(×)地域の子育てサークルへの支援により、育児をする地域住民のつながりを強化し、健康増進に対する啓発効果が期待できるので、一次予防に当たります。
    2.(×)休職中のうつ病患者への復職支援は、疾病の再発防止や社会復帰に当たるので三次予防です。
    3.(×)企業内でのメンタルヘルス講座の開催は、一次予防に当たります。
    4.(○)学校を長期間欠席している児童への家庭訪問は、長期欠席の理由がうつ病や引きこもりなどの精神的な疾病であれば二次予防に当たります。身体的な疾病や経済的理由での欠席であれば、一次予防と考えることもできます。

    第60問

    統合失調症(schizophrenia)の幻覚や妄想に最も関係する神経伝達物質はどれか。

    • 1.ドパミン

    • 2.セロトニン

    • 3.アセチルコリン

    • 4.ノルアドレナリン

    解答・解説

    1.(○)ドパミンは、気持ちを緊張させたり興奮させたりする神経伝達物質です。ドパミンの働きを活性化させる薬剤が統合失調症に似た幻覚や妄想を引き起こすことから、統合失調症の陽性症状には脳内でのドパミンの過剰分泌が関与していると考えられています(ドパミン仮説)。
    2.(×)セロトニンは、気分や感情のコントロール、精神の安定に深く関わる神経伝達物質です。セロトニンが不足すると、ストレス障害やうつ病、睡眠障害の発症につながると考えられています。
    3.(×)アセチルコリンは、副交感神経末端や中枢神経系で働く神経伝達物質です。アルツハイマー型認知症に伴う認知機能低下が脳内のアセチルコリンの機能障害と関係すると考えられています。
    4.(×)ノルアドレナリンはドパミンの代謝産物であり、ドパミンと関連性が強い神経伝達物質です。睡眠、ストレス、記憶に関与しています。

  • 第61問

    精神科デイケアの目的で最も適切なのはどれか。

    • 1.陽性症状を鎮静化する。

    • 2.家族の疾病理解を深める。

    • 3.単身で生活できるようにする。

    • 4.対人関係能力の向上を目指す。

    解答・解説

    精神科デイケアは、精神障害者の社会生活機能の回復を目的としています。個々の利用者に応じたプログラムに従ってグループごとに日帰りのリハビリテーションを行います。利用時間は1日6時間が標準とされます。
    1.(×)陽性症状(幻覚や妄想など)を鎮静化するためには、医師による薬物療法が効果的です。
    2.(×)精神科デイケアは、利用者本人の社会生活機能の回復を目的とするものであって、家族の疾病理解を深める場ではありません。
    3.(×)デイケアの利用者は、単身者ではない場合もあります。
    4.(○)デイケアのプログラムには、家事や日常生活技能を習得するプログラムのほか、集団生活に慣れ、対人関係能力の向上をめざすプログラムもあります。

    第62問

    健康保険法による訪問看護サービスで正しいのはどれか。

    • 1.サービス対象は75歳以上である。

    • 2.訪問看護師が訪問看護計画を立案する。

    • 3.要介護状態区分に応じて区分支給限度基準額が定められている。

    • 4.利用者の居宅までの訪問看護師の交通費は、診療報酬に含まれる。

    解答・解説

    1.(×)75歳以上が対象(被保険者)となるのは、「高齢者の医療の確保に関する法律」に基づく後期高齢者医療制度です。
    2.(○)健康保険法に基づく訪問看護サービスにおいては、主治医から訪問看護指示書の交付を受ける必要があります。それに基づいて訪問看護師が訪問看護計画を作成します。
    3.(×)介護保険法では、要介護状態区分に応じて区分支給限度基準額(介護保険から給付される月当たりの上限額)が定められています。
    4.(×)利用者の居宅までの訪問看護師の交通費は、健康保険法では利用者負担となります。介護保険法では、原則として利用者から徴収していません。

    第63問

    Aさん(75歳、男性)。1人暮らし。慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease)〈COPD〉のため、2年前から在宅酸素療法を開始し、週に2回の訪問看護を利用している。訪問看護師はAさんから「最近、洗濯物を干すときに息が苦しくて疲れるが、自分でできることは続けたい」と相談された。 Aさんの労作時の息苦しさを緩和する方法について、訪問看護師が行う指導で適切なのはどれか。

    • 1.労作時は酸素流量を増やす。

    • 2.呼吸は呼気より吸気を長くする。

    • 3.動作に合わせて短速呼吸をする。

    • 4.腕を上げるときは息を吐きながら行う。

    解答・解説

    1.(×)不用意に高濃度酸素を投与するとCO2ナルコーシスを引き起こすおそれがあります。自宅で酸素供給装置を使用する場合、酸素吸入の量や時間は主治医の指示を遵守します。
    2.(×)鼻から息を吸い、口をすぼめて長く息を吐く、口すぼめ呼吸が有効です(呼気の時間を吸気の時間の2倍とする)。気管支の内圧が高まり、気道閉塞を防ぎながら効率的に呼気量を増やすことができます。
    3.(×)短速呼吸を行うと、疲れやすく、酸素を取り込む効率が悪くなり息切れが生じます。息切れによって、さらに浅く速い呼吸になり、肺の働きが低下します。
    4.(○)腕を肩より上にすると、胸の動きが制限されて呼吸しにくくなります。腕を上げるときは息を吐きながら行い、休みを挟んで呼吸を整えます。

    第64問

    Aさん(80歳、男性)は、20年前に大腸癌(colorectal cancer)でストーマを造設し、現在週1回の訪問看護を利用している。訪問看護師は、訪問時にAさんから「2日前から腹痛がある」と相談を受けた。Aさんのバイタルサインは、体温36.4℃、呼吸数24/分、脈拍84/分、血圧138/60mmHgである。 訪問看護師がAさんの腹痛をアセスメントするための情報で最も優先度が高いのはどれか。

    • 1.排便の有無

    • 2.身体活動量

    • 3.食物の摂取状況

    • 4.ストーマ周囲の皮膚の状態

    解答・解説

    1.(○)バイタルサインに異常はありませんが、腹痛の症状から消化管閉塞の可能性が考えられるので、排便の有無を確認します。場合によっては緊急受診が必要となるため、優先順位が最も高くなります。
    2.(×)身体活動量が低いと、消化管が活発に働かないことなどから排便に影響することがあります。しかし、情報収集の優先度は選択肢1に比べて低くなります。
    3.(×)摂取した食物の種類や量によっては排便に影響することがあります。しかし、情報収集の優先度は選択肢1に比べて低くなります。
    4.(×)ストーマ周囲の皮膚の状態を確認することは、腹痛に対処した後でかまいません。

    第65問

    Aさん(70歳、男性)。1人暮らし。脳出血(cerebral hemorrhage)の手術後、回復期リハビリテーション病棟に入院中である。神経因性膀胱(neurogenic bladder)のため、膀胱留置カテーテルを挿入している。要介護2で、退院後は看護小規模多機能型居宅介護を利用する予定である。 退院後にAさんが行う膀胱留置カテーテルの管理で適切なのはどれか。

    • 1.蓄尿バッグに遮光カバーをかぶせる。

    • 2.カテーテルは大腿の内側に固定する。

    • 3.外出前に蓄尿バッグの尿を廃棄する。

    • 4.カテーテルと蓄尿バッグの接続は外さない。

    解答・解説

    1.(×)医学的な観点からは、蓄尿バッグに遮光カバーをかぶせる必要はありません。ただし、患者の自尊心や周囲への配慮という観点からは検討の余地があります。
    2.(×)男性の場合、カテーテルを大腿の内側に固定すると、局所にびらんや潰瘍を起こしやすくなるおそれがあり、リハビリテーションの妨げにもなるので、腹部に固定します。女性の場合は、大腿部でもかまいません。
    3.(○)外出先で尿を廃棄する場所が見つからない場合に、畜尿バッグが重くなったり、尿が漏れたりする可能性があるので、外出前に畜尿バッグの尿を廃棄しておきます。
    4.(×)尿路感染を防ぐため、カテーテルと蓄尿バッグの接続は必要がない限り外しません。この選択肢も正答としてよさそうですが、厚生労働省が開示した正答は選択肢3のみとなっています。

    第66問

    A病院の組織図を図に示す。 医療安全管理を担う部門が、組織横断的な活動をするのに適切な位置はどれか。

    • 1.(1)

    • 2.(2)

    • 3.(3)

    • 4.(4)

    解答・解説

    1.(×)(1)は組織の最上位に位置する管理責任者で、病院長に当たります。
    2.(○)(2)は医療安全管理を担う部門に当たります。病院全体の医療安全管理を行うため、院内の部門の壁を越えて組織横断的な活動をする必要があるので、縦割りの部門とは切り離して組織管理者の直下に置きます。
    3.(×)(3)は組織の各部門の長に当たります。
    4.(×)(4)は各部門の構成員に当たります。

    第67問

    高速道路で衝突事故が発生し、20人が受傷した。A病院は、5人の重症患者を受け入れ、あわただしい雰囲気となっている。 医療を安全かつ円滑に行うために、救急外来のリーダー看護師に求められる役割として誤っているのはどれか。

    • 1.チームで患者情報を共有する。

    • 2.スタッフの役割分担を明確にする。

    • 3.患者誤認が生じないように注意喚起する。

    • 4.電話による安否の問い合わせに回答する。

    解答・解説

    1.(×)チーム内でコミュニケーションを図り、患者情報を共有することは適切です。
    2.(×)スタッフの役割分担を明確にするとともに、情報伝達や指示系統の整理、使用できる医療材料の管理などを行うことは適切です。
    3.(×)同時に同一現場の患者を複数受け入れて、患者誤認が生じやすい状況なので、注意喚起することは適切です。
    4.(○)電話による安否の問い合わせに回答することは、個人情報保護法の観点から問題があるので不適切です。個人情報を第三者に開示する場合は、原則として本人の同意が必要となります。また、あわただしい現場にいる救急外来のリーダー看護師が電話回答に応じることも、業務の優先度の観点から不適切です。

    第68問

    紙カルテと比較したときの電子カルテの特徴として正しいのはどれか。

    • 1.データ集計が困難である。

    • 2.診療録の保存期間が短い。

    • 3.多職種間の情報共有が容易になる。

    • 4.個人情報漏えいの危険性がなくなる。

    解答・解説

    1.(×)デジタル技術によるため、アナログの手法に比べてデータ集計は容易です。
    2.(×)診療録の保存期間は、医師法において「最終診療日から起算して5年間」と定められています。紙カルテでも電子カルテでも同様です。
    3.(○)カルテを電子データとしてシステム上で共有するので、部署や職種の壁を越えて多くの医療者が情報を活用できます。
    4.(×)電子カルテのシステムに不正アクセスされるなどのリスクはゼロではなく、個人情報漏えいの危険性がなくなるとはいえません。

    第69問

    医療機関に勤務する看護師のうち、特殊健康診断の対象となるのはどれか。

    • 1.内視鏡室で勤務する看護師

    • 2.精神科病棟で勤務する看護師

    • 3.血管造影室で勤務する看護師

    • 4.一般病棟で勤務する夜勤専従の看護師

    解答・解説

    労働安全衛生法第66条第2項において「事業者は、有害な業務で、政令で定めるものに従事する労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による特別の項目についての健康診断を行なわなければならない。有害な業務で、政令で定めるものに従事させたことのある労働者で、現に使用しているものについても、同様とする」と定められています。ラジウム放射線、X線、その他の有害放射線に曝される業務は「有害な業務」に当たり、その従事者は特殊健康診断の対象となります。そのタイミングは、雇入れ時、配置替えの際および6か月以内ごとに1回とされています。
    よって、1.(×)、2.(×)、3.(○)、4.(×)、となります。

    第70問

    神経伝達物質と効果器の組合せで正しいのはどれか。

    • 1.γ-アミノ酪酸〈GABA〉―気管

    • 2.アセチルコリン―瞳孔散大筋

    • 3.アドレナリン―血管

    • 4.セロトニン―心筋

    • 5.ドパミン―汗腺

    解答・解説

    1.(×)γ-アミノ酪酸〈GABA〉は抑制性神経伝達物質で、中枢神経系で働きます。
    2.(×)アセチルコリンは副交感神経の興奮性神経伝達物質であり、副交感神経に支配される瞳孔括約筋を収縮させます。瞳孔散大筋は、交感神経に支配され、ノルアドレナリンにより収縮します。
    3.(○)アドレナリンは興奮性神経伝達物質で、血管のα受容体に作用することで、全身の血管を収縮させます。
    4.(×)セロトニンは抑制性神経伝達物質で、中枢神経系で働きます。
    5.(×)ドパミンは興奮性神経伝達物質で、中枢神経系で働きます。

    第71問

    無対の静脈はどれか。

    • 1.鎖骨下静脈

    • 2.総腸骨静脈

    • 3.内頸静脈

    • 4.腕頭静脈

    • 5.門脈

    解答・解説

    1.(×)鎖骨下静脈は有対で、鎖骨の内側1/3の背側を通ります。
    2.(×)総腸骨静脈は有対で、第4/5腰椎間レベル正中やや右側で左右が合流し、下大静脈となります。
    3.(×)内頸静脈は有対で、頭蓋底の頸静脈孔に起始し、胸鎖関節の後ろで鎖骨下静脈に合流し、腕頭静脈となります。
    4.(×)腕頭静脈は有対で、鎖骨下静脈と内頸静脈が合流したものです。
    5.(○)門脈(肝門脈)は、消化管、膵臓、脾臓からの血液を集めて肝臓を流れる静脈系統の血管です。無対(1本しかない)であり、成人では直径1cm程度の太い血管です。

    第72問

    血液中の濃度の変化が膠質浸透圧に影響を与えるのはどれか。

    • 1.血小板

    • 2.赤血球

    • 3.アルブミン

    • 4.グルコース

    • 5.ナトリウムイオン

    解答・解説

    膠質浸透圧は、血漿蛋白質により生じる浸透圧であり、水を引き付ける作用を示します。アルブミンは血漿蛋白質として最も多く存在するので、その濃度の変化は膠質浸透圧を大きく左右します。アルブミンは1gで20mLの水を保つことができ、膠質浸透圧の約80%を担っているとされます。低アルブミン血症をきたすと、膠質浸透圧が低下して毛細血管での間質液の再吸収が起こりづらくなり、浮腫が生じます。
    よって、1.(×)、2.(×)、3.(○)、4.(×)、5.(×)、となります。

    第73問

    院内感染の観点から、多剤耐性に注意すべきなのはどれか。

    • 1.ジフテリア菌

    • 2.破傷風菌

    • 3.百日咳菌

    • 4.コレラ菌

    • 5.緑膿菌

    解答・解説

    多剤耐性とは多くの抗菌薬が効かなくなる性質で、多剤耐性菌による感染症は治療が困難になります。院内感染の観点から注意すべき薬剤耐性菌の主なものは、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、多剤耐性緑膿菌(MDRP)、多剤耐性アシネトバクター(MDRA)、多剤耐性結核菌(MDR-TB)などがあります。多剤耐性緑膿菌は、カルバペネム系・フルオロキノロン系・アミノグリコシド系抗菌薬に耐性を持っています。緑膿菌に感染して菌血症や敗血症に至ると、エンドトキシンショックが誘発され、多臓器不全により死亡することもあります。
    よって、1.(×)、2.(×)、3.(×)、4.(×)、5.(○)、となります。

    第74問

    過換気でみられるのはどれか。

    • 1.骨格筋の弛緩

    • 2.血中酸素分圧の低下

    • 3.体循環系の血管の収縮

    • 4.代謝性アルカローシス

    • 5.血中二酸化炭素分圧の上昇

    解答・解説

    過換気になると、血中二酸化炭素濃度が低下して血液がアルカリ性に傾くことで、体内の細胞が正常に働くために必要な電解質のバランスが崩れます(呼吸性アルカローシス)。
    1.(×)呼吸性アルカローシスにより、骨格筋は収縮します。
    2.(×)血液中の二酸化炭素濃度が低下する一方、酸素濃度(酸素分圧)は上昇します。
    3.(○)呼吸性アルカローシスをきたすと、血漿蛋白質が水素イオンを放出し、血中のカルシウムイオンと結合します。その結果、血中のカルシウムイオンが不足して低カルシウム血症となり、筋肉や血管の収縮を引き起こします。
    4.(×)代謝性アルカローシスは、呼吸以外の原因(腎機能障害など)で生じるアルカローシスです。
    5.(×)前述の通り、血中二酸化炭素濃度(血中二酸化炭素分圧)は低下します。

    第75問

    乳癌(breast cancer)の検査で侵襲性が高いのはどれか。

    • 1.触 診

    • 2.細胞診

    • 3.MRI検査

    • 4.超音波検査

    • 5.マンモグラフィ

    解答・解説

    1.(×)触診は、手で触れて乳房のしこりやリンパ節腫脹の有無を調べるものであり、侵襲性は選択肢の中で最も低くなります。
    2.(○)細胞診は、針(21~23G)を穿刺して腫瘤内部の細胞を採取し、顕微鏡で観察するものです。穿刺を伴うため、侵襲性は選択肢の中で最も高くなります。
    3.(×)MRI検査は、造影剤を使用する必要があるものの、侵襲性は高くありません。
    4.(×)超音波検査は、エコーを用いて画像を描出するもので、侵襲性は低いといえます。
    5.(×)マンモグラフィは、病変を見つけやすいように乳房を2枚の板で挟んで平たくし、乳房全体をX線撮影するものです。乳房圧迫による痛みや、X線撮影によるごく軽度の放射線被曝があります。

  • 第76問

    感染症と保健所への届出期間の組合せで正しいのはどれか。

    • 1.結核(tuberculosis)―診断後7日以内

    • 2.梅毒(syphilis)―診断後直ちに

    • 3.E型肝炎(hepatitis E)―診断後直ちに

    • 4.腸管出血性大腸菌感染症(enterohemorrhagic E.coli infection)―診断後7日以内

    • 5.後天性免疫不全症候群〈AIDS〉(acquired immunodeficiency syndrome)―診断後直ちに

    解答・解説

    報告対象の感染症を診断した医師は、感染症法に基づいて、最寄りの保健所宛てに感染症の届出が求められています。その情報を集約・分析することで、感染症の発生や流行を探知でき、蔓延防止対策などに役立てられます。
    1.(×)結核は2類感染症で、診断後直ちに届け出ます。
    2.(×)梅毒は5類感染症(全数把握対象疾患)で、診断後7日以内に届け出ます。
    3.(○)E型肝炎は4類感染症で、診断後直ちに届け出ます。
    4.(×)腸管出血性大腸菌感染症は3類感染症で、診断後直ちに届け出ます。
    5.(×)後天性免疫不全症候群は5類感染症(全数把握対象疾患)で、診断後7日以内に届け出ます。

    第77問

    平成24年(2012年)の医療法の改正によって、医療計画には (1) 疾病・ (2) 事業及び在宅医療の医療体制に関する事項を定めることとされている。 (1)と(2)に入る数字の組合せで正しいのはどれか。

    • 1.(1)4―(2)4

    • 2.(1)4―(2)5

    • 3.(1)5―(2)4

    • 4.(1)5―(2)5

    • 5.(1)6―(2)6

    解答・解説

    医療計画は、各都道府県が地域の実情に応じて、域内の医療提供体制の確保を図るために策定するものです。平成24年(2012年)の医療法改正により、医療計画には5疾病(がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病、精神疾患)および5事業(救急医療、災害時における医療、へき地の医療、周産期医療、小児救急医療を含む小児医療)に関する事項を定めることとされました。
    よって、1.(×)、2.(×)、3.(×)、4.(○)、5.(×)、となります。

    第78問

    筋骨格系の加齢に伴う変化が発症の一因となるのはどれか。

    • 1.肺結核(pulmonary tuberculosis)

    • 2.骨盤臓器脱(pelvic organ prolapse)

    • 3.前立腺肥大症(prostatic hyperplasia)

    • 4.加齢黄斑変性(age-related macular degeneration)

    • 5.慢性閉塞性肺疾患〈COPD〉(chronic obstructive pulmonary disease)

    解答・解説

    1.(×)肺結核は、結核菌が肺に感染して起こります。
    2.(○)骨盤臓器脱は、加齢や出産、閉経により骨盤を支える筋肉(骨盤底筋群)が緩むことで、膀胱や子宮、直腸が腟から飛び出してしまう病気です。軽症の場合は保存的治療となりますが、中等症~重症の場合は骨盤底筋群を補強するために手術が必要です。
    3.(×)前立腺肥大症は、加齢に伴い前立腺が肥大して、排尿障害を引き起こす病気です。
    4.(×)加齢黄斑変性は、加齢に伴い網膜の中心部である黄斑が変性して、変視症、中心暗点、色覚異常などが現れる病気です。
    5.(×)慢性閉塞性肺疾患は、喫煙を主たる原因として起こる慢性気管支炎や肺気腫による呼吸器障害です。

    第79問

    平成25年度(2013年度)の「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律に基づく対応状況等に関する調査結果」における養介護施設従事者等による虐待で最も多いのはどれか。

    • 1.性的虐待

    • 2.介護等放棄

    • 3.身体的虐待

    • 4.心理的虐待

    • 5.経済的虐待

    解答・解説

    平成25年度(2013年度)の「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律に基づく対応状況等に関する調査結果」において、養介護施設従事者等による虐待の種別・類型は、多いものから身体的虐待(64.2%)、心理的虐待(32.8%)、放棄放任(16.7%)、経済的虐待(7.7%)、性的虐待(3.5%)となっています。なお、養介護施設従事者等による虐待とされた件数は221件で、402人が被害を受けていました。高齢者虐待防止法では、養介護施設従事者等による虐待を受けたと思われる高齢者を発見した者に対して、速やかに市町村へ通報する義務を規定しています
    よって、1.(×)、2.(×)、3.(○)、4.(×)、となります。

    第80問

    Aさん(66歳、女性)は、4年前に前頭側頭型認知症(frontotemporal dementia)と診断され、介護老人福祉施設に入所している。時々、隣の席の人のおやつを食べるため、トラブルになることがある。 この状況で考えられるAさんの症状はどれか。

    • 1.脱抑制

    • 2.記憶障害

    • 3.常同行動

    • 4.自発性の低下

    • 5.物盗られ妄想

    解答・解説

    前頭側頭型認知症は、大脳の前頭葉・側頭葉が萎縮して起こります。人格や性格の変化、常同行動、脱抑制などの症状がみられます。
    1.(○)「時々、隣の席の人のおやつを食べる」という行動は、脱抑制によるものです。外的な刺激に対して理性や抑制が働かず、衝動的に反応したり、本能の赴くままに行動したりします。
    2.(×)前頭側頭型認知症では、比較的記憶は保たれています。
    3.(×)常同行動は、特定の行為を繰り返す状態です。Aさんにはみられません。
    4.(×)自発性の低下は、前頭側頭型認知症の初期症状の一つですが、Aさんにはみられません。
    5.(×)物盗られ妄想は、認知症の行動・心理症状(BPSD)の一つですが、Aさんにはみられません。

    第81問

    社会福祉士及び介護福祉士法に基づき、介護福祉士が一定の条件を満たす場合に行うことができる医療行為はどれか。

    • 1.摘 便

    • 2.創処置

    • 3.血糖測定

    • 4.喀痰吸引

    • 5.インスリン注射

    解答・解説

    「社会福祉士及び介護福祉士法」の一部改正により、2012年4月から、介護福祉士および一定の研修を受けた介護職員等は、認定特定行為業務従事者として、医師の指示の下で喀痰吸引(口腔内、鼻腔内、気管カニューレ内部)および経管栄養(胃ろう、腸ろう、経鼻経管栄養)を実施できるようになりました。安全な実施のためには、介護福祉士等が知識や技術のレベルを高めるとともに、医師や看護師と緊密に連携することが欠かせません。
    よって、1.(×)、2.(×)、3.(×)、4.(○)、となります。

    第82問

    精神障害者のリカバリ〈回復〉について正しいのはどれか。

    • 1.ストレングスモデルが適用される。

    • 2.目標に向かう直線的な過程である。

    • 3.精神疾患が寛解した時点から始まる。

    • 4.精神障害者が1人で達成を目指すものである。

    • 5.精神障害者が病識を獲得するまでの過程である。

    解答・解説

    リカバリ〈回復〉とは「人々が生活や仕事、学ぶこと、そして地域社会に参加できるようになる過程であり、またある個人にとってはリカバリーとは障害があっても充実し生産的な生活を送ることができる能力であり、他の個人にとっては症状の減少や緩和である」と定義されています。
    1.(○)ストレングスモデルとは、当事者の強み(ストレングス)に焦点を合わせ、その希望を実現するために支援することです。ポジティブな側面に着目して関わることで、精神障害者の自信回復につながります。
    2.(×)リカバリは、直線的な過程ではなく、試行錯誤しながら目標に向かう過程です。
    3.(×)精神疾患の症状が現れている時点から始まります。
    4.(×)リカバリの主体は当事者本人ですが、周囲の支援も必要です。
    5.(×)前述の通り、リカバリは「人々が生活や仕事、学ぶこと、そして地域社会に参加できるようになる過程」です。

    第83問

    健常な成人の心臓について、右心室と左心室で等しいのはどれか。2つ選べ。

    • 1.単位時間当たりの収縮の回数

    • 2.拡張時の内圧

    • 3.収縮時の内圧

    • 4.心室壁の厚さ

    • 5.1回拍出量

    解答・解説

    1.(○)洞結節で生じた刺激は心房に伝わり、右心房から左心房を興奮させた後、房室結節に到達します。房室結節を出た刺激は、今度は心室全体に広がります。左右の心室は同時に興奮・収縮するので、単位時間当たりの収縮の回数は等しくなります。
    2.(×)拡張時の内圧は、左心室で5mmHg、右心室で0mmHgのため、左心室のほうが高くなります。
    3.(×)収縮時の内圧は、左心室で120mmHg、右心室で25mmHgのため、左心室のほうが高くなります。
    4.(×)左心室の収縮により全身に血液を循環させるので、左心室の壁は右心室の壁の約3倍の厚みがあります。高血圧が持続すると、心臓の後負担が増えて左室肥大をきたします。
    5.(○)左心室から出た血液量と右心室に戻ってくる血液量は等しいので、左心室と右心室の1回拍出量は等しくなります。

    第84問

    難病の患者に対する医療等に関する法律〈難病法〉において国が行うとされているのはどれか。2つ選べ。

    • 1.申請に基づく特定医療費の支給

    • 2.難病の治療方法に関する調査及び研究の推進

    • 3.指定難病に係る医療を実施する医療機関の指定

    • 4.支給認定の申請に添付する診断書を作成する医師の指定

    • 5.難病に関する施策の総合的な推進のための基本的な方針の策定

    解答・解説

    1.(×)申請に基づく特定医療費の支給を行うのは都道府県知事です。
    2.(○)難病法第27条において「国は、難病の患者に対する良質かつ適切な医療の確保を図るための基盤となる難病の発病の機構、診断及び治療方法に関する調査及び研究を推進するものとする」と定められています。
    3.(×)指定難病に係る医療を実施する医療機関の指定を行うのは、都道府県知事です。
    4.(×)支給認定の申請に添付する診断書を作成する医師の指定を行うのは、都道府県知事です。
    5.(○)難病法第4条において「厚生労働大臣は、難病の患者に対する医療等の総合的な推進を図るための基本的な方針を定めなければならない」と定められています。つまり、国が行うべき責務です。

    第85問

    急性期の患者の特徴で適切なのはどれか。2つ選べ。

    • 1.症状の変化が乏しい。

    • 2.エネルギー消費量が少ない。

    • 3.身体の恒常性が崩れやすい。

    • 4.生命の危機状態になりやすい。

    • 5.セルフマネジメントが必要となる。

    解答・解説

    1.(×)急性期とは、病気やけがによる影響が急激に現れ、生体が健康状態の激しい変化に適応しようと様々な反応を起こしている時期です。
    2.(×)急性期には、ホルモン分泌や炎症反応の亢進などにより、エネルギー消費量が多くなります。
    3.(○)様々な侵襲を受けている急性期では、生体環境の恒常性を維持することが難しくなります。恒常性はやがて回復していきますが、それを促進するケアが求められます。
    4.(○)急性期には健康状態が激しく変化し、生命が危機に曝されることも少なくありません。
    5.(×)急性期には医療従事者による治療やケアを受けることが多く、主にセルフマネジメントが必要になるのは病状が安定してからの慢性期です。

    第86問

    甲状腺ホルモンの分泌が亢進した状態の身体所見について正しいのはどれか。2つ選べ。

    • 1.徐 脈

    • 2.便 秘

    • 3.眼球突出

    • 4.皮膚乾燥

    • 5.手指振戦

    解答・解説

    甲状腺機能亢進症では、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることで様々な症状が現れます。甲状腺機能亢進症のうち7~8割がバセドウ病によるものです。
    1.(×)甲状腺ホルモンの影響で交感神経が刺激されるため、頻脈をきたします。
    2.(×)甲状腺ホルモンの影響で食物が胃を通過する速度が上がるなどして、排便回数が増加したり下痢傾向となったりします。
    3.(○)甲状腺ホルモンの分泌が亢進した状態では、眼球後部に脂肪が沈着したり、外眼筋が肥大したりすることにより、眼瞼が上方に引き上げられて眼球突出をきたします。
    4.(×)甲状腺ホルモンの影響で大量の発汗をきたします。
    5.(○)甲状腺ホルモンの影響で交感神経が刺激されるため、手指振戦をきたします。

    第87問

    下部尿路症状のうち蓄尿症状はどれか。2つ選べ。

    • 1.尿失禁

    • 2.残尿感

    • 3.腹圧排尿

    • 4.尿線途絶

    • 5.尿意切迫感

    解答・解説

    下部尿路症状は、蓄尿症状、排尿症状、排尿後症状の3つに分けられます。このうち蓄尿症状は、膀胱に尿をためる機能に関する症状であり、昼間頻尿、夜間頻尿、尿意切迫感、尿失禁、膀胱知覚異常が含まれます。尿意切迫感は、予測できない尿意が突然起こることを指し、水に触れたり、水が流れる音を聞いたりすることで誘発されることが多いとされています。なお、残尿感は排尿後症状、腹圧排尿と尿線途絶(排出している尿が途中で途切れること)は排尿症状に該当します。
    よって、1.(○)、2.(×)、3.(×)、4.(×)、5.(○)、となります。

    第88問

    妊娠の成立の機序で正しいのはどれか。2つ選べ。

    • 1.原始卵胞から卵子が排出される。

    • 2.排卵後の卵子は卵管采によって卵管に取り込まれる。

    • 3.受精は精子と卵子との融合である。

    • 4.受精卵は子宮内で2細胞期になる。

    • 5.着床は排卵後3日目に起こる。

    解答・解説

    1.(×)卵巣内で原始卵胞から成熟卵胞(グラーフ卵胞)への発育が起こり、その卵胞が破裂して卵子が排出されます。
    2.(○)排出された卵子は卵管采により卵管に取り込まれます。卵子は卵管内を移動して、卵管膨大部に至ります。
    3.(○)受精は、精子と卵子の核融合をもって成立します。核融合を通してゲノムが混合・組み換えを起こし、遺伝的に新たな個体が生み出されます。
    4.(×)受精卵は卵管内で2個の細胞に分裂し(2細胞期)、以降も分裂を繰り返しながら子宮腔へ運ばれます。
    5.(×)着床は受精後6~7日目に起こります。受精後3日目には桑実胚になり、4~5日目には子宮腔に達して胞胚となります。

    第89問

    Aさん(65歳、女性)は、5年前に乳癌(breast cancer)の左胸筋温存乳房切除術と左腋窩リンパ節郭清術を受けた。1年前に大腿骨転移のため日常生活動作〈ADL〉に一部介助が必要となり、訪問看護を利用し在宅で療養している。Aさんの左上腕内側の皮膚をつまむと健側より厚みがある。 訪問看護師がAさんに指導する左上腕のケア方法で正しいのはどれか。2つ選べ。

    • 1.指圧する。

    • 2.皮膚の露出は少なくする。

    • 3.保湿クリームを塗布する。

    • 4.ナイロン製タオルで洗う。

    • 5.アルカリ性石けんで洗浄する。

    解答・解説

    Aさんには、乳癌手術の後遺症としてリンパ浮腫が生じています。
    1.(×)局所的に締め付けたり圧をかけたりするとリンパ管に刺激が加わり、リンパ浮腫が増悪します。
    2.(○)皮膚が傷付くと細菌感染を起こし、リンパ浮腫が悪化しやすくなるので、皮膚の露出を少なくして保護します。
    3.(○)浮腫のある皮膚は乾燥しやすいため、保湿クリームを塗布してバリア機能を維持します。乾燥に伴う搔痒感から肌を掻いて傷付け、そこから感染することを防ぐためにも必要です。
    4.(×)ナイロン製タオルは、皮膚を傷付けやすいので不適切です。
    5.(×)アルカリ性石けんは、皮膚表面を中性にしてバリア機能を低下させます。皮膚に浮腫がある場合は、刺激の少ない弱酸性の石けんを使ったほうがよいでしょう。

    第90問

    出生体重3,200gの新生児。日齢3の体重は3,100gである。 このときの体重減少率を求めよ。 ただし、小数点以下の数値が得られた場合には、小数点以下第2位を四捨五入すること。

    • https://kango.mynavi.jp/examination/images/2018/P90.png

    解答・解説

    「生理的体重減少率(%)=(出生時の体重-現在の体重)÷出生時の体重×100」で計算します。「(3200-3100)÷3200=3.125」となり、小数点第2位を四捨五入して3.1%が答えです。

  • 第91問

    Aさん(62歳、男性)。1人暮らし。1週前から感冒様症状があり様子をみていたが、呼吸困難と咳嗽が増強したため外来を受診した。胸部X線写真と胸部CTによって特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis)による間質性肺炎(interstitial pneumonia)と診断され入院した。 既往歴:42歳で糖尿病(diabetes mellitus)と診断された。59歳と61歳で肺炎(pneumonia)に罹患した。 生活歴:3年前から禁煙している(20~59歳は20本/日)。 身体所見:BMI 17.6。体温38.8℃、呼吸数30/分、脈拍112/分、血圧140/98mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉91%。両側下肺野を中心に、吸気終末時に捻髪音あり。呼気時は問題ないが、吸気時に深く息が吸えない。ばち状指を認める。 検査所見:血液検査データは、白血球13,000/μL、Hb 10.5g/dL、総蛋白5.2g/dL、アルブミン2.5g/dL、随時血糖85mg/dL、CRP 13.2mg/dL。動脈血液ガス分析で、pH 7.35、動脈血二酸化炭素分圧〈PaCO2〉38Torr、動脈血酸素分圧〈PaO2〉56Torr。胸部X線写真と胸部CTで、下肺野を中心に輪状影、網状影、淡い陰影あり。 入院時のAさんの身体状況のアセスメントで適切なのはどれか。

    • 1.水様性の気道分泌物が貯留している。

    • 2.呼吸性アシドーシスである。

    • 3.栄養状態は良好である。

    • 4.I型呼吸不全である。

    解答・解説

    1.(×)水様性の気道分泌物が貯留していると、水泡音が聴取されます。
    2.(×)呼吸性アシドーシスでは動脈血二酸化炭素分圧〈PaCO2〉が上昇しますが、Aさんは38Torrなので基準範囲内(35~45Torr)です。
    3.(×)BMIが17.6なので、低体重であることが分かります。また、アルブミンは栄養状態の指標となりますが、Aさんは2.5g/dLで基準範囲(3.8~5.3g/dL)を下回っているので、栄養状態が良好だとはいえません。
    4.(○)呼吸不全の定義は動脈血酸素分圧〈PaO2〉が60Torr以下なので、56TorrのAさんは呼吸不全であることが分かります。また、動脈血二酸化炭素分圧〈PaCO2〉が45Torr以下(正常値)なので、I型呼吸不全だと判断できます。I型呼吸不全が重症化・長期化すれば、二酸化炭素分圧の増加を伴うII型呼吸不全に移行することもあります。

    第92問

    Aさん(62歳、男性)。1人暮らし。1週前から感冒様症状があり様子をみていたが、呼吸困難と咳嗽が増強したため外来を受診した。胸部X線写真と胸部CTによって特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis)による間質性肺炎(interstitial pneumonia)と診断され入院した。 既往歴:42歳で糖尿病(diabetes mellitus)と診断された。59歳と61歳で肺炎(pneumonia)に罹患した。 生活歴:3年前から禁煙している(20~59歳は20本/日)。 身体所見:BMI 17.6。体温38.8℃、呼吸数30/分、脈拍112/分、血圧140/98mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉91%。両側下肺野を中心に、吸気終末時に捻髪音あり。呼気時は問題ないが、吸気時に深く息が吸えない。ばち状指を認める。 検査所見:血液検査データは、白血球13,000/μL、Hb 10.5g/dL、総蛋白5.2g/dL、アルブミン2.5g/dL、随時血糖85mg/dL、CRP 13.2mg/dL。動脈血液ガス分析で、pH 7.35、動脈血二酸化炭素分圧〈PaCO2〉38Torr、動脈血酸素分圧〈PaO2〉56Torr。胸部X線写真と胸部CTで、下肺野を中心に輪状影、網状影、淡い陰影あり。 Aさんは入院後に呼吸機能検査を受けることになった。換気障害の分類を図に示す。 Aさんの呼吸機能検査の結果で考えられるのはどれか。

    • 1.A

    • 2.B

    • 3.C

    • 4.D

    解答・解説

    1.(○)Aは、%肺活量が80%未満、1秒率が70%以上であり、拘束性換気障害に分類されます。間質性肺炎や肺線維症などが該当します。Aさんは、特発性肺線維症が進行し、肺の容積が低下しています。
    2.(×)Bは、%肺活量が80%以上、1秒率が70%以上であり、換気機能は正常です。
    3.(×)Cは、%肺活量が80%未満、1秒率が70%未満であり、混合性換気障害に分類されます。肺水腫や気管支拡張症などが該当します。
    4.(×)Dは、%肺活量が80%以上、1秒率が70%未満であり、閉塞性換気障害に分類されます。気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患などが該当します。

    第93問

    Aさん(62歳、男性)。1人暮らし。1週前から感冒様症状があり様子をみていたが、呼吸困難と咳嗽が増強したため外来を受診した。胸部X線写真と胸部CTによって特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis)による間質性肺炎(interstitial pneumonia)と診断され入院した。 既往歴:42歳で糖尿病(diabetes mellitus)と診断された。59歳と61歳で肺炎(pneumonia)に罹患した。 生活歴:3年前から禁煙している(20~59歳は20本/日)。 身体所見:BMI 17.6。体温38.8℃、呼吸数30/分、脈拍112/分、血圧140/98mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉91%。両側下肺野を中心に、吸気終末時に捻髪音あり。呼気時は問題ないが、吸気時に深く息が吸えない。ばち状指を認める。 検査所見:血液検査データは、白血球13,000/μL、Hb 10.5g/dL、総蛋白5.2g/dL、アルブミン2.5g/dL、随時血糖85mg/dL、CRP 13.2mg/dL。動脈血液ガス分析で、pH 7.35、動脈血二酸化炭素分圧〈PaCO2〉38Torr、動脈血酸素分圧〈PaO2〉56Torr。胸部X線写真と胸部CTで、下肺野を中心に輪状影、網状影、淡い陰影あり。 入院後18日。Aさんは2日後に自宅へ退院することとなった。Aさんは「病院に来る前は、息苦しくて死ぬかと思った。あのような思いはもうしたくない。家に帰ってまた息苦しくならないか不安だ」と言う。 Aさんが症状を自己管理できるように指導する内容で適切なのはどれか。

    • 1.習慣的に腹式呼吸をする。

    • 2.入浴時は肩まで湯に浸かる。

    • 3.動作時は前傾姿勢を保持する。

    • 4.息苦しくなったら仰臥位を保持する。

    解答・解説

    1.(○)習慣的に腹式呼吸をすることで、呼吸補助筋の働きを抑制し、横隔膜が動きやすくなります。横隔膜が働くと1回換気量の増加につながり、呼吸困難感が改善されます。
    2.(×)入浴時は肩まで湯に浸かると、身体的な負担が大きくなり呼吸困難感が増強します。半身浴にとどめるのがよいでしょう。
    3.(×)前傾姿勢になると、腹部が圧迫されて腹式呼吸が難しくなります。また、胸郭が動かしにくくなるため呼吸困難感が増強します。できるだけ前傾姿勢にならず動作できるよう指導します。
    4.(×)仰臥位では腹腔内臓器が横隔膜の動きを妨げるので、呼吸困難感が増強します。

    第94問

    Aさん(52歳、女性)。自宅で突然激しい頭痛と悪心が出現し、自力で救急車を要請し、搬送された。ジャパン・コーマ・スケール〈JCS〉Ⅰ-2で頭痛を訴えており、発汗著明であった。瞳孔径は両側3.0mm。上下肢の麻痺はない。Aさんは頭部CTでくも膜下出血(subarachnoid hemorrhage)と診断され、ICUに入室した。入室時のバイタルサインは、体温36.8℃、呼吸数24/分、脈拍92/分、血圧156/98mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉95%であった。 ICU入室から24時間以内に注意すべきAさんの症状や徴候はどれか。

    • 1.Kussmaul〈クスマウル〉呼吸

    • 2.膝蓋腱反射の低下

    • 3.企図振戦

    • 4.瞳孔散大

    解答・解説

    1.(×)Kussmaul〈クスマウル〉呼吸は、代謝性アシドーシス(糖尿病性ケトアシドーシスなど)に特有の呼吸で、速く、深く、規則正しいことが特徴です。くも膜下出血ではみられません。
    2.(×)膝蓋腱反射の低下は、くも膜下出血ではみられません。
    3.(×)企図振戦(意図振戦)は、安静時には生じないにもかかわらず、何らかの目的を持った動作を起こしたときに生じる振戦です。小脳疾患(脊髄小脳変性症、小脳梗塞、小脳出血など)でみられます。
    4.(○)くも膜下出血では、発症後24時間以内に最も再出血の可能性が高くなります。再出血による頭蓋内圧亢進症状として、意識障害とともに瞳孔散大や対光反射消失が起こります。

    第95問

    Aさん(52歳、女性)。自宅で突然激しい頭痛と悪心が出現し、自力で救急車を要請し、搬送された。ジャパン・コーマ・スケール〈JCS〉Ⅰ-2で頭痛を訴えており、発汗著明であった。瞳孔径は両側3.0mm。上下肢の麻痺はない。Aさんは頭部CTでくも膜下出血(subarachnoid hemorrhage)と診断され、ICUに入室した。入室時のバイタルサインは、体温36.8℃、呼吸数24/分、脈拍92/分、血圧156/98mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉95%であった。 Aさんは脳血管造影で右中大脳動脈に動脈瘤(aneurysm)が確認され、脳血管内治療(コイル塞栓術)が実施された。その後、Aさんは意識清明で問題なく経過していたが、手術後6日から刺激に対する反応が鈍くなり、閉眼していることが多くなった。意識レベルはジャパン・コーマ・スケール〈JCS〉II-10。左上肢はBarré〈バレー〉徴候陽性を示した。 Aさんに生じていることとして最も考えられるのはどれか。

    • 1.けいれん発作

    • 2.脳血管攣縮

    • 3.せん妄

    • 4.再出血

    • 5.水頭症(hydrocephalus)

    解答・解説

    1.(×)けいれん発作の症状とは異なります。
    2.(○)脳血管攣縮は、くも膜下出血の発症後に脳血管が縮んで血液の流れが悪くなった状態で、くも膜下出血の30~70%に起こるとされています。JCS II-10で左上肢はバレー徴候陽性を示していることから、脳の虚血症状(意識障害および運動障害)をきたしており、脳血管攣縮が生じていると考えられます。
    3.(×)せん妄の症状とは異なります。
    4.(×)脳動脈瘤に対してコイル塞栓術が施行された後なので、再出血は考えられません。
    5.(×)水頭症はくも膜下出血の合併症として起こり得ますが、バレー徴候陽性は示しません。

    第96問

    Aさん(52歳、女性)。自宅で突然激しい頭痛と悪心が出現し、自力で救急車を要請し、搬送された。ジャパン・コーマ・スケール〈JCS〉Ⅰ-2で頭痛を訴えており、発汗著明であった。瞳孔径は両側3.0mm。上下肢の麻痺はない。Aさんは頭部CTでくも膜下出血(subarachnoid hemorrhage)と診断され、ICUに入室した。入室時のバイタルサインは、体温36.8℃、呼吸数24/分、脈拍92/分、血圧156/98mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉95%であった。 手術後14日、頭部CTで右大脳半球に小範囲の脳梗塞(cerebral infarction)が認められた。Aさんは、左上肢の挙上はできるが維持が困難であり、左膝の屈曲はできるが左下肢の挙上は困難である。意識は清明であるが、Aさんは左片麻痺があるため動こうとしない。 Aさんへの看護で最も適切なのはどれか。

    • 1.日常生活動作〈ADL〉の自立度をアセスメントする。

    • 2.歩行訓練のときは杖の使用を勧める。

    • 3.左上肢の筋力増強運動を指導する。

    • 4.車椅子への移乗は全介助で行う。

    解答・解説

    くも膜下出血を含む脳血管障害のリハビリテーションは、急性期では「脳機能の回復」、回復期では「残存機能の強化」、維持期では「社会復帰に向けた調整」を主な目的としています。急性期は発症後数週の期間で、脳血管攣縮を起こしやすいため注意が必要ですが、状態が比較的安定していれば術後当日からリハビリテーションを開始して廃用症候群を予防します。また、個人の状態にもよりますが、急性期のうちに離床訓練、ADL訓練、機能回復訓練などを行うことが望ましいでしょう。Aさんは急性期にあるので、まずはADL訓練のためにADLの自立度をアセスメントする必要があります。歩行訓練、筋力増強運動、移乗の援助に関しては、Aさんの機能障害を把握してから、脳血管攣縮のリスクが下がった後に検討します。
    よって、1.(○)、2.(×)、3.(×)、4.(×)、となります。

    第97問

    Aさん(87歳、男性)。3年前にAlzheimer〈アルツハイマー〉型認知症(dementia of Alzheimer type)と診断された。1年前に妻が亡くなってから1人で暮らしている。日常生活は問題なく送れていたが、最近Aさんは薬を飲み忘れることが増えてきたり、電話の応対ができなかったりすることがあり、日常生活に支障が出るようになった。 Aさんの状態に該当する認知症高齢者の日常生活自立度判定基準のランクはどれか。

    • 1.ランクIIa

    • 2.ランクIIb

    • 3.ランクIIIa

    • 4.ランクIIIb

    • 5.ランクM

    解答・解説

    認知症高齢者の生活自立度判定基準は、認知症のある高齢者がどれだけ独力で日常生活を送れるかの程度を7段階に分けて示したものです。要介護認定の基準としても使われています。「日常生活は問題なく送れていたが、最近Aさんは薬を飲み忘れることが増えてきたり、電話の応対ができなかったりすることがあり、日常生活に支障が出るようになった」ということなので、ランクIIb(日常生活に支障をきたすような症状・行動や意思疎通の困難さが多尐みられても、誰かが注意していれば自立できる〔この状態が家庭内でもみられる〕)に該当します。
    よって、1.(×)、2.(○)、3.(×)、4.(×)、5.(×)、となります。

    第98問

    Aさん(87歳、男性)。3年前にAlzheimer〈アルツハイマー〉型認知症(dementia of Alzheimer type)と診断された。1年前に妻が亡くなってから1人で暮らしている。日常生活は問題なく送れていたが、最近Aさんは薬を飲み忘れることが増えてきたり、電話の応対ができなかったりすることがあり、日常生活に支障が出るようになった。 その後、Aさんは、コンロの火を消し忘れることや、買い物に行って自宅に戻れないことが何度もあり、在宅での生活が困難になったため、介護老人福祉施設に入所した。Aさんは自分の思い通りにならないときに、大声を出して暴れることがあった。時折落ち着かない様子で施設内を徘徊することがあったが、看護師が話しかけると、立ち止まり「散歩しています」と笑顔で話していた。ある日、Aさんがエレベーター前に1人で立っていたため、看護師がどこへ行くのか尋ねると、Aさんは「家に帰ります」と言った。 このときの看護師の対応として最も適切なのはどれか。

    • 1.「一緒に出かけましょう」としばらく周囲を歩く。

    • 2.「トイレに行きましょう」とトイレに誘導する。

    • 3.「転んだら危ないですよ」と車椅子に誘導する。

    • 4.「入所中なので家には帰れません」と説明する。

    解答・解説

    1.(○)Aさんの言葉を否定せず一緒に歩くことで、家に帰りたいという気持ちが満足される可能性が考えられます。本人の思いを尊重したケアが求められるでしょう。
    2.(×)Aさんは「家に帰ります」と言っているので、トイレに誘導することはAさんの気持ちを無視した行為になります。
    3.(×)Aさんは自立歩行ができているので、車椅子を使う必要はありません。また、家に帰りたいという気持ちにも応えられていません。
    4.(×)「自分の思い通りにならないときに、大声を出して暴れることがあった」とあるので、Aさんの気持ちを否定すると感情を高ぶらせて乱暴な言動を誘発してしまうおそれがあります。

    第99問

    Aさん(87歳、男性)。3年前にAlzheimer〈アルツハイマー〉型認知症(dementia of Alzheimer type)と診断された。1年前に妻が亡くなってから1人で暮らしている。日常生活は問題なく送れていたが、最近Aさんは薬を飲み忘れることが増えてきたり、電話の応対ができなかったりすることがあり、日常生活に支障が出るようになった。 普段は入浴を楽しみにしていたAさんが、1週前に浴室で誤って冷たい水をかぶってしまい、それ以来「お風呂に入ると寒いから嫌だ」と言って、入浴を拒否するようになった。この日も「お風呂は寒い」と言って入浴を拒否している。看護師が浴室と脱衣室の室温を確認すると 26℃~28℃にあたためられていた。また、施設内の温度は一定に設定されており、浴室から部屋まで移動する間も寒さを感じることはなかった。 Aさんへの対応として適切なのはどれか。

    • 1.入浴の必要性を説明する。

    • 2.特殊浴槽での入浴を勧める。

    • 3.一緒に湯の温度を確認する。

    • 4.今日は入浴しなくてよいと伝える。

    解答・解説

    1.(×)Aさんが入浴を拒否する態度は1週前の冷たい水をかぶった経験によるものなので、入浴の必要性を説明しても問題の解決にはなりません。
    2.(×)Aさん身体機能は、特殊浴槽を使うような状態ではありません。また、問題の根本的な解決にも至らない提案です。
    3.(○)一緒に湯の温度を確認することで、温かいお湯が出ることを体験させ、再び冷たい水をかぶることはないことを理解してもらい、入浴に対する気持ちが前向きなものに変わる可能性が考えられます。言葉で説明するよりも理解してもらいやすい対応だといえるでしょう。
    4.(×)浴室内も、浴室から部屋までの導線も室温に問題なく、入浴に適した環境が整っています。入浴してもらう努力を簡単に放棄するのではなく、Aさんの不安を根本的に解消する工夫をします。

    第100問

    A君(14歳、男子)は、夏休みのサッカー部の部活動で、朝10時から12時まで屋外で練習した。昼食時におにぎり2個とお茶を500mL摂取し、休憩後の13時から15時まで再び練習した。この日は晴天で、外気温は32℃であった。15分休憩し練習を再開したところ、A君は突然頭痛と悪心とを訴え、グラウンドの隅に座り込んだ。サッカー部担当のB教諭が、A君を日陰で横にして休ませ様子をみていたが、症状が改善せず、顔面蒼白、冷汗が出現した。A君は「気持ち悪い」と言った後に嘔吐した。 B教諭が病院に電話連絡したところ、熱中症(heat illness)の疑いがあるため、A君をタクシーで病院に連れて行くこととなった。このときのA君の意識は清明で、体温は38.7℃であった。 病院到着までに、看護師がB教諭に指示する処置として適切なのはどれか。

    • 1.A君の体を冷やす。

    • 2.A君に水を飲ませる。

    • 3.A君の上体を高くする。

    • 4.中枢から末梢に向けてA君の手足をマッサージする。

    解答・解説

    A君は、頭痛、悪心、顔面蒼白、冷汗、嘔吐、発熱(体温38.7℃)という状態から、熱中症であると考えられます。移動中にできる応急処置としては、衣類を脱がせ、太い血管が体表面に近くを走行している首回りや腋の下、大腿の付け根を氷嚢で冷やし、体温を下げるようにします。なお、嘔吐をしていることから、無理に水を飲ませることは避けます。
    よって、1.(○)、2.(×)、3.(×)、4.(×)、となります。

    第101問

    A君(14歳、男子)は、夏休みのサッカー部の部活動で、朝10時から12時まで屋外で練習した。昼食時におにぎり2個とお茶を500mL摂取し、休憩後の13時から15時まで再び練習した。この日は晴天で、外気温は32℃であった。15分休憩し練習を再開したところ、A君は突然頭痛と悪心とを訴え、グラウンドの隅に座り込んだ。サッカー部担当のB教諭が、A君を日陰で横にして休ませ様子をみていたが、症状が改善せず、顔面蒼白、冷汗が出現した。A君は「気持ち悪い」と言った後に嘔吐した。 B教諭に付き添われて、A君は病院に到着した。来院時、A君のバイタルサインは、体温38.5℃、呼吸数26/分、脈拍128/分、血圧90/48mmHgであった。口唇粘膜は乾燥し、皮膚をつまむとゆっくり戻る状態であった。血液検査データは、赤血球580万/μL、白血球12,500/μL、Hb 16.8g/dL、Na 152mEq/L、K 4.0mEq/L、Cl 109mEq/L、クレアチニン0.9mg/dLであった。尿比重1.035。受診時の身長165cm、体重57kg(発症前60kg)。 A君の状態に対するアセスメントとして適切なのはどれか。

    • 1.貧血である。

    • 2.低カリウム血症である。

    • 3.高ナトリウム血症である。

    • 4.循環血液量が増加している。

    • 5.ツルゴール反応は正常である。

    解答・解説

    1.(×)ヘモグロビン濃度は16.8g/dLで基準範囲内なので、貧血ではありません。
    2.(×)カリウムは4.0mEq/Lで基準範囲内なので、低カリウム血症ではありません。
    3.(○)ナトリウムは基準範囲(138~144mEq/L)よりも高く152mEq/Lとなっているので、高ナトリウム血症に当たります。水分の欠乏による高張性脱水であると考えられます。一方、水分とともに血中のナトリウムが失われるのは低張性脱水です。
    4.(×)体内を循環している血液量が減ると血圧が下がります。A君は血圧90/48mmHgなので、循環血液量が減少していると考えられます。
    5.(×)ツルゴール反応は、皮膚をつまみ、元に戻るまでの時間を計測して脱水の程度を評価する方法です。A君は「皮膚をつまむとゆっくり戻る状態」であることから、皮膚の弾力が弱まっており、脱水状態であることが示唆されます。

    第102問

    A君(14歳、男子)は、夏休みのサッカー部の部活動で、朝10時から12時まで屋外で練習した。昼食時におにぎり2個とお茶を500mL摂取し、休憩後の13時から15時まで再び練習した。この日は晴天で、外気温は32℃であった。15分休憩し練習を再開したところ、A君は突然頭痛と悪心とを訴え、グラウンドの隅に座り込んだ。サッカー部担当のB教諭が、A君を日陰で横にして休ませ様子をみていたが、症状が改善せず、顔面蒼白、冷汗が出現した。A君は「気持ち悪い」と言った後に嘔吐した。 A君は熱中症(heat illness)と診断された。点滴静脈内注射の後、A君の状態は回復し、家族とともに帰宅することとなった。付き添いのB教諭から、今後の部活動における熱中症予防について看護師に相談があった。 熱中症予防のための指導内容で適切なのはどれか。

    • 1.袖口の狭い服の着用を促す。

    • 2.口渇がなくても水分摂取を促す。

    • 3.湿度が高いときに部活動をする。

    • 4.休憩は90分に1回を目安にする。

    解答・解説

    1.(×)熱中症予防には、風通しのよい涼しい服装が適しています。
    2.(○)口渇がなくても水分摂取を促すことが適切です。一度に大量の水を飲むよりも、少量をこまめに飲むほうがよいでしょう。
    3.(×)熱中症を引き起こしやすい環境として、気温の高さ、湿度の高さ、風通しの悪さ、急激な気温の上昇などが挙げられます。したがって、湿度が高いときに部活動をするのは不適切です。
    4.(×)休憩はこまめに取ります。明確な時間設定は難しいものの、夏季の屋外練習で、しかも運動量が多いサッカーをすることを考えると、90分に1回の休憩では不十分だと考えられます。

    第103問

    A君(13歳、男子)。2週前から下腿の紫斑、腹痛、膝関節の疼痛が出現し、近くのクリニックを受診した。血尿および蛋白尿も認められたため、病院を紹介され受診した。既往歴および家族歴に特記すべきことはない。 身体所見:体温36.7℃、血圧110/66mmHg。意識清明。腹痛、浮腫なし。両膝関節の軽度の疼痛があるが、腫脹および発赤なし。両下腿に紫斑が散在している。 検査所見:血液所見:赤血球470万/μL、白血球5,600/μL、血小板21万/μL。プロトロンビン活性〈PT活性〉105%(基準値80~120%)、活性化部分トロンボプラスチン時間〈APTT〉32.0秒(基準対照31.2秒)。クレアチニン0.56mg/dL、アルブミン3.7g/dL、CRP 0.1mg/dL。補体価(CH50)41IU/mL(基準値30~45IU/mL)、抗核抗体陰性。尿所見:蛋白3+、潜血2+、赤血球50~99/1視野。 A君の状態から最も考えられる疾患はどれか。

    • 1.川崎病(Kawasaki disease)

    • 2.血友病A(hemophilia A)

    • 3.急性リンパ性白血病(acute lymphoblastic leukemia)

    • 4.全身性エリテマトーデス〈SLE〉(systemic lupus erythematosus)

    • 5.Henoch-Schönlein〈ヘノッホ・シェーンライン〉紫斑病(Henoch-Schönlein purpura)〈IgA血管炎〉(IgA vasculitis)

    解答・解説

    1.(×)川崎病は(1)5日以上の発熱、(2)眼球結膜充血、(3)いちご舌、(4)発疹、(5)頸部リンパ節の腫れ、(6)手足の紅斑という6つの主症状のうち5つ以上がある場合、あるいは4つ以上かつ冠動脈瘤がある場合に診断されます。A君のケースには該当しません。
    2.(×)血友病Aは先天性凝固障害症の一つで、皮下出血や口腔内出血、深部出血(関節内出血や筋肉内出血)などの症状を呈します。A君のケースには該当しません。
    3.(×)急性リンパ性白血病は、赤血球減少による貧血、白血球減少による発熱、血小板減少による出血傾向や紫斑などの症状を呈します。A君には紫斑以外の症状がみられず、可能性は低いと考えられます。
    4.(×)全身性エリテマトーデスでは、発熱、全身倦怠感、食欲不振といった全身症状のほか、蝶形紅斑、関節痛・関節炎、ループス腎炎などの症状がみられます。血液検査では白血球や血小板の減少、抗核抗体陽性などが認められますが、A君のケースには該当しません。
    5.(○)Henoch-Schönlein紫斑病は、何らかの要因によりIgAが全身の血管壁に付着し、血管に炎症を引き起こすことが原因と考えられています。触知可能な紫斑を必須項目として、皮膚または腎組織へのIgA沈着、腹痛、関節炎のいずれかが存在する病態と定義されています。血液検査では血小板、PT活性、APTTが基準範囲内にあり、この病態の特徴に合致しています。

    第104問

    A君(13歳、男子)。2週前から下腿の紫斑、腹痛、膝関節の疼痛が出現し、近くのクリニックを受診した。血尿および蛋白尿も認められたため、病院を紹介され受診した。既往歴および家族歴に特記すべきことはない。 身体所見:体温36.7℃、血圧110/66mmHg。意識清明。腹痛、浮腫なし。両膝関節の軽度の疼痛があるが、腫脹および発赤なし。両下腿に紫斑が散在している。 検査所見:血液所見:赤血球470万/μL、白血球5,600/μL、血小板21万/μL。プロトロンビン活性〈PT活性〉105%(基準値80~120%)、活性化部分トロンボプラスチン時間〈APTT〉32.0秒(基準対照31.2秒)。クレアチニン0.56mg/dL、アルブミン3.7g/dL、CRP 0.1mg/dL。補体価(CH50)41IU/mL(基準値30~45IU/mL)、抗核抗体陰性。尿所見:蛋白3+、潜血2+、赤血球50~99/1視野。 その後6か月間、A君は外来で経過観察となった。関節症状および紫斑は自然に消失したが、尿の異常と低蛋白血症は変わらず、その他の所見も変化がなかった。 A君の尿の異常の確定診断をするために最も重要な検査はどれか。

    • 1.腎生検

    • 2.咽頭培養

    • 3.腹部MRI

    • 4.クレアチニンクリアランスの測定

    解答・解説

    Henoch-Schönlein紫斑病の合併症として、糸球体にIgAが沈着することを特徴とする糸球体腎炎が現れます(紫斑病性腎炎)。6か月以上高蛋白尿が持続する場合は、腎不全に移行することもあります。設問のケースでは、受診から6か月が経過して関節症状と紫斑が消失した後も、高蛋白尿と、それに伴う低蛋白血症が認められるため、腎不全への移行を疑って腎生検を施行し、組織学的重症度に応じて治療方針を決める必要があります。選択肢のうち、尿の異常の確定診断ができる検査は腎生検のみです。なお、クレアチニンクリアランスは腎機能を評価するもので、尿の異常の確定診断には至りません。
    よって、1.(○)、2.(×)、3.(×)、4.(×)、となります。

    第105問

    A君(13歳、男子)。2週前から下腿の紫斑、腹痛、膝関節の疼痛が出現し、近くのクリニックを受診した。血尿および蛋白尿も認められたため、病院を紹介され受診した。既往歴および家族歴に特記すべきことはない。 身体所見:体温36.7℃、血圧110/66mmHg。意識清明。腹痛、浮腫なし。両膝関節の軽度の疼痛があるが、腫脹および発赤なし。両下腿に紫斑が散在している。 検査所見:血液所見:赤血球470万/μL、白血球5,600/μL、血小板21万/μL。プロトロンビン活性〈PT活性〉105%(基準値80~120%)、活性化部分トロンボプラスチン時間〈APTT〉32.0秒(基準対照31.2秒)。クレアチニン0.56mg/dL、アルブミン3.7g/dL、CRP 0.1mg/dL。補体価(CH50)41IU/mL(基準値30~45IU/mL)、抗核抗体陰性。尿所見:蛋白3+、潜血2+、赤血球50~99/1視野。 検査の結果、A君は2年間のステロイド治療が必要と判断された。1か月後に外来受診の予定である。 看護師からA君に対して行う生活指導で適切なのはどれか。

    • 1.「水分を積極的に摂取してください」

    • 2.「紫斑が出現したら記録してください」

    • 3.「蛋白質を制限した食事を摂取してください」

    • 4.「日光をなるべく浴びないようにしてください」

    解答・解説

    A君は2年間のステロイド治療が必要と判断されており、Henoch-Schönlein紫斑病の合併症として紫斑病性腎炎をきたしていると考えられます。
    1.(×)クレアチニン値から腎機能は正常だと判断できるので、水分を積極的に摂取する必要はありません。
    2.(○)Henoch-Schönlein紫斑病では紫斑が必発するので、その出現の有無を観察することで、再発に備えることができます。13歳のA君であれば、十分に対応可能な指導だといえるでしょう。
    3.(×)クレアチニン値から腎機能は正常だと判断できるので、蛋白質を制限する必要はありません。
    4.(×)ステロイド治療の副作用として、特に女性は骨粗鬆症になりやすいので、適度な日光浴が勧められます。

  • 第106問

    Aさん(32歳、男性)。自宅の部屋で多量の鎮咳薬を見つけた母親に心配され、自宅近くの病院を受診した。「5年前、仕事が忙しくなって風邪がなかなか治らないことがあった。そのときに処方された咳止めの薬を飲むと、頭がボーッとして気持ちが良かったのがきっかけで、近所の薬局で咳止めを買うようになった。3年前から飲む量が増えるようになり、やめられなくなっている。仕事もうまくいかなくなり、退職した」と言う。Aさんは紹介を受けた精神科を受診した。 このときにAさんから収集する情報として優先度が高いのはどれか。

    • 1.排尿回数

    • 2.咳嗽の有無

    • 3.鎮咳薬の使用状況

    • 4.生活上のストレス要因

    解答・解説

    コデイン類などを含む鎮咳薬では、連用により薬物依存につながることがあります。
    1.(×)薬物の乱用により腎臓にダメージを受け、腎障害をきたすおそれがあるため、排尿回数を確認することは間違っていません。しかし、優先度としては薬物依存に至る心理的状況を知るほうが高いでしょう。
    2.(×)現在は咳の有無にかかわらず鎮咳薬を常用しているので、確認する意味はないでしょう。
    3.(○)鎮咳薬をどういう時に、どのように使用しているのか知ることで、薬物に依存するAさんの心理的状況を把握し、対処法を考えることができます。
    4.(×)生活上のストレス要因を正確に言語化して説明することは、しばしば困難です。設問の段階ではより優先される情報を収集し、ストレス要因については長期的な関わりの中で把握するように努めます。

    第107問

    Aさん(32歳、男性)。自宅の部屋で多量の鎮咳薬を見つけた母親に心配され、自宅近くの病院を受診した。「5年前、仕事が忙しくなって風邪がなかなか治らないことがあった。そのときに処方された咳止めの薬を飲むと、頭がボーッとして気持ちが良かったのがきっかけで、近所の薬局で咳止めを買うようになった。3年前から飲む量が増えるようになり、やめられなくなっている。仕事もうまくいかなくなり、退職した」と言う。Aさんは紹介を受けた精神科を受診した。 Aさんは鎮咳薬による薬物依存症と診断され、任意入院となった。入院2週後、Aさん、主治医および担当看護師で、今後の治療について話し合った。Aさんは「今までは自分の力で薬をやめられると思ったけれど、やっぱりできなかった。仕事もしていないし、家に帰ったらまた薬を買ってしまいそうだ。今度こそ何とかやめたい」と話している。 Aさんへの対応として最も適切なのはどれか。

    • 1.服薬心理教育を実施する。

    • 2.ハローワークを紹介する。

    • 3.生活技能訓練〈SST〉を勧める。

    • 4.薬物依存症者のリハビリテーション施設の情報を提供する。

    解答・解説

    1.(×)服薬心理教育は、薬物療法について正しい知識を学ぶことで、服薬の継続につなげるために行われます。薬物依存症の治療手段にはなりません。
    2.(×)退職後、Aさんが再び就労を希望しているのかどうか、設問からは読み取れません。
    3.(×)薬物依存症者の回復プログラムとして実施されている生活技能訓練を勧めることは適切ですが、対象が限定されない一般的な生活技能訓練を勧めることは適切とはいえません。
    4.(○)Aさんは、「家に帰ったらまた薬を買ってしまいそうだ」と不安に感じているので、薬物依存症者のリハビリテーション施設の情報を提供することは、Aさんの健康回復・自立支援のために有用です。

    第108問

    Aさん(32歳、男性)。自宅の部屋で多量の鎮咳薬を見つけた母親に心配され、自宅近くの病院を受診した。「5年前、仕事が忙しくなって風邪がなかなか治らないことがあった。そのときに処方された咳止めの薬を飲むと、頭がボーッとして気持ちが良かったのがきっかけで、近所の薬局で咳止めを買うようになった。3年前から飲む量が増えるようになり、やめられなくなっている。仕事もうまくいかなくなり、退職した」と言う。Aさんは紹介を受けた精神科を受診した。 Aさんは鎮咳薬による薬物依存症と診断され、任意入院となった。入院2週後、Aさん、主治医および担当看護師で、今後の治療について話し合った。 さらに2週が経過し、Aさんは鎮咳薬の服用をやめる意思を強く固め、今後の依存症の治療について真剣に考えるようになった。Aさんの父親はAさんが幼少期のころ死亡しており、Aさんは母親と2人で暮らしていた。母親は週2回面会に来て、Aさんに対して小さな子どもに接するように世話をしていた。担当看護師が母親と今後のことについて話すと、母親は「私が何とかします。私しかこの子の力になってあげられないのです。本当はもっとAにしっかりして欲しい。でも、そう言うとAは怒ってしまいます」と話した。 担当看護師の母親への声かけで適切なのはどれか。

    • 1.「親戚で頼りになる方はいませんか」

    • 2.「なるべく怒らせないようにすることが大切です」

    • 3.「お母さんは今までどおりの関わりで良いですよ」

    • 4.「Aさんが自分で自分のことをできるようにサポートしていきましょう」

    解答・解説

    1.(×)母親が「私しかこの子の力になってあげられない」と言っているので、それを前提として対応します。
    2.(×)なるべく怒らせないようにすることは、問題の先送りでしかありません。
    3.(×)「Aさんに対して小さな子どもに接するように世話をしていた」「私しかこの子の力になってあげられない」「でも、そう言うとAは怒ってしまいます」という記述から、母親はAさんを過剰に保護し、かつ腫れものを触るように接していることが分かります。Aさんの自助努力を促すためには、母親も関わり方を変える必要があるでしょう。
    4.(○)Aさんが回復するためには、あくまで本人の努力が必要です。その取り組みを医療者と母親が協力してサポートすることが適切です。

    第109問

    Aさん(23歳、女性)。両親との3人暮らし。Aさんは大学受験に失敗して以来、自宅に引きこもりがちになった。1年前から手洗いを繰り返すようになり、最近では夜中も起き出して手を洗い、手の皮膚が荒れてもやめなくなった。心配した母親が付き添って受診したところ、Aさんは強迫性障害(obsessive-compulsive disorder)と診断された。母親は、Aさんについて「中学生までは成績優秀で、おとなしい子どもだった」と言う。Aさんには極度に疲労している様子がみられたことから、その日のうちに任意入院となった。 入院後、Aさんは主治医と話し合い、1日の手洗いの回数を決めたが、毎日その回数を超えて手洗いを続けている。看護師が確認するといつも洗面所にいる。 Aさんが決めた回数を超えて洗面所で手洗いを続けているときに、看護師がとる対応で適切なのはどれか。

    • 1.手洗いを続けてしまうことについてAさんと一緒に話し合う。

    • 2.病棟は清潔であることをAさんに説明する。

    • 3.主治医にAさんの隔離について相談する。

    • 4.Aさんと決めた手洗いの回数を増やす。

    解答・解説

    強迫性障害では、自分でもつまらないことだと分かっていても、そのことが頭から離れず、何度も同じ行為を繰り返してしまいます。意に反して頭に浮かんで払いのけられない考えを強迫観念、ある行為をしないではいられないことを強迫行為といいます。日常生活に支障をきたすようなら、認知行動療法と薬物治療が必要になります。
    1.(○)手洗いを続けてしまうことについてAさんと一緒に話し合うのは、認知行動療法に当たります。強迫性障害に対しては認知行動療法が効果的であることが、各種研究で示されています。
    2.(×)Aさんは、病棟が不潔だと考えて手洗いをしているのではありません。
    3.(×)隔離をしても、根本的な解決にはつながりません。
    4.(×)手洗いの回数を増やしたところで、根底にある不安の解消にはつながらず、より日常生活に支障をきたしてしまいます。

    第110問

    Aさん(23歳、女性)。両親との3人暮らし。Aさんは大学受験に失敗して以来、自宅に引きこもりがちになった。1年前から手洗いを繰り返すようになり、最近では夜中も起き出して手を洗い、手の皮膚が荒れてもやめなくなった。心配した母親が付き添って受診したところ、Aさんは強迫性障害(obsessive-compulsive disorder)と診断された。母親は、Aさんについて「中学生までは成績優秀で、おとなしい子どもだった」と言う。Aさんには極度に疲労している様子がみられたことから、その日のうちに任意入院となった。 Aさんは、食事の時間以外は他の患者との接触を避け、病室で1人で過ごしている。両親は共働きで、毎日面会に来ることはできない。Aさんは自宅に面会の催促の電話をかけては母親と口論している。Aさんとの関わりに心身ともに疲れ果てた母親が、看護師に相談してきた。 母親への看護師の対応で最も適切なのはどれか。

    • 1.父親と交代で毎日面会に来るよう勧める。

    • 2.Aさんからの自宅への連絡を制限することを約束する。

    • 3.Aさんの代わりに看護師がAさんの苦悩を母親に伝える。

    • 4.Aさんと母親との話し合いに看護師が同席することを提案する。

    解答・解説

    1.(×)心身ともに疲れ果てた母親にとって、父親と交代であっても、毎日の面会は負担が重すぎます。
    2.(×)Aさんからの自宅への連絡を制限することは法的にも許されません。
    3.(×)看護師がAさんの苦悩を十分に理解しているとは限らないので不適切です。また、第三者である看護師が不用意に介入すると、家族の関係性の再構築にも支障となりかねません。
    4.(○)Aさんと母親との話し合いに看護師が同席することで、家族間のコミュケーションを支援することが適切です。Aさんの回復のためにも、母親との関係性の改善は大きな助けになります。

    第111問

    Aさん(23歳、女性)。両親との3人暮らし。Aさんは大学受験に失敗して以来、自宅に引きこもりがちになった。1年前から手洗いを繰り返すようになり、最近では夜中も起き出して手を洗い、手の皮膚が荒れてもやめなくなった。心配した母親が付き添って受診したところ、Aさんは強迫性障害(obsessive-compulsive disorder)と診断された。母親は、Aさんについて「中学生までは成績優秀で、おとなしい子どもだった」と言う。Aさんには極度に疲労している様子がみられたことから、その日のうちに任意入院となった。 入院1か月後、手洗い行為は軽減してきた。Aさんはカーテンを閉め切って1人で過ごしていることが多いが、担当看護師や主治医とは治療についての話ができるようになってきた。Aさんは「薬を飲む以外にできることはありますか」と聞いてきた。 このときのAさんに最も有効と考えられるのはどれか。

    • 1.催眠療法

    • 2.作業療法

    • 3.認知行動療法

    • 4.就労移行支援

    解答・解説

    1.(×)強迫性障害に対する催眠療法は、有効性が認められているとはいえず、一般的ではありません。
    2.(×)Aさんにとって、作業療法は気分転換や社会との接点を作るという意味では適切だと考えられますが、認知行動療法および薬物療法のほうが優先度が高いでしょう。
    3.(○)強迫性障害の治療としては、認知行動療法と薬物療法を組み合わせることが一般的です。薬物療法ではSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)などが用いられます。
    4.(×)就労移行支援は就労の希望者に対して行うべきですが、その希望がAさんにあるか設問からは読み取れません。また、強迫性障害の回復がみられていないことからも、まだ就労移行は難しいといえるでしょう。

    第112問

    Aさん(76歳、女性)。夫(74歳)と2人暮らし。6年前にParkinson〈パーキンソン〉病(Parkinson disease)と診断された。現在、Hoehn-Yahr〈ホーエン・ヤール〉の重症度分類でステージIII、要介護1である。トイレと浴室には手すりが設置されている。レボドパ〈L-dopa〉を1日3回内服している。最近、足がすくむことが増えたため受診した。Aさんは主治医から「薬剤の効果を評価するために、服薬時間や生活の状況を日誌に記録しましょう。2週後にまた受診してください」と説明を受けた。 外来看護師が日誌に記録する内容をAさんに指導することになった。 日誌に記録する内容で最も重要なのはどれか。

    • 1.食事の量

    • 2.便の性状

    • 3.振戦の有無

    • 4.排尿の回数

    解答・解説

    パーキンソン病の4大症状として、振戦、固縮、寡動・無動、姿勢反射障害が挙げられます。また、進行期に現れる運動合併症として、症状の日内変動(ウェアリング・オフ現象)や不随意運動(ジスキネジア)が知られています。ウェアリング・オフ現象は、薬剤の効果時間が短縮し、次の服用までに効果が消えることで、症状が現れたり消えたりすることです。ジスキネジアは、レボドパを過剰に摂取したとき、意に反して手足など身体の一部が勝手に動く不随意運動です。パーキンソン病が進行すると、ドパミン神経細胞が減少し、レボドパから作られたドパミンを貯蔵しておくことが難しくなるため、ウェアリング・オフ現象やジスキネジアが起こります。したがって、レボドパの調整をするため、選択肢の中では振戦の有無を記録することが最も重要だといえます。
    よって、1.(×)、2.(×)、3.(○)、4.(×)、となります。

    第113問

    Aさん(76歳、女性)。夫(74歳)と2人暮らし。6年前にParkinson〈パーキンソン〉病(Parkinson disease)と診断された。現在、Hoehn-Yahr〈ホーエン・ヤール〉の重症度分類でステージIII、要介護1である。トイレと浴室には手すりが設置されている。レボドパ〈L-dopa〉を1日3回内服している。最近、足がすくむことが増えたため受診した。Aさんは主治医から「薬剤の効果を評価するために、服薬時間や生活の状況を日誌に記録しましょう。2週後にまた受診してください」と説明を受けた。 Aさんと夫は、2週後に日誌を持って受診した。レボドパの処方が1日4回に増量されることになり、病状管理と療養指導のためAさんは週1回の訪問看護を利用することになった。薬剤が増量されてから1週が経過し、足がすくむことが少なくなった。Aさんから「足がすくむようになってから浴槽に入るのをやめていたけれど、入浴しても大丈夫でしょうか」と訪問看護師に相談があった。 Aさんに指導する内容で最も適切なのはどれか。

    • 1.「レボドパが効いている時間に入浴しましょう」

    • 2.「通所介護の入浴を利用しましょう」

    • 3.「訪問入浴介護を利用しましょう」

    • 4.「シャワー浴にしましょう」

    解答・解説

    AさんはHoehn-Yahrの重症度分類でステージIII(姿勢反射障害あり)、要介護1で、足がすくむようになる前は自宅で訪問介護を受けずに入浴を行っていました。
    1.(○)薬剤の増量から1週間しかたっておらず、すくみ足が完全になくなったわけではないので、入浴時の転倒予防には細心の注意が必要です。一人での入浴はリスクが高いといえますが、薬剤の効果が現れている時間と訪問看護の時間を合わせることで入浴介助を行います。
    2.(×)薬剤の効果が現れている時間に通所介護で入浴できるとは限らないので不適切です。
    3.(×)Aさんは要介護1なので、訪問入浴介護を利用するほどの状態ではありません。
    4.(×)薬剤の増量から1週間しかたっておらず、すくみ足が完全になくなったわけではないので、シャワー浴にとどめることも検討に値します。ただ、できる範囲でAさんの希望に沿える方法を考えることが望ましいでしょう。

    第115問

    Aさん(72 歳、男性)。妻と2人暮らし。朝6時に、妻が一緒に寝ていたAさんの様子がおかしいことに気付き、救急車を呼んだ。Aさんは病院に搬送された。病院到着時、ジャパン・コーマ・スケール〈JCS〉II-10。右片麻痺および失語がみられる。Aさんのバイタルサインは、体温37.0℃、呼吸数20/分、心拍数110/分、血圧150/90mmHg。身長160cm、体重60kg。頭部CTで明らかな異常所見はなく、頭部MRIを行う予定である。 妻から聴取したAさんに関する以下の情報のうち、治療方針を決定するために最も重要な情報はどれか。

    • 1.5年前から禁煙していた。

    • 2.最近、眠りが浅いと言っていた。

    • 3.今朝5時にトイレから戻って来た。

    • 4.健康診査を2年間受診していなかった。

    解答・解説

    「血圧150/90mmHg」「意識レベルの低下(JCS II-10)」「右片麻痺および失語」という状態からは、脳梗塞が疑われます。頭部CTで明らかな異常は認められておらず、発症4.5時間以内であればt-PA(組織プラスミノーゲンアクチベータ)の静注による血栓溶解療法が奏功する可能性があります。したがって、発症からの経過時間が分かる選択肢3が、治療方針を決定するために最も重要な情報となります。他の選択肢は、病気の原因を探ったり、再発予防を図ったりするためには有益な情報ですが、治療方針の決定には役立ちません。
    よって、1.(×)、2.(×)、3.(○)、4.(×)、となります。

    第116問

    Aさん(72 歳、男性)。妻と2人暮らし。朝6時に、妻が一緒に寝ていたAさんの様子がおかしいことに気付き、救急車を呼んだ。Aさんは病院に搬送された。病院到着時、ジャパン・コーマ・スケール〈JCS〉II-10。右片麻痺および失語がみられる。Aさんのバイタルサインは、体温37.0℃、呼吸数20/分、心拍数110/分、血圧150/90mmHg。身長160cm、体重60kg。頭部CTで明らかな異常所見はなく、頭部MRIを行う予定である。 Aさんは、左中大脳動脈領域の脳梗塞(cerebral infarction)と診断 され、組織プラスミノーゲンアクチベータ〈t-PA〉による血栓溶解療法が行われた。入院から2日後、右片麻痺は残存しているものの、ジャパン・コーマ・スケール〈JCS〉I-3と改善がみられた。多職種カンファレンスで経口栄養を検討したが、言語聴覚士による評価では、Aさんは誤嚥のリスクが高いと判断され、経鼻胃管による経管栄養を行うこととなっ た。 Aさんに行う経管栄養法について適切なのはどれか。

    • 1.白湯から開始する。

    • 2.開始前に胃残渣を確認する。

    • 3.経鼻胃管挿入中は嚥下訓練を中止する。

    • 4.1日の目標摂取エネルギー量は2,200kcalとする。

    解答・解説

    1.(×)場合によっては栄養剤の前に白湯を投与して腸蠕動を促すこともありますが、まずは胃残渣を確認して消化管の状態を評価しなければ、判断することができません。
    2.(○)経管栄養の実施にあたっては、事前に胃残渣の量や性状を確認し、そこから消化管の状態を評価して栄養剤の種類や注入量を決めます。
    3.(×)経鼻胃管の挿入中であっても、嚥下訓練を行うことは可能です。
    4.(×)「日本人の食事摂取基準(2015年版)」によると、70歳以上の男性で身体活動レベルII(ふつう)の場合、1日の目標摂取エネルギーは2,200kcalとされています。しかし、Aさんは脳梗塞で入院して2日後の段階なので、身体活動レベルは低下していると考えられます。身体活動レベルI(低い)の1,850kcalが目安になるでしょう。

    第117問

    Aさん(72 歳、男性)。妻と2人暮らし。朝6時に、妻が一緒に寝ていたAさんの様子がおかしいことに気付き、救急車を呼んだ。Aさんは病院に搬送された。病院到着時、ジャパン・コーマ・スケール〈JCS〉II-10。右片麻痺および失語がみられる。Aさんのバイタルサインは、体温37.0℃、呼吸数20/分、心拍数110/分、血圧150/90mmHg。身長160cm、体重60kg。頭部CTで明らかな異常所見はなく、頭部MRIを行う予定である。 入院3日の20時、Aさんは覚醒し、点滴を触ったり、経鼻胃管を抜こうとしたりしており、落ち着かない様子である。 担当看護師が最初に行う対応で適切なのはどれか。

    • 1.身体拘束を行う。

    • 2.早めに消灯をする。

    • 3.バイタルサインを測定する。

    • 4.向精神薬の使用を検討する。

    解答・解説

    脳梗塞の後遺症または再梗塞の徴候として、落ち着きのなさや注意障害が現れることがあります。
    1.(×)身体拘束は原則として人権侵害であり、医学的必要性を吟味した上で、どうしてもやむを得ない場合を除いては認められません。身体拘束自体が、せん妄を誘発するリスクもあります。
    2.(×)早めに消灯したとしても、Aさんは就眠できる状態にはありません。
    3.(○)バイタルサインを測定し、再梗塞のおそれがないかアセスメントする必要があります。
    4.(×)せん妄に対しては向精神薬の使用を検討することがあるものの、まずはアセスメントが必要です。

    第118問

    Aさん(34歳、経産婦)は、夫(35歳)と長男のB君(3歳)との3人暮らし。これまでの妊娠経過に異常はなかった。20時に体重3,150gの男児を正常分娩した。分娩所要時間は6時間30分、分娩時出血量は480mLであった。第1度会陰裂傷のため、縫合術を受けた。その他の分娩の経過に問題はなかった。 Aさんは翌日の2時に尿意があり、自然排尿があった。8時に「昨夜は後陣痛の痛みが強くて眠れませんでした。おっぱいを飲ませたら、後陣痛がさらに強くなって、汗が出てきました」と言う。子宮底の高さは臍高、子宮は硬く触れ、血性悪露が中等量みられる。Aさんのバイタルサインは、体温37.0℃、脈拍68/分、血圧125/70mmHgであった。 このときのAさんへの対応で適切なのはどれか。

    • 1.授乳を促す。

    • 2.入浴を勧める。

    • 3.骨盤底筋体操を指導する。

    • 4.鎮痛薬の使用を医師に相談することを伝える。

    解答・解説

    1.(×)授乳時の吸啜により乳頭が刺激され、オキシトシンの分泌が促されます。オキシトシンは射乳反射を起こすとともに子宮を収縮させるので(オキシトシンは陣痛促進剤として使われる)、後陣痛(分娩終了後数日間持続する、子宮収縮に伴う痛み)が増強されてしまいます。
    2.(×)産褥1か月間は、上行感染予防のためにシャワー浴を勧めます。
    3.(×)骨盤底筋体操は、頻尿や尿漏れを改善するものであり、後陣痛とは無関係です。
    4.(○)鎮痛薬の使用は、後陣痛を軽減するために有効な手段の一つです。

    第119問

    Aさん(34歳、経産婦)は、夫(35歳)と長男のB君(3歳)との3人暮らし。これまでの妊娠経過に異常はなかった。20時に体重3,150gの男児を正常分娩した。分娩所要時間は6時間30分、分娩時出血量は480mLであった。第1度会陰裂傷のため、縫合術を受けた。その他の分娩の経過に問題はなかった。 産褥5日。Aさんの退院のため、夫とB君が迎えに来た。AさんはB君の自宅での様子を夫から聞いた。B君は「ご飯を食べさせてほしい」と訴えたり、「赤ちゃんを家に連れて来ないで」と泣いたりしていたという。そのことを知ったAさんはB君を抱きしめ、B君の話をゆっくり聞いていた。Aさんは退院後のB君への対応について心配になり、看護師に相談した。 Aさんへの説明で最も適切なのはどれか。

    • 1.「B君に好きな物を食べさせましょう」

    • 2.「B君の世話は夫にしてもらいましょう」

    • 3.「B君と一緒に赤ちゃんの世話をしましょう」

    • 4.「B君に兄としてしっかりするように話しましょう」

    解答・解説

    B君は、母親との関係の変化、生まれてきた赤ちゃんに対する嫉妬などから、精神的に不安定な言動を見せていると考えられます。このようなことは一般的で、退行現象を示したり、家族に対して攻撃的な態度を取ったり、逆に過剰に甘えたりしますが、両親は新しい家族の関係形成に取り組む必要があります。B君に対する愛情が変わらずあることを十分に伝えるとともに、B君の思いをじっくりと聞く時間を持つとよいでしょう。また、両親と一緒にB君が赤ちゃんに関わる機会を作ることで、新しいきょうだいとの関係形成が期待できます。
    よって、1.(×)、2.(×)、3.(○)、4.(×)、となります。

    第120問

    Aさん(82歳、男性)。長男夫婦との3人暮らし。4年前に認知症(dementia)と診断された。Barthel〈バーセル〉インデックスは100点、Mini Mental State Examination〈MMSE〉は18 点。環境の変化で落ち着きがなくなることがある。日頃は温泉旅行やカラオケを楽しんでいる。右外果にできた創傷から右下腿の腫脹と疼痛が出現したため病院を受診したところ、蜂窩織炎(cellulitis)と診断されて入院した。入院翌日、右下腿の腫脹と疼痛は続いている。担当看護師は、認知症の行動・心理症状〈BPSD〉を最小限にするための看護を計画することとした。 担当看護師が計画するAさんへの看護で適切でないのはどれか。

    • 1.右下腿を足浴する。

    • 2.右下腿を挙上する。

    • 3.温泉旅行の話をする。

    • 4.Aさんが好きな歌を歌う機会をつくる。

    • 5.「治療で病状が改善すると抗核抗体が陰性になります」

    解答・解説

    蜂窩織炎は、真皮から皮下脂肪組織にかけてのびまん性化膿性炎症性疾患で、四肢(特に下腿)に好発します。主な原因菌は、黄色ブドウ球菌とA群β溶血性連鎖球菌です。
    1.(○)炎症部位を温めると、炎症を増悪させるおそれがあります。そうなった場合、BPSDが悪化する可能性も考えられます。
    2.(×)蜂窩織炎により右下腿の腫脹をきたしているので、患肢を挙上して安静を保ちます。
    3.(×)Aさんが好きな温泉旅行の話をして、精神的安定に働きかけることは、BPSDを最小限にすることに寄与します。
    4.(×)Aさんに好きな歌を歌ってもらい、精神的安定に働きかけることは、BPSDを最小限にすることに寄与します。

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