出産手当金が入金されるのは、申請書の提出から約1~2ヶ月後です。申請書の提出を行うのは産休明けが一般的なため、産休日から考えると実際に支給されるまで3ヶ月ほどかかります。
この記事では、出産手当金の申請から入金までの流れを解説。出産手当金を早く受け取るための対処法も紹介しています。
出産手当金とは
出産手当金とは、被保険者である女性が出産のために会社を休み、その期間に給与の支払いを受けなかった場合に受け取れる手当のことです。産休手当とも呼ばれています。
出産手当金を受け取れる期間は、出産日(出産が予定日より後になった場合は、出産予定日)以前42日から出産の翌日以後56日目までです。出産が予定日より遅れた場合は、その遅れた期間分も支給されます。
出産手当金の支給要件
出産手当金を受け取れるのは、以下の支給要件を満たしている人です。
勤務先で健康保険に加入している
協会けんぽや各団体の健康保険組合、勤務先の健康保険に加入している被保険者であることが要件です。
国民健康保険には出産手当金の制度がないため、健康保険に加入している被保険者の被扶養者(配偶者)や働いていない女性、国民健康保険に加入するフリーランスの方などは出産手当金を受け取れません。
妊娠4ヶ月(85日)以降の出産である
支給要件を満たすのは、妊娠4ヶ月(85日)以降に出産した場合です。
妊娠4ヶ月(85日)以降に、流産・死産・人工妊娠中絶をした場合も出産手当金の対象となります。
出産のために休業しており給与支給がない
出産のために産休を取得し、産休中に給与の支払いを受けていない人が出産手当金を受け取れます。
なお、産休中に給与の支払いがあっても、その給与の日額が出産手当金の日額より少ない場合は、その差額分が支給されます。
出産手当金の支給額
出産手当金の1日あたりの受給額は、以下の計算式で算出します。
支給開始日以前12ヶ月間における各標準報酬月額の平均額 ÷ 30日 × 2/3 |
仮に標準報酬月額の平均額が30万円だった場合、支給される出産手当金は以下のとおりです。
30万円 ÷ 30日 × 2/3 = 6,667円
6,667円 ×(産前休暇42日 + 産後休暇56日)= 65万3,366円
実際の出産日が予定日から遅れた場合は、出産予定日から実際の出産日までの期間が受給対象期間となります。
参照元:
全国健康保険協会「出産手当金について」
全国健康保険協会「出産に関する給付」
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出産手当金の申請から入金までの流れ
出産手当金は、一般的に申請から1〜2ヶ月後に入金されます。出産手当金の申請から入金までの流れは、以下のとおりです。
1.健康保険出産手当金支給申請書を入手
産休に入る前に、健康保険出産手当金支給申請書を入手します。会社の担当者から受け取るか、加入している健康保険組合の公式サイトからダウンロードしましょう。
2.被保険者記入用のページを記入する
被保険者証の記号・番号や生年月日、氏名、電話番号、住所、振込先指定口座など、本人が記入すべき項目を漏れがないように書きます。
3.医師・助産師記入用のページを医師や助産師に記入してもらう
入院時に病院・助産院に健康保険出産手当金支給申請書を提出し、医師や助産師に必要事項を記入してもらいます。
4.健康保険出産手当金支給申請書を提出する
記入漏れや記入ミスがないか確認したうえで、健康保険出産手当金支給申請書を勤務先に提出します。
5.出産手当金の入金
健康保険出産手当金支給申請書が受理されると、指定口座に出産手当金が入金されます。
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出産手当金が早く欲しい場合は…
一般的に、出産手当金の申請から入金までは1〜2ヶ月ほどかかります。少しでも早く欲しい方は以下の対処法を実践してみてください。
産前と産後の出産手当金を分けて申請する
多少の手間はかかってしまいますが、産前休暇と産後休暇の申請を分けて行うことで支給を早めることが可能です。
- 産前休暇分の申請は、出産後すぐに行う
- 産後休暇分の申請は、産後休暇の終了後に行う
産前休暇分の申請を出産後すぐに行うことで、産前休暇分の出産手当金を出産後2ヶ月ほどで受け取れる可能性があります。
申請書類を事前に準備する
申請書提出までの流れをスムーズにするために、申請書は入院前に入手しておきましょう。入院したら、すぐに病院に渡して退院までに記入してもらうよう依頼します。申請書の提出を早く行えば、その分出産手当金の支給も早くなるでしょう。
なお、里帰り出産をしていて退院後すぐに現在の住まいへ戻る人は、退院までに書類を受け取れるように依頼しておくのが賢明です。実家を発つまでに書類を受け取れなかった場合は、郵送手配などの手間がかかってしまいます。
手続きを早めにできるか会社に相談する
会社に申請書提出までの手続きを早急にしてもらうよう依頼することで、出産手当金の支給を早められる可能性があります。
たとえば、月末にまとめて申請をしている会社の場合、月初に書類を提出しても、会社から健康保険組合に書類が提出されるのは月末です。あらかじめ会社の担当者に相談しておけば、会社で書類を受け取り次第、処理をしてくれる可能性があります。会社によって対応方法は異なるので、出産手当金が早く欲しい方は、一度会社に相談すると良いでしょう。
出産手当金が入金されないときの対処法
出産手当金の申請後、しばらく経ってもなかなか入金されないときは以下の対処法を試してみましょう。
会社の担当者に確認する
まずは、会社の担当者に確認してみましょう。
すでに会社から健康保険組合に書類を提出している場合は、会社から健康保険組合に確認をしてもらいます。会社の担当者を通すことで、現在の状況をスムーズに確認できます。
もし、まだ会社に書類があって健康保険組合に未提出の場合は、至急手続きをしてもらうよう依頼しましょう。
申請先の健康保険組合に確認する
会社を通さずに自身で健康保険組合に確認する方法もあります。
自身の記入内容にミスなどがあれば、会社を通すよりもスムーズにやり取りできる場合もあります。ただし、会社を通して書類を提出している場合は、会社から問い合わせたほうがスムーズに確認できるでしょう。
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出産手当金に関するQ&A
ここでは、出産手当金に関するよくある疑問をQ&A形式で紹介します。
出産手当金の出産育児一時金の違いは?
出産手当金は、勤務先で加入する健康保険の被保険者が出産のために会社を休み、その期間に給与の支払いを受けなかった場合に受け取れる手当です。一方、出産育児一時金は、健康保険の被保険者および被扶養者が出産した場合に支給されます。
出産手当金は産休中の生活費の一部保障を目的としていますが、出産育児一時金は出産費用の負担軽減を目的としているのも大きな違いです。
退職後でも出産手当金は受け取れる?
下記2点の条件を満たしていれば、会社を退職していても出産手当金を受け取れます。
- 退職日まで継続して1年以上健康保険に加入している
- 出産手当金の支給対象期間内の退職である
ただし、退職日当日に出勤している場合は継続給付を受ける条件を満たさないため、資格喪失後(退職日の翌日)以降の出産手当金は受け取れません。
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まとめ
出産手当金は、申請から入金まで1~2ヶ月ほどかかります。子どもが産まれてから書類を準備するのは大変なので、病院に入院する前に健康保険出産手当金支給申請書を手に入れて記入しておきましょう。
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