出産・育児を控えている方の中には、「育休はどのくらい取得できるのか」「育休は延長できるのか」「男性も育休を取得できるのか」など、疑問を多数抱えている方もいるでしょう。
この記事では、育休の取得可能期間や平均取得日数について詳しく解説します。また、受け取れる給付金や育休後に利用できる制度についてもまとめているので、育休を取得する予定の方は参考にしてください。
育休(育児休業)とは
育休(育児休業)とは、原則1歳未満の子どもを養育するための休業のことです。男女いずれも取得可能で、法律上の親子関係があれば実子だけでなく養子も対象となります。育休は育児・介護休業法によって定められており、勤務先の就業規則に育休に関する規定がない場合でも法令に基づき取得可能です。
ただし、子どもが1歳6ヶ月になる日までにその労働契約の期間が満了することが明らかである労働者は取得できません。また、日雇い労働者も取得不可です。
育児休暇との違い
育児休業と育児休暇は、どちらも子育てのために仕事を休む制度ですが、その内容や適用範囲には違いがあります。
育児休業は法律に基づいて定められた制度で、子どもが1歳になるまで(特定の場合には最長2歳まで)の期間、育児のために仕事を休むことができます。対象者は1歳未満の子どもを養育する労働者です。育児休業給付金が支給されるため、経済的なサポートを受けられます。
一方、育児休暇は企業が独自に設けている制度で、育児のために仕事を休むことができる期間を指します。法律ではなく、企業の就業規則や労働協約に基づいています。そのため、内容や期間、給与の支給有無などは企業によってさまざま。そもそも、育児休暇制度がない企業もあります。
産休との違い
産休とは、出産をする女性が出産前後に取得する休業のことです。出産前の準備期間に取る「産前休業」と、出産後に身体を回復する目的で取る「産後休業」の2つの休みをあわせて「産休」と呼びます。
産前休業は、出産予定日の6週間前(双子以上の場合は14週間前)から請求した場合に取得可能です。出産日は産前休業に含まれます。
出産の翌日から8週間は就業できないと決まっており、これが産後休業です。産後6週間をすぎた後は、本人が請求し、医師が支障ないと認めた業務であれば就業可能です。なお、妊娠4ヶ月以上での流産・死産についても産後休業の対象です。
参照元:厚生労働省「育児休業特設サイト」
育休を取得できる期間
法律で定められた育休には「育児休業」のほかに、「パパ・ママ育休プラス」「産後パパ育休(出生時育児休業)」があり、取得できる期間が異なります。各制度を理解して適切に利用することで、育児と仕事の両立をスムーズに行うことが可能です。
以下では、それぞれの育休制度の取得期間について詳しく説明します。
育児休業の取得期間
育児休業の取得期間は、原則として子どもが1歳に達するまでです。ただし、子どもが1歳に達しても保育園に入所できないといった事業があれば、最長で2歳になるまで延長できます。
なお、2回に分けて分割取得することも可能です。
パパ・ママ育休プラスの取得期間
育児休業の特例が「パパ・ママ育休プラス」です。
両親がともに育児休業をする場合、子どもが1歳2ヶ月に達する日まで期間が延長されます。ただし、以下の要件を満たす必要があります。
- 配偶者が子どもが1歳に達するまでに育児休業を取得していること
- 本人の育児休業開始予定日が、子どもの1歳の誕生日以前であること
- 本人の育児休業開始予定日は、配偶者がしている育児休業の初日以降であること
なお、育休が取得できる最大日数が1年であることに変わりはありません。
産後パパ育休(出生時育児休業)の取得期間
男性の育児参加を促進する制度であり、育休とは別に取得できるのが「産後パパ育休(出生時育児休業)」です。令和4年10月1日の育児・介護休業法改正に伴い創設されました。
産後パパ育休は、産後8週間以内に4週間(28日)を限度として、2回に分けて取得可能です。
参照元:
厚生労働省「育児介護休業 特設サイト」
厚生労働省「両親で育児休業を取得しましょう!」
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育休の期間延長ができるケース
育休は以下のような理由がある場合、1歳6ヶ月になるまで延長可能です。さらに、1歳6ヶ月に達した時点で保育所に入れないといった場合には、再度申請することで育休期間を最長2歳まで延長できます。
- 保育所などに申し込みを行っているが入所できないとき
- 子どもを養育する者が死亡したとき
- 子どもを養育する者が負傷や疾病などで、養育が困難になったとき
- 婚姻の解消などで、配偶者と別居することになったとき
- 子どもを養育する予定だった者が産前産後休業を取得したとき(新たに妊娠・出産をするとき)
育休の期間延長に必要な手続き
育休の期間延長の申請は、勤務先に行います。
申請をするタイミング
2歳までの延長:1歳6ヶ月の2週間前まで
2歳まで延長する際は1歳6ヶ月までの延長をしたうえで、さらに再延長の申請をします。
申請に必要な書類
育休の期間延長をする際は、育児休業給付金支給申請書と延長する理由にあわせた以下の書類が必要です。
育休期間を延長する理由 | 育休期間の延長に必要な確認書類 |
---|---|
保育所などに申し込みを行っているが入所できない | 市町村が発行した保育所等の入所保留の通知書など、当面保育所等で保育が行われない事実を証明することができる書類 |
子どもを養育する者が死亡した | 世帯全員について記載された住民票の写し、母子健康手帳 |
子どもを養育する者が負傷や疾病などで、養育が困難になった | 保育を予定していた者の状態に関する医師の診断書 |
婚姻の解消などで、配偶者と別居することになった | 世帯全員について記載された住民票の写し、母子健康手帳 |
子どもを養育する予定だった者が産前産後休業を取得した(新たに妊娠・出産をする) | 母子健康手帳 |
なお、2025年4月からは、保育所等に入れなかったことを理由とする育児休業給付金の支給対象期間延長手続きが変わります。「市町村が発行した保育所等の入所保留の通知書」のほかに、以下の書類が必要です。
- 育児休業給付金支給対象期間延長事由認定申告書
- 市区町村に保育所等の利用申し込みを行ったときの申込書の写し
参照元:
厚生労働省「育児休業給付について」
厚生労働省「育児休業給付金の支給対象期間延長手続き」
育休の平均取得期間は?
厚生労働省の「令和5年度雇用均等基本調査」によると、2022年4月1日から2023年3月31日までの1年間に育休(産後パパ育休を含む)を終了し、復職した人の育休期間は以下のとおりです。
育休の取得期間 | 女性 | 男性 |
---|---|---|
5日未満 | 0.4% | 15.7% |
5日~2週間未満 | 0.2% | 22.0% |
2週間~1ヶ月未満 | 0.6% | 20.4% |
1ヶ月~3ヶ月未満 | 1.8% | 28.0% |
3ヶ月~6ヶ月未満 | 4.4% | 7.5% |
6ヶ月~8ヶ月未満 | 4.6% | 2.9% |
8ヶ月~10ヶ月未満 | 11.4% | 0.8% |
10ヶ月~12ヶ月未満 | 30.9% | 1.1% |
12ヶ月~18ヶ月未満 | 32.7% | 1.4% |
18ヶ月~24ヶ月未満 | 9.3% | 0.2% |
24ヶ月~36ヶ月未満 | 9.0% | 0.0% |
36ヶ月以上 | 0.6% | – |
女性は12ヶ月~18ヶ月未満が32.7%と最も高く、次いで10ヶ月~12ヶ月未満が30.9%、8ヶ月~10ヶ月未満が11.4%でした。
一方、男性は1ヶ月~3ヶ月未満が28.0%と最も高く、次いで5日~2週間未満が22.0%、2週間~1ヶ月未満が20.4%です。
女性は1年ほど育休を取得しているのに対し、男性は5日~3ヶ月未満と日数が圧倒的に少ない結果となりました。これは、いまだに男性の育休取得(産後パパ育休を含む)が浸透していないことが要因と考えられます。
また、そもそも育休取得者の割合が異なり、女性が84.1%なのに対し男性は30.1%です。男性は3割程度と少ないながらも、前年度の17.13%から大幅に増加しています。今後さらに男性の育休が浸透するにつれ、取得者は増えると予想されるでしょう。
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育休期間中は育児休業給付が受けられる
育休(育児休業)を取得した場合は「育児休業給付金」、産後パパ育休(出生時育児休業)を取得した場合は「出生時育児休業給付金」の支給が受けられます。ただし、それぞれ要件を満たす必要があります。
育児休業給付金
育児休業給付金の支給要件と支給額は以下のとおりです。
支給要件
- 1歳未満の子どもを養育するために、育児休業を取得した被保険者である
- 休業開始日前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある(ない場合は賃金の支払いの基礎となった時間数が80時間以上の)完全月が12ヶ月以上ある
- 一支給単位期間中の就業日数が10日以下または就業した時間数が80時間以下である
- (期間を定めて雇用される方の場合)養育する子どもが1歳6ヶ月に達する日までの間に、その労働契約の期間が満了することが明らかでない
支給額
なお、支給日数が30日の場合の支給上限額と支給下限額は以下のとおりです。
【給付率67%】
支給上限額:315,369円
支給下限額:57,666円
【給付率50%】
支給上限額:235,350円
支給下限額:43,035円
ただし、育休期間中に賃金が支払われた場合は計算方法が異なります。
出生時育児休業給付金
出生時育児休業給付金の支給要件と支給額は以下のとおりです。
支給要件
- 子どもの出生日から起算して8週間を経過する日の翌日までの期間内に、4週間(28日)以内の期間を定めて、当該子を養育するための産後パパ育休を取得した被保険者である
- 休業開始日前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある(ない場合は賃金の支払いの基礎となった時間数が80時間以上の)完全月が12ヶ月以上ある
- 休業期間中の就業日数が、最大10日(10日を超える場合は就業した時間数が80時間)以下である
支給額
なお、休業開始時賃金日額の上限額は15,690円です(令和7年7月31日までの額)。よって、出生時育児休業給付金の支給上限額は294,344円(15,690円×28日×67%)になります。
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育休期間後に利用できる制度
育休期間後も、育児のためにさまざまな制度が利用できます。ここでは、代表的な制度を3つ紹介します。
短時間勤務制度
短時間勤務制度は、育児のために1日の所定労働時間を原則として6時間(5時間45分から6時間まで)とする制度です。育児・介護休業法に基づき、以下が対象となります。
- 3歳に満たない子どもを養育している
- 1日の所定労働時間が6時間以下ではない
- 日雇い労働者ではない
- 労使協定により適用除外とされた労働者ではない
なお、企業によっては3歳以上の子どもを持つ労働者にも、短時間勤務制度を適用している場合があります。そのため、詳しい内容は勤務先の規定を確認しましょう。
子の看護休暇
子の看護休暇は、小学校就学前の子どもが病気やケガをした際に取得できる休暇です。1年間に5日(子どもが2人以上いる場合は10日)まで取得可能で、有給・無給は企業によって異なります。
対象は日雇い労働者を除くほぼすべての労働者です。ただし、勤務先との労使協定によっては、以下にあてはまる労働者は対象外となります。
- 雇用期間が6ヶ月未満である
- 1週間の所定労働日数が2日以下である
参照元:厚生労働省「子の看護休暇制度」
時間外労働の制限
小学校就学前までの子どもを養育する労働者が申し出た場合に、事業主は月24時間、年間150時間以上の時間外労働をさせてはなりません。請求回数の上限はありませんが、開始予定日の1ヶ月前までに、事業主に申し出る必要があります。
ただし、以下にあてはまる労働者は対象外です。
- 日雇い労働者
- 雇用期間が1年に満たない
- 1週間の所定労働日数が2日以下
参照元:厚生労働省「時間外労働の制限」
育休期間に関する疑問
ここでは、育休期間にまつわる疑問についてお答えします。疑問を解消したうえで育休に入りましょう。
育休期間中に給料は支払われる?
労働の対価である給料は、基本的に働いていない育休期間中は支払われません。なかには、育休中に給料を支払う企業もありますが、ごく稀です。
なお、前述したとおり一定の要件を満たすことで、育休期間中に「育児休業給付金」や「出生時育児休業給付金」が受け取れます。
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育休期間中にボーナスは支払われる?
ボーナス算定期間中に勤務していた場合は、育休期間中でもボーナスは支払われる可能性が高いでしょう。
ボーナスを支給するか否かは事業主が決めることですが、育休中であることを理由にボーナスが支払われないとなると、男女雇用機会均等法や育児・介護休業法に抵触する恐れがあります。
なお、会社の業績が悪化した際などは、減額になったり支払われなかったりする場合があります。
育休中に慣らし保育はOK?
育休中に慣らし保育をするのはOKです。1歳未満であれば、育児休業給付金も受け取れます。ただし、慣らし保育中に1歳になると、その日から育児休業給付金はもらえません。
まとめ
1歳未満の子どもを養育するとき、男女問わず取得できる休業期間が「育休(育児休業)」です。原則として子どもが1歳になるまでの期間取得できますが、保育所への入園ができない場合などやむを得ない事情があるときは1歳6ヶ月~2歳まで延長できます。また、育休制度には「パパ・ママ育休プラス」や「産後パパ育休(出生時育児休業)」もあります。
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