• 2023年4月7日
  • 2023年4月6日

出産手当金はいつもらえる? 対象期間・申請の期限・計算方法も紹介

 

出産手当金は、産休中の女性に対して、休業中の収入を保障する手当です。出産の日以前の42日と出産の翌日以後56日目までの間に休んだ期間が対象となります。

この記事では出産手当金の基本情報を踏まえ、対象期間や手当がもらえる時期、申請の時期などを詳しく解説します。退職した場合にもらえるかどうかや、手当を早くもらうための方法・手当額の計算方法にも触れるため、産前・産後休暇を控えている方は、ぜひ参考にしてください。

そもそも出産手当金とは?

厚生労働省では、出産手当金について次のように説明しています。

出産手当金とは、女性労働者が出産のため会社等を休み、その間に給料の支払いを受けなかった場合に、仕事を休んだ期間を対象として健康保険から支給されるものです。

(引用:厚生労働省 女性にやさしい職場づくりナビ「母性健康管理に関する用語辞典」

出産手当金は、産休中の女性に対して産休中の収入を保障する手当です。産休は労働基準法第65条で認められている権利である一方で、事業主には休業中の従業員に給与を支払う義務がありません。そこで、健康保険から出産手当金を支給し産休取得者をサポートしています。
(出典:e-GOV法令検索「労働基準法」

出産手当金の支給対象者となるのは、会社員などの場合は健康保険、公務員などの場合は共済組合の被保険者です。

また、類似した手当には、出産育児一時金・育児給付金があります。出産育児一時金は、出産時の費用軽減を目的とし、被保険者本人だけでなく、被保険者の扶養家族も支給対象となります。
(出典:全国健康保険協会「子どもが生まれたとき」

育児給付金は、男女問わず育休を取得した人が支給対象です。育児給付金の給付は健康保険組合ではなく、国から行われます。
(出典:厚生労働省「育児休業給付について」

出産手当金の対象となるのはいつからいつまで?

出産手当金の対象となるのはいつからいつまで?

出産手当金の対象となる期間は、次のように定められています。

出産の日(実際の出産が予定日後のときは出産予定日)以前42日(多胎妊娠の場合98日)から出産の翌日以後56日目までの範囲内で、会社を休んだ期間を対象として支給されます。出産日は出産の日以前の期間に含まれます。

出産手当金の給付は、該当の期間内で給与の支払いを受けなかった日数分のみが対象です。そのため、産休に該当する期間内でも有給を取得した日は対象日にはカウントされません。

出産予定日より遅れて出産した場合は?

出産は予定通りに進むとは限りません。出産が予定日より遅れた場合も、出産手当金の支給対象となります。

遅れた期間についても支給対象となります。

(支給期間:出産予定日前42日+出産予定日から遅れた出産日までの日数+産後56日)

支給期間には、出産予定日から実際の出産日までの日数も算入します。出産が予定日より遅れた場合、産後の56日間分は実際の出産日以降が算入されるため、実際の産休より短くなることはありません。

たとえば、子ども1人を予定日より1週間遅れで出産した場合は、下記の期間が対象となります。

42日+7日+56日=105日

退職していても支給される?

原則、健康保険などの手当は退職者には支給されません。ただし、出産手当金については、次のように定められています。

次の2点を満たしている場合に退職後も引き続き、出産手当金の支給を受けることができます。

(資格喪失後の継続給付)

被保険者の資格を喪失をした日の前日(退職日)までに継続して1年以上の被保険者期間(健康保険任意継続の被保険者期間を除く)があること。

資格喪失時に出産手当金を受けているか、または受ける条件を満たしていること。

なお、退職日に出勤したときは、継続給付を受ける条件を満たさないために資格喪失後(退職日の翌日)以降の出産手当金はお支払いできません。

上記の条件を満たせば退職後であっても受給できます。出産を機に退職する場合は、1年以上連続して健康保険などに加入し、退職時には出産手当金を受けられる条件を満たしている必要があります。また、退職する日に出勤しないことも重要です。

出産手当金はいつもらえる?

出産手当金はいつもらえる?

出産手当金は、一般的には申請が受理されてから1~2か月程度で支給されます。早めに申請書類を提出しても、申請の受理自体は産休明けとなるため、産休期間中には受け取れません。

出産手当金を申請する場合も産休中の生活を考慮し、産休に入る前から生活費などの準備をしておきましょう。

出産手当金を早くもらうための方法

出産手当金が受け取れると言っても、支給されるまでの数か月は手元のお金でやりくりする必要があります。金銭的な不安を早めに解消するために、少しでも早く受け取りたい方は多いでしょう。ここでは、出産手当金をできるだけ早く受け取るための方法について解説します。

産前・産後に分ける

出産手当金は産前・産後に分けて申請できます。産前・産後の分をまとめて申請する場合、申請に必要な書類はすべて揃えなければなりません。まとめて申請する場合、産後にしか入手できない書類も必要となるため支給までに時間がかかります。

一方、分けて申請すると産前分に関しては早い段階で申請できるため、まとめて申請するよりも早めに支給を受けられるでしょう。

申請書類を準備しておく

申請の受理そのものを早めるのは難しいものの、申請に必要な書類を先に準備し、なるべく早く申請することで支給を早められます。申請書類自体は産前でも入手できるので、自分で記入できる項目は記入しておき、必要書類が揃い次第提出しましょう。

勤め先や入院する医療機関に相談しておく

書類は勤め先から健康保険組合などに提出されます。申請の受理そのものは早められませんが、事前に事情を説明できれば、社内での処理を早めてもらえる可能性があります。

出産手当金の申請には、医療機関の医師・助産師から受け取る出産証明が必要です。医療機関には退院時に受け取れるように依頼しておきましょう。退院時を逃すと、後から医療機関にもらいに行く・郵送してもらうなどの手間や時間がかかります。特に里帰り出産などの場合は時間を大幅にロスする恐れがあるため、入院中に忘れずに依頼することが大切です。

産前・産後に分けて申請する場合は、産前分のみの支給が早まりますが、都度申請を行う必要があります。一括で申請したい場合は、事前の準備が大切です。

出産手当金の申請はいつする?

出産手当金の申請はいつする?

出産手当金を申請できる期間にも限りがあります。申請期限は産休開始日の翌日から2年以内となっており、期限後には手当金の受給ができなくなります。出産後は育児に追われ忙しく、あっという間に時間が経過するため、早めに申請しておくことを忘れないように注意しましょう。

出産手当金の申請方法

出産手当金を申請する際は、勤め先の健康保険の担当者・担当部署から出産手当金申請書を受け取り、申請者もしくは担当の医師・助産師が必要事項を記入します。

産休終了後、記入された申請書と必要書類を勤め先の担当者・担当部署に提出するまでが申請者本人の作業です。その後、申請書は勤務先にて「事業主証明欄」に記入され、健康保険組合などに提出されます。

出産手当金の計算方法

出産手当金の計算方法

出産手当金は、1日あたりの支給額に対象となる日数をかけた分支給されます。1日あたりの支給額は次の通りです。

1日当たりの金額

【支給開始日の以前12ヶ月間の各標準報酬月額を平均した額】(※)÷30日×(2/3)

(支給開始日とは、一番最初に出産手当金が支給された日のことです)

(※)支給開始日の以前の期間が12ヶ月に満たない場合は、次のいずれか低い額を使用して計算します。

ア 支給開始日の属する月以前の継続した各月の標準報酬月額の平均額

イ 標準報酬月額の平均額

・28万円:支給開始日が平成31年3月31日までの方

・30万円:支給開始日が平成31年4月1日以降の方

支給開始日以前の各標準報酬月額の平均を30で割った額については、1の位を四捨五入します。また、各標準報酬月額の平均を30で割った額の3分の2に相当する額を算出する場合は、小数点第1位を四捨五入します。
(出典:e-Gov「健康保険法」

令和5年2月に出産した場合を例にとり、実際の支給額を計算してみましょう。ここでは、支給開始日以前の各標準報酬月額の平均が25万円の方が、子ども1人を予定日より1週間遅れて出産したとします。

まずは支給日数と1日あたりの支給額を計算します。計算式は次の通りです。

支給日数 42日+7日+56日=105日
1日あたりの支給額 25万円÷30日×(2/3)=5,550円

支給日数と1日あたりの支給額をかけあわせると、支給額は次のようになります。

出産手当金の支給額 5,550円×105日=58万2,750円

まとめ

出産手当金の金額は、出産日以前の42日と出産の翌日以降の56日の期間内のうち、給与の支払いを受けなかった日数に、1日あたりの支給額をかけた額です。出産が遅れた場合は、遅れた日数分も支給期間に追加されます。また、一定の条件を満たせば退職後も出産手当金を受け取れます。

一般的に、出産手当金が支給される時期は申請受理の1~2か月後です。出産手当金を早くもらいたい場合は、産前・産後に分けて申請することで、産前分の手当を早期に受け取れます。まとめて受け取る場合も、できるだけ早く情報収集し、必要な書類などを用意しておきましょう。

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※当記事は2023年3月時点の情報をもとに作成しています

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