• 2023年2月25日
  • 2023年2月21日

出産手当金を受け取るには? 対象者や申請方法を詳しく解説

 

出産によって、新たな命が誕生することの素晴らしさをひしひしと感じる一方で、産前産後休業(産休)・育児休業(育休)による収入の減少や子育て費用の捻出など、生活費が不安になる方も多いでしょう。このような場面において頼りになる給付制度が、「出産手当金」です。

出産手当金は、その名の通り出産をした女性に給付される手当金ですが、出産をした女性なら誰でも受け取れるわけではありません。また、受け取るためには複数の手順を踏んで申請する必要があることも覚えておきましょう。

当記事では、出産手当金の概要から、出産手当金の支給対象者、出産手当金の受取方法まで詳しく解説します。出産を控えている女性やその家族の方は、ぜひ参考にしてください。

出産手当金とは?

出産手当金とは、会社(勤務先)で加入する健康保険の被保険者が出産のために会社を休み、その期間中に事業主から給与の支払いを受けなかった場合に支給される手当金です。

労働基準法では、「女性は産前産後の休暇を取得する権利を有する」と規定されているものの、産休は労働とみなされず、産休中は無給となるケースも少なくありません。出産手当金は、産休中の女性が安心して休養できるよう、生活費の一部を保障するために設けられた制度です。

出産手当金を受け取れる期間は、産前42日から産後56日目までの範囲内で、かつ休業期間が対象となります。なお、予定日よりも出産が遅れた場合は、遅れた期間も支給対象です。
(出典:全国健康保険協会 協会けんぽ「出産で会社を休んだとき」

出産育児一時金との違い

出産手当金と似た保険給付金として、「出産育児一時金」があります。出産育児一時金とは、健康保険の被保険者および被扶養者が出産した場合に支給される一時金です。

出産手当金と出産育児一時金の違いは、目的・支給対象者・支給金額にあります。

  出産手当金 出産育児一時金
目的 産休中の生活費の一部保障 出産費用の負担軽減
支給対象者 会社で加入する健康保険の被保険者本人 健康保険の被保険者本人または会社で加入する健康保険の被扶養者
支給金額 被保険者本人の給与額・出産日によってそれぞれ異なる 子ども1人につき最大42万円

出産手当金は、産休中の生活費の一部保障を目的に実施されている制度であり、会社で加入する健康保険の被保険者本人のみが受取対象者となります。つまり、会社の健康保険に加入する女性労働者しか受け取れません。また、支給金額も状況によって異なることが特徴です。

一方で、出産育児一時金は出産にかかる費用の負担軽減を目的に実施されている制度であり、労働状況にかかわらず受け取れます。加えて、子ども1人あたりの給付額も定められていることが特徴です。

このように、出産手当金と出産育児一時金はまったく異なる給付制度であることを覚えておきましょう。
(出典:厚生労働省「出産育児一時金について」
(出典:全国健康保険協会 協会けんぽ「出産に関する給付」

出産手当金を受け取れる人は?

出産手当金を受け取れる人は?

出産手当金を受け取れる人の条件は、「勤務先で健康保険に加入している」「妊娠4か月(85日)以降の出産である」「休業中に事業主から給与の支払いを受けない」の3つとなります。3つの条件のうち1つでも外れると、出産手当金の支給対象外となる点に注意しましょう。

  • 勤務先で健康保険に加入している
    出産手当金を受け取れるのは、協会けんぽや各団体の健康保険組合、勤務先の健康保険加入者のみです。つまり、労働者本人のみが支給対象となります。加えて、国民健康保険には出産手当金の制度がないため、健康保険に加入している被保険者の被扶養者(配偶者)や働いていない女性・国民健康保険に加入するフリーランスの方などは出産手当金を受け取れません。
  • 妊娠4か月(85日)以降の出産である
    出産手当金を受け取れるのは、妊娠4か月(85日)以降の出産である場合と限られています。また、健康保険における出産の定義は、自然分娩や帝王切開など通常出産のほか、流産や死産、人工妊娠中絶も含まれています。
  • 休業中に事業主から給与の支払いを受けない
    出産手当金を受け取れるのは、出産のために産休を取得し、かつ「産休中の給与支払いを受けない」または「給与支払いはあるものの出産手当金額よりも低い」場合のみとなっています。そのため、産休中に事業主から出産手当金額よりも高い給与を得られる場合は、出産手当金を受け取れません。

出産手当金は退職した人でも受け取れる

勤務先で健康保険に加入していることは、出産手当金を受け取る条件の1つです。そのため、「会社員でなければ出産手当金を受け取れない」と考える方も多いでしょう。しかし、下記2点の条件を満たしていれば退職者であっても出産手当金を受け取れます。

  • 退職日まで継続して1年以上健康保険に加入している
  • 出産手当金の支給対象期間内の退職である 

ただし、退職日当日に出勤すると資格喪失後以降の継続給付を受ける条件を満たさず、出産手当金を受け取れなくなる点に注意が必要です。
(出典:全国健康保険協会「出産手当金について」

出産手当金を受け取るには?

出産手当金を受け取るには?

出産手当金を受け取るためには、会社で加入する健康保険の被保険者本人が申請をしなければなりません。出産手当金の申請期間は産休開始の翌日から2年以内ですが、受給までには時間がかかる傾向にあるため、早めに申請しておくとよいでしょう。あらかじめ制度内容を理解し、余裕をもって準備を進められれば、申請期限の直前でかつ慌ただしい日々のなか、急いで申請をする必要がなくなります。

最後に、出産手当金の申請方法とどれくらいの額を受け取れるかについて詳しく解説します。

出産手当金の申請方法

出産手当金を申請するときの手続き・流れは、下記の通りです。

(1)受給資格の確認 出産手当金の申請を進める際は、まず会社の健康保険の加入期間や産休取得予定を明確にし、出産手当金の受給資格がしっかりあるかどうかを確認しておきましょう。

(2)健康保険出産手当金支給申請書の入手 すべての確認を終えたら、出産手当金の申請に必要となる申請書類として「健康保険出産手当金支給申請書」を入手します。健康保険出産手当金支給申請書は、勤務先の担当者に相談して渡してもらうほか、加入している健康保険の公式サイトからもダウンロードすることが可能です。

(3)必要事項の記入 健康保険出産手当金支給申請書を入手したら、必要事項を記入します。必要事項のなかには本人が記入すべき項目と、医師や助産師が記入すべき項目もあります。出産の際に、入院する医療機関で忘れず記入してもらいましょう。

(4)健康保険出産手当金支給申請書の提出 健康保険出産手当金支給申請書における必要事項の記入を終えたら、加入している健康保険または勤務先に提出します。勤務先に提出しても、そのまま健康保険に送付してくれるケースがほとんどです。

(5)出産手当金の支給 健康保険出産手当金支給申請書の提出からおおよそ1~2か月後、申請者本人の指定口座に出産手当金が一括で振り込まれます。

(出典:全国健康保険協会 協会けんぽ「健康保険出産手当金支給申請書」

出産手当金はいくら受け取れる?

出産手当金の1日あたりの受給額は、「出産手当金の支給開始日以前12か月間における各標準報酬月額の平均額」をベースに算出されます。各標準報酬月額とは、勤務先から受ける毎月の給与や報酬・手当を、一定範囲ごとに区分したものを指します。具体的な算出方法は、下記の通りです。

支給開始日以前12か月間における各標準報酬月額の平均額 ÷ 30日 × (2/3)

たとえば、支給開始日以前12か月間における各標準報酬月額の平均額が27万円だった場合の日額計算例は、下記の通りです。

270,000円 ÷ 30日 × (2/3) = 6,000円 

出産手当金の支給対象範囲である産前42日から産後56日目までの期間に上記の支給金額例を当てはめると、受け取れる出産手当金は合計で588,000円となります。

6,000円 × (産前休暇42日 + 産後休暇56日) = 588,000円

なお、前述の通り出産手当金の支給総額は、子どもの出産日によって変動します。実際の出産日が出産予定日と異なる場合は、その日数の差に応じて休暇日数の増減を計算式に含める必要があることを覚えておきましょう。

まとめ

出産手当金とは、会社で加入する健康保険の被保険者が出産のために会社を休んだ日数分、申請者本人のみに支給される手当金です。「勤務先で健康保険に加入している」「妊娠4か月(85日)以降の出産である」「休業中に事業主から給与の支払いを受けない」の3つを満たす女性労働者を対象とした給付制度となっています。

出産手当金を受け取るためには、健康保険の被保険者本人が申請をしなければなりません。申請から出産手当金の支給までには約1~2か月かかるため、なるべく早い段階での準備が必要です。

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※当記事は2023年1月時点の情報をもとに作成しています

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