• 2023年10月28日
  • 2023年10月26日

社会人が看護学校に入学して看護師を目指す方法|学費や難易度も解説

 

看護師は、およそ4人に1人が社会人経験者という調査があるほど、社会人経験者が多く存在する職業です。社会人から看護師を目指す方が増えるよう、厚生労働省も給付金による補助などの取り組みを行っており、決して高いハードルではありません。社会人から看護師を目指す場合は、看護学校に入学し、一定期間学んでから看護師国家試験に合格する必要があります。学費や各学校の制度をチェックし、受験に臨みましょう。

この記事では社会人が看護師になるための最短ルートや必要な学費、看護学校や看護師国家試験の受験難易度について解説します。

社会人や主婦(夫)でも看護学校に入学して看護師になれる

日本看護学校協議会の2012年の調査によると、看護師養成所(3年課程)における社会人経験者の割合は23.7%でした。つまり、看護師の4人に1人程度が社会人経験者ということになります。
(出典:日本看護学校協議会「社会人経験者の入学に関すること」

また、2022年度の「看護師等学校養成所入学状況及び卒業生就業状況調査」によると、3年制の看護師養成施設では25歳以上の入学者の割合は約10.85%でした。
(出典:厚生労働省「令和4年度 看護師等学校養成所入学状況及び卒業生就業状況調査」

以上の調査結果からも、社会人や主婦(夫)が看護師になることは可能と分かります。社会人や主婦(夫)が看護師になるにはどのような方法があるのか、最短何年で看護師になれるのかといったポイントについて解説します。

社会人・主婦(夫)が看護師になるルート

社会人・主婦(夫)が看護師資格を取得する方法は、学歴によって異なるため注意が必要です。

最終学歴が高校卒業以上の場合は4年制の看護系大学か3年制の看護短期大学、あるいは3年制の看護専門学校などに通う必要があります。最終学歴が中学校卒業の場合は5年一貫看護師養成課程校に通うのが一般的です。もしくは、一度2年制の准看護師学校に通って准看護師資格を取得してから3年以上の実務経験を積み、改めて看護師養成校に通うというルートもあります。

なお、准看護師養成施設から看護師養成校を目指す場合は、ほかの看護師養成施設を卒業するケースと比べて長い期間が必要です。また、日本看護協会は准看護師資格の廃止に取り組んでおり、准看護師養成施設は年々減少しています。
(出典:日本看護協会「准看護師制度について」

それぞれの学校で必要な看護教育を受けた後、看護師国家試験を受験し、合格すれば看護師になることが可能です。なお、看護師国家試験は毎年2月に実施されます。

社会人・主婦(夫)は最短何年で看護師になれる?

社会人・主婦(夫)が看護師になるためには一度専門的な学校に通う必要があり、基本的には高校卒業以上であれば最低3年、中学校卒業であれば最低5年かかります。しかし、大学もしくは短大を卒業している場合、「社会人入試制度」を利用できれば最短2年で看護師を目指すことが可能です。

看護学校のなかには、社会人が看護師を目指すうえでのハードルを下げるために社会人入試制度を設けている学校があります。社会人入試制度は、一般入試に比べて受験科目が少ないなどの特徴を持つ、社会人向けの入試制度です。最終学歴が短大卒・大卒以上の社会人経験者は、社会人入試制度を利用して最短ルートで看護師を目指すのも手段の1つといえます。

ただし、すべての看護学校が社会人入試制度を設けているわけではなく、受験資格や試験内容なども看護学校によって異なるため注意が必要です。社会人入試制度を利用しない場合は、3年制の看護短期大学や看護専門学校に通うのが看護師への最短ルートになります。

看護師になれる年齢は何歳まで?

看護師資格の取得に年齢制限はありません。「看護師等学校養成所入学状況及び卒業生就業状況調査」によると、3年過程専門学校の場合、40歳以上の入学者は全国で400名存在しています。
(出典:厚生労働省「令和4年度 看護師等学校養成所入学状況及び卒業生就業状況調査」

何歳からでも看護師を目指せる点が、社会人や主婦(夫)から看護師になる人の割合が多い理由の1つです。看護師を目指す人の年代が幅広いことを受け、厚生労働省も社会人が看護師を目指せるように取り組んでいます。
(出典:厚生労働省「看護師養成所における大卒社会人経験者等の養成について」

看護師資格を取得する難易度

看護師資格を取得する難易度

令和5年に行われた第112回看護師国家試験では、合格率は下記の表の通りとなりました。

【第112回看護師国家試験の難易度】

(出願者数)     (受験者数) (合格者数) (合格率)
第112回看護師 64,704人 64,051人 58,152人 90.8%
(うち新卒者 59,290人 58,911人 56,276人 95.5%)
(引用:厚生労働省「第109回保健師国家試験、第106回助産師国家試験及び第112回看護師国家試験の合格発表」

第112回看護師国家試験においては、受験者の9割以上が合格しています。看護師国家資格は受験者をふるい落とすことが目的ではなく、看護師として働くにあたって必要な知識を身につけられているかを確認するためのものです。ただし、看護学校卒業後にブランクが空いた受験生の合格率は下がることから、しっかりと勉強する必要があります。

なお、看護師国家試験の合格基準は以下の通りです。

○第112回看護師国家試験の合格基準

必修問題及び一般問題を1問1点、状況設定問題を1問2点とし、次の①~②の全てを満たす者を合格とする。

(1)必修問題  40点以上/ 50点

(2)一般問題・状況設定問題  152点以上/249点

(引用:厚生労働省「第109回保健師国家試験、第106回助産師国家試験及び第112回看護師国家試験の合格発表」

必修問題は一問一答形式であり、一般問題は長文の問題から短文の問題まで内容はさまざまとなっています。

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看護学校の入学倍率

看護師になるための踏ん張りどころは、国家試験そのものよりも、看護学校への入学やその後の勉強といった国家試験を受けるまでの過程にあるといえます。それぞれの看護学校の入学難易度は以下の通りとなっています。

【看護師養成施設の入学難易度】

分類 競争率(倍率)
大学(4年課程) 4.7
短期大学(3年課程) 2.1
専門学校(3年課程) 2.1
(出典:厚生労働省「令和4年度 看護師等学校養成所入学状況及び卒業生就業状況調査」
(出典:厚生労働省「令和4年度 看護師等学校養成所入学状況及び卒業生就業状況調査」
(出典:厚生労働省「令和4年度 看護師等学校養成所入学状況及び卒業生就業状況調査」

なかでも看護系大学の倍率は4.7倍であり、ほかの看護学校に比べても高い傾向があります。

社会人から看護師を目指す場合は、一般入試よりも受験科目数が少ない社会人入試枠を利用するのも手段の1つです。ただし、社会人入試枠は一般的に募集人数が少なく、倍率3~10倍の高難易度になることも少なくありません。社会人でも必ずしも社会人入試枠を利用する必要はないため、自分の基礎学力レベルなどに応じて一般入試か社会人入試かを選ぶとよいでしょう。

看護学校卒業までにかかる学費

看護学校の種類によって、必要となる年数だけではなく学費にも違いがあることを知っておく必要があります。一般的に、施設の種類ごとに看護学校卒業までにかかる費用は以下の通りです。

【看護学校に必要な費用】

施設の種類 平均入学金 入学金以外の平均年間費用
国立大学 282,000円 535,800円
私立大学 245,951円 1,111,129円
私立短期大学 237,615円 889,971円
専門学校 182,000円 974,000円
(出典:文部科学省「国立大学と私立大学の授業料等の推移」
(出典:文部科学省「私立大学等の令和3年度入学者に係る学生納付金等調査結果について」
(出典:東京都専修学校各種学校業界「令和4年度専修学校各種学校調査統計資料」

通常、看護学校に必要な費用は国立大学が最も少なく、私立大学が最も高くなる傾向があります。ただし、平均年間費用は1年分であり、実際に必要な費用は3~4年分が乗算されることに注意しなければなりません。たとえば、私立短期大学や多くの専門学校は3年制なのに対し、国立大学や私立大学は4年制のため、年間費用が1年分多くかかります

社会人・主婦(夫)が看護学校に入学するときの注意点

社会人・主婦(夫)が看護学校に入学するときの注意点

社会人・主婦(夫)が入学する看護学校を選ぶ際には、以下の注意点を踏まえるとよいでしょう。

自分のやりたいことに合った学校選びをする
3年制の短期大学や専門学校を卒業すれば、4年制大学と比べて1年早く看護師国家試験の受験資格を得られます。その分4年制大学は、看護師資格のほかに保健師や助産師といった国家資格取得を同時にできるカリキュラムが組まれている点が大きな魅力です。

また、学校によっては社会人入試制度に合格すれば3年次から編入し、2年で看護師を目指せるケースもあります。入学する学校次第で学習内容や費用なども大きく変わるため、自分自身のやりたいことに合った学校選びが大切です。

学費や生活費を工面する
看護師を目指すにあたって学費や生活費などで悩みを抱えている場合、日本看護協会の奨学金制度や厚生労働省の給付金制度などを活用するのもよい手段です。経済的負担を減らし、安心して勉強に励むためにも、利用できる支援制度はないか事前に調べるとよいでしょう。

看護師を目指して看護学校に入学しても、学校の選び方を間違えたために、看護師になる前に諦める人もゼロではありません。看護学校の種類や学校ごとの特徴、メリット・デメリットなどの情報を比較し、なるべく後悔がないように選びましょう。

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まとめ

看護師の資格を得るのに年齢制限はなく、2022年には看護学校への40歳以上の入学者が全国で約400人存在します。最終学歴が大卒以上の場合は、社会人入試制度によって最短2年で看護学校を卒業できる場合もあるため、入学する看護学校の制度を事前に把握しておきましょう。学校ごとの特徴や必要な学費を知り、後悔のないように学校を選ぶのが大切です。

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※当記事は2023年8月時点の情報をもとに作成しています

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