• 2023年5月13日
  • 2023年6月1日

看護師資格の取得難易度は? 試験内容や合格ポイントも解説

 

看護師は、医師と患者さんの間にいる存在であり、それぞれのサポート役を果たす職種です。高齢化社会の進展や医療従事者の不足によって看護師の需要は今後もさらに高まるといわれている近年、看護師資格の取得を目指す方も多いのではないでしょうか。

また、看護師国家資格取得を目指すうえで、気になるポイントは「資格試験の難易度」です。そこで今回は、看護師資格の取得難易度・合格率から、看護師国家試験の出題範囲とスケジュール、さらに合格に向けたポイントまで詳しく紹介します。

看護師資格の取得難易度は高い? 低い?

看護師は、医師の診療を補助し、医師の指示にもとづいて患者さんへ療養上の世話や各種看護ケアを行うことが仕事です。いわゆる「命を支える職種」であることから、資格の取得難易度が高いと考える方も多いでしょう。

しかし、厚生労働省が公表している看護師国家試験の過去5回分における合格率を見ると、意外と多くの受験者が合格を果たしていることが分かります。

(出願者数) (受験者数) (合格者数) (合格率)
第107回看護師 65,070人 64,488人 58,682人 91.0%
第108回看護師 64,153人 63,603人 56,767人 89.3%
第109回看護師 66,250人 65,568人 58,513人 89.2%
第110回看護師 66,778人 66,124人 59,769人 90.4%
第111回看護師 65,684人 65,025人 59,344人 91.3%
(引用:厚生労働省「第104回保健師国家試験、第101回助産師国家試験及び第107回看護師国家試験の合格発表について」
(引用:厚生労働省「第105回保健師国家試験、第102回助産師国家試験及び第108回看護師国家試験の合格発表について」
(引用:厚生労働省「第106回保健師国家試験、第103回助産師国家試験及び第109回看護師国家試験の合格発表」
(引用:厚生労働省「第107回保健師国家試験、第104回助産師国家試験及び第110回看護師国家試験の合格発表」
(引用:厚生労働省「第108回保健師国家試験、第105回助産師国家試験及び第111回看護師国家試験の合格発表」

合格率90%でも資格取得の難易度が低くない理由

看護師国家試験の合格率を見ると、「比較的誰もが簡単に取得できる」と捉えられがちですが、決してそうではありません。看護師資格の取得難易度は依然として低くないといえる理由には、受験要件の厳しさが挙げられます。

第二十一条 看護師国家試験は、次の各号のいずれかに該当する者でなければ、これを受けることができない。

一 文部科学省令・厚生労働省令で定める基準に適合するものとして、文部科学大臣の指定した学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)に基づく大学(短期大学を除く。第四号において同じ。)において看護師になるのに必要な学科を修めて卒業した者

二 文部科学省令・厚生労働省令で定める基準に適合するものとして、文部科学大臣の指定した学校において三年以上看護師になるのに必要な学科を修めた者

三 文部科学省令・厚生労働省令で定める基準に適合するものとして、都道府県知事の指定した看護師養成所を卒業した者

四 免許を得た後三年以上業務に従事している准看護師又は学校教育法に基づく高等学校若しくは中等教育学校を卒業している准看護師で前三号に規定する大学、学校又は養成所において二年以上修業したもの

五 外国の第五条に規定する業務に関する学校若しくは養成所を卒業し、又は外国において看護師免許に相当する免許を受けた者で、厚生労働大臣が第一号から第三号までに掲げる者と同等以上の知識及び技能を有すると認めたもの

(引用:e-gov法令検索「保健師助産師看護師法(昭和二十三年法律第二百三号)」

上記の通り、看護師国家試験を受けるためには「大学や大学院、養成所などで必要な学科・課程を修了する」という条件を満たさなければなりません。

トータルで3年以上の学習期間は必要となるため、合格率は高くても決して難易度が低いというわけではないことを覚えておきましょう。

また、准看護師試験に合格し、准看護師として3年以上の実務経験を有する方は、看護系大学・看護専門学校などで必要な課程を修める必要はありません。しかし、その分独学での試験対策が必要となるため、自己管理能力がない方にとってはむしろ難易度が高くなることにも注意が必要です。

看護師国家試験の試験内容

看護師国家試験の試験内容

2022年2月に実施された第111回看護師国家試験では、「必修問題の正答率が80%以上、一般問題と状況設定問題の正答率があわせて67%以上」が合格ラインとなっていました。

○第111回看護師国家試験の合格基準
必修問題及び一般問題を1問1点、状況設定問題を1問2点とし、次の(1)~(2)の全てを満たす者を合格とする。

(1) 必修問題   40点以上/ 50点
 但し、一部の問題において採点対象から除外された受験者にあっては、必修問題の得点について、40点以上/49点、39点以上/48点とする。

(2)一般問題
一般問題  167点以上/250点

必修問題・一般問題・状況設定問題とは、看護師国家試験における試験区分のことです。ここからは、看護師国家試験における必修問題・一般問題・状況設定問題の概要と試験範囲を紹介します。

必修問題の内容

必修問題とは、特に基礎的かつ重要な内容について問われる、一問一答方式の試験区分のことです。看護師国家試験全問(240問)のうち50問が必修問題となっており、必修問題のみ正答率80%以上(50問中40問)の合格ラインが設定されています。

必修問題の出題基準(一部)と出題例は、下記の通りです。

【出題基準】

  • 健康の定義と理解
  • 健康に影響する要因
  • 看護で活用する社会保障
  • 看護における倫理
  • 看護に関わる基本的法律 など

【出題例】

後期高齢者医療制度の被保険者は、区域内に住居を有する(  )歳以上の者、および 65 歳以上()歳未満であって、政令で定める程度の障害の状態にあるとして後期高齢者医療広域連合の認定を受けた者である。

()に入るのはどれか。

1.70
2.75
3.80
4.85

【出題例の正答】

2.75

(出典:厚生労働省「令和5年版 看護師国家試験出題基準」
(出典:厚生労働省「第108回保健師国家試験、第105回助産師国家試験、第111回看護師国家試験の問題および正答について」

一般問題の内容

一般問題とは、出題基準として定められた合計11の試験科目において、必修問題と同様に1問あたり1点が配点される試験区分です。問題数は130問と、3つの試験区分のなかで最も多くなっています。看護知識が問われる問題がほとんどで、長文の問題から短文の問題までさまざまあります。

一般問題の出題基準(一部)と出題例は、下記の通りです。

【出題基準】

  • 人体の構造と機能
  • 疾病の成り立ちと回復の促進
  • 健康支援と社会保障制度
  • 基礎看護学
  • 成人看護学 など

【出題例】

感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律〈感染症法〉において、結核が分類されるのはどれか。

1.一 類
2.二 類
3.三 類
4.四 類
5.五 類

【出題例の正答】

2.二 類

(出典:厚生労働省「令和5年版 看護師国家試験出題基準」
(出典:厚生労働省「第108回保健師国家試験、第105回助産師国家試験、第111回看護師国家試験の問題および正答について」

状況設定問題の内容

状況設定問題とは、出題基準として定められた合計7つの試験科目において、1問あたり2点が配点される試験区分です。実際の看護現場で直面しうる状況に対する理解力・判断力が問われるものであり、合計で60問が出題されます。

状況設定問題の出題基準(一部)と出題例は、下記の通りです。

【出題基準】

  • 成人看護学
  • 老年看護学
  • 小児看護学
  • 母性看護学
  • 精神看護学 など

【出題例】

発育と発達に遅れのない生後6か月の男児。BCG 接種の翌日に接種部位が赤く腫れ次第に増悪して膿がみられたため、母親は接種後4日目に医療機関に電話で相談し、看護師が対応した。児に発熱はなく、哺乳や機嫌は良好である。

このときの看護師の説明で適切なのはどれか。

 1.「通常の反応です」
2.「速やかに来院してください」
3.「1週間後にまた電話をください」
4.「患部をアルコール消毒してください」

(引用:厚生労働省「第111回看護師国家試験の問題および正答(午前)」

【出題例の正答】

2.「速やかに来院してください」

(出典:厚生労働省「令和5年版 看護師国家試験出題基準」
(出典:厚生労働省「第108回保健師国家試験、第105回助産師国家試験、第111回看護師国家試験の問題および正答について」

看護師国家試験の試験地と日程・当日のスケジュール

看護師国家試験の試験地と日程・当日のスケジュール

2023年の第112回看護師国家試験は、2023年2月12日に全国12都道府県で実施されました。

【第112回看護師国家試験の試験地】

北海道、青森県、宮城県、東京都、新潟県、愛知県、石川県、大阪府、広島県、香川県、福岡県及び沖縄県

【第112回看護師国家試験の試験日程】

試験期日

令和5年2月12日(日曜日)

【第112回看護師国家試験のスケジュール】

第 112 回看護師国家試験
試験日 2月12日(日)
午前 午後
説明開始時刻 9:00 13:40
試験時間 9:50 ~ 12:30 14:20 ~ 17:00
(引用:厚生労働省「第112回看護師国家試験受験者留意事項」

また、看護師国家試験は例年2月中旬に実施されます。試験の具体的な日程や実施地域、当日のスケジュールについては、前年の8月~9月に発表されます。

なお、看護師国家試験は午前と午後の2回にわたって行われます。試験時間はそれぞれ2時間40分ずつであり、必修問題・一般問題・状況設定問題も分割して出題されます。

看護師国家試験の受験に必要な手続き

看護師国家試験の受験に必要な手続き

看護師国家試験を受験するためには、必要書類一式を準備したうえで、指定された提出先へ期限内に書類提出する必要があります。

また、必要書類には「すべての受験者が共通して提出しなければならない書類」に加えて、「看護学校や養成所の卒業見込みがある人、または卒業した人が提出する書類」と「准看護師から看護師国家試験を受験しようとしている人が提出する書類」があることも覚えておきましょう。

【すべての受験者が提出する書類等と受験料】

(ア)受験願書
保健師助産師看護師法施行規則(昭和26年厚生省令第34号)第2号様式により作成するとともに、受験願書に記載する氏名は、戸籍(中長期在留者については在留カード又は住民票、特別永住者については特別永住者証明書又は住民票、短期在留者については旅券その他の身分を証する書類)に記載されている文字を使用すること。

(イ)写真
出願前6月以内に脱帽して正面から撮影した縦6センチメ-トル、横4センチメ-トルのもので、その裏面に撮影年月日及び氏名を記載し、厚生労働省又は看護師国家試験運営本部事務所若しくは看護師国家試験運営臨時事務所において交付する受験写真用台紙に貼り付けた上、同台紙に所定の事項を記載して提出すること。

なお、写真の提出に当たっては、卒業し、若しくは在籍している指定大学、指定学校若しくは指定養成所又は看護師国家試験運営本部事務所若しくは看護師国家試験運営臨時事務所において、その写真が受験者本人と相違ない旨の確認を受けること。

※郵送により本人確認を受ける際は、写真が付してある身分証明書等(コピー不可。個人番号カード不可)及び(ウ)とは別に返信用封筒(郵便番号、宛先及び宛名を記載し、身分証明書等の返送に必要な郵便切手を貼り付け、書留の表示をしたもの)を同封すること。

(ウ)返信用封筒
縦23.5センチメートル、横12センチメートルのもので、表面に、郵便番号、宛先及び宛名を記載し、529円(定形郵便94円+一般書留435円)の郵便切手を貼り付け、書留の表示をすること。

(4)受験手数料

ア受験手数料は、5,400円とし、受験手数料の額に相当する収入印紙を受験願書に貼ることにより納付すること。この場合、収入印紙は消印しないこと。

イ受験に関する書類を受理した後は、受験手数料は返還しない。

【看護系の学校や養成所を卒業見込み・卒業した人の必要書類】

指定大学若しくは指定学校の修業証明書若しくは3年以上看護師になるのに必要な学科を修めたと判定されたことを証する書面(以下「修業判定証明書」という。)若しくは修業見込証明書又は指定養成所の卒業証明書若しくは卒業できると判定されたことを証する書面(以下「卒業判定証明書」という。)若しくは卒業見込証明書

【准看護師の必要書類】

(ア)指定大学若しくは指定学校の修業証明書若しくは2年以上修業したと判定されたことを証する書面(以下「2修業判定証明書」という。)若しくは修業見込証明書、又は指定養成所の卒業証明書若しくは卒業できると判定されたことを証する書面(以下「2卒業判定証明書」という。)若しくは卒業見込証明書

(イ)准看護師免許証の写し(都道府県医務主管課又は保健所に当該免許証を提示し、原本照合を受けたもの)

看護師国家試験に合格するためのポイント

看護師国家試験への合格を目指すためにも、下記3つのポイントをおさえておきましょう。

採点除外されにくい正答率の高い問題を勉強する
看護師国家試験では、難易度が適切ではない問題や正解を選べない問題などの「不適切問題」が試験実施後に発見され、不正解者は採点対象から除外(採点除外)されるケースもあります。

採点除外問題があれば合格ラインは低くなるものの、試験中に不適切問題に出会った場合は悩み続ける・引きずる可能性もあるため、なるべく採点除外されにくい正答率の高い問題を中心に勉強しておくことが大切です。

過去問を取りこぼさないように勉強する
看護師国家試験では、あらかじめ問題をストックし、過去に出題した問題を改変して出題するという「過去問のプール制」が採用されていることが特徴です。実際に、例年の看護師国家試験で出題される問題のうち25%程度がプール制を活用した問題といわれています。

そのため、看護師国家試験過去問のテキストや問題集を用いて、過去問を取りこぼさないように勉強することが合格への1番の近道といえるでしょう。過去問の問題パターンやプール制を活用した問題改変の傾向をおさえれば、より効果的に学べます。

自分の実習経験と絡めて勉強する
看護師国家試験の受験資格を満たすにあたっては、現場実習が必要です。試験勉強を行うときは、単純に過去問や参考書などを見て覚えるだけでなく、自分の実習経験と絡めて勉強するとよいでしょう。

また、2020年ごろから流行した新型コロナウイルス感染症により、現場実習に制限がかけられていたケースも少なくありません。人によっては、本来であれば受けられる実習を受けられなかったということもあるでしょう。コロナ禍による制限で十分な実習を受けられなかった方は、ほかの看護実習生の経験談を参考にすることもおすすめです。

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まとめ

過去5回分における看護師国家試験の合格率は約89〜91%と非常に高い結果となっていますが、決して難易度の低い試験というわけではありません。看護師国家試験の受験要件を満たすためには、トータルで3年以上の学習期間は必要です。

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※当記事は2023年3月時点の情報をもとに作成しています

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