• 2024年4月13日
  • 2024年4月10日

mmHgの読み方を解説|血圧にまつわる知識と高血圧の基準も

 

血圧は患者さんの状態を知るのに重要な指標です。看護師が患者さんのアセスメントをする際には、バイタルサイン測定の一環として血圧測定を行うことがほとんどです。そのときに使う単位として、mmHgがあります。ただし、看護師を目指している方、もしくは自分の血圧が気になる方にとって、mmHgという言葉を言われてもピンと来ない場合があるでしょう。

この記事では血圧測定の際に使用する「mmHg」という単位について、意味や血圧の正常値、正しく血圧を測る方法について解説します。

mmHgの読み方は?

mmHgは血圧測定の単位として使われる医療用語で、「ミリメートルエイチジー」または「ミリ水銀」と読みます。「mm」は水銀を押し上げる高さ、「Hg」は水銀を示す元素記号です。現在は使用禁止となっている水銀式血圧計はカフに圧力がかかると水銀が押し上げられどれだけ上がったかの圧力の高さで測っていました。mmHgは「mm」は水銀を押し上げる高さ、「Hg」は水銀を示す元素記号から来ているのです。

たとえば、血圧が160mmHgだった場合、血液が水銀を160ミリメートル押し上げる力で血管に圧力をかけているという意味になります。血液と水銀の比重の差に基づいて計算すると、この圧力は血液を約2mの高さまで押し上げられるほどです。1分間の平均心拍数が70回であれば、1日に10万回は血液を2m吹き上げられるだけの圧力が、血管にかかっている計算になります。
(出典:福島県田村市役所「暮らしの情報案内板」
(出典:福島県立医科大学「血圧の「圧」ってどんな圧力?」

血圧とは

血圧とは、心臓が血液を全身に送り出す際の血流が、血管の壁にかける圧力のことです。この圧力は、心臓のポンプ作用によって血液を押し出す収縮期と、心臓がリラックスして血液を吸い込む拡張期の2つの段階で測定されます。

「収縮期血圧」は、心臓が収縮して血液を血管に送り出す際の圧力で、血圧値のうちの高い方の数値を指します。血圧がもっとも高くなる瞬間であり、「最高血圧」とも呼ばれます。一方、「拡張期血圧」は、心臓が拡張して次の収縮に備えているときの圧力で、血圧値のうちの低い方の数値です。血圧がもっとも低くなる瞬間であり、「最低血圧」とも呼ばれます。

血圧は運動や緊張などにより日々刻々と変動しますが、病気が原因で異常に高くなる場合も少なくありません。長期間にわたって高血圧が続くと、動脈硬化を進行させ、脳血管疾患や心疾患など重大な健康問題を引き起こす恐れがあります。
(出典:東京大学 保健センター「血圧」
(出典:スマート・ライフ・プロジェクト事務局「血圧」

圧力を測るときの単位

圧力を測る単位にはmmHgのほかにTorrもあり、1Torrは1mmHg相当です。日本では血圧を示す際に「mmHg」を、動脈血ガス分析検査での酸素分圧や二酸化炭素分圧を表す際には「Torr」が使われています。

Torrはほかにも頭蓋内圧や眼圧など、生体内のさまざまな圧力を測るのにも用いられており、医療現場では重要な単位です。ただし、国際単位系(SI)で圧力単位として用いるのは、パスカル(Pa)で統一されています。

血圧の正常値は?

血圧の正常値は?

血圧には、収縮期血圧と拡張期血圧の数値に基づいた7つの区分があります[1] [2] 血圧の詳細区分は、下表の通りです。

分類 収縮期血圧 拡張期血圧
高血圧 三度高血圧 180以上 110以上
二度高血圧 160~179 100~109
一度高血圧 140~159 90~99
正常域血圧 正常高値血圧 130~139 85~89
正常血圧 120~129 80~84
至適血圧 120未満 80未満

分類 診察圧血圧(mmHg) 家庭血圧(mmHg)
収縮期血圧   拡張期血圧 収縮期血圧   拡張期血圧
正常血圧 120未満 かつ 80未満 115未満 かつ 75未満
正常高値血圧 120~129 かつ 80未満 115~124 かつ 75未満      
高値血圧 130~139 かつ/または 80~89 125~134 かつ/または 75~84
I 度高血圧 140~159 かつ/または 90~99 135~144 かつ/または 85~89
Ⅱ 度高血圧 160~179 かつ/または 100~109 145~159 かつ/または 90~99
Ⅲ 度高血圧 180以上 かつ/または 110以上 160以上 かつ/または 100以上
(孤立性) 収縮期高血圧 140以上 かつ 90未満 135以上 かつ 85未満
(出典:公益財団法人 日本心臓財団「高血圧治療ガイドライン・エッセンス」

血圧は、診察室血圧が収縮期血圧120未満かつ拡張期血圧80未満であれば正常血圧と定義されます。この値を超えても、収縮期血圧が130未満かつ拡張期血圧が85未満であれば、健康診断では「正常値高血圧」の範疇です

診察室血圧で収縮期血圧130以上、拡張期血圧80以上になると、高血圧の疑いがあります。高血圧は、その数値により5つに分類され、数値が高いほど注意が必要です。

高血圧は主に本態性高血圧と二次性高血圧に分けられます。本態性高血圧は原因が明確でないものの、遺伝や生活習慣が影響していると考えられます。一方、二次性高血圧は特定の病気と関連した血圧上昇状態です。どちらのタイプも、放置すると重大な健康問題を引き起こす可能性があるため、早期の発見と適切な対処が重要です。
(出典:東京大学 保健センター「血圧」
(出典:スマート・ライフ・プロジェクト事務局「血圧」

白衣高血圧と仮面高血圧

白衣高血圧は、医療機関での測定時に140/90mmHg以上の高血圧を示すものの、普段の生活で測定すると135/85mmHg未満となる状態を指します。医療機関での血圧測定にともなう緊張や不安により発生するもので、高齢者に多い一方で若年層にもよく見られる現象です。

仮面高血圧は白衣高血圧の反対で、医療機関での測定値が140/90mmHg未満の正常値であるにもかかわらず、医療機関外での測定値が高い状態を指します。ただし、一時的に高い数値を出すのではなく、血圧の平均値が高い状態が継続していなければなりません。

医療機関で測定した血圧が正しい値なのか否かを判断するには、自宅などでの日常的な血圧測定習慣をつける必要があります。
(出典:千葉県「どうしても、お医者さんの前に行くと血圧が上がってしまいます。家ではそれほど血圧は高くありません。どうしてですか。」
(出典:公益財団法人結核予防会 総合検診推進センター「白衣高血圧とは・・・。」
(出典:厚生労働省「日本内科学会雑誌 第96巻 第1号」

血圧の正しい測り方

血圧の正しい測り方

正しく血圧を測る方法は、以下の通りです。

【血圧の測り方】

(1) 精度検定されたアネロイド血圧計・電子血圧計のいずれかを用意し、適切なサイズのカフを選ぶ
(2) 足は組まず床に平置き状態で、背もたれのある椅子に深く座らせる
(3) そのまま5~10分程度安静な状態を保つ
(4) カフを指1~2本が入る程度の強さで上腕に巻き、心臓の高さに合わせる
(5) カフを急速に加圧し、排気速度を毎秒2~3mmHgに設定して測定する
(6) コロトコフ音の最初に聞こえる音を収縮期血圧、消える音を拡張期血圧として記録する
(7) 1~2分の間隔をあけて2回測定し、2回の平均値を血圧値とする

測定時の注意点は、以下の通りです。

【注意点】

  • 適温で静かな安静にしやすい環境を用意する
  • 測定前の喫煙・飲酒・カフェイン摂取は避ける
  • 測定中は会話を控え、リラックスした状態を保つ
  • 厚手の上着やトップスの上からカフを巻かない
  • 袖をまくり上げて上腕部分を圧迫しない
  • 自然に支えられるよう可変の架台などを使用し、腕の位置を心臓の高さに保つ

以上の手順と注意点を守ることで、より正確な血圧の測定が可能になります。
(出典:厚生労働省「日本内科学会雑誌 第100巻 第2号」

血圧が高いとどうなる?

血圧が高いとどうなる?

血圧が正常値を超える状態が続くと、高血圧症と診断されます。診断基準値は、診察室で何度も測定した結果、収縮期血圧が130mmHg以上、または拡張期血圧が80mmHg以上の場合です。高血圧は、自覚症状や肥満、メタボリックシンドロームがなくても、単独で多くの健康問題を引き起こします。いわゆる生活習慣病による死亡の大きな要因の1つです。

高血圧症が長期間続くと、血管の壁に悪影響を及ぼし、動脈硬化を引き起こします。動脈硬化は血管が厚くなり弾力性が下がる症状で、脳出血・脳梗塞・大動脈瘤、心筋梗塞などの重大な疾患のリスクを高めます。また、心臓が高血圧に対抗するために余計な努力を強いられ、結果的に心臓肥大や心不全を引き起こすケースも珍しくありません。

したがって、高血圧を予防し、既に高血圧症である場合は血圧を正常範囲に戻すことが、危険度の高い合併症を防ぐうえで極めて重要です。
(出典:国立研究開発法人 国立循環器病研究センター「高血圧」
(出典:厚生労働省 e-ヘルスネット「高血圧」

高血圧の治療法

高血圧の治療には薬物療法と生活習慣の改善が用いられます。薬物療法で用いられるのは、患者さんの状態や合併症の有無に応じてさまざまな種類の中から選ばれる降圧剤です。治療は通常、少量の単剤から始めて必要に応じて増量する、もしくはほかの薬を組み合わせるなどして効果を高めます。最近では2種類以上の成分を含む配合剤もあり、患者さんが服薬する際の負担が軽減されました。

生活習慣の改善対策には、塩分制限・野菜や果物の摂取量増加・コレステロールや飽和脂肪酸の制限・減量・定期的な運動・アルコール制限・禁煙などが推奨されています。いずれか1つを短期間で行うのではなく、複数を組み合わせて長期的に行うことでより高い効果が期待できる治療法です。

なお、腎動脈の狭窄や閉塞が原因の腎血管性高血圧であれば、カテーテルを用いた治療が行われるケースもあります。
(出典:埼玉県川口市「一般向け「高血圧治療ガイドライン2019」解説冊子」
(出典:国立研究開発法人 国立循環器病研究センター「腎臓・高血圧内科」

まとめ

mmHgは「ミリメートルエイチジー」または「ミリ水銀」と読み、血圧測定の単位です。水銀(Hg)を1mm押し上げる圧力が1mmHgであり、診察前の収縮期血圧が130mmHg、拡張期血圧が80mmHg以上で高血圧と診断されます。

ただし、血圧は緊張や不安により高まることから、医療機関での測定時にだけ140/90mmHg以上の高血圧を示す「白衣高血圧」が起きるケースがあります。反対に、医療機関の測定時には正常域血圧にもかかわらず、日常生活で測定すると高血圧となる「仮面高血圧」もあるため、正しい血圧を知るには測定を繰り返し適切に行うことが必要です。

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※当記事は2024年2月時点の情報をもとに作成しています

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