• 2024年4月6日
  • 2024年4月2日

SpO2とはどのような意味? パルスオキシメータでの測定方法も解説

 

SpO2とは、体内の酸素濃度を示す指標の1つで、サチュレーションとも呼ばれます。動脈を流れる血液の赤血球に含まれるヘモグロビンのうち、酸素と結合しているヘモグロビンの割合をパルスオキシメータで経皮的に測定することで分かります。

この記事では、SpO2の概要に加え、測定方法や測定値の活用場面について詳しく解説します。混同されやすい指標「PaO2」との違いや、SpO2が低い場合のアセスメントにも触れるため、ぜひお役立てください。

SpO2とは?

SpO2とは、体内の生命活動を維持するために必要な酸素濃度が、十分に維持されているかどうかを判断する際に用いる指標の1つです。

空気中の酸素は呼吸によって肺に取り込まれ、肺胞で血液中の赤血球に受け渡されます。酸素は赤血球中のヘモグロビンと結合して血流によって全身を巡り、肺と比べて酸素濃度が低い組織・細胞でヘモグロビンから酸素が解離します。

ヘモグロビンから解離した酸素は細胞の活動に利用され、酸素を離したヘモグロビンを含む赤血球は、静脈を通って心臓・肺へと戻ります。このように、酸素とヘモグロビンとの結びつきは、生命活動を維持するうえで非常に重要です。

SpO2は、動脈を流れる赤血球に含まれるすべてのヘモグロビンのうち、酸素と結合しているヘモグロビンの割合を、皮膚を通して調べた値です。「Oxygen Saturation(酸素飽和度)をpercutaneous(経皮的に)測定する」という意味があり、「経皮的動脈血酸素飽和度」と呼ばれることを押さえておきましょう。

なお、サチュレーションとは酸素飽和度を表す言葉であり、SpO2と同じ意味で用いられます。SpO2と合わせて覚えておきましょう。

SpO2の正常値

SpO2の値を判断するためには、SpO2の正常値がいくつであるか把握しておくことが大切です。安静時におけるSpO2の標準値は96~99%であり、ウォーキングなど軽い運動を行った後は93~95%となることもあります。

SpO2が低いとどうなるかも確認しておきましょう。新型コロナウイルス感染症における中等症の基準は「SpO2が96%未満」であり、在宅療養を行う呼吸不全の患者さんには安静時で95%となるよう酸素が処方されます。測定値が90%を下回る場合は呼吸不全の状態にあたるため、早い段階での対処が必要です。

PaO2との違い

呼吸の状態を判断する基準として、SpO2以外にも「PaO2」という指標があります。PaO2(動脈血酸素分圧)とは、動脈血中に含まれる酸素の量を圧力の単位である「Torr(トル)」や「mmHg(ミリメートルエイチジー)」で表した値です。

動脈血中には、ヘモグロビンに結合している酸素のほか、血液中に遊離している酸素も存在しています。PaO2は動脈血中に含まれる全酸素の量(圧力)を、SpO2は全ヘモグロビン中の酸素と結合したヘモグロビンの割合を示していることに注意しましょう。また、SpO2はパルスオキシメータで経皮的に測定できるのに対し、PaO2の測定には採血が必要です。

パルスオキシメータを使ったSpO2の測定方法

パルスオキシメータを使ったSpO2の測定方法

パルスオキシメータとは、SpO2と脈拍数の値を経皮的に測定するための装置です。パルスオキシメータにはプローブと呼ばれる部分があり、これを装着することでSpO2や脈拍数の値を容易に計測できます。

パルスオキシメータは、プローブから出る2種類の光(赤色光・赤外光)を利用して、動脈血中の酸素と結合したヘモグロビンの割合を計測します。これには、酸素と結合・解離することで色が変化するというヘモグロビンの性質・特徴が利用されています。

ヘモグロビンは、酸素と結合していないときは暗赤色を、酸素と結合すると鮮やかな赤色鮮紅色を示し、鮮紅色となった動脈血では赤外光が多く吸収されます。したがって、赤色光と赤外光の2種類の光が指先などを通過する量を測定することで、酸素と結合しているヘモグロビンの割合を測定することが可能です。

また、プローブの装着部位には、動脈のほかにも静脈やそのほかの組織が存在しています。動脈血のみの状態を調べるために、動脈の拍動(脈拍)を検知する仕組みが備わっていることも押さえておきましょう。

プローブの装着部位はパルスオキシメータの種類によって異なりますが、指の先端部分に装着するものが広く普及しています。指先に装着するタイプでは、マニキュアなどの装飾がなく、白癬症(爪水虫)の症状がない指をプローブの奥まで装着することが大切です。

測定後、パルスオキシメータの画面には、SpO2(%)と脈拍数(bpm)の値が表示されます。表示方法は機種によって異なるため、取扱説明書を十分に確認しましょう。
(出典:日本呼吸器学会「Q30 パルスオキシメータとはどのようなものですか? 」
(出典:日本呼吸器学会「よくわかる パルスオキシメータ」

測定時の注意点

パルスオキシメータは比較的簡単にSpO2を測定できる機械ですが、適切に使用しなければSpO2を正しく測定できません。パルスオキシメータで正しくSpO2を測定できないケースとして、主に次の2つが挙げられます。

  • サイズが合っていない
    パルスオキシメータで正しく測定するためには、光を出す発光部と受光部(センサー)が向かい合っていることが大切です。厚みのある親指のように、プローブのサイズに合わない部位を装着すると、発光部と受光部がずれて測定が不安定になる場合があることに注意しましょう。
  • 装着部が圧迫されている
    パルスオキシメータのプローブが装着部位を圧迫すると、静脈でも拍動が生じるため、正しい測定ができなくなる恐れがあります。

また、パルスオキシメータに表示されるSpO2の数値は、プローブ装着後一定の時間ごとに得られた平均値であるため、脈拍が安定してから数値を確認することが大切です。また、火傷(熱傷)の危険性や褥瘡や潰瘍のリスクもあるため、長時間同じ部位に装着しないよう注意しましょう。

SpO2はどのような場面で使用する?

SpO2はどのような場面で使用する?

パルスオキシメータは、血液における酸素供給が正常に行われているか確認できる装置であり、元々は手術や麻酔の際のバイタルサインモニターとして利用されていました。しかし、パルスオキシメータは患者さんの負担が少なく、自宅療養でもリアルタイムでの測定が可能なことから、現在では下記のような場面で広く活用されています。

パルスオキシメータが使用される場所・場面

  • 手術中のバイタルチェック
  • 呼吸器感染症(肺炎など)における重症度判定
  • 慢性の呼吸器疾患がある患者さんの急性増悪時の入院判定
  • 在宅酸素療法の適応および酸素処方の決定
  • 在宅酸素療法を行う患者さんの指導・管理
  • 呼吸リハビリテーション運動療法におけるアセスメント・リスク管理
  • 入院患者さんのバイタルチェック・健康管理
  • 慢性呼吸不全の在宅患者さんにおける日常管理
  • 睡眠時無呼吸症候群のスクリーニング検査

このように、パルスオキシメータが使用されるのは病院・クリニックなど医療の現場だけではありません。在宅治療を受ける患者さんの自宅や介護施設、訪問看護ステーションなどでも、必要に応じて使用されていることを押さえておきましょう。

SpO2が低いときのアセスメント

パルスオキシメータで測定したSpO2が低い場合や、異常値と思われる場合には、患者さんの状態をよく確認したうえで対処法を検討することが大切です。

患者さんに呼吸苦の様子が見られなければ、パルスオキシメータが正しく装着されていたか確認し、測定部位での一時的な循環不全がなかったかを検討しましょう。測定部位の加温やマッサージを行ったうえで再度測定しても、SpO2が改善しない場合は主治医に報告します。

一方、患者さんが苦しそうにしている場合は、意識レベルや呼吸状態を迅速に確認することがポイントです。意識レベルが低下し、呼吸停止状態である場合は医師に報告し、挿管や人工呼吸管理の準備などの指示を仰ぎましょう。

患者さんに意識レベルの低下や呼吸停止が見られない場合は、呼吸困難や頭痛などの低酸素症状が出ていないかなどのアセスメントを行ったうえで主治医に報告します。酸素投与を行っている患者さんの場合は、まず酸素吸入器のトラブルの可能性を考えましょう。酸素流量を調節するなどの処置を行って再度SpO2を測定し、主治医に報告してください。

なお、SpO2の正常値は加齢に伴って低下することが知られており、80歳の高齢者では93~94%程度であると言われています。また、市販のパルスオキシメータでは、上下2%程度の誤差が生じるとされています。測定者は、これらの事象を考慮したうえで、数値を判断し対応することが大切です。

まとめ

SpO2の安静時の標準値は96~99%です。測定値が90%を下回る場合は、呼吸不全が起きているため、早急な処置が必要となります。90%以上の場合も、通常よりも低い場合や異常値が出ている場合は、適切なアセスメントを行いましょう。なお、パルスオキシメータでSpO2を測定する際は、サイズや装着部位の圧力などに注意することが必要です。

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※当記事は2024年2月時点の情報をもとに作成しています

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