• 2023年4月7日
  • 2023年4月7日

治験コーディネーター(CRC)とは?仕事内容からなり方まで

 

病棟以外でも活躍の場を広めたいと考えている看護師さんの転職先として、治験コーディネーター(CRC)があります。新しい医薬品などの研究開発を行う際に、安全性を確かめるためには治験が必要です。治験の開始前から終了後まで、治験のすべてをサポートする業務を行う治験コーディネーターは、革新的な医薬品の開発を助け、医療の未来を作る仕事と言えるでしょう。

この記事では治験コーディネーターの仕事内容や給料相場、将来性から、治験コーディネーターのなり方や求められるスキルまで紹介します。

治験コーディネーター(CRC)とは

治験コーディネーターとは、治験業務全般のサポートを担う仕事です。「Clinical Research Coordinator」の頭文字をとって、CRCとも称されます。
(出典:一般社団法人日本臨床薬理学会「認定CRC制度について」

CRCの業務内容は大まかに3つに分けられます。

  • 治験担当医師の指示のもとに行われる、医学的判断を伴わない業務
  • 治験に係わる各種事務
  • チームや関連部門との調整

基本的にCRCは治験責任医師や分担医師の指示のもとで働きます。
(出典:日本SMO協会「CRCの主な業務」

治験は製薬会社から病院などの医療機関へ依頼され、ある程度の期間をかけて実施されます。製薬会社の担当者や医師、看護師、治験参加者など多くの人間が関わるため、現場を調整する専門的な存在が必要です。

治験コーディネーターは、さまざまな部署や関係者の間で調整役を務める専門職です。医療機関の院内CRCのほか、SMOと呼ばれる治験施設支援機関からの求人も多く見つかります。

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治験コーディネーターの仕事内容

治験コーディネーターは、被験者を選定して期間中にモニタリングを行うことに加えて、検査スケジュールの管理や治験終了後の監査対応など、さまざまな仕事を担当します。詳しい仕事内容を治験開始前・治験実施中・治験終了後の3つに分けて解説します。

治験開始前

治験を実施するときは、法律にもとづいた準備が必要です。治験コーディネーターは、製薬会社の担当者から治験実施計画書に関する説明を受け、治験業務フローや症例管理のための資料を作成します。

事前準備が整ったら、治験担当医師などの関係者を集めたスタートアップミーティングが開かれます。臨床開発モニター(CRA)を補佐して、ミーティングを進行することが治験コーディネーターの仕事です。

各担当者の役割分担や検査スケジュールなどを確認するほか、ミーティング後は検査機器や検査キット、搬入される治験薬の保管・管理も行います。

治験実施中

スクリーニングで決定した被験者に対して、治験担当医師によるインフォームドコンセントが行われます。治験におけるインフォームドコンセントとは、治験内容の説明を行い、同意書を交わすことです。

治験コーディネーターも、書類作成など治験担当医師のサポートを行いつつ説明の場に同席します。

治験期間中の仕事内容は、面談による状況確認や検査機器の準備など、さまざまです。有害事象の有無や服薬状況を確認し、検査データをもとに症例報告書作成も行います。

治験終了後

残薬がある場合は回収して、治験終了報告書を作成します。後日行われる、治験依頼者による監査対応も、治験コーディネーターが担当することが一般的です。

(出典:日本SMO協会「CRCの主な業務」

治験コーディネーターの給料相場

ハローワークの就業者統計データによれば、治験コーディネーターが含まれる職業分類「他に分類されない保健医療の職業」の給料相場は以下の通りです。

他に分類されない保健医療の職業の平均収入
月収 約23万円
年収 約423万円
(出典:厚生労働省 職業情報提供サイト「治験コーディネーター」

「その他の保険医療従事者」は、治験コーディネーター以外にも一部の保健医療に関する職業が含まれたデータです。あくまで全国平均の数値であり、さまざまな条件によって収入は変動します。たとえば就職先が定める条件、手当の有無なども、給料を左右する要素です。治験コーディネーターとして給料を少しでも上げるためには、条件の良い職場選びや、手当につながる資格の取得が重要です。

また、治験コーディネーターの求人全般に見られる特徴として、企業規模と給料の高さが比例していることが挙げられます。

企業規模 10~99人 100~999人 1,000人以上
平均年収 約386万円 約408万円 約509万円
(出典:厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査」

看護師など医療関係の資格を求める求人も多く、前職の知識や経験を活用できるメリットがあります。

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治験コーディネーターの将来性

治験コーディネーターの将来性

現在国が臨床研究および治験を推進しており、治験関連事業は今後の拡大が期待できるため、治験コーディネーターは将来性がある仕事と言えるでしょう。「臨床研究・治験の推進に関する今後の方向性について2019年版とりまとめ」では、質の高い医療を提供する手段として、新薬や新医療機器の開発が挙げられています。

疾病の予防、早期診断、早期治療に対する国民の期待は高く、革新的な医薬品、医療機器等の研究開発を推進することは重要である。

(引用:厚生労働省「臨床研究・治験の推進に関する今後の方向性について 2019年版とりまとめ」

治験施設支援機関の売上は、2017年以降2020年まで一時的に減少傾向を見せつつも、2021年には全体的に回復しました。
(出典:日本SMO協会「日本SMO協会データ2021」

業界全体および治験コーディネーターの将来性を担保するためには、人材育成の強化が欠かせません。国も人材育成に注力することが重要であると明記しています。

研究開発の高度化等に伴い、研究実施に加え、研究開発を支える人材育成を強化するとともに、人材等のリソースをより一層効率的に活用する必要がある。

(引用:厚生労働省「臨床研究・治験の推進に関する今後の方向性について 2019年版とりまとめ」

今後の対策方針として、人材育成の強化や処遇改善のための調査が検討されています。人材育成の支援が強化されれば、今後治験コーディネーターを目指しやすい環境・働きやすい環境が整うことが期待できます。

治験コーディネーターのなり方

治験コーディネーターのなり方

治験コーディネーターとして働く場合、必要となる資格はありません。医療系の知識や医療機関の仕組みへの理解があれば、治験コーディネーターとして活躍できるでしょう。看護師資格を持つ人なら、看護師としての知識や技術を生かした転職が可能です。
(出典:日本SMO協会「CRCとして働くには」

ただし、治験コーディネーターの仕事内容は多岐にわたります。専門性の高い業務も多く、看護師資格以外のスキルや知識も身につけておくと、転職活動の場で役立ちます。

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治験コーディネーターに求められるスキル

求人情報で治験コーディネーターの応募資格として挙げられることが多いスキルは、下記の3つです。

  • 治験に関する知識
  • コミュニケーション能力など被験者のケアに必要な技術
  • 書類作成のスキル 

(出典:日本SMO協会「CRCとして働くには」
(出典:株式会社クリニカルサポート「治験コーディネーター(CRC)とは」

治験コーディネーターの仕事には、製薬会社の担当者から治験実施計画書に関する説明を受けることも含まれます。治験に関する知識がなければ、治験実施計画書の内容を正しく理解できず、ほかの業務に支障をきたすおそれがあります。

また、コミュニケーション能力も重要です。治験コーディネーターは、被験者と直接関わる機会が多い立場です。治験に関する不安や問題をいち早く取り除けるように、高いコミュニケーション能力が求められます。

報告書をはじめ、さまざまな種類の書類作成も治験コーディネーターの仕事です。法的な問題が発生しないように、書類を適切な書式や内容で作成できることに加えて、管理・保管を正しく行う能力も必要です。

治験コーディネーターの仕事に役立つ資格

治験を円滑に進めるために、治験コーディネーターの存在は欠かせません。治験コーディネーターになる時点では特定の資格は求められないものの、転職後に取得しておくと役立つ資格はあります。

治験コーディネーターの仕事で役立つ資格は、以下の4つです。

日本SMO協会公認CRC
日本SMO協会公認の資格です。CRC導入教育研修の修了証を取得しており、なおかつ2年以上のCRC実務経験や協会が定める教育継続基準を満たした場合に受験できます。
(出典:日本SMO協会「公認CRC・SMA制度」

日本臨床薬理学会認定CRC
日本臨床薬理学会による認定資格です。CRCとして2年以上もしくは同等の実務経験があり、CRCとしての活動実績を所属長あるいは参加した臨床研究チームの責任医師が証明できる際に認定試験を受験できます。
(出典:一般社団法人日本臨床薬理学会「2022年度認定について」

薬剤師
薬学の専門家として、薬の管理・調剤・服薬指導を行うために必要となる資格です。国内外で薬学の正規の課程を修めた方や、海外で薬剤師免許を取得した方などが受験できます。
(出典:厚生労働省 職業情報提供サイト「薬剤師」
(出典:厚生労働省「薬剤師国家試験」

臨床検査技師
医師や歯科医師の指示のもと、血液・尿・細胞などの採取と臨床検査を行うための資格です。文部科学大臣が指定した大学や養成所で所定の教育を修めた方や、獣医師、薬剤師の免許を有する方が受験できます。養成所には、医学校や歯科医学校も含まれています。
(出典:一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会「臨床検査技師の紹介」
(出典:厚生労働省「臨床検査技師国家試験の施行」

CRC公認試験や日本臨床薬理学会認定CRC制度には更新制度があり、取得と更新を続けることで、自分が最新の専門知識を保有していると証明できます。

また、薬学や臨床検査技師資格があれば、服薬指導や検査業務といった専門的業務を治験コーディネーターが行えるようになります。

まとめ

治験コーディネーターとは、被験者の選定、治験期間中のモニタリング、検査スケジュールの管理や治験終了後の監査対応など、治験業務全般のサポートを担う仕事です。治験コーディネーターとして働く場合、前提となる資格はありません。医療系の知識や医療機関の仕組みへの理解、被験者のケアなどが求められるため、看護師資格があれば活躍しやすいでしょう。

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※当記事は2023年3月時点の情報をもとに作成しています

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