• 2022年11月22日
  • 2022年11月30日

救急救命士と看護師の立場 | どっちが上? 資格や仕事の違いを紹介

 

救急救命士と看護師の立場はどっちが上か知りたい人もいるでしょう。救急救命士と看護師は傷病人を救うために働いているという点では共通しますが、役割や勤務先、仕事内容などは異なります。

この記事では、救急救命士と看護師の資格や仕事内容、給与について解説。それぞれの歴史についてもまとめているので、参考にして救急救命士と看護師に関する知識を深めてください。

救急救命士と看護師の立場はどっちが上?

救急救命士と看護師の立場に、どちらが上か下かはありません
なぜなら、そもそも救急救命士と看護師は資格や仕事内容、活躍している場所が異なるためです。

救急救命士は傷病人を病院へ搬送する途中に救命処置を施す職種であるのに対し、看護師は病院やクリニックなどで傷病人の療養上のお世話や診療の補助をする職種です。

人の命を助ける仕事としては同じですが、救急救命士が看護師の代わりに働くことはできませんし、看護師が救急救命士の仕事をすることもできません。

そのため、どちらの職種の立場が上か下かなどは比べられないのです。

救急救命士と看護師の資格の違い

救急救命士と看護師の資格の違い

救急救命士は救急救命士国家資格を、看護師は看護師国家資格を保有しています。
職務・資格などを規定している法律や資格取得までにかかる年数は異なり、共通するのはいずれも国家資格ということのみです。

救急救命士と看護師の資格の違いは、以下のとおりです。

救急救命士 看護師
職務・資格などを規定している法律 救急救命士法 保健師助産師看護師法
国家試験 救急救命士国家試験 看護師国家試験
資格取得までにかかる年数 最短2年 最短3年
試験の受験者(2022年) 3,263人 65,025人
試験の合格率(2022年) 91.3% 91.3%

参照元:
厚生労働省「第45回救急救命士国家試験の合格発表」
厚生労働省「第108回保健師国家試験、第105回助産師国家試験及び第111回看護師国家試験の合格発表」

救急救命士国家資格について

救急救命士は「救急救命士法」に基づいて定められた国家資格で、救急救命士国家試験に合格することで資格を取得できます。

救急救命士資格を取得するまでにかかる年数は、最短で2年です。看護師の場合は取得までに最短で3年かかるため、救急救命士の資格取得の方が簡単に感じられるかもしれません。しかし、救急救命士として働くには、資格取得後に各自治体の消防官採用試験に合格する必要があります。

看護師国家資格について

看護師は「保健師助産師看護師法」に基づいて定められた国家資格で、看護師国家試験に合格することで資格を取得できます。

看護師資格を取得するまでにかかる年数は、最短で3年です。主婦や社会人になってから、看護師資格を取得して看護師になる人も多く見られます。なお、例年の試験の合格率は90%前後です。合格率が90%前後で高めとはいえ国家試験であるため、しっかりと勉強・対策をしないと取得は難しいといえます。

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救急救命士と看護師の歴史の違い

救急救命士と看護師の歴史の違い

救急救命士は比較的歴史の浅い職種で、はじめて誕生したのは30年ほど前です。一方、看護師は160年ほどの歴史があります。

救急救命士の歴史

救急救命士がはじめて誕生したのは1992年です。
プレホスピタルケア(病院前救護)の充実と救命率の向上を図るために、1991年8月15日に「救急救命士法」が施行されました。

総務省消防庁によると、2020年4月1日時点で救急救命士を運用している消防本部は726本部のうち725本部で、運用率は99.9%です。救急救命士の資格を有する消防職員は4万43人で、そのうち2万8,115人が救急救命士として活躍しています。

参照元:
総務省消防庁「4.救急業務高度化の推進」
総務省消防庁「令和2年版 消防白書 – 2.救急業務の実施体制」

看護師の歴史

1860年にイギリスのフロレンス・ナイチンゲールが、看護のあり方や考え方を説いたのが看護師のはじまりです。

日本では1915年6月30日に「看護婦規則」が制定され、「看護婦」という名称が定着しました。1948年には「保健婦助産婦看護婦法」が制定され、国家資格をもつ看護職が誕生しています。
その後、2001年に「保健婦助産婦看護婦法」は「保健師助産師看護師法」に名称変更され、翌年の2002年に性別による看護職の読み方の区別が撤廃。男女ともに「看護師」に統一されました。

厚生労働省によると、2020年末時点での就業看護師数は128万911人です。男性看護師も年々増加傾向にはありますが、いまだ女性看護師が約90%を占めています。

参照元:
厚生労働省「保健師・助産師・看護師に係る規定の変遷」
厚生労働省「令和2年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」

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「看護師」と「看護士」正しいのはどっち? 看護職を種類別に解説

救急救命士と看護師の仕事内容の違い

救急救命士と看護師の仕事内容の違い

救急救命士が活躍するのは主に病院への搬送途中なのに対し、看護師が活躍するのは主に搬送先の病院です。救急救命士と看護師は活躍する場面が違うため、仕事内容も異なります。

救急救命士 看護師
勤務先 消防機関・自衛隊・海上保安庁
警察・病院など
病院・クリニック・介護施設・保育園など
活躍する場面 病院へ搬送途中 搬送後の病院での
治療のサポートや療養上のケア

以下では、救急救命士と看護師の仕事内容をそれぞれ紹介します。

救急救命士の仕事内容

救急救命士は消防機関を中心として、病院や自衛隊、海上保安庁、警察などに勤務します。救急救命士が活躍するのは、主に病院への搬送途中です。病院に到着するまでの間、傷病者に救急救命処置を施します。

救急救命士の仕事内容は以下のとおりです。

  • 止血処置
  • 脈拍の測定
  • 聴診器による心音・呼吸音の確認
  • 酸素吸入器による酸素吸入
  • AED(自動体外式除細動器)の使用
  • 心臓マッサージ
  • 輸液
  • 気道確保

救急救命士は医師ではないので、医師免許の必要な医療行為はできません。しかし、生命の危機にある傷病人に対しては、医師の指示を受けながら輸液や気管内チューブによる気道確保といった特定医療行為を行うこともあります。

看護師の仕事内容

看護師は病院やクリニックといった医療機関のほか、介護施設や保育園などでも活躍していますが、勤務先によって仕事内容は少々異なります。

以下は、医療施設における看護師の仕事内容の一例です。

  • 医師による診察や治療のサポート
  • バイタルチェック
  • 注射・採血・点滴・投薬
  • ガーゼ交換
  • ナースコールの対応
  • 食事・入浴・排泄の介助
  • 患者さんの家族への対応

病棟勤務の看護師の主な仕事は療養中の患者さんのお世話です。日々、バイタルチェックや投薬、ガーゼ交換のほか、食事・入浴・排泄の介助を行います。

看護師は患者さんやその家族にとって、もっとも身近な医療従事者です。そのため、看護ケアだけでなく、精神面のケアをすることも求められています。

救急救命士と看護師の給与の違い

救急救命士と看護師の給与の違い

総務省が公表している救急救命士の給与と厚生労働省が公表している看護師の給与を比較すると、救急救命士のほうが給与は高いようです。

救急救命士 看護師
給与 41万3,374円 34万4,300円

看護師が34万4,300円なのに対し救急救命士は41万3,374円と、約7万円ほど救急救命士のほうが高い給与を得ています。ただし、同じ年齢やキャリアの場合は、看護師のほうが高い給与を得ているともいわれています。

給与は年齢やキャリア、勤務先、勤務地域によって異なるため、一概にどちらの給与が高いとはいえません。

参照元:
総務省「令和3年4月1日地方公務員給与実態調査結果」
厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査」

救急救命士の給与

地方公務員として働く救急救命士の平均給与は41万3,374円です。給与には出動手当や救急出動手当、時間外手当、夜勤手当、24時間勤務手当などがつきます。

救急救命士は事故や災害現場などに出向くため、ときには危険を伴う仕事です。そのため、地方公務員のなかでも、事務を行う行政職より高めの給与が設定されています。

看護師の給与

看護師の平均給与は34万4,300円です。救急救命士と比べると低く感じますが、全職種の平均給与が30万7,400円のため、一般的な職種よりは高い給与を得ているといえます。

看護師の給与には資格手当や職能手当、夜勤手当、交代勤務手当などがつきます。なかでも、夜勤手当によってかなりの金額が加算されるため、看護師には夜勤専従という働き方もあるほどです。働き方や勤務する医療機関によっては、平均給与よりもはるかに高い金額を得ている看護師もいます。

まとめ

救急救命士と看護師は保有する資格や勤務先、仕事内容などが異なります。
共通するのは、傷病人を救うために働いているということ。双方の立場にどちらが上か下かはありません。

救急救命士は搬送途中に救命処置を施すプロフェッショナル、看護師は傷病人の看護をするプロフェッショナルです。いずれも医療現場では欠かせない存在として活躍しています。

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