リハビリテーションの成果を評価する際や、介護が必要かどうかを判断する際に使用するのがFIM(機能的自立度評価表)です。日常生活に必要な動作を評価する方法はほかにも複数ありますが、FIMは評価項目の多さと採点基準の詳しさが特徴です。
当記事では、FIMの特徴や評価項目・採点基準について詳しく解説しています。FIMを用いる機会があり、知識を身につけておきたい看護師の皆さんは、ぜひ当記事を参考にしてください。
FIM(機能的自立度評価表)とは?
FIMとは、日常生活動作(以下、ADL)の介助量を評価する際に活用されている指標の1つで、機能的自立度評価表とも呼ばれています。ADLは日常生活を営むうえで必要となる最低限の動作のことで、食事・排泄・入浴・更衣・整容などが含まれます。
(出典:厚生労働省「(参考)日常生活動作(ADL)の指標 FIMの概要」)
(出典:別府重度障害者センター「日常生活動作(ADL)訓練」)
FIMの特徴
FIMは、病気や障害の制限を受けずにADLを評価できる方法として、世界中で活用されています。FIMの主な特徴は以下の通りです。
- 「できるADL」ではなく「しているADL」を評価する
- ADLにどの程度介助が必要かを簡単に評価できる
- 医療従事者以外でも評価が可能
FIMは、患者さんや利用者さんが実際に日常生活で行っている動作を評価者が採点します。「できるADL」ではなく「しているADL」を重視する点が、FIMの大きな特徴です。そのため、ADLについてどれくらい自分で行い、介助がどの程度必要なのかを容易に評価・確認できます。
また、本人がしている動作に対し明確な判定基準をもとに点数化するため、医学的な知識がない方でも評価が可能です。評価項目は運動項目と認知項目の計18項目で、コミュニケーションや認知機能についても採点ポイントに含まれます。
病院や医療現場のほか、介護現場やリハビリの現場でも広く用いられ、本人や家族、多職種と自立レベルや介護量の情報共有をしやすい点がメリットです。
ほかの評価方法との違い
ADL評価には、FIMのほかにもバーセルインデックスという方法が知られています。バーセルインデックスも必要な介助量を測るADL評価法ですが、以下の点でFIMと異なります。
- バーセルインデックスは「できるADL」を評価する
- バーセルインデックスの評価対象は、日常生活の動作のみ
- バーセルインデックスの評価は10項目、2~4段階で簡易的
FIMが「している動作」を重視しているのに対し、バーセルインデックスは「できる動作」を点数付けします。バーセルインデックスでは、あらかじめ決められた項目に沿って検査を行うため、自宅で実際に行う動作とは内容が異なるのが注意点です。
また、バーセルインデックスの評価範囲は、日常生活における基本的ADLです。採点対象となるのは食事・排便・排尿・トイレの使用・起居移乗・移動・更衣・階段・入浴・整容で、コミュニケーションや認知面は評価対象外なのがFIMと異なります。
(出典:日本老年医学会「ADLの評価法」)
評価項目についても、バーセルインデックスが10項目・2~4段階に対し、FIMは18項目・7段階と、FIMのほうが詳細な採点方法だといえます。
FIMはバーセルインデックスに比べ、評価する能力の範囲が広く採点方法も詳しいため、より幅広く活用できる評価方法です。
FIMが活用される場面
2016年度の診療報酬改定で、回復期リハビリテーション病棟におけるFIMを用いたアウトカム評価の導入が決定し、2017年1月から実施されました。良質なリハビリテーションの提供と患者さんの早期回復を目的とした取り組みで、リハビリテーションに関する成果の評価が行われています。
アウトカム評価の実績が一定の水準に達しない場合は、疾患別リハビリテーション料が見直されます。病院全体でアウトカム評価を行う必要が出てくるため、看護師がFIM評価を担当する機会も増えていくと考えられます。
(出典:厚生労働省「(参考)日常生活動作(ADL)の指標 FIMの概要」)
FIMの評価方法
FIMの評価は、運動項目13項目と認知項目5項目の計18項目を、それぞれ7段階で採点します。ここでは、FIMの具体的な採点基準や採点項目について一覧で解説します。詳しい評価のポイントを確認してください。
(出典:厚生労働省「(参考)日常生活動作(ADL)の指標 FIMの概要」)
FIMの採点基準
FIMの評価は各項目1~7点で採点され、合計点数は18~126点です。点数が高いほど生活に必要な介助量が少なく、日常生活の自立度が高いことが分かります。
採点基準の目安は以下の通りです。
7点(完全自立) |
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6点(修正自立) |
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5点(監視・準備) |
【運動項目】
【認知項目】
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4点(最小介助) |
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3点(中等度介助) |
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2点(最大介助) |
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1点(全介助) |
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FIMの採点項目
FIMの採点項目は、大きく運動項目と認知項目に分かれています。運動項目と認知項目の内容について、それぞれ解説します。
■運動項目
セルフケア | 食事 |
咀嚼・嚥下を含めた食事動作
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整容 |
口腔ケア・洗髪・手洗い・洗顔など
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清拭 |
風呂・シャワーなど(首から下を洗う)
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更衣(上半身) |
腰より上の更衣及び義肢装具の装着
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更衣(下半身) |
腰より下の更衣及び義肢装具の装着
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トイレ動作 |
衣服の着脱・排せつ後の清潔・生理用品の使用
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排泄 | 排尿コントロール |
排尿管理・用具や薬剤の使用を含む
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排便コントロール |
排便管理・用具や薬剤の使用を含む
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移乗 | ベッド・椅子・車いす |
それぞれの間の移乗・起立を含む移乗動作
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トイレ |
便器への移乗
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浴槽・シャワー |
浴槽移乗・シャワー室への移乗
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移動 | 歩行・車いす |
屋内での歩行、屋内での車いす移動
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階段 |
12~14段の階段昇降
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■認知項目
コミュニケーション | 理解(聴覚・視覚) |
相手の言った言葉が分かる
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---|---|---|
表出(音声・非音声) |
相手が分かるように言いたいことを伝える
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社会認識 | 社会的交流 |
自分の行動が相手にどう影響するか分かる
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問題解決 |
遭遇する問題を処理する
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|
記憶 |
人や日課を覚えている
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まとめ
FIM(機能的自立度評価表)とは、日常生活を送るために必要な動作ADLがどの程度自力でできるかを評価する際に使用する指標です。ほかの評価方法よりも詳細な項目を確認するので、活用できる場面も多くあります。
回復期リハビリテーション病棟では、リハビリの成果を評価するためにFIMが活用されています。FIMの知識を専門的に身につけたい場合は、リハビリテーション病棟への転職も視野に入れましょう。マイナビ看護師では、希望のキャリアに合わせた転職相談を行っています。
※当記事は2024年2月時点の情報をもとに作成しています