• 2024年4月6日
  • 2024年4月2日

FIM(機能的自立度評価表)の評価項目と基準|活用シーンも解説

 

リハビリテーションの成果を評価する際や、介護が必要かどうかを判断する際に使用するのがFIM(機能的自立度評価表)です。日常生活に必要な動作を評価する方法はほかにも複数ありますが、FIMは評価項目の多さと採点基準の詳しさが特徴です。

当記事では、FIMの特徴や評価項目・採点基準について詳しく解説しています。FIMを用いる機会があり、知識を身につけておきたい看護師の皆さんは、ぜひ当記事を参考にしてください。

FIM(機能的自立度評価表)とは?

FIMとは、日常生活動作(以下、ADL)の介助量を評価する際に活用されている指標の1つで、機能的自立度評価表とも呼ばれています。ADLは日常生活を営むうえで必要となる最低限の動作のことで、食事・排泄・入浴・更衣・整容などが含まれます。
(出典:厚生労働省「(参考)日常生活動作(ADL)の指標 FIMの概要」
(出典:別府重度障害者センター「日常生活動作(ADL)訓練」

FIMの特徴

FIMは、病気や障害の制限を受けずにADLを評価できる方法として、世界中で活用されています。FIMの主な特徴は以下の通りです。

  • 「できるADL」ではなく「しているADL」を評価する
  • ADLにどの程度介助が必要かを簡単に評価できる
  • 医療従事者以外でも評価が可能

FIMは、患者さんや利用者さんが実際に日常生活で行っている動作を評価者が採点します。「できるADL」ではなく「しているADL」を重視する点が、FIMの大きな特徴です。そのため、ADLについてどれくらい自分で行い、介助がどの程度必要なのかを容易に評価・確認できます。

また、本人がしている動作に対し明確な判定基準をもとに点数化するため、医学的な知識がない方でも評価が可能です。評価項目は運動項目と認知項目の計18項目で、コミュニケーションや認知機能についても採点ポイントに含まれます。

病院や医療現場のほか、介護現場やリハビリの現場でも広く用いられ、本人や家族、多職種と自立レベルや介護量の情報共有をしやすい点がメリットです。

ほかの評価方法との違い

ADL評価には、FIMのほかにもバーセルインデックスという方法が知られています。バーセルインデックスも必要な介助量を測るADL評価法ですが、以下の点でFIMと異なります。

  • バーセルインデックスは「できるADL」を評価する
  • バーセルインデックスの評価対象は、日常生活の動作のみ
  • バーセルインデックスの評価は10項目、2~4段階で簡易的

FIMが「している動作」を重視しているのに対し、バーセルインデックスは「できる動作」を点数付けします。バーセルインデックスでは、あらかじめ決められた項目に沿って検査を行うため、自宅で実際に行う動作とは内容が異なるのが注意点です。

また、バーセルインデックスの評価範囲は、日常生活における基本的ADLです。採点対象となるのは食事・排便・排尿・トイレの使用・起居移乗・移動・更衣・階段・入浴・整容で、コミュニケーションや認知面は評価対象外なのがFIMと異なります。
(出典:日本老年医学会「ADLの評価法」

評価項目についても、バーセルインデックスが10項目・2~4段階に対し、FIMは18項目・7段階と、FIMのほうが詳細な採点方法だといえます。

FIMはバーセルインデックスに比べ、評価する能力の範囲が広く採点方法も詳しいため、より幅広く活用できる評価方法です。

FIMが活用される場面

2016年度の診療報酬改定で、回復期リハビリテーション病棟におけるFIMを用いたアウトカム評価の導入が決定し、2017年1月から実施されました。良質なリハビリテーションの提供と患者さんの早期回復を目的とした取り組みで、リハビリテーションに関する成果の評価が行われています。

アウトカム評価の実績が一定の水準に達しない場合は、疾患別リハビリテーション料が見直されます。病院全体でアウトカム評価を行う必要が出てくるため、看護師がFIM評価を担当する機会も増えていくと考えられます。
(出典:厚生労働省「(参考)日常生活動作(ADL)の指標 FIMの概要」

FIMの評価方法

FIMの評価方法

FIMの評価は、運動項目13項目と認知項目5項目の計18項目を、それぞれ7段階で採点します。ここでは、FIMの具体的な採点基準や採点項目について一覧で解説します。詳しい評価のポイントを確認してください。
(出典:厚生労働省「(参考)日常生活動作(ADL)の指標 FIMの概要」

FIMの採点基準

FIMの評価は各項目1~7点で採点され、合計点数は18~126点です。点数が高いほど生活に必要な介助量が少なく、日常生活の自立度が高いことが分かります。

採点基準の目安は以下の通りです。

7点(完全自立)
  • 介助や手助け、補助具の必要がなく自分で行う「自立」の段階です
6点(修正自立)
  • 自分で行えますが、補助具が必要な「自立」の段階です
  • 時間がかかり、安全性に配慮する必要があります
5点(監視・準備)

【運動項目】

  • 手助けは必要ないですが、介助者の監視、指示、促しが必要な「部分介助」の段階です

【認知項目】

  • 90%以上自分で行い、10%未満の介助が必要な「部分介助」の段階です
4点(最小介助)
  • 介助者による手助けが必要で、75%以上90%以下は自分で行う「介助あり」の段階です
3点(中等度介助)
  • 介助者による手助けが必要で、50%以上75%未満を自分で行う「介助あり」の段階です
2点(最大介助)
  • 介助者による手助けが必要で、25%以上50%未満を自分で行う「完全介助」の段階です
1点(全介助)
  • 自分で行うのは25%未満で、介助者による手助けが必要な「完全介助」の段階です

FIMの採点項目

FIMの採点項目は、大きく運動項目と認知項目に分かれています。運動項目と認知項目の内容について、それぞれ解説します。

■運動項目

セルフケア 食事

咀嚼・嚥下を含めた食事動作

  • 適切な食器や道具を使い、食べ物を口に運んで咀嚼、嚥下するまでの工程を評価します
整容

口腔ケア・洗髪・手洗い・洗顔など

  • 口腔ケア、洗髪、手洗い、洗顔、髭剃りまたは化粧の5項目で評価します
清拭

風呂・シャワーなど(首から下を洗う)

  • 身体を部位ごとに10か所に分けて、洗う、すすぐ、拭く(乾かす)で評価します
  • 頭部と背中は採点対象外のため、できなくても減点にはなりません
更衣(上半身)

腰より上の更衣及び義肢装具の装着

  • 服をかぶる、片袖を通す、もう片方の袖を通す、服を引きおろすの動作について評価する
更衣(下半身)

腰より下の更衣及び義肢装具の装着

  • ズボン、下着、靴下(ストッキング)、靴の着脱を評価します
トイレ動作

衣服の着脱・排せつ後の清潔・生理用品の使用

  • 服の上げ下げ、ペーパーで拭くなどの動作を評価します
  • ベッド上で尿器を使用している場合は、ベッドでの動作を採点範囲とします
排泄 排尿コントロール

排尿管理・用具や薬剤の使用を含む

  • 失敗する頻度による採点と介助量による採点のうち、低い方の点数で評価します
  • 日中と夜間で異なる場合は、低い方の点数で評価します
排便コントロール

排便管理・用具や薬剤の使用を含む

  • 排尿コントロールと同様です
移乗 ベッド・椅子・車いす

それぞれの間の移乗・起立を含む移乗動作

  • 座面から立ち上がる、方向転換する、座るまでの乗り移る動作を評価します
トイレ

便器への移乗

  • ベッド・椅子・車いすの移乗と同様です
浴槽・シャワー

浴槽移乗・シャワー室への移乗

  • ベッド・椅子・車いすの移乗と同様です
移動 歩行・車いす

屋内での歩行、屋内での車いす移動

  • 歩行または車椅子のうち、多く行う方法で評価します
階段

12~14段の階段昇降

  • 登り、降りの両方を評価します
  • 対象者が日常的に階段を使わない場合は、「できるADL」で評価することもあります

■認知項目

コミュニケーション 理解(聴覚・視覚)

相手の言った言葉が分かる

  • 相手の指示や会話がどのくらい分かっているか、分かるように相手が行った配慮で評価します
  • 言われた言葉の判断能力は問いません
表出(音声・非音声)

相手が分かるように言いたいことを伝える

  • 自分の欲求や考えが相手にどのくらい伝わっているか、聞き取るために相手が行った配慮で評価します
  • 伝えようとする内容は問いません
社会認識 社会的交流

自分の行動が相手にどう影響するか分かる

  • 他者と適切に関わっているか、集団へ参加しているかを評価します
問題解決

遭遇する問題を処理する

  • 日常生活上の問題を認識し、決断を下して行動できるかを評価します
  • 問題が実際に解決したかは問いません
記憶

人や日課を覚えている

  • 頻繁に会う人、日課、他者からの依頼を覚えているか評価します

まとめ

FIM(機能的自立度評価表)とは、日常生活を送るために必要な動作ADLがどの程度自力でできるかを評価する際に使用する指標です。ほかの評価方法よりも詳細な項目を確認するので、活用できる場面も多くあります。

回復期リハビリテーション病棟では、リハビリの成果を評価するためにFIMが活用されています。FIMの知識を専門的に身につけたい場合は、リハビリテーション病棟への転職も視野に入れましょう。マイナビ看護師では、希望のキャリアに合わせた転職相談を行っています。

※当記事は2024年2月時点の情報をもとに作成しています

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