• 2023年7月15日
  • 2024年6月20日

看護師は養護教諭になれる? 仕事内容となる方法も解説

 

看護師として働いている方には、キャリアを考える中で保健室の先生である養護教諭の仕事に興味が出てきた方もいるかもしれません。養護教諭の仕事内容は看護師に共通するものも多く、これまで看護師の仕事を通して身につけてきた知識やスキルが活かせます。

当記事では、看護師から養護教諭になるための方法と仕事内容を詳しく解説します。看護師の知識を活かしながら子どもたちとも関わりたいという方は、ぜひ当記事を参考にしてください。

養護教諭とは?

養護教諭とは、学校教育法に従って小・中・高校に配置される「保健室の先生」のことです。多くの学校では養護教諭が保健主事を担当し、学校保健に関する事柄の全般を管理する役割を果たします。

子どもが安心して学校生活を送るためには、養護教諭の存在が欠かせません。近年では養護教諭がいじめや家庭環境に悩む子どもに対して「心の拠り所」となり、ケアを行うケースもあります。
(出典:文部科学省「養護教諭の職務内容等について」

養護教諭の仕事

養護教諭は保健室での救急処置や子どもの健康相談対応から身体測定の実施まで、幅広い仕事内容を担当します。養護教諭の主な仕事と概要は、下表の通りです。

保健情報の把握 健康診断の計画を立てて実践し、子どもの体格・体力・疾病・栄養状態などの実態把握に努めます。
保健指導 子どもが健康に生活できる力を育成するため、学級活動やホームルーム活動を通じ、情報提供や注意喚起を行います。
救急処置 学校内で発生した子どものケガや体調不良に対して、応急処置を提供します。状態によっては、救急車を呼ぶ・病院を受診させるなど、保健室で休養させる以外の対処を取ることも必要です。
健康相談 保健室には、健康面の問題を抱える子どもが相談に来るケースもあります。養護教諭は相談対応を通じて問題の解決を図り、学校生活により適応できるように支援することが必要です。
環境衛生 子どもが安全に生活できる環境を整備する目的で学校保健安全法の学校環境衛生の基準に基づき、水質検査や空気検査を実施します。
精神的ケア 子どもの身体的な不調には、いじめなどが関わっているケースもあります。子どものトラブルサインにいち早く気づき、良い相談相手として精神面のケアを行うことが、養護教諭の仕事です。
(出典:文部科学省「養護教諭の職務内容等について」
(出典:文部科学省「教職員のための子どもの健康相談及び保健指導の手引」
(出典:文部科学省「学校環境衛生管理マニュアル」

保護者やほかの教員と連携して子どもの対応にあたり、心身の健やかな成長をサポートすることも、養護教諭の役割です。養護教諭の役割を果たすには、教員に子どもを観察する際のポイントやトラブルサインの見つけ方を伝えて、授業中の様子を共有してもらう仕事も発生します。

養護教諭の平均給与

養護教諭(小・中学校教員と高等学校教員)の平均給与について説明します。以下は、厚生労働省や人事院給与局などが発表しているデータをもとに、きまって支給する現金給与額や平均年収などをまとめた表です。看護師の平均給与を併せて示しています。

  きまって支給する現金給与額 年間賞与その他特別給与額 平均年収
小・中学校教員 約42.5万円 約150.7万円 約661万円
高等学校教員 約44.3万円 約167.3万円 約699万円
看護師 約35.2万円 約85.7万円 約508万円

養護教諭の平均給与は、小・中学校教員よりも高等学校教員のほうが高い傾向です。平均給与における両者の差額は、きまって支給する現金給与額は約1.8万円、年間賞与その他特別給与額は約16.6万円、平均年収は約38万円となっています。

看護師と比較すると、養護教諭の平均給与は全般的に高い金額です。きまって支給する現金給与額は約7万~9万円、平均年収は約150万~190万円の差が開いています。年間賞与その他特別給与額は、高等学校教員が看護師よりも2倍弱高い状況です。
(出典:厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査 結果の概況」
(出典:総務省「第5表職種別職員の平均給与額」
(出典:人事院給与局「令和5年国家公務員給与等実態調査報告書」

看護師が養護教諭になるためには?

看護師が養護教諭になるためには?

養護教諭になるには、養護教諭免許状を取得する必要があります。養護教諭免許状の種類は、養護教諭一種免許状・養護教諭二種免許状・養護教諭専修免許状の3種類です。養護教諭一種免許状は条件を満たす大学で、養護と教職に関する所定の単位を修得すると取得できます。

養護教諭二種免許状は、条件を満たす短期大学などで養護と教職に関する所定の単位を修得すれば取得が可能です。養護教諭専修免許状を取得するには、条件を満たす大学卒業後に大学院へ進学し、修了する必要があります。

看護師免許を持つ方・保健師免許を持つ方は下表の条件を満たすことで、養護教諭一種免許状の取得が可能です。

看護師免許を持つ方 文部科学大臣指定の大学などに1年以上在籍して、所定の単位を修得
保健師免許を持つ方 文部科学大臣指定の大学などに半年以上在籍して、所定の単位を修得

なお、保健師免許を持ち、教育職員免許法施行規則第66条の6で定められた下表の単位を修得している方は申請のみで、養護教諭二種免許状を取得できます。

日本国憲法 2単位
体育 2単位
外国語コミュニケーション 2単位
情報機器の操作 2単位
(出典:e-gov法令検索「教育職員免許法施行規則」

いずれのルートで養護教諭免許状を取得するとしても教員採用試験に合格しないと、養護教諭としての就職はできません。公立学校の養護教諭への就職を希望する場合は都道府県もしくは教育委員会が実施する教員採用試験を受験して、合格を目指しましょう。私立学校の養護教諭への就職を希望する場合は、学校ごとに実施される教員採用試験の受験が必要です。
(出典:独立行政法人福祉医療機構WAMNET「養護教諭」

看護師が養護教諭になるメリット

看護師が養護教諭になるメリット

看護師から養護教諭になるキャリアには、メリットが複数あります。以下では看護師免許を持つ方があえて養護教諭として働くキャリアを選択するメリットを紹介するので、自分自身の将来を見つめ直す際のヒントを得てください。

看護師としての知識を活かせる

養護教諭は看護師時代に培った専門知識や技術を活かし、子どもの成長に貢献できる仕事です。たとえば、子どもの応急処置を行う際には、臨床経験を通じて培った医療技術を活かせます。子どもの健康相談に対応する際には、不安を抱える患者さんと向き合う中で培ったコミュニケーションスキルが役立つでしょう。

また、養護教諭は、ほかの教員と連携し合って仕事を進めることもあります。意見や立場の異なる相手とスムーズに連携を図るには、チーム医療を通じて培った協調性が活かせるでしょう。

児童・生徒を見守れる

児童・生徒を見守れる点は、養護教諭になる大きな魅力です。養護教諭は児童・生徒にとって、ケガや病気の手当てをしてくれる看護師のような存在であり、学校生活における心の拠り所として頼りにできる存在です。

担任教諭などとは立場が異なる養護教諭に、心身の悩みや友だちとの悩みなどを打ち明けてくる児童・生徒も少なくありません。あれこれと悩む児童・生徒を支援し、成長していく姿を見守れるのは、養護教員ならではのやりがいであり、喜びです。

保護者に安心してもらえる

養護教諭として働くうえでは保護者を巻き込み、子どもの成長をサポートすることも大切です。看護師免許を持つ養護教諭は専門性の高い人材として保護者から信頼されやすく、子どもの普段の様子をスムーズに聞き出し、情報収集を図れます。

また、看護師免許を持つ養護教諭はほかの教員にとっても心強い存在です。看護師免許を持つ養護教諭は医療機関や保健所の仕組みも理解していることが多く、地域の関係機関やほかの教員と幅広く連携し、子どもの支援を行えるでしょう。

安定した環境で働ける

養護教諭はほかの教員と同様、朝の8時頃に出勤して1時間の休憩を取り、17時頃に退勤する、1日8時間勤務を行うことが通常です。養護教諭は基本的に一部の看護師のように、夜勤を含むシフト制で働くことはありません。多くの学校では土日祝休みで働けるうえ、夏季休暇や病気休暇を取得する権利も確保されます。

公立学校の養護教諭は基本的に公務員として扱われるため、充実した福利厚生制度のもと、安定的に働けます。以下は、東京都の養護教諭として働く場合に受けられる福利厚生の一部を示します。

  • 退職手当や年金の支給
  • 出産費の補助
  • 育児休業中の手当金
  • 病児保育ベビーシッターの利用補助
  • スポーツクラブの利用補助

(出典:東京都教育委員会「福利厚生」

なお、私立学校の養護教諭の給与水準や福利厚生制度は、学校ごとに異なります。養護教諭の安定性を魅力に感じて転職を検討する場合には事前に詳細を確認し、納得のゆく待遇の得られる職場を選択しましょう。

個人の裁量で仕事を進めやすい

個人の裁量で仕事を進めやすいという点も養護教諭になるメリットです。小・中学校や高等学校では通常、養護教諭の配属は各校に1人または2人程度です。このため、自分のペースで保健室の管理や運営ができるでしょう。

もちろん、養護教諭も同じ学校内の一般教諭と連絡を取り合い、連携して働く必要はあります。しかし、複数の看護師がチームとして働く医療現場などとは異なり、養護教諭は個人の裁量で仕事を進めやすい環境に置かれることが一般的です。

看護師が養護教諭になるデメリット・大変さ

看護師が養護教諭になるデメリット・大変さ

看護師が養護教諭になると、さまざまなメリットを得られる反面、いくつかのデメリット・大変さも経験します。以下では、4つのデメリット・大変さを取り上げ、それぞれについて解説します。

児童・生徒・教職員との関係に悩むことがある

人間関係の悩みやトラブルはすべての仕事につきものであり、養護教諭も児童や生徒、教職員との関係に悩むことはあります。たとえば、思春期に差し掛かった児童や生徒が情緒不安定になり、対応に苦慮する事態も想定できます。

あるいは、相性が合わなかったり、意見が異なったりする教職員との関係に悩むこともあるでしょう。相手が子どもであれ、大人であれ、職場における関係の悩みを、自分1人で抱え込まないでください。

関係に悩んだ時は、信頼できる先輩や同僚に相談することを推奨します。経験豊富な先輩からは的確なアドバイスも期待できます。また、関係に悩んでいる相手の良い面を見つけ、前向きに接すると、理解し合える可能性も高まるでしょう。

判断力が求められる

養護教諭は、児童や生徒の健康や生命に関わる業務を担うため、さまざまな場面で判断力が求められます。たとえば、ケガや病気で保健室を訪れた児童や生徒に対し、迅速に判断して処置を行います。医療機関でさらなる処置が必要かどうかという判断も不可欠です。

また、心の問題を抱えている児童や生徒に対し、どこまで踏み込むべきかという判断が求められるケースも起こり得ます。養護教諭の業務範囲には限りがあり、カウンセラーなどに任せるタイミングを見極めるという判断が必要です。

判断力は、経験と知識を蓄えることで身についていきます。職場で経験を積むとともに、仕事に関連した研修やワークショップなどに積極的に参加し、知識を深めるよう心がけましょう。

看護師としてのブランクができる

養護教諭になると、医療現場から離れるため、看護師としてのブランクができます。学校ではケガや病気の処置など、看護師としての資格や経験を活かせる仕事は行えるものの、最新の医療技術に触れる機会はなくなります。

将来、再び病院で看護師として働きたいと考えている場合、養護教諭として働いていた期間がブランクとみなされる可能性があることを考慮しておきましょう。

しかし、研修体制が整った医療機関などが、ブランクがある方を採用するケースは珍しくありません。教育現場での経験を看護師としての力量を向上させる機会ととらえ、養護教諭の仕事に取り組むことを推奨します。

さまざまな業務を行う必要がある

養護教諭は、勤務中にさまざまな業務を行う必要があります。保健室運営だけでなく、ホームルームや学校行事での保健指導や保健学習・学校環境衛生活動の協力・健康相談・伝染病予防といった教育現場ならではの業務も必要です。

定期または臨時の健康診断も、養護教諭が行う業務の1つです。学校における健康診断には、立案から準備・指導・評価に至るまで多岐にわたる作業が伴います。健康診断の実施時期には、就業時間外に業務が及ぶこともあります。

さまざまな業務を遂行するのは大変な一方で、医療機関とは異なるさまざまな業務が経験できる点はメリットです。
(出典:文部科学省「養護教諭の職務内容等について」

養護教諭に向いている方は?

養護教諭に向いている方は?

看護師として活躍してきた多くの方は、判断力や観察力といった養護教諭として働くために必要な適性を十分に備えています。現時点では適性がなく、養護教諭には向いていないと感じていても、働きながら適性が身につくこともあります。

養護教諭になりたい気持ちがあれば、目指すことに問題はありません。以下では、養護教諭に向いている方のタイプについて解説します。

子どもが好きで包容力のある方

養護教諭は小・中学校や高等学校などに配属されるため、子どもが好きな方が向いています。ケガや病気を手当てしてもらったり、心の悩みや気軽な相談を聞いてもらったりするために保健室を訪れる子どもを、温かく迎え入れる包容力も欠かせません。

子どもの性格や成長の度合いは異なり、それぞれに適した接し方やサポートが必要です。「先生、先生」と甘えてくる子どもを煩わしく感じず、親身に接し、自身の役割を果たせる方が養護教諭に向いています。

気分の切り替えが得意な方

養護教諭は、業務量の多さや児童や生徒との関係性に悩み、ストレスを感じることもあります。ストレスをため込むと、気持ちが落ち込んだり、イライラして人当たりが悪くなったりして仕事に悪影響を及ぼしかねません。

職場の悩みやストレスを抱えた際は、友人や先輩とのおしゃべりやショッピング、スポーツなどさまざまな方法である程度、解決したり発散したりできます。仕事を続けていくには気分の切り替えが必要であり、得意な方は養護教諭に向いています。

責任感があり自発的に動ける方

養護教諭には、責任感があり自発的に動ける方が向いています。保健室で待機しているのみでは、養護教諭の仕事は十分に果たせません。たとえば、相談を受けた子どもの保健室以外における様子を見たり、担任教諭から話を聞いたりといった行動に移す必要もあります。

子どもの心身をケアし、教職員の健康面におけるサポートをする立場として責任感を持ち、児童や生徒、教職員が健全に過ごせる環境を整えることが大切です。誰かの指示を待つのではなく、自発的に動けるかどうかは、養護教諭の適性を左右するポイントです。

まとめ

看護師免許を持っていると、指定の教育機関で1年在籍し単位を修得することで養護教諭の免許を取得できます。養護教諭は学校内での救急処置や保健指導などを行います。看護師としての知識を活かせるだけでなく、コミュニケーション能力や観察力などこれまで培ってきたスキルも共通するため、看護師は養護教諭としても活躍できるでしょう。

公立の学校で働くには教育委員会が実施する教員採用試験を受ける必要があります。私立の学校は各自で採用試験を行っているため、情報収集することが大切です。マイナビ看護師では非公開求人も多数保有しているので、転職を検討している方はぜひご利用ください。

※当記事は2024年4月時点の情報をもとに作成しています

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