• 2023年3月15日
  • 2024年1月26日

看護師は人間関係で悩みやすい? 人間関係が良い職場の特徴も

 

看護師が抱えやすい悩みとして、人間関係が挙げられます。人間関係が悪化する原因はさまざまですが、病院という環境や看護師の上下関係、患者さんとの接し方、他職種との協働が原因となることもあります。

当記事では看護師が人間関係で悩んでしまいやすい原因と対処法について解説します。人間関係の良い職場を作るためには、コミュニケーションを多く取り、助け合うのが大切です。良い人間関係を築くコツも解説するので、看護師の皆さんはぜひ参考にしてください。

看護師にとって人間関係が重要な理由

看護師が退職を選ぶ理由の一つに、人間関係の悩みが挙げられます。看護師さんが人間関係で悩みやすいのは、看護師にとって人間関係が重要であるという表れでもあります。

看護師はチームで業務を進めていく職業です。看護師は患者さんの命に関わる仕事であり、ミスが許されません。そのため、薬・点滴のダブルチェックなど、ほかの看護師や医療スタッフ同士で連携を取りながら仕事を進める必要があります。人間関係が悪化すれば、ちょっとした連絡の行き違いなどから重大な医療事故につながる恐れがあるため、職場の人間関係を良好に保つことは特に重要です。

また、看護師の仕事を確実に進めるのに、こまめな報告・連絡・相談が欠かせません。チームで動く医療現場では、患者さんの状態などを複数人のスタッフでチェックすることになります。早番と遅番に分かれて勤務し、スタッフが入れ替わるタイミングがあるため、連絡事項や引き継ぎは漏れなく正確に行うのが大切です。

しかし、人間関係が悪い職場の場合、「あの人とは話しにくい」という感情が連絡漏れなどを引き起こし、ミスやさらなる関係悪化を招く恐れがあります。

看護師が職場の人間関係で悩む原因は?

看護師が職場の人間関係で悩む原因は?

看護師として働くうえで、職場での人間関係を重視する方は多くいます。マイナビ看護師の調査結果によると、入職前の不安として「人間関係の不安」を挙げる方は68.6%に上りました。また、現在の職場で仕事をするうえでもっともストレスを感じる原因として挙げられるのも、「上司や同僚との人間関係」が63.0%を占めています。
(出典:マイナビ看護師「看護師白書2020」

職場の人間関係は、「仕事が円滑に進められるか」「患者さんの命に関わるミスを防げるか」といったことに大きく影響します。長く働き続けられる快適な職場を探すためにも、まずは看護師さんが職場で悩みを抱えやすい原因を知っておきましょう。

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上下関係がはっきりしている

看護師の職場は、先輩・後輩の関係がしっかりしているところがほとんどです。指導する立場とされる立場で上下関係が明確となるため、必要以上に強気に出るベテラン看護師さんや、反対に過度に委縮する新人看護師さんも珍しくありません。

はたから見ればいじめやパワハラとして映るものの、当人同士が無自覚なケースも多くあります。また、病院や診療科により業務内容が大きく異なるため、交流が限られやすいのも理由の一つです。職場環境が閉鎖的になりやすく、人間関係が固定化されることで「悪い状態」が当たり前となり、改善のきっかけが掴みにくい傾向にあります。

責任の重い仕事である

看護師は、患者さんの命と向き合う責任の重い仕事です。ほんのわずかな行き違いが重大な事故に直結するケースも多いなか、些細なミスも見逃すまいと神経を尖らせる看護師さんは珍しくありません。

看護師としての自覚と覚悟を持つ看護師さんのなかには、患者さんのことを思うあまり周囲へ注ぐ視線や口調が厳しくなりすぎる方もいます。緊急性の高い現場は特に職場全体の雰囲気もピリピリとしたものになりやすく、人間関係にも気を遣う傾向です。

業務が忙しい

人員不足の状態が続き、看護師一人ひとりの担当する業務が多い職場では、十分な休憩時間が確保できない場合があります。業務に忙殺されて気持ちにも体力にも余裕がない状態で働いていると、精神的な余裕も持ちづらく、人間関係にも悪影響を及ぼしやすくなります。

疲れや焦りが募って些細なミスを繰り返すことや、相手の何気ない言動に苛立ちを覚えることもあるでしょう。結果としてチームの連携がうまくいかず、さらなるトラブルを招くケースも存在します。

看護師同士の人間関係が良い職場の特徴

看護師同士の人間関係が良い職場の特徴

看護師の職場は人間関係を悪化させる要因がそろってはいるものの、結局のところ人間関係の良し悪しは職場内の環境に大きく依存します。そのため、仕事を探す際は職場の環境をしっかりと確認することが重要です。

ここでは、看護師同士の人間関係が良好に保たれやすい職場の特徴を3つ解説します。

コミュニケーションが多い

コミュニケーションが多い職場は、人間関係も比較的良好です。人間関係の良さは、コミュニケーションの量にはっきりと現れます。「嫌いな相手とはできるだけ話したくない・関わりたくない」と考える方は少なくありません。

つまり、「コミュニケーションが少ない職場=お互いを嫌い合う人が多い職場」ともいえます。そしてコミュニケーションが少なくなれば相互理解を深めるきっかけも減るため、さらに人間関係の悪化を招くパターンが形成されやすいです。

反対にコミュニケーションが十分に取れていれば、お互いの意思疎通がスムーズにできストレスを感じにくくなります。また、コミュニケーションを取る余裕がある職場は業務でも余裕があるケースが多く、仕事上のミスも起こりにくい傾向です。
(出典:厚生労働省「1『職場の快適さ』と『人間関係』の関係」)

看護師同士で助け合って仕事をしている

看護の現場では、チームワークが欠かせません。看護師がお互いに無関心のまま業務の負担が偏ると、安定した看護の提供に支障をきたします。看護師同士で気を遣い合い、助け合っている職場は、人間関係の良さも期待できるでしょう。

また、近年はチーム医療を重視する現場が増えています。医師や看護師だけでなく薬剤師・検査技師などさまざまな専門職が同時に患者さんと関わり、連携して治療に当たるケースが少なくありません。

過不足のない情報の伝達や詳細な目的の共有は、チーム医療に必須です。また双方向のコミュニケーションがうまくいっている現場ほどミスが起こりにくく、たとえミスが起きても早い段階で対処し切れる傾向にあります。
(出典:日本看護協会「看護職の労働安全衛生ガイドライン」

管理者にマネジメント能力がある

管理者のマネジメント能力も、職場の人間関係を大きく動かすポイントです。看護師一人ひとりがいかに能力を発揮できるか、成長できるかは管理者の采配一つで大きく変わります。シフト制によって生活リズムが乱れやすく、また患者さんの容態によってスケジュールがずれ込みやすいのが、看護師という仕事です。

看護師が十分にパフォーマンスを発揮し、かつ私生活を犠牲にせず安心して働き続けられる環境が整えられていれば、おのずと心にも余裕が持てるでしょう。職場でのコミュニケーションや周囲への気配りも積極的になり、良好な人間関係の構築が期待できます。
(出典:日本看護協会「看護職の労働安全衛生ガイドライン」

人間関係が悪い職場はハラスメントの原因になる

人間関係が悪い職場はハラスメントの原因になる

人間関係が悪い職場には、ハラスメントが発生しやすいという特徴があります。なかでも、上司・部下とのコミュニケーションが少ない職場や失敗への許容度が低い職場ではパワハラ・セクハラともに発生しやすいことが判明しています。
(出典:厚生労働省「令和2年度 厚生労働省委託事業 職場のハラスメントに関する実態調査 」

また、一般的な業種とは異なり、看護師の仕事でハラスメントに関与する可能性があるのは上司や同僚だけではありません。医師・薬剤師など看護師以外の医療スタッフや外部の第三者、患者さんやその家族などからもハラスメントを受けるケースがあります。

ただし、看護現場におけるハラスメントの増加・深刻化の傾向を受け、多くの職場でハラスメントの予防に取り組むなど、良い人間関係を築くための工夫を始めています。にもかかわらず、人間関係の問題に対処してもらえないなどの理由で限界を感じた場合は、職場自体を変えることも検討するとよいでしょう。

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看護師が人間関係を良好に保つ・改善するコツ

看護師が人間関係を良好に保つ・改善するコツ

環境の良し悪しは人間関係に大きく作用しますが、看護師自身の言動も周囲へ影響を及ぼします。ほんのわずかな働きかけでも、日々率先して動き続ければよりよい関係を築けるかもしれません。

たとえば、同僚や先輩との人間関係に悩んでいる場合は、下記の点を意識して行動すると事態が好転する可能性があります。

  • 信頼できる上司に悩みを打ち明ける
  • 苦手に感じる相手とも積極的に話す
  • 笑顔・挨拶・感謝を忘れない
  • ネガティブな態度・発言は慎む
  • 報・連・相は欠かさず丁寧にする
  • プライベートに踏み込みすぎない
  • 相手の人格・価値観を尊重する
  • 周りから信頼される言動を心がける
  • 職場環境の改善策を提案する
  • 中立の立場を貫く
  • 考え方や価値観が合わない人がいるのは当然と考える
  • 仕事と割り切る

(出典:日本看護協会「看護職の労働安全衛生ガイドライン」

患者さんとの関係を改善したい場合は、下記の点を意識して行動するとよいでしょう。

  • 患者さんや家族がどのような状況にあるかを客観的に理解する
  • 患者さんや家族の抱える不安を否定せず理解する姿勢を示す
  • 症状や心配事に対する訴えには真摯に対応する
  • 患者さんの持つ人間としての尊厳や権利を尊重する
  • ハラスメントに対してはきっぱりと拒否する
  • 問題が起きたときは速やかに上司へ報告する

(出典:日本看護協会「看護職の労働安全衛生ガイドライン」
(出典:日本看護協会「患者・家族との信頼関係と倫理」

各ポイントのなかから実行しやすい対処法を解説するため、参考にしてください。

信頼できる上司に悩みを打ち明ける

人間関係の悩みを自分で解決するのが難しい場合や仕事に支障が出ているケースでは、信頼できる上司、もしくは先輩看護師に悩みを打ち明けるのが有効な手段です。他者に相談することで精神的負担が減り、気持ちの整理がついて解決策を考えやすくなる可能性もあります。

また、病院やクリニックなどの医療施設を含めてあらゆる職場にはハラスメント相談窓口があるため、人間関係の悩みを感じている場合そちらに相談するのもよいでしょう。内部でどうしても相談しにくい場合は、外部の相談窓口を頼ることも視野に入れてください。

ネガティブな態度・発言は慎む

自分では好意的な態度で接しているつもりでも、ネガティブな感情が表に出ていた場合、相手に悪印象を与える恐れがあります。意識してネガティブな態度や発言を慎み、ポジティブな言い換えや気持ちの切り替えを行うことが良好な人間関係を築くきっかけになるでしょう。

たとえば、以前失敗した仕事に対して「また失敗するかもしれない」とネガティブな気持ちを抱いたとします。しかし、「まだやってみなければ分からない」「次はきっとうまくできる」と物事をポジティブに捉え、あえて言葉に出すことで気持ちを切り替えるきっかけを作れます。

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考え方や価値観が合わない人がいるのは当然と考える

価値観や考え方は人それぞれであり、看護業務についての考え方も看護師によって多様です。優先順位も人によって異なるため、相手が自分の考えと異なる行動を取ったからといって否定的な気持ちになっていても始まりません。

人間関係を円滑にするためには、自分と相手との考え方が違うのは当然であると理解し、頭ごなしに否定せず、柔軟に受け入れる姿勢を持つのが大切です。自分と異なる価値観の方に出会ったら、「この方はこう考えるのだな」と受け入れることでストレスを減らせます。

報・連・相は欠かさず丁寧にする

報・連・相を確実に行うのは、仕事で良好な人間関係を築くために大切です。悪い知らせほど時間を置かずにスピーディーに行うようにしましょう。

また、以下のポイントを押さえることで報・連・相を的確に行えます。

  • 結論から先に伝える
  • 相手の状況を見極め、適切なタイミングで行う
  • 事前に情報を整理し、要点を伝える
  • 客観的な事実と自分の意見を区別する
  • 相手や状況に適した伝え方・ツールを選ぶ
  • あいまいな表現を避ける

人間関係の悩みは退職理由になる

人間関係の悩みは退職理由になる

人間関係の悩みは看護師の退職理由になり得ます。マイナビ看護師の調査によると、看護師が退職を考え始めたきっかけ・理由のなかで人間関係を挙げた人の割合は約37.9%でした。
(出典:マイナビ看護師「看護師白書2020」

また、厚生労働省の「令和4年 雇用動向調査結果の概要」によると、職業全体で人間関係を理由に退職した方は男性が8.3%、女性が10.4%でした。
(出典:厚生労働省「令和4年 雇用動向調査結果の概要」

マイナビ看護師と厚生労働省の調査はそれぞれ質問項目や回答方法が異なるため、一概に看護師が人間関係に悩まされやすい職業とはいえません。しかし、看護師の離職理由として、人間関係が上位にあるのは確かです。

看護師が人間関係の良い職場を探す方法

人間関係に悩んで職場を変えたのに、転職先でまた人間関係に悩むことになっては転職が成功したとはいえません。看護師が人間関係の良い職場を探す方法としては、以下の3つが挙げられます。

職場見学に行く
求人票に記載された情報だけでは、職場の実情は分かりません。気になる職場が見つかったら、必ず職場見学に行き、雰囲気などを自分自身の目で確かめましょう。

人間関係の実情を知るには、看護師さんがどのように患者さんにふるまっているか、対応は丁寧か、あいさつはできているか、などをチェックするのが有効です。看護師同士だけでなく、他職種や患者さんとの人間関係が良好な職場は、スタッフの心に余裕があるため、見学者や患者さんへの対応も丁寧なケースが多くなっています。

有休消化率や教育体制をチェックする
面接を受けた際には、有休消化率や産休・育休取得者数、教育体制などを面接担当者に質問するとよいでしょう。有給消化率などが一般的な水準以上であれば、職場の人間関係が良好な可能性が高くなります。

看護師向けの転職エージェントを活用する
看護師向けの転職エージェントを活用すれば、職場やスタッフの雰囲気・特徴などを詳しく教えてもらえます。また、転職活動を進めるうえで分からないことや不安な点などがあれば、転職エージェントに相談できるのもメリットです。

まとめ

看護師の職場は先輩・後輩の上下関係がはっきりしており、業務も忙しいため、人間関係が悪くなる場合もあります。また、患者さんや医師などの他職種からハラスメントを受けるケースもあり、人間関係が理由で悩む方は多い傾向があるといえます。良い人間関係を築くには十分にコミュニケーションを取るか、仕事上での関係だと割り切ることが大切です。しかし、どうしても人間関係が改善せず、ストレスがたまるのであれば転職も検討しましょう。

転職の際はマイナビ看護師をぜひご活用ください。看護業界に精通したキャリアアドバイザーが、快適に働ける職場への転職をサポートします。

※当記事は2023年12月時点の情報をもとに作成しています

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