• 2024年1月6日
  • 2024年1月5日

看護師がパワハラ被害を受けたらどうすればよい? 実例や対策を解説

 

職場におけるパワハラは大きな問題となっていますが、特に医療現場においてはパワハラが起きやすいと言われています。看護師がパワハラを受ける原因として、人手不足の慢性化や人の命を預かる職場ゆえのプレッシャー、多忙さによるコミュニケーション不足などが挙げられます。看護職が心身ともに健康で働き続けるためにも、働く一人ひとりがパワハラの実情を知り、自分にできる対策を取りましょう。

この記事では看護師が受けるパワハラ被害の実態として、主な加害者や被害を受けやすい年齢、パワハラの実例を紹介し、対策方法を解説します。

看護師が受けるパワハラ被害の実態とは

そもそもパワハラ(パワーハラスメント)とは、職場内での優越的な立場や上下関係を利用して、労働者に対して嫌がらせなどをする行為のことです。

厚生労働省が運営するポータルサイト「あかるい職場応援団」によると、パワハラの定義は下記の通りとなっています。

職場のパワーハラスメントとは、職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①から③までの3つの要素を全て満たすものをいいます。

(引用:あかるい職場応援団「パワーハラスメントの定義」

看護師は職場でのパワハラを受けやすい傾向があります。医労連(日本医療労働組合連合会)の調査によると、看護師がパワハラを受ける割合は下記の通りとなっていました。

【看護師がパワハラを受ける割合】

よくある 6.1%
ときどきある 28.4%
ない 51.4%
分からない 14.1%
(出典:日本医療労働組合連合会「2022年 看護職員の労働実態調査「報告集」」

パワハラを受けたことが「よくある」「ときどきある」を合計すると、34.5%の看護師がパワハラを受けた経験があるという結果です。

参考として、厚生労働省が2020年に行った調査では、日本の労働者のうち過去3年間に1回以上パワハラを受けた者の割合は31.4%です。
(出典:厚生労働省「令和2年度 厚生労働省委託事業 職場のハラスメントに関する実態調査 主要点」

日本の労働者全体の平均と比較して、看護師はパワハラの被害者となる割合がわずかに高いことが分かります。

看護師にパワハラを行う主な加害者

看護師にパワハラを行う主な加害者は、医労連の調査によると下記の通りです。

【看護師にパワハラを行う加害者の割合】

看護部門の上司 60.1%
医師 39.9%
同僚 21.4%
患者 20.5%
家族 5.9%
(出典:日本医療労働組合連合会「2022年 看護職員の労働実態調査「報告集」」

看護師にパワハラを行う加害者の割合は看護部門の上司が最多であり、次いで医師、同僚の順となっています。このことから、職場内の人間関係に原因があるパワハラが多いといえるでしょう。

また、病院・診療所などの医療機関を利用する患者さんや家族の中にも、優越的な立場を利用してパワハラをする人が存在する点に注意してください。

パワハラ被害者になりやすい看護師の年齢

医労連の調査によると、パワハラ被害者となった看護師のうち、「看護部門の上司からパワハラを受けた」と回答した看護師の年齢は下記の通りです。

【上司からのパワハラを受けた看護師の年齢】

20歳未満 85.7%
20~24歳 78.7%
25~29歳 70.7%
30~34歳 65.4%
35~39歳 61.9%
40~49歳 56.9%
50~59歳 53.0%
60~64歳 40.7%
65歳以上 28.8%
(出典:日本医療労働組合連合会「2022年 看護職員の労働実態調査「報告集」」

年齢が若い新人看護師ほど上司からパワハラを受けやすく、年齢を重ねるほどにパワハラを受ける看護師の割合は減少する傾向です。年齢が若い看護師は仕事で分からないことが多く、結果としてパワハラのターゲットになりやすいと考えられます。

ただし、65歳以上でも上司からのパワハラを受けた看護師の割合は28.8%であり、パワハラ経験のある看護師の4人に1人は上司からのパワハラを受けている計算です。

看護師が受けるパワハラの実例

パワハラには、下記に示す6つの類型があります。

身体的な攻撃 殴る蹴る、物を投げつけるなどの暴力行為
精神的な攻撃 人格の否定や必要以上に厳しい叱責を繰り返すなどの行為
人間関係からの切り離し チーム内で仕事を与えないなど、職場内で孤立させる行為
過大な要求 達成不可能な業務を押し付ける、不要な業務や本来とは異なる業務を強制するなどの行為
過小な要求 簡単な作業ばかりをさせる、仕事を与えないなどの行為
個の侵害 労働者を職場外でも監視するなど、プライバシーを侵害する行為
(出典:あかるい職場応援団「ハラスメントの類型と種類」

看護師が受けるパワハラも、6つの類型に当てはめて分類することが可能です。

看護師が受けるパワハラの例をいくつか紹介します。

  • 医師にカルテを投げ付けられる(身体的な攻撃)
  • 上司に同僚たちの前で怒られ、親をけなされる(精神的な攻撃)
  • 同僚たちから仲間外れにされ、仕事の情報を教えてもらえない(人間関係からの切り離し)
  • 本来は休憩時間がある夜勤中に、仮眠をしてはいけないと言われる(過大な要求)
  • 別の看護師を呼んでこいと言われ、仕事をさせてもらえない(過小な要求)
  • 配偶者の仕事や年収をしつこく詮索される(個の侵害)

看護師が受けるパワハラは幅広く、紹介したほかにもさまざまなパワハラ事例が存在します。「身体的な攻撃」「性的な言動(セクハラ)」は患者からの被害が多い一方、「精神的な攻撃」「人間関係からの切り離し」などは、勤務先の職員からの被害、いわゆるパワハラが目立っています。

看護の現場でパワハラが起きる理由

看護の現場でパワハラが起きる理由

看護の現場でパワハラが起きる理由には、医療スタッフが仕事でストレスや不満・悩みを抱えやすい労働環境が関係しています。

看護・医療現場は人手不足が慢性化していて、医療スタッフは業務過多の状態で働くことが多くなりやすい環境です。忙しさのあまりスタッフ間のコミュニケーションが取りにくく、円滑な意思疎通が困難になっています。

くわえて、看護師は人命にかかわる仕事です。仕事の失敗は職場全体に影響する可能性があるため、わずかな失敗でも厳しい言葉で叱られることは少なくありません。守るべき規則も多く、高い規律も求められるためストレスを抱えやすい場です。

コミュニケーションの取りにくさや、失敗が許されない職場の風土が、看護師のパワハラに影響していると考えられます。実際に厚生労働省が2020年に行った調査によると、下記のような特徴がある職場はパワハラが発生しやすい傾向にあります。

  • 上司と部下のコミュニケーションが少ない/ない
  • 失敗が許されない/失敗への許容度が低い
  • 残業が多い/休暇を取りにくい
  • 遵守しなければならない規則が多い/高い規律が求められる

(出典:厚生労働省「令和2年度 厚生労働省委託事業 職場のハラスメントに関する実態調査 主要点」

看護師がパワハラを未然に防ぐには、紹介したこれらの特徴が職場に存在するかどうかをチェックすることが大切です。

看護師がパワハラを受けたときの対策

看護師がパワハラを受けたときの対策

2022年4月より、パワハラ防止法が全面的に施行されました。パワハラをはじめとするハラスメントの予防・対策がすべての職場において義務化され、ハラスメント予防の動きは進んでいます。
(出典:厚生労働省「職場における ・パワーハラスメント対策 ・セクシュアルハラスメント対策 ・妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント対策は事業主の義務です!」

しかし、パワハラ防止法が施行されてもパワハラを完全になくすことは難しい状況です。実際にパワハラ防止法が施行された2022年度の場合、各都道府県の労働局雇用環境・均等部には50,840件のパワハラについての相談が寄せられています。
(出典:厚生労働省「令和4 年度都道府県労働局雇用環境・均等部(室)での男女雇用機会均等法、労働施策総合推進法、パートタイム・有期雇用労働法及び育児・介護休業法に関する相談、是正指導、紛争解決の援助の状況について 」

看護師が職場で受けるパワハラもすぐに減少するとは限らないため、パワハラへの対処法を知っておきましょう。

以下では、看護師がパワハラを受けたときの対策として、4つのステップを紹介します。

パワハラがあった証拠を集める

パワハラを受けたと感じたときは、ハラスメント被害があったと客観的に示せる証拠を集めることが大切です。パワハラの証拠を集めておくと、身近な人や職場の窓口に相談する際にパワハラの事実と内容を明確に伝えられます。

パワハラの証拠は、下記の方法で集められます。

  • パワハラの内容を日記で記録する
  • パワハラで負った傷や投げ付けられた物品の写真を撮る
  • スマートフォンなどで相手との会話や発言を録音する

内部の窓口に相談する

パワハラを受けたときは、なるべく早い段階で職場内部の窓口に相談しましょう。内部相談窓口はパワハラ防止法によって設置が義務付けられた、ハラスメントの被害者が相談できる場所です。

内部相談窓口の担当者は、相談者のプライバシーに配慮しながらハラスメントの事実確認をして、問題解決を図る義務があります。相談したパワハラの事実が認定されれば、加害者本人の異動などによって職場からパワハラの原因が取り除かれることが期待できます。

解決が難しそうなら外部の相談窓口にも頼る

職場内部の窓口では解決が難しい場合には、外部の相談窓口に頼る方法もあります。

主な相談先を3つ紹介します。

  • 総合労働相談コーナーへの相談
    労働局や労働基準監督署に設置されている公的な相談窓口です。予約・料金不要で利用でき、パワハラなどのハラスメントを相談できます。
  • みんなの人権110番
    電話で相談ができる人権相談ダイヤルです。法務省が運営していて、パワハラなどの人権問題について相談できます。
  • 労働組合への相談
    労働組合に所属している場合は、労働組合の窓口にも相談できます。労働組合は団体交渉権を持っているため、当事者の代わりに労働組合の職員が職場と話し合いをしてくれます。

転職する

転職は、パワハラ被害の早急な対策ができる解決方法です。看護師が受けるパワハラは職場環境に原因があるケースが多いため、職場環境が良好な職場に転職することを検討しましょう。

転職にあたっては、退職の手続きと並行して転職活動を進める必要があります。職場環境が良好な職場を1人で探すことは難しいため、転職エージェントを利用しましょう。

自分が転職を決めた理由を転職エージェントに相談すれば、パワハラが発生しにくい転職先の候補を紹介してくれます。

まとめ

2022年4月より、パワハラ防止法が中小企業を含むすべての職場に施行され、パワハラ対策は使用者の義務となりました。しかし、34.5%の看護師がパワハラを受けた経験があるなど、パワハラの被害者となる看護師は現在でも一定数存在します。

もしも職場でパワハラを受けた場合は、まずしっかりとした証拠を集めてください。そのうえで、職場内部の窓口や総合労働相談コーナーなどの外部相談窓口に相談し、解決してもらいましょう。

ただし、職場環境そのものが悪い場合は転職するのも一つの手段です。その際には、マイナビ看護師をぜひご利用ください。看護業界に精通したキャリアアドバイザーが、ご希望に合わせて非公開求人を含む多数の職場を紹介します。

※当記事は2023年11月時点の情報をもとに作成しています

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