看護師に関する情報を調べているときに、「看護婦」や「看護士」という書き方をされていて、どれが正しい表記か気になった方もいるのではないでしょうか。かつて、女性看護師は「看護婦」、男性看護師は「看護士」と表記されていましたが、現代では「看護師」に統一されています。
この記事では、「看護婦」の呼び方が変わった経緯のほか、帽子・服装の変化について紹介します。また、看護職の種類も解説しているので、医療従事者をめざす方はぜひ参考にしてください。
看護婦の正しい呼び方とは
看護を行う者を指す「かんごし」の正式名称は、「看護師」です。
昔は女性看護師のことを「看護婦」、男性看護師のことを「看護士」と呼んでいましたが、現代では統一して「看護師」と呼んでいます。
以下では、名称変更の理由・時期と看護婦・看護師・看護士の違いを紹介します。
看護婦はいつから看護師になった?
昔は女性看護師のことを「看護婦」、男性看護師のことを「看護士」と呼ぶことが一般的でした。しかし、2001年の法改正で「保健婦助産婦看護婦法」から「保健師助産師看護師法」に名称が変更されたことにより、翌年2002年に性別による読み方の区別が撤廃され、男女ともに「看護師」と統一されるようになりました。詳しい背景には、男女雇用機会均等法や社会における男女格差の改善問題が挙げられます。
社会における男女格差や男女平等などの問題は、多くの方が注目している話題です。看護師をめざす方はもちろん、医療業界で活躍したいと考えている方は、誤った表記で記載することがないようにしましょう。
看護婦・看護師・看護士の違い
前述のとおり、「保健婦助産婦看護婦法」が「保健師助産師看護師法」に名称変更したことにより、男女ともに「看護師」の呼び名に統一されましたが、役割や業務内容などに違いはありません。
「看護師」という表記が基本となってから約20年経過した現在も、未だに「看護婦さん」と呼ぶ人がいたり、ネット上で「看護婦」「看護士」と称されていたりすることがあります。しかし、医療業界では「看護婦」「看護士」という表記が使用されることはほぼありません。
看護婦の象徴だった帽子や服装も変わっている

昔は看護婦といえば、ナースキャップ・ワンピースのナース服・サンダルのナースシューズが定番でしたが、現代ではこれらの格好をした看護師は少ない傾向にあります。現代ではナースキャップは被らず、パンツスタイルのナース服を着て、スニーカーを履く看護師が増えています。
毎日洗わないナースキャップは衛生上の問題があるほか、「そもそも被る必要がない」「働いていると邪魔になる」といった理由から、1980年頃からナースキャップを廃止にする病院が増えました。
服装も動きやすさの面でパンツスタイルのナース服やスクラブが人気になり、靴も疲れにくいスニーカーが主流になっています。医療機関によっては、安全性の面でサンダルを禁止しているところもあるようです。
看護職の種類を紹介

看護職は医療機関や福祉施設、行政などで人々に寄り添って健康を守っています。看護職には看護師・准看護師・助産師・保健師の4種類があり、職種によって業務内容が大きく異なるのが特徴です。
以下では、各看護職の特徴を解説。看護職を目指している方はぜひ参考にしてください。
看護師
看護師は主に医療現場において、病気やけがで療養している患者の看護や身の回りの世話、医師による診療のサポートなどを行う職業です。保健師助産師看護師法では、以下のように定義されています。
この法律において「看護師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、傷病者若しくはじよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする者をいう。
引用:保健師助産師看護師法
看護師の主な仕事内容は、診療補助や患者の看護、患者および患者の家族に対する心身面のケア・サポートです。他業種のスタッフと連携を取りながら、業務を行っています。
看護師が活躍する主な職場は、下記のとおりです。
- 病院
- クリニック・診療所
- 福祉施設
- 介護施設
- 訪問看護ステーション
- 保健所
- 健診センター
- 企業
看護師は医療機関のほかに、施設や保健所、企業でも活躍しています。
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准看護師
准看護師は医師や看護師の指示を受けて、病気やけがで療養している患者の看護や身の回りの世話、医師の診療補助を行う職業です。保健師助産師看護師法では、以下のように定義されています。
この法律において「准看護師」とは、都道府県知事の免許を受けて、医師、歯科医師又は看護師の指示を受けて、前条に規定することを行うことを業とする者をいう。
引用:保健師助産師看護師法
准看護師の仕事内容は基本的に看護師と同様ですが、准看護師は医師・看護師の指示に従って動く必要があるため、看護師とは違い自分の判断で業務を進めることができません。
准看護師が活躍する主な職場は、下記のとおりです。
- 病院
- クリニック・診療所
- 福祉施設
- 介護施設
准看護師は、クリニックや福祉施設、介護施設の求人が多い傾向にあります。
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保健師
保健師は学校や企業、保健所などにおいて、健康管理に関する指導や病気・けが予防のための保健指導を行う職業です。保健師助産師看護師法では、以下のように定義されています。
この法律において「保健師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、保健師の名称を用いて、保健指導に従事することを業とする者をいう。
引用:保健師助産師看護師法
保健師の仕事内容は地域の方々へ向けて、健康維持や増進、病気やけが予防のための健康指導・保健指導を行うことがメインです。超高齢社会における日本で、保健師の需要は年々高まっています。
保健師が活躍する主な職場は、下記のとおりです。
- 保健所・保健センター
- 病院
- クリニック・診療所
- 企業
- 福祉施設
- 教育機関
行政関係の施設に勤める「行政保健師」、企業に勤める「産業保健師」、学校に勤める「学校保健師」、病院や診療所に勤める「病院保健師」など、職場によって呼び名が変わります。
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助産師
助産師は看護職のなかでも、主に妊娠・出産など産婦人科に関する医療行為に携わる専門性の高い職業です。保健師助産師看護師法では、以下のように定義されています。
この法律において「助産師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、助産又は妊婦、じよく婦若しくは新生児の保健指導を行うことを業とする女子をいう。
引用:保健師助産師看護師法
助産師はその名のとおり、女性の妊娠・出産など産婦人科関連の医療行為に携わる職種です。分娩介助だけでなく、妊娠中や出産後の体調管理や乳児への保健指導も行います。
助産師が活躍する主な職場は、下記のとおりです。
- 病院
- クリニック・診療所
- 助産院
- 産後ケアセンター
助産師は看護職で唯一、独立開業ができる職種です。経験を積んで、助産院を開業できます。
ただし、現在の日本の法律において、国内の助産師は女性限定となっており、男性が助産師資格を取得することはできません。
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看護師の男女比

昔は「看護婦」と言っていたこともあり、看護師といえば女性でした。しかし、近年は男性の看護師も増えています。厚生労働省の「令和2年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」によると、看護師の総数および男性の人数と割合は以下のとおりです。
看護師の総数 | 男性看護師の人数 | 男性看護師の割合 | |
2010年 | 95万2,723人 | 5万3,748人 | 5.6% |
2012年 | 101万5,744人 | 6万3,321人 | 6.2% |
2014年 | 108万6,779人 | 7万3,968人 | 6.8% |
2016年 | 114万9,397人 | 8万4,198人 | 7.3% |
2018年 | 121万8,606人 | 9万5,155人 | 7.8% |
2020年 | 128万911人 | 10万4,365人 | 8.1% |
2010年からの10年間、いずれの年も女性看護師の人数の方が圧倒的に多く、男性看護師は10%以下でした。しかし、年々男性看護師の人数は増えており、2010年は5万3,748人でしたが、2020年には10万4,365人と倍近く増加しています。今後も男性看護師の人数は増え続けると予想されるでしょう。
参照元:厚生労働省「令和2年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」
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看護師になるには

看護師になるには、以下4つの方法があります。
- 高校卒業後、4年制の大学に通う
- 高校卒業後、3年制の短期大学に通う
- 高校卒業後、3年制の看護師養成所に通う
- 中学卒業後、5年一貫看護師養成課程校に通う
看護学だけでなく一般教養科目も学びたい方は、大学に通うのがおすすめです。一方、看護師資格を取得後に即戦力として働きたい方は、実技や実習が比較的多い看護師養成所を選ぶと良いでしょう。
看護職としていち早く現場に出たいのであれば、准看護師免許を取得するのもひとつの手。准看護師免許であれば、最短2年で取得できます。准看護師として経験を積んだあとに、看護師国家試験を受験して看護師になることも可能です。
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まとめ
昔は女性は「看護婦」、男性は「看護士」の名称でしたが、法改正で「保健婦助産婦看護婦法」が「保健師助産師看護師法」に変わったことにより、男女共に「看護師」に統一されました。未だに「看護婦」と呼ぶ人もいますが、医療業界では「看護婦」「看護士」と表記することはないので、間違えないように注意しましょう。
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