• 2021年8月6日
  • 2022年2月18日

助産師になるには? 国家試験・資格・仕事内容・年収を紹介!

 

少子化により出産件数は年々減少していますが、助産師は妊娠・出産にはなくてはならない存在です。助産師の仕事は妊婦の健康管理や経過観察、分娩介助、育児のアドバイスなど多岐にわたります。

この記事では、助産師の働く場所や仕事内容、平均年収を解説。資格取得のルートも紹介しているので、助産師を目指す方はぜひ参考にしてください。

助産師とは

助産師とは、産婦人科や助産院で助産行為をする人のことです。保健師助産師看護師法の第3条では、以下のように定義されています。

『助産師』とは、厚生労働大臣の免許を受けて、助産又は妊婦、じよく婦若しくは新生児の保健指導を行うことを業とする女子をいう。

保健師助産師看護師法 第3条

なお、助産師は妊婦の健康指導や精神的ケア、育児のアドバイスなども行います。

助産師の人数や働く場所

日本看護協会「令和2年 看護関係統計資料集」によると、助産師の人数は2019年時点で40,632人でした。2010年は32,480人だったので、9年で約8,000人も増加しています。少子化により出産件数は年々減少していますが、助産師の人数は今後も増加傾向にあるでしょう。

なお、同資料によると勤務している場所は病院が最も多く、24,738人です。全体の約60.9%を占めています。次いでクリニックが9,968人で約24.5%、その次が助産院で2,281人で約5.6%でした。助産師の多くは、病院やクリニックなどの医療機関で勤務していることがわかります。

■参照元
日本看護協会 – 令和2年 看護関係統計資料集

助産師と看護師はどっちが大変?

看護師は看護師資格のみですが、助産師は看護師資格と助産師資格の2つを保有しています。助産師は助産行為の知識や技術だけでなく、看護師の知識と技術も持ち合わせているのです。資格取得に関しては、2つの資格を取得しなければならない助産師のほうが大変といえるでしょう。

また、助産師は看護師よりも体力や精神力が必要になる場面があります。それは、出産時です。陣痛が始まってから出産までの時間は、経産婦が5~7時間前後、初産婦は12~15時間程度といわれています。勤務時間は決まっていますが、場合によっては残業になったりオンコールで出勤したりすることもあるでしょう。

また、正常分娩において、助産師は医師の指示を仰がずに分娩介助を行えます。痛みや不安と戦っている妊婦を励ましながら、的確な処理を行う冷静さも必要です。

助産師と看護師は、いずれも命を預かる責任の大きな仕事です。どちらのほうが大変とは一概にはいえませんが、助産師のほうが自身で判断して処置を行う場面があるため、プレッシャーはその分大きいといえるでしょう。

助産師の仕事内容

助産師の女性が新生児に話しかけている様子

助産師は妊娠から出産後まで、妊婦と新生児をトータル的にサポートするのが仕事です。ここでは、助産師の仕事内容を、妊娠中・出産時・出産後の3つの期間に分けて紹介します。

妊娠中

妊娠中の助産師の主な仕事は、以下のとおりです。

・妊娠の診断
・妊婦の健康状態の把握
・胎児の健康状態の把握
・妊娠の経過観察
・妊婦に対する食事や運動の指導
・妊婦の精神的ケア
・出産準備のサポート

妊娠中は、主に妊婦や胎児の健康状態の把握を行うのが助産師の仕事です。もしも、子宮外妊娠が起こっていたり、妊娠高血圧症候群の可能性があったりする場合は、すぐに医師へ連携します。

また、妊婦に対して食事や運動の指導をしたり、悩みや不安を解消する精神的ケアを行ったりするのも助産師の大切な仕事です。そのほか、母親学級や父親学級を通して、親になる心構えや育児準備のアドバイスも行います。

出産時

出産時の助産師の主な仕事は、以下のとおりです。

・分娩の準備
・母子の健康状態の確認
・分娩介助
・異常分娩時の医師のサポート
・妊婦への声かけとマッサージ
・妊婦の精神的ケア

陣痛や破水が起こったらお産の開始です。母子の健康状態を確認し、分娩の進行具合を見ながら声かけやマッサージを行います。妊婦が不安や痛みでパニックにならないように、精神的ケアを行うのも助産師の大切な仕事です。

帝王切開が必要だったり、早産・逆子の場合は医師のサポートに回ります。

出産後

出産後の助産師の主な仕事は、以下のとおりです。

・母子の健康状態の確認
・母乳指導
・乳児のお世話
・育児のアドバイス
・1ヶ月検診
・妊婦の精神的ケア

自然分娩の場合は5日ほど、帝王切開の場合は10日ほど入院するので、その間に母乳の与え方やおむつの替え方、沐浴の仕方などの乳児のお世話についてアドバイスします。また、母親に代わって乳児の世話も行います。

1ヶ月検診の際には母子の健康状態の確認や、生活についてのアドバイスを行います。育児の大変さから心身ともに疲れている方もいるので、精神面のサポートも大切です。

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助産師の仕事内容|就職先による働き方の違いやキャリアアップ方法も

助産師の特徴

助産師は看護職のなかで唯一、独立開業ができる職種です。しかし、男性はなれない職種でもあります。以下で詳しく解説します。

助産師は独立開業ができる

看護師や准看護師、保健師は独立開業できませんが、助産師は看護職の中で唯一独立開業ができる資格です。ただし、開業するには条件があり、日本助産師会では分娩を取り扱う助産所の開業基準を以下のように定めています。

経験年数 5年以上
分娩件数 200件
妊婦健康診査 200例
新生児健診 200例
家庭訪問 30例
母乳相談  200例
産後4週までの健康診査 200例

上記に加え、助産所での研修および助産所勤務または、院内助産での勤務経験も推奨しています。分娩を取り扱わない助産所の開業基準は定められていませんが、上記同様の知識や経験は必要といえるでしょう。

参照元
日本助産師会
分娩を取り扱う助産所の開業基準

男性は助産師にはなれない

冒頭で述べたように、助産師は保健師助産師看護師法の第3条で「『助産師』とは、厚生労働大臣の免許を受けて、助産又は妊婦、じよく婦若しくは新生児の保健指導を行うことを業とする女子」と定められています。日本では助産師は女性に限定されており、男性は認められていません。そのため、助産師になりたいと思う男性がいても、日本ではなれないのが現状です。

日本看護協会によると、1999年の終わり頃から男性助産師実現についての動きが出始め、国会でも審議されていたようです。しかし、助産師会の反対もあり実現には至りませんでした。妊婦としても、同性の女性のほうが安心できるという理由もあるようです。

参照元
日本看護協会
保助看法60年を振り返る

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助産師と看護師の違いは? 資格・仕事内容・平均年収など6項目で比較

助産師になるには

助産師の女性

助産師になるには、看護師資格と助産師資格の2つが必要です。ここでは、助産師資格を取得する2つのルートと助産師国家試験の概要について紹介します。

助産師資格取得のルート

助産師資格を取得するには、主に2つのルートがあります。

助産師の資格取得ルート

①看護師と助産師、2つの国家試験を同時受験してどちらも合格する
②看護師資格を取得後、1年制の助産師養成所に通って助産師資格を取得する

①の同時受験では、高校卒業後に4年制大学の「助産師養成課程」に進みます。看護師と助産師の国家試験を同時受験し、どちらも合格すれば卒業後すぐに助産師として勤務することが可能です。ただし、大学在学中の4年間で看護師と助産師の勉強を同時に進めなくてはならないので、簡単な道のりではないでしょう。

②のルートでは、高校卒業後に4年制大学や3年制の短大、看護学校に進学して、看護師国家資格を取得します。その後、1年制の「助産師養成所」に通い、助産師国家試験を受験して助産師国家資格を取得する流れです。看護師と助産師の勉強を異なる時期でできるので比較的余裕があり、それぞれの試験に集中できます。ただし、学校に入り直す手間があり、入学金もかかる点はデメリットといえるでしょう。

助産師国家試験の概要

助産師国家試験は、毎年2月に実施されています。試験地は北海道、青森県、宮城県、東京都、新潟県、愛知県、石川県、大阪府、広島県、香川県、福岡県、沖縄県の12都道府県です。

参照元
厚生労働省 – 助産師国家試験の施行

試験科目は、基礎助産学、助産診断・技術学、地域母子保健、助産管理の4科目。一般問題が1問1点で75点満点、状況設定問題は1問2点で70点満点です。例年、総得点145点中86点以上の正解で合格となっています。

2021年の2月に行われた第104回助産師国家試験は、出願者数2,125人のうち受験者は2,108人、合格者は2,100人で合格率は99.6%でした。そのうち新卒者は、出願者数2,113人のうち2,097人が受験。合格者は2,091人で合格率は99.7%でした。

なお、助産師国家試験の過去3年間の実施状況と合格率は以下のとおりです。

出願者数 受験者数 合格者数 合格率
第104回 2,125人 2,108人 2,100人 99.6%
┗うち新卒者 2,113人 2,097人 2,091人 99.7%
第103回 2,130人 2,105人 2,093人 99.4%
┗うち新卒者 2,122人 2,098人 2,088人 99.5%
第102回 2,126人 2,105人 2,096人 99.6%
┗うち新卒者 2,098人 2,079人 2,076人 99.9%
参照元 – 厚生労働省
第107回保健師国家試験、第104回助産師国家試験及び第110回看護師国家試験の合格発表
第106回保健師国家試験、第103回助産師国家試験及び第109回看護師国家試験の合格発表
第105回保健師国家試験、第102回助産師国家試験及び第108回看護師国家試験の合格発表について

例年2,000人ほどが受験しており、合格率はいずれも99%以上です。看護師や保健師の合格率と比べると、助産師の合格率は特別高いことがわかります。

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\合格速報/2021年【第104回】助産師国家試験
助産師国家試験まるわかりガイド | 助産師
助産師に必要な資格とは? 資格取得できる学校・難易度

助産師の年収

厚生労働省の「令和2年賃金構造基本統計調査」によると、助産師のきまって支給する現金給与額は38万4,800円、年間賞与やその他特別給与額は108万1,900円でした。
よって、助産師の年収は569万9,500円です。

なお、助産師と看護師の給料の差は以下のとおりです。

きまって支給する現金給与額 年間賞与その他特別給与額 平均年収
助産師 38万4,800円 108万1,900円 569万9,500円
看護師 33万8,400円 85万7,500円 491万8,300円
参照元:厚生労働省 – 令和2年賃金構造基本統計調査

看護師と助産師の給料差は、毎月の給料で約4万6,000円、年間賞与で約22万4,000円です。年収では、約78万1,000円もの大きな差になることがわかります。

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助産師に向いている人

助産師に向いている人には、どのような特徴があるのでしょうか。以下では、助産師に向いている人の特徴を3つ紹介します。

共感力と思いやりがある

妊娠中の女性は出産に対して、大きな不安を抱えています。そのため、助産師には女性の精神的な支えになることが求められます。女性の悩みに共感し、一緒に解決する姿勢が大切です。また、出産後もホルモンの影響や今後の育児に対する不安もあり、情緒が不安定になる女性がいます。そのため、温かく思いやりを持って接することができる人が助産師に向いているでしょう。

体力がある

助産師は体力勝負の仕事です。お産の兆候はあるものの、いつ陣痛がはじまるかは正確にはわかりません。そして、産まれる時間も読めないのです。また、複数のお産を掛け持ちすることもあります。助産師は残業になったりオンコールで出勤したりなど不規則な勤務になることも多いため、体力がないと務まらない仕事といえるでしょう。

精神的にタフである

助産師は命の誕生に立ち会える素晴らしい職業ですが、必ずしも妊娠・出産が幸せな結果になるとは限りません。ときには、流産や死産など悲しい場面に立ち会うこともあります。そのため、どんなときも冷静に対処し、やさしく包み込む心の強さを持った人が助産師に向いているといえます。

助産師のやりがい

赤ちゃん誕生の瞬間に立ち会え、親御さんと喜びを共感できるのが、助産師の最大のやりがいといえるでしょう。助産師は約10カ月にわたり、妊婦と関わり合いを持ちます。妊娠・出産・育児という、女性の一大イベントを支える仕事は、助産師ならではです。産婦人科で働く看護師も妊娠・出産に立ち合いますが、助産師のように内診をしたり赤ちゃんを取りあげたりはできません。分娩介助をして生まれた赤ちゃんを抱き上げる助産師は、喜びや達成感が格別でしょう。

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助産師として働く際に役立つ資格

助産師の女性

助産師として働く際には、取得してくと役立つ資格があります。ここでは、アドバンス助産師、産後ケアリスト、ベビーマッサージの3つの資格について解説します。

アドバンス助産師

一般財団法人日本助産評価機構が認定する資格です。助産実践能力習熟段階(CLoCMiP)のレベルⅢに達する助産師のことを、アドバンス助産師と呼びます。助産実践能力習熟段階(CLoCMiP)のレベルⅢは、「妊産褥婦や新生児に対して良質で安全な助産とケアを提供できること」「助産師が継続的に自己啓発を行い、専門的能力を高める機会にすること」「社会や組織が助産師の実践能力を客観視できること」の3つを目的としています

アドバンス助産師の申請をするには、満5年以上の実践経験が必要です。また、分娩介助例数と新生児の健康診査が100例以上、妊娠期の健康診査と産褥期の健康診査が200例以上など、申請要件をすべて満たしている必要があります。さらに、認定を受けたあとは5年ごとの更新が必要です。そのため、認定を受けていると助産師として高いスキルを持っていることをアピールできるでしょう。

参照元
一般財団法人 日本助産評価機構
アドバンス助産師とは

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アドバンス助産師とは? 取得するメリットや申請方法・更新方法も

産後ケアリスト

産後ケアリストは、一般社団法人日本産後ケア協会が認定する資格です。産後の女性の心と体のケアや子育て環境を整える方法の提案など、多方面から女性を支えるプロフェッショナルのことを、産後ケアリストと呼びます。

産後ケアリストは2級と1級で構成されており、いずれもカリキュラムを受講し認定試験に合格することで認定されます。妊娠・出産・産後を通して女性の心と体をケアする助産師には、おすすめの資格といえるでしょう。

参照元
一般社団法人 日本産後ケア協会
産後ケアリスト

ベビーマッサージ

ベビーマッサージは民間資格です。さまざまな協会が認定資格の講座を開催しています。

ベビーマッサージにはスキンシップを取るためだけでなく、赤ちゃんの心や体の発達を促したり親子の絆を深める効果もあるといわれています。助産師はベビーマッサージを通して、子育てする親御さんに育児のアドバイスをすることが可能です。また、有資格者の助産師がベビーマッサージを教えることで、親御さんの安心感にもつながります。

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まとめ

助産師は女性の一大イベントである妊娠・出産・育児のサポートができる、数少ない職業。助産行為だけでなく、妊婦の相談に乗ったり不安を和らげたりなど、心の支えとしても必要な存在です。

少子化により出産件数は年々減少傾向にありますが、助産師が不足している病院やクリニックは数多くあります。また、独立開業をして働くことも可能なので、スキルアップやキャリアアップを考える看護師さんは、助産師を目指すのもおすすめです。

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