著名人・賢人コラム ココロの処方箋
【小林弘幸】ストレスをためない「わがまま」な生き方・働き方

構成:岩川悟(slipstream) 撮影:川しまゆうこ

Vol.1

2018.12.19

自律神経の名医・小林弘幸が教える ストレスをためない「わがまま」な生き方・働き方

医師、同僚、患者さん……多様な人間関係によるストレスで神経をすり減らしている看護師さんへ、自律神経の名医として知られる小林弘幸先生からのメッセージ。小林先生は、ちょっとした「わがまま」の積み重ねが、自律神経を整え心身を健康にすると言います。

夜勤や人間関係etc…ストレスフルな看護師さんへ

「わがままとはあなたらしく生きて働くこと」

「あれをやらなきゃいけない」 「そういえば、これもやるべきだったな…」

あまりに多くの予定や情報があふれ、息つく暇もないほどのストレスや強いプレッシャーを感じて毎日を過ごす人が増えています。「もう少しゆっくりしたいな」「たまには自分だけの時間を静かに楽しみたい」と感じながら、日々を忙しく過ごしているのではないでしょうか。無論、そんな状態では、自律神経が乱れどんどんストレスを溜め込んでいくだけです。

では、どうすればそんなストレスを手放していき、自分だけの安らぎや居場所を確保することができるのか――医師という立場としても、その方法こそがいま多くの現代人が求めていることだととらえています。

その方法は、「わがまま」に生きることに尽きると考えています。

「わがまま」と聞くと、ちょっと悪いイメージを感じる人もいるかもしれませんね。でも、ここでの「わがまま」とは、単に好き放題の言動をしたりルールやマナーを守らなかったりする、ただの「わがまま」ではないのです。 むしろ、あなたの譲れない一線や信念のようなもの、あなたの生き方の根幹にかかわる姿勢を指していると考えてください。わかりやすく言えば、あるがままの自分を指す「我がまま」というニュアンスを込めた「わがまま」です。

冒頭でわたしは、なにかをしなければいけない人や、予定や情報に追い立てられている現代人の状況に触れました。無理をしてそれらをこなしている人も多いのだと推測できます。
でも、ちょっとだけ立ち止まってほしいのです。
「しなければならない」ことは、そもそも本当にしなければならないことでしょうか? もしかしたら、長年の慣例や習慣になっているだけで、むしろしないほうが良い状況をもたらす場合もあるのではないでしょうか?

「わがまま」に生きはじめると、これまであたりまえに思っていた常識や固定観念にとらわれることが減っていきます。「わがまま」に生きて働くことは誰にでもできることなのです。いや、「わがまま」とは、まさに一人ひとりのあるがままの姿なのだから、むしろ人の数だけ「わがまま」な生き方があると言えるかもしれません。

 

職場の同僚や先輩たちに振り回されないために…

「わがままに生きると自律神経が整っていく」

いろいろな制約がある日常のなかで、どのようにして自分なりの「わがまま」を出していけばいいのでしょう。もっとも大切な考え方、アプローチ方法をお伝えします。

それは、「身のまわりの小さいことからはじめる」ということ。自分が所属する組織や社会に対して、いきなり「わがまま」を出して生きていこうと思っても、組織や社会というものは人間関係で成り立っているため、「わがまま」を出された相手のほうが戸惑うこともあるでしょう。そこで、まずは社会や 組織、他者ではなく、自分に対して「わがまま」になればいいのです。
いきなり「わがまま」を出して生きていこうと思っても、組織や社会というものは人間関係で成り立っているため、「わがまま」を出された相手のほうが戸惑うこともあるでしょう。そこで、まずは社会や 組織、他者ではなく、自分に対して「わがまま」になればいいのです。
たとえば、仕事が休みの日に「夜は8時に寝て、朝は4時に起きる」と決めてみる。家族が寝ていようとも、なにをしていようとも、自分は必ず早く寝て4時に起きる。これって立派な「わがまま」です。要は、誰にも迷惑をかけないところから、自分なりに「わがまま」になっていけばいいのです。まずは身のまわりの小さなこだわりや決めごとをつくって、自分の型をつくっていくことからはじめてみましょう。

人間が感じるストレスは、そのほとんどが人間関係におけるストレスです。そこで、まずはそれ以外のわずかなストレスをなくしていくのがとっかかりになります。

それこそ、自分の持ち物に対して「わがまま」になっていくのもいいかもしれません。いつも使う財布にこだわったり、仕事で履く靴に規制のなかでこだわったり髪型にこだわったり。たとえ小さな「わがまま」でも、それをこだわって貫いていけば、思いのほか気分が軽くなっていくのを感じることができるはずです。

そして、身のまわりの小さな「わがまま」を出していくことに慣れたときにはじめて、「つきあいの飲み会にはいかない」「無駄な会議には出ない」というように、他者や組織に「わがまま」を広げていくイメージを持つといいと思います。とにかく少しずつ、ゆっくりやっていくことがポイントです。

身のまわりに、小さなこだわりや決めごとをつくっていくと、やがて大切な気づきも増えていきます。

「これって本当に必要なのだろうか?」
「ずっと習慣でやっていたけど、やらなくてもよかったのかな?」

このように、こだわりや決めごとをつくっていくと、あらためて自分を振り返ることになります。その結果、自然と無駄を省いていく方向へ進んでいければしめたもの。一つひとつは小さなことでも、人生のなかで我慢してやっていたことがどんどん減っていき、ストレスがなくなることで自律神経が整っていきます。そして、あなたの心身の健康が変わり、思考が変わり、やがて人生が変わっていくことにつながっていくのです。

変えられないことで悩むのではなく、簡単に変えられることからすぐに変えていけばいい。そんな小さな「わがまま」にこだわり続けることで、あなたの新しい人生が動いていくのです。

 

業務過多、患者さんへの対応、医師とのやり取り…

「小さな片づけでストレスは目に見えて減る」

身のまわりの小さな「わがまま」を続けていくと、もうひとつ良い効果が期待できます。それは、できることからやっていくと、やがてできなかったこともできるようになっていくということ。

なぜなら、小さな気になることを片づけていくと、目に見えてストレスが減っていくことで気持ちに余裕が生まれ、それまで目に入らなかったことにも気を配れるようになっていくからです。

たいていの場合、ものごとを解決できないのは、大きな問題と小さな問題が混ざり合って整理されていないためです。大きな問題を心配するあまり、いきなりそれにとりかかって片づけようとするものの、問題が大きいゆえになかなかうまくいかず、その間に小さな問題にも足を引っ張られて……そんなことはよくあります。

強いストレスがかかっていると、なかなか本来の力を発揮することは難しいものですよね。そこで、まずはすぐ手がつけられるような小さな問題を片づけたり、ストレスをなくしたりして視野を良くすると、やがて大きな問題の輪郭が見えてくるようになります。すると、次はその大きな問題をいくつかの要素に分割することもできるようになるのです。

看護のモチベーションUP!

「心の負担が減りチャレンジ精神が芽生える」

仕事などで問題にぶつかったとき、その難しさやハードルの高さに「こんなのできるわけがない!」と物怖じした経験は誰にでもあると思いますが、たとえ大きな問題でも、小さく分割できれば高く見えたハードルを低くすることができます。こうして先に心の負担を減らして、できることをしっかりやっていると、できなかったことを解決するステップも見えてくるというロジックです。

また、ストレスが減ると、やりがいが増えていく効果も見逃せません。人から押しつけられたことではなく、小さなことでも自分の思い通りに「わがまま」にものごとに取り組んでいると、毎日にチャレンジ精神が芽生えてきます。自分で納得しながらやるために行動に楽しさが生まれ、できないと思っていたことにも、より適切なアプローチを求める余裕が出てきます。

さらには、問題が生じても「なんとかなる」「わたしならできる」とポジティブに考えられるようにもなるでしょう。問題やハードルを乗り越えた経験によって、大きな問題が現れても「やがてコツや答えが見つかる」と確信できることは、問題解決においてとても大切なマインドのひとつです。もちろん、そのように冷静になれると自律神経のバランスが整い、必要十分なパフォーマンスを発揮することができます。

ものごとを解決できないのは、できないことをやろうとしているから。そうではなく、できることからまずやっていき、無用なストレスをなくしていくことが問題解決の大切なポイントとなります。

\看護師にはいろいろな働き方がある!

次回予告 職場でストレスを感じたら自律神経が乱れているかも? 「自分にわがまま」になって心を軽くしていきましょう! 次回Vol.2は、小林弘幸さんによる「仕事を“辞める”という選択」をお届け予定。
プロフィール

小林弘幸(こばやし・ひろゆき)

順天堂大学医学部教授。
日本スポーツ協会公認スポーツドクター。

順天堂大学大学院医学研究科(小児外科)博士課程終了。ロンドン大学附属英国王立小児病院外科、トリニティ大学附属小児研究センター、アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、順天堂大学小児外科学講師・助教授を歴任。現職に至る。日本初の「便秘外科」を開設。自律神経研究の第一人者として、数多くのトップアスリートやアーティストも指導する。『医者が考案した「長生きみそ汁」』(アスコム)、『自律神経を整える「あきらめる」健康法』(KADOKAWA)など著書多数。

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