• 2022年1月17日
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保健師になるには資格がいる? 働きながら資格取得は難しい?

 

保健師は、保健指導を通じて、地域で暮らすさまざまな人々の身体的・精神的な健康を守る役割をもった医療専門職です。健康相談や生活改善のサポート・アドバイスを行う対象は幅広く、勤務先によって多岐にわたります。

近年の日本では少子高齢化など、健康上のあらゆる問題が取り沙汰されています。各問題に対して適切に取り組める保健師は、需要が高くやりがいのある職業と言えるでしょう。

そこで今回は、保健師を目指す人に向けて、保健師資格の必要性や資格の取得方法、さらに資格取得後の勤務先や働き方を詳しく解説します。実務で役立つ保健師資格以外の資格も紹介しているため、ぜひ参考にしてください。

保健師になるには資格が必要?

保健師になるためには、「保健師免許」が必要です。そして、保健師免許を取得するためには、「看護師免許」を有していることが条件となります。すなわち、保健師には保健師免許と看護師免許の両方が必要です。

保健師になろうとする者は、保健師国家試験及び看護師国家試験に合格し、厚生労働大臣の免許を受けなければならない。

(引用:e-Gov法令検索「保健師助産師看護師法」

そもそも保健師は、保健師助産師看護師法にて「保健指導に従事することを業とする者」と定義付けられています。この保健指導とは、下記のような内容を指します。

  • 健康診断後の生活に関する相談・アドバイス
  • 企業に所属する社員の健康状態のチェック・改善策の立案
  • 乳幼児健診の実施
  • 地域住民向けの講習会の実施
  • 他者の支援が必要な家庭への電話・訪問での相談・サポート
  • 子どもや社員に対する病気・ケガの応急処置
  • 子どもや社員に対するメンタルケア など

上記を見て分かるように、保健師は病気やけがの予防や健康維持・増進が主な役割となる職業です。一方で看護師は、病気やけがの治療や健康管理、ケアが主な役割となります。

このように保健師は、あらゆる領域での指導やサポートが必要となることから、看護師資格を含む幅広い知識を習得しておかなければなりません。

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保健師の資格を取得する方法

保健師の資格を取得する方法

前述の通り、保健師資格を取得するためには、看護師資格も必要です。そのため、保健師の資格取得には、最低でも4年という比較的長い期間を要します。

看護師資格を保有していない人であれば、保健師資格の取得方法には下記の2ルートが挙げられます。

  • 総合カリキュラムのある4年制大学・専門学校
  • 看護系の3年制短大・専門学校→保健師養成学校など

ここからは、各ルートについて概要とメリット・デメリットを紹介します。

総合カリキュラムのある4年制大学・専門学校

保健師資格の主な2つの取得ルートのうち1つが、高校卒業後、総合カリキュラムのある4年制大学・専門学校で必要科目を習得したのち、保健師国家試験・看護師国家試験を受けるという方法です。スムーズに保健師資格と看護師資格を取得したいという人や、育児や仕事と両立せず学習に専念できる人に向いています。

<メリット>

  • 保健師国家試験と看護師国家試験を同時に受けられる
  • 一般教養科目を含む幅広い分野を学べる

総合カリキュラムのある4年制大学・専門学校では、一般教養科目に加えて保健師資格・看護師資格の取得に必要な科目も同時に習得できます。卒業とともに両資格の国家試験も受けられるため、両方の資格の取得を目指すことが可能です。保健師資格の取得方法の中では、最もスムーズな方法と言えるでしょう。

<デメリット>

  • 学校によっては、総合カリキュラムを受講できる人が限られている
  • 保健師資格と看護師資格のダブル取得を目指すためには2つの試験対策を並行しなければならない

保健師資格・看護師資格の取得に必要な科目も同時に習得できるというメリットがある一方で、2つの試験対策を同時に行わなければならず、やや難易度が上がる点が最大のデメリットです。仕事や育児・家事との両立は困難となるでしょう。

看護系の3年制短大・専門学校→保健師養成学校など 

保健師資格の主な2つの取得ルートのうちもう1つが、看護系の3年制短大・専門学校で3年間看護師資格の必要科目を習得して看護師資格を取得したのち、保健師養成学校で1年間保健師資格の必要科目を習得し、保健師国家試験を受けるという方法です。看護師免許は確実に取得したい人や、無理なく両方の資格取得を目指す人に向いています。

<メリット>

  • 総合カリキュラムのある4年制大学・専門学校よりも比較的無理のないペースで保健師資格の取得を目指せる
  • 看護師として働きながら保健師を目指せる
  • 保健師として働くために必要な知識の習得や授業に集中して取り組める

3年間みっちり看護師の勉強を行い、看護師資格を取得後、保健師養成学校で1年間みっちり保健師の勉強を行うため、無理のないペースで保健師資格を取得することが可能です。保健師に関する教育体制も整っており、4年制大学と比べて専門基礎科目のみを学べることもポイントです。看護師として働く中で、実際に保健師がどのように活躍しているかを見ながら保健師資格の取得を目指せる点も魅力と言えるでしょう。

<デメリット>

  • 看護師として働きながら保健師養成学校に通う場合、仕事と学校の両立が必要となる
  • 総合カリキュラムのある4年制大学・専門学校と比べて保健師資格の取得にかかる期間が長くなる

看護師として働きながら保健師を目指せるというメリットは、裏を返せば仕事と学校の両立が必要となるというデメリットにもなり得ます。また、4年間でまとめてに資格取得に必要な知識の学習ができる総合カリキュラムのある学校に比べて、「看護系の3年制短大・専門学校→保健師養成学校」は保健師資格の取得にかかる期間が長くなりやすい点にも注意してください。

看護師資格所有者の保健師資格の取り方

保健師資格を取得しようとしている看護師資格所有者

ここまで、看護師資格を所有していない人に向けて保健師資格の取得方法を紹介しました。では、現在すでに看護師資格を保有している人や、実際に資格を保有したうえで看護師として働き始めている人は、どのようにして保健師資格を取得すればよいのでしょうか。

看護師から保健師への転職を目指すためには、2つのルートが挙げられます。1つは「保健師専門学校」へ通うこと、そしてもう1つが「保健師資格を取得できる大学」へ通うことです。

保健師専門学校や保健師資格を取得できる大学へは、看護師として働きながら通うことも不可能ではありません。しかし、基本的に夜間コースはなく全日制の学校ばかりで、かつ1年間など短い期間で授業が詰め込まれるため、主に日勤で働いている看護師が仕事と学校を両立させることは困難でしょう。

看護師として働きながら学校へ通うのであれば、夜勤専従という働き方が最も適切です。しかし、昼間は学校で夜間は仕事という生活が日々続くと集中力が低下し、仕事に精が出ないということも考えられます。

従って、看護師として働きながら保健師資格の取得を目指すなら、比較的自身のライフスタイルにあわせてシフトを決められ、学校と仕事を両立しやすい「夜勤専従の非常勤看護師」という働き方が最もおすすめと言えるでしょう。

【要注意】通信教育で保健師の資格取得は不可

学校へ通わず、自宅で指定のカリキュラムを組む「通信課程」で取得できる資格はいくつもありますが、保健師資格は例外です。保健師資格を取得するためには、必ず学校へ通わなければなりません。

通信教育で保健師資格を取得することが不可能な理由は、そのカリキュラムにあります。保健師資格を取得するために必須となるカリキュラムの中には「臨時実習」という実習科目があり、実際に病院などに行って臨床での実践を学ばなければなりません。従って、通信コースで保健師の資格を取得することが困難となります。

2011年に行われた保健師助産師看護師学校養成所指定規則の改正では、臨地実習の単位数が9単位から11単位に引き上げられていることから、非常に重要な科目であることもわかります。
(出典:文部科学省「保健師助産師看護師学校養成所指定規則の一部を改正する省令の公布について(通知)」

保健師の資格を取る難易度

保健師の資格を取る難易度

「保健師資格は難易度が高い・難しい資格」というイメージもありますが、合格率は比較的高い水準にあります。

下記は、保健師と助産師・看護師国家試験の合格率を比較した表です。(2021年実施)

国家試験 合格率
保健師 94.3%
助産師 99.6%
看護師 90.4%
(出典:厚生労働省「第107回保健師国家試験、第104回助産師国家試験及び第110回看護師国家試験の合格発表」

保健師・助産師・看護師ともに合格率は9割を超えており、保健師は看護師よりも合格者が多いことがわかります。

また、保健師資格の取得までは険しい道のりになると説明しましたが、合格率の最も高い助産師の資格取得までの道のりに比べるとなだらかです。助産師学校は、看護学科・助産師科目のある4年制大学で学内選抜試験に合格できる人は一握りであり、そもそも学校数がさほど多くないことから、そもそも入学することが困難となっています。助産師の合格率が高いことも頷けるでしょう。

その点、保健師学校へは保健師を目指す人であれば比較的誰でも入れるため、「保健師資格は難易度が高い・難しい資格」と心配する必要はありません。

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保健師の資格取得後の勤務先・働き方

保健師の女性

保健師の活躍場所は幅広く、資格取得後はさまざまな環境の職場で働くことができます。保健師の主な勤務先は、下記の通りです。

  • 市区町村の保健センター
  • 診療所
  • 保健所
  • 一般企業
  • 教育機関
  • 介護施設

ここからは、各勤務先の概要や働き方について詳しく紹介します。保健師はどこでどのように働くのか気になる人は、ぜひ参考にしてください。

市区町村の保健センター

地域住民の健康づくり・健康維持のために設置される市区町村の保健センターは、保健師の就職先として最も代表的な勤務先です。保健センターで働く保健師は「行政保健師」とも呼ばれます。

行政保健師の仕事内容は、地域住民の健康診断・保健指導・医療福祉施設の紹介、さらに妊婦健診や訪問指導、高齢者の生活支援などです。ベテラン保健師は保健センターの所長として活躍することも多く、主に看護師・助産師・栄養士とともに、地域に根ざした保健活動を行います。

仕事を行うにあたり人と接するシーンが多々あるため、コミュニケーションをとることが得意な人・思い入れのあるエリアに貢献したいという人におすすめの勤務先といえるでしょう。

なお、2019年度における市区町村の保健センターで働く保健師数は、30,299人です。
(出典:公益社団法人日本看護協会「看護統計資料室」

診療所

「地域のかかりつけ医」としての役割をもったクリニックや診療所も、保健師の主な勤務先です。診療所などで働く保健師は「病院保健師」とも呼ばれます。

病院保健師の仕事内容は、診療所に訪れた患者さんへの健康診断の実施や結果をもとにした保健指導・生活指導・健康相談やアドバイスなどが基本です。看護師資格を生かして、看護業務を兼務することも多々あります。地域に根ざした保健活動を行いたい人・看護業務も行いたい人におすすめの勤務先といえるでしょう。

なお、2019年度における診療所で働く保健師数は、10,106人です。
(出典:公益社団法人日本看護協会「看護統計資料室」

保健所

都道府県、政令指定都市、中核市などに設置された、地域住民の健康を支える公的機関である保健所も、保健師の主な勤務先です。保健所で働く保健師も、行政保健師に分類されます。

保健所で働く保健師の仕事内容は幅広く、保健センターの主な仕事内容に加え、感染症の調査や予防活動、さらに難病の啓蒙活動など、保健に関する社会的な政策にも重点的に関わることとなります。あらゆる専門機関や関係者との連携を図り、地域住民の健康づくりに取り組みたい人・世界的な健康問題に深く関わりたい人におすすめの勤務先といえます。

なお、2019年度における保健所で働く保健師数は、8,357人です。
(出典:公益社団法人日本看護協会「看護統計資料室」

一般企業

企業によっては、社員の健康を心身ともに支える保健師を常駐させるところもあり、一般企業は保健師の活躍フィールドの1つとなっています。一般企業で働く保健師は、「産業保健師」と呼ばれます。

産業保健師の仕事内容は、社員の健康診断結果の調査や保健指導・職場の過重労働に関する対策や取り組み実施・社員のメンタルヘルス対策などです。残業が少なく、土日祝休みとなることも多いことから、子育てや家事としっかり両立したい人にもおすすめの勤務先といえます。

なお、2019年度における一般企業で働く保健師数は、2,974人です。
(出典:公益社団法人日本看護協会「看護統計資料室」

教育機関

専門学校・小学校・中学校などの教育機関も、保健師の主な勤務先の1つです。教育機関で働く保健師は「学校保健師」とも呼ばれます。しかし、学校保健師とひとくちに言っても、「保健室の先生」と「授業を行う担当の先生」とでは、働き方が大きく異なる点に注意が必要です。

保健室の先生は、保健室に常駐して生徒や教職員の健康管理を行います。そして授業を行う担当の先生は、看護師や保健師の養成校で必要な科目を教えることが基本です。それぞれ働き方は異なるものの、一貫して「生徒たちに保健指導を行いたい」「生徒をまとめ、必要な勉強を教えてあげたい・成長させたい」という人におすすめの勤務先といえます。

なお、2019年度における教育機関で働く保健師数は、1,142人です。
※看護師等学校養成所・研究機関のみ
(出典:公益社団法人日本看護協会「看護統計資料室」

介護施設

要介護認定者や高齢者に、必要な生活のサポートを行う介護施設も、保健師の勤務先の1つです。

介護施設で働く保健師の仕事内容は、主に施設利用者の健康管理や、施設利用者本人とその家族のカウンセリングです。また、施設利用者の状態が悪化した際は、看護師としてのスキルを生かし、看護業務も行います。高齢化が進む近年、要介護者や高齢者を支えたい・あらゆる専門職の関係者と連携して、地域住民の健康をサポートしたいという人におすすめの勤務先といえます。

なお、2019年度における介護施設で働く保健師数は、2,213人です。
(出典:公益社団法人日本看護協会「看護統計資料室」

保健師資格以外に役立つ資格

保健師資格以外に役立つ資格:産業カウンセラーの女性

保健師として活躍したいのであれば、保健師資格以外の資格も取得しておくことがおすすめです。保健師資格以外の資格を取得しておくことで、就職・転職が有利になったり、スムーズにキャリアアップができたりします。

最後に、保健師資格以外に役立つ資格を4つ説明します。

産業カウンセラー

産業カウンセラーとは、主に企業で働く社員に対し、心理学的手法を用いてカウンセリングを行うために必要なスキルの保有を証明する資格です。

産業カウンセラーの資格を取得するためには、指定の課程を修了し指定科目を取得するか、養成講座を修了して受験資格をまず得なければなりません。その後、年1回行われる産業カウンセラー試験(筆記・実技)に合格する必要があります。

保健師は、産業カウンセラーの資格がなくともカウンセリングを行えるものの、この資格があれば就職や転職ははるかに有利となるでしょう。

健康運動指導士

健康運動指導士とは、保健医療関係者と連携のうえ、個人の心身状態に合った安全かつ効果的な運動プログラムを作成・実践できることを証明する資格です。

すでに保健師資格を保有している人が健康運動指導士の資格を取得するためには、健康運動指導士養成講習会を受講し、年2回行われる健康運動指導士認定試験に合格する必要があります。

健康に着目した運動は、高齢者においても重要な取り組みです。高齢化が進んでいる近年において、健康運動指導士資格を保有する保健師は特に需要が高まるでしょう。

養護教諭免許状

養護教諭免許状とは、いわゆる保健室の先生になるために必要となる免許です。

養護教諭免許状を取得するためには、指定の4年制大学もしくは短期大学・専門学校で養護教諭育成課程を修了しなければなりません。すでに保健師資格を取得している人の場合、状況に応じて必要単位が軽減されます。なお、生徒に授業を行う教員として活躍したいのであれば、「教員免許状」が必要となることも覚えておきましょう。

養護教諭免許状を取得して保健室の先生として活躍することには、「入学から卒業まで子どもたちの成長を見守ることができる」「夏休み・冬休みなどの長期休暇がある」などのメリットがあります。

第一種衛生管理者

第一種衛生管理者とは、常時50人以上の労働者がいるすべての業種の事業所において、専属衛生管理者となれることを証明する免許です。

通常、第一種衛生管理者免許を取得するためには、労働衛生に関する講座又は学科を修了したうえで、第一種衛生管理者免許試験に合格しなければなりません。しかし、保健師資格を保有している人の場合、申請のみで第一種衛生管理者免許を取得することが可能です。

常時50人以上の労働者がいる事業所は、数多くあります。第一種衛生管理者免許を申請して取得するだけで勤務先の幅が大きく広がる点は、非常に大きなメリットとなるでしょう。

まとめ

保健師になるためには、保健師資格が必要ですが、保健師資格を取得するためには看護師資格を取得していることが条件となります。保健師資格・看護師資格のダブル取得を目指すなら、「総合カリキュラムのある4年制大学・専門学校」もしくは「看護系の3年制短大・専門学校→保健師養成学校」などのルートがおすすめです。

また、看護師として働きながら保健師資格を取得することは不可能ではありませんが、険しい道のりとなります。なるべく「夜勤専従×非常勤看護師」など、両立しやすい環境を整えたうえで臨みましょう。

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