コミュニティナーシングを担う人材の育成、企業や自治体と共同での社会実装、人の心身の健康に寄与する実践に関する研究開発を行っている。2014年に代表の矢田が活動を始め、2017年にCommunity Nurse Company株式会社を設立。
2023年に株式会社CNCに社名変更。
地域に出ていき、おせっかいを焼く「コミュニティナース」の活動が11年前より島根県雲南市をはじめ全国でおこなわれています。暮らしの身近なところで元気なうちから、『毎日の嬉しいや楽しい』を一緒につくる「コミュニティナース」は、心身そして社会的な健康やウェルビーイングに寄与します。
このコンセプトを展開するのは、株式会社CNC。もともと作業療法士として医療機関で働き、現在はCNCの執行役員として地域のコミュニティナース実装を進める北垣 佑一さんに、コミュニティナースのコンセプトや、活動事例などについてお聞きしました。
「暮らしの動線」に乗って活動。地域の人との信頼関係で、地域を支える

―――貴社の事業内容について教えてください。
当社CNCは島根県で創業し、コミュニティナースの育成や、活動支援をおこなっています。この数年では「地域を元気にしたい」という企業や自治体などのパートナーからお声がけいただいて、地域にコミュニティナースを実装しています。
高齢化や人口減少が進む地域での展開が多い一方、近年では都市部でも取り組みが広がっていて、地方・都市部を問わず有効なアプローチであると手応えを感じています。
―――なぜこの活動が始まったのでしょうか?
代表の矢田が活動を始めたのは、父親を亡くした経験からでした。「病気に気づくきっかけを与えてくれるような“おせっかいな人”が町にいたら、なにか変わったのでは……?」と感じ、「町で健康に関わる存在になろう」と決意。看護の専門性を学ぶため、30歳で看護学校に入学し、コミュニティナース見習いと名乗り地域活動を始めました。
しかし、専門的立場からのアドバイスをしていると「看護師になる前のあなたの方が親しみやすかった」と言われたことから、自身の振る舞いや活動の在り方を見直したそうです。「暮らしの動線」に沿ったアプローチを考案することで、現在のコミュニティナースのコンセプトが生まれました。
―――コミュニティナースの方は、どのような点に共感して参加されているのでしょうか?
これまでに誕生したコミュニティナースは1300名以上。医療的な専門資格の有無は問いませんが、その多くは看護師で、仕事の合間に活躍されています。共感いただいている点は人それぞれだと思いますが、医療現場で感じていた課題が大きいと思います。「病院だけでは支えきれないと感じていた」という声を聞いています。
私も以前、作業療法士として働いていたとき、入院前に早期ケアができたのではないかと思う事例や、退院支援に尽力しても再入院する患者を目の当たりにしてきました。「もっと生活環境に目を向ける必要があるのではないか」と感じていたところでCNCを知り、参加しました。
ふとした「つぶやき」を拾い、「戦略的おせっかい」を焼いて、ウェルビーイングを生み出す

―――コミュニティナースはどのように地域に働きかけるのでしょうか?
プロジェクトは、地域の人と出会い「つぶやき」を汲み取ることから始まります。コミュニティナースは、日常的な会話のなかで出てくる「つぶやき」を拾い、それを元気に繋がるプランへと変換し実現させていきます。心身だけでなく社会的にも健康な状態であるウェルビーイングを目指します。
例えば、ある高齢女性が「足腰が弱く、今は買い物、料理は夫に任せている」とつぶやいた場合、コミュニティナースは、つぶやきの裏側にあるご本人の想いを感じ取ります。「主婦としての役割を果たしたい…本当は旦那さんに手料理を振る舞いたい」といった気持ちを汲み取るのです。
そこから、その女性のウェルビーイングをサポートできるようにウェルビーイングプランを立案し、実行に移します。この場合は、「旦那さんに手作り料理を振る舞ってみよう」と提案すると同時に「近所の人も一緒に食事しませんか?」などと、ウェルビーイングを最大限に広げられるように働きかけました。そうすることで、主婦としての役割を自分でも果たせることを実感できるだけでなく、料理を振る舞う喜びも感じられます。このように「戦略的おせっかい」を焼くことで、関わった住民同士の関係性が深まり、ウェルビーイングが拡大していくのです。
地域企業や自治体とのコラボで、人とまちを元気にする

―――企業や自治体とのパートナー関係もあります。どのように地域に実装していくのでしょうか?
パートナーとなる企業や自治体から声をかけてもらったら、まずは地域で調査をおこない、住民との出会いが期待できる場所を選定します。例えば、郵便局やガソリンスタンド、移動販売車など、地域の人々が自然に集まる場所が、活動拠点の候補となります。コミュニティナースの配置は地域ごとの特性を考慮しておこなわれます。
―――パートナーとともに地域に生み出しているプロジェクトについて教えてください。
北九州市門司区にある「岡野バルブ製造株式会社」様とのプロジェクトでは、岡野社長が「門司を元気にしたい」という思いで、門司区へのコミュニティナース実装をCNCとともに取り組んでいくことを決断されました。一見、BtoB企業である岡野バルブ様がコミュニティナースの実装に取り組むことは、理解されにくい一面があります。しかし、「地域を元気にすることこそ民間企業が取り組むべき」という強い意志で、現在3名のコミュニティナースが門司区で地域のつながり作りのために日々活動しています。
「兵庫ヤクルト販売株式会社」様とのプロジェクトでは、ヤクルトレディとコミュニティナースを組み合わせています。ヤクルトレディはヤクルトを配達するために、定期的に愛飲者を訪問します。そのため愛飲者の足腰の弱まりや、金銭管理能力の低下などを察知することがありますが、深く介入できないもどかしさがあったそうです。そこで、コミュニティナースが介入し、地域の病院とも連携することで、生活を見守ることができています。
ほかにも、埼玉県の「こうのす共生病院」様にパートナーとなっていただいた事例があります。まずは熊谷駅でのコミュニティナース活動を試験的に導入しました。その後「月1日、業務時間内のコミュニティナース」の導入を目指して職員に向けて募集したところ、40名ほどが手を上げてくださり本格的な活動がスタートしました。
当初、専門職として地域に出る意識が強かった職員も、ひとりの住民として地域に入り込むことが重要と気づき、次第に畑作業やイベント企画など、多岐にわたる交流がおこなわれるようになりました。コミュニティナース活動は、病院内ではできなかった新たな価値を生み出しています。
「まずはやりきる」ことで見えてくる。地域に必要なウェルビーイングプラン

―――コミュニティナースの活動に共感した場合、どのように参加できますか?
まずCNCが提供するオンライン講座を受講していただくのが近道です。ベーシック講座では、住民の方のつぶやきの拾い方や、基本的な考え方を学べます。さらに一歩進めたい方には、活動地域のニーズや具体的な目標を深掘りする実践講座がおすすめです。また「コミュニティナース研究所」というオンラインコミュニティもあり、各地の実践者と知恵や経験を共有できます。
そのほかCNCの一員や、パートナーとなっていただくことも大歓迎です。仲間の存在は、正解がない活動のなかで大きな支えとなります。
―――住んでいる地域で活動を始める際、仲間を見つけるのが大変そうですが、いかがでしょうか?
不思議なものですが、これまでにも「地域で活動します」と宣言するコミュニティナースには、その活動に共感してくれる住民が必ず現れてきました。
コミュニティナースとしてパフォーマンスを発揮されている方の話を聞くと、まずは“分からなくてもやり切る姿勢”が大切だと分かります。具体的には「IDCA(Idea・Do・Check・Action)サイクル」のなかで、アイディアをもってまずは行動し、振り返って改善します。そのサイクルのなかで地域が見えてきますし、仲間が集まってくるのです。もちろん、オンラインコミュニティで仲間たちもサポートします。
―――看護師の本業に活かせるような学びはありますか?
正直、学びだらけだと思っています。つぶやきを拾い、その背景にある想いやニーズを汲み取って本人と合意する能力が特に求められるので、ヒアリング力や共感力は大きく向上すると思います。
そして住民の表情や行動がポジティブに変化する瞬間を目の当たりにできることや、ウェルビーイングをつくっている実感が得られることに、私もやりがいを感じています。
―――高齢化が進む日本では、コミュニティナースが今以上に活躍する未来が見えますね。
当社はコミュニティナースを日本全国に広げ「1億総コミュニティナース化」を目指しています。現在18拠点で活動しており、今後はコミュニティナースが地域にあることが、当たり前の状態にしていきたいです。
一方で、ボランティアではなく、経済が回るようなビジネスモデルを確立することも必要だと感じています。その仕組みづくりと、認知度の上昇を両軸に取り組んでいきます。

【株式会社CNC】
島根県雲南市木次町木次29
ホームページ:https://cncinc.jp/
Instagram:https://www.instagram.com/cncinc.jp/
取材・文 竹中唯
編集 株式会社イージーゴー
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