• 2021年10月15日
  • 2021年11月16日

助産師の給料相場|活躍している場所や給料を上げる方法も

 

助産師とは、妊娠・出産・産後にわたる母子の健康と生活を支える助産の専門職です。助産師の仕事は分娩介助だけではなく、妊婦のメンタルヘルスケアや育児相談など多岐にわたります。看護師として働く中で、助産師の仕事に魅力を感じ資格取得を目指す人も少なくありません。

当記事では、助産師の給料相場や仕事内容、助産師として働くメリットについて解説します。助産師に必要な資格や、給料を上げるポイントについても解説しているため、助産師の仕事に興味がある人や転職を考えている人は、ぜひ参考にしてください。

助産師の給料相場

助産師の全国平均給料は約570万円となっており、看護師よりも80万円ほど高い傾向にあります。助産師と看護師の都道府県別平均給料は、下記の通りです。

【都道府県別】助産師の平均給料(年収)

都道府県 助産師の平均給料 看護師の平均給料
全国平均 約570万円 約492万円
北海道 約650万円 約485万円
青森県 約526万円 約541万円
岩手県 約615万円 約467万円
宮城県 約583万円 約495万円
秋田県 約578万円 約515万円
山形県 約487万円 約460万円
福島県 約480万円 約457万円
茨城県 約548万円 約504万円
栃木県 約502万円 約497万円
群馬県 約395万円 約446万円
埼玉県 約880万円 約516万円
千葉県 約646万円 約497万円
東京都 約592万円 約519万円
神奈川県 約535万円 約522万円
新潟県 約483万円 約490万円
富山県 約582万円 約515万円
石川県 約543万円 約513万円
福井県 約521万円 約505万円
山梨県 約502万円
長野県 約516万円 約476万円
岐阜県 約484万円 約530万円
静岡県 約637万円 約514万円
愛知県 約599万円 約510万円
三重県 約512万円 約474万円
滋賀県 約485万円 約495万円
京都府 約589万円 約507万円
大阪府 約510万円 約498万円
兵庫県 約507万円 約501万円
奈良県 約644万円 約504万円
和歌山県 約696万円 約496万円
鳥取県 約541万円 約497万円
島根県 約578万円 約476万円
岡山県 約468万円 約459万円
広島県 約494万円
山口県 約692万円 約492万円
徳島県 約623万円 約504万円
香川県 約692万円 約468万円
愛媛県 約531万円 約444万円
高知県 約506万円 約441万円
福岡県 約511万円 約463万円
佐賀県 約451万円
長崎県 約482万円
熊本県 約541万円 約424万円
大分県 約446万円 約405万円
宮崎県 約455万円
鹿児島県 約444万円
沖縄県 約564万円 約454万円

(出典:厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査」

大半の地域で助産師の平均給料は看護師よりも高くなっており、100~200万円ほど年収の差が出ることも少なくありません。都市部のほうが給料は高い傾向にありますが、地方でも全国平均を大きく上回る地域もあります。

地方別に見ていくと、北海道・東北地方の平均給料は概ね全国平均前後となっています。中部地方では富山県・静岡県・愛知県、近畿地方では京都府・奈良県・和歌山県の平均給料が高い傾向です。四国・中国地方では、山口県・徳島県・香川県の平均給料が600万円を上回っています。九州地方の給料は全国平均よりもやや低い傾向にはありますが、看護師の給料よりも高くなっていることがわかります。

日本全国で最も助産師の平均給料が高い地域は、年収約880万円の埼玉県です。また、北海道・岩手県・香川県などの一部地域では、看護師の給料が全国平均より少ない場合でも、助産師では大幅に上回っていることもあります。看護師と比較して、助産師の給料は地域により差が出やすいため、勤務地によって収入が大きく変わるでしょう。

助産師が活躍する場所

病院・診療所の産婦人科と助産院で働く助産師

助産師が活躍する主な場所は、病院・診療所の産婦人科と助産院です。平成30年における助産師の実人員は約37,000人であり、このうち勤務先の割合は病院が62.9%、診療所が22.1%、助産院が5.7%となっています。

病院・診療所と助産院の違いは、下記の通りです。

病院・診療所 産婦人科医が在籍しており、医療行為ができる。異常分娩を含むすべての分娩に対応できる。
助産院 助産師が分娩介助を行い、医療行為はできない。正常分娩のみ扱うことができる。

病院・診療所では、帝王切開や吸引分娩、陣痛促進剤の使用など、医療行為を伴う出産ができます。一方、助産院では医療行為ができないため、健康な妊婦の正常分娩のみ扱うことが可能です。

多くの助産院は病院や診療所などの医療機関と提携しており、助産院を利用する母子に異常が見られた場合は、病院・診療所へ搬送し、適切な処置が施されます。
厚生労働省「平成30年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」)

助産師の仕事内容

助産師と患者

助産師の詳細な仕事内容は、妊婦の出産前・出産時・出産後によって異なります。お産の進行具合は一人ひとり異なるため、助産師には臨機応変に対応していく技術と判断力、そして女性に寄り添う包容力が必要です。

妊娠・出産についての知識普及を行うことも、助産師の役目のひとつです。助産師の中には、中学校や高等学校で性教育に関する出張授業を受け持つ人もいます。

また、助産師は、女性の性に関する悩みのアドバイザーでもあります。助産師は思春期から更年期まであらゆる年齢の女性に寄り添う、女性の心と身体の専門家です。

妊娠期の仕事内容

妊娠期では、母子が健康に過ごし安全なお産を迎えることができるよう、保健指導・生活指導・産前教育を行います。助産師の妊娠期における主な仕事内容は、下記の通りです。

  • 妊婦健診(問診・超音波健診・体重測定・尿検査・血液検査・血圧測定・保健指導など)
  • 父親学級や母親学級の開催
  • 助産師外来業務
  • 医師との連携
  • バースプランの作成

妊婦健診は、出産までの妊婦と胎児の健康状態を把握するための健診です。妊婦健診における保健指導では、妊婦の体重管理や食事、運動について指導します。妊婦の体調は胎児の健康状態と密接に関わっているため、急激な体重増加や貧血に注意し、適切なアドバイスを行うことが重要です。

病院によっては、助産師が超音波検査を行うこともあります。超音波検査や触診などで異常が見られた場合には、速やかに医師と連携を取り迅速に対応することが大切です。

助産師による母親学級や助産師外来を設けている病院や診療所では、出産へ向けた心構えを伝えたり、妊婦の相談に応じたりすることもあります。妊娠20週頃には、妊婦に理想の出産について考えてもらい、バースプランを作成しましょう。

また、周産期の女性は情緒不安定になりやすい傾向があるため、妊婦のメンタルヘルスケアも重要な仕事となります。特に、初産の妊婦は不安が大きいため、出産の予兆や分娩について丁寧な指導が必要です。

分娩期の仕事内容

新生児の世話や妊婦健診は看護師でも行えますが、助産行為が行える人は医師と助産師に限られています。分娩期における助産師の主な仕事内容は、下記の通りです。

  • 分娩進行状態の診断
  • 分娩介助
  • 分娩時緊急事態への対応
  • 産婦の観察・処置

陣痛が開始すると、胎児の心拍数と陣痛図をCTGで確認し、分娩の準備へ入ります。産婦と胎児の状態が正常である場合は、助産師が主体となって分娩を進めていきます。

リスクが低い産婦であっても、分娩時に突然異常が発生するケースは少なくありません。助産師は定期的に胎児の心拍や産婦のバイタルサインを確認し、分娩異常にいち早く気付くことが大切です。近年では、高齢出産や何らかの合併症を伴うハイリスク分娩が増加していることもあり、緊急事態に備えて新生児蘇生法を習得した助産師を配置する病院もあります。

無事に新生児を取り上げた後は、へその緒を切り、新生児の状態を確認します。病院や母親の希望によっては、へその緒を切る前に、出産直後の赤ちゃんを母親の胸に抱くカンガルーケアを行うこともあるでしょう。新生児の身体測定や胎盤を摘出するための後産介助、母体における傷の確認などを、他の助産師や看護師と協力しながら進めます。

出産直後の産婦は動くことができないため、2時間ほど身体を休めた後に、助産師が身支度と歩行を手伝い、入院する部屋へ案内します。

産褥期の仕事内容

産褥期(さんじょくき)とは、出産直後から母体が妊娠前の状態に戻るまでの期間のことで、一般的には産後6~8週間までを指します。産褥期では、母子の健康をサポートすることが中心的な仕事内容となります。産褥期における助産師の主な仕事内容は、下記の通りです。

  • 母体の回復状態の診察
  • 授乳・育児指導
  • 新生児のケア
  • 退院後の生活指導
  • 2週間健診、1ヶ月健診のサポート

産後、母子は約1週間前後を病院で過ごし、助産師は24時間体制で母体の回復や育児をサポートします。限られた入院期間中に育児指導を行うとともに、母親の体調や精神面にも気を配る必要があるため、忙しい日が続くでしょう。

母親の回復状態は悪露や会陰切開の様子を見ながら判断し、状態に応じて産褥体操や骨盤ベルトの装着方法を伝えます。赤ちゃんの世話に関しては慣れない母親も多いため、服の着せ方や授乳における正しい姿勢など、細かな部分も丁寧に指導していくことが大切です。母乳育児が順調に進むように、母乳マッサージを施すこともあります。

母子同室・母子別室は、病院の方針によって異なります。母子同室の場合でも、赤ちゃんの夜泣きがひどい場合などは助産師が預かるため、夜間も母子の様子に注意することが必要です。

退院後は、2週間健診や1ヶ月健診を実施し、母親と新生児の健康状態を確認します。産後の女性はホルモンバランスや環境の変化により精神的負荷が大きいため、メンタルヘルスケアも欠かせません。母親の肉体的・精神的負担を軽減できるように、必要に応じて兄弟育児のコツや、家事代行サービスの紹介などを行うこともあります。

助産師として働くメリット

助産師として働く女性

助産師は女性や出産にまつわる専門的な知識を活かして、社会に大きな貢献ができる仕事です。多くの助産師は、出産というライフイベントを支える仕事にやりがいを感じています。

また、法律によって助産師は女性しか就けない職業として定められており、使命感と誇りを持って仕事に臨むことができるでしょう。

ここでは、助産師として働くメリットを3つ紹介します。

新しい生命の誕生に立ち会える

助産師は、出産に立ち会うことができる数少ない仕事です。通常の人であれば立ち会う機会が限られている出産に、生涯を通して関われることは助産師の魅力といえるでしょう。

母子の命を扱う助産師の責任は重く、死産などの厳しい現実に直面することも事実です。しかし、さまざまな苦難を乗り越えて生命が誕生した瞬間は何にも代えがたく、大きな達成感が得られる助産師も少なくありません。新たな命の誕生は喜びに溢れており、他の職業では得ることができない幸せを感じることができるでしょう。

社会的に重要な意義がある仕事である

助産師は母子の幸せを考えて、女性と赤ちゃんの生活を支える仕事です。周産期の女性は精神的負荷が大きく、マタニティブルーや産後うつ、新生児の虐待といった問題が起こることも少なくありません。流産や死産などの悲しい現実から立ち直れない女性もいます。このような複雑な女性の心に寄り添い、出産を幸せなものへ導くために、助産師の重要性が再確認されています。

また、助産師は医師に比べて、妊娠中の女性により近い存在です。不安や悩みを聞きながら長い期間にわたり妊婦と関わる中で、信頼されることも多いでしょう。

独立・開業を目指せる仕事である

医師以外の医療職の多くは、独立・開業を目指すことは難しい傾向にあります。しかし、助産師は助産院の開業を目指せるため、独立志向の女性にもおすすめできる職業です

助産院には、下記のような種類があります。

  • 分娩を扱う助産院
  • 分娩を扱わず、母乳指導や育児指導を専門とする助産院
  • 事業所を構えない出張専門の助産院

助産院では、自分が理想とする分娩方針を掲げ、信念に沿った指導を行えます。また、助産院は病院に比べて時間に余裕があるため、妊産婦に対してより細かなフォローを行うことが可能です。助産院を利用した母子と、生涯にわたり付き合っていくケースも珍しくありません。助産師としてさらなるキャリアアップを目指したい人は、助産院の開業を目指すと良いでしょう。

助産師の仕事に就くために必要な資格

助産師として働くためには、看護師免許を取得したうえで助産師試験に合格する必要があります。助産師国家試験の受験に年齢制限はなく、キャリアアップを目指すすべての看護師におすすめの資格です。

助産師免許を取得する方法には2つのパターンがあり、各パターンにおける取得手順は下記のようになっています。

看護師免許・助産師免許を同時に取得する場合 看護師免許・助産師免許を別個に取得する場合
(1)高等学校卒業後、看護大学(4年制)で看護師課程と助産師課程を修了する
(2)看護師国家試験・助産師国家試験に合格する
(1)高等学校卒業後、看護大学(4年制)・短大・専門学校(3年制)で看護師課程を修了する
(2)看護師国家試験に合格する
(3)大学専攻科・専門学校(1年)、大学院(2年)などで助産師課程を修了する
(4)助産師国家試験に合格する

看護師免許と助産師免許を同時に取得する方法は、最短で助産師を目指せますが、大学4年間の中で助産師課程に進める人は限られています。なお、助産師国家資格にのみ合格した場合は、翌年以降に看護師国家試験に合格すると、助産師の免許申請を行うことが可能です。

令和3年における助産師国家試験の合格率は99.6%となっており、助産師課程のカリキュラムをマスターした人にとっては、試験そのものの難易度は高くないといえるでしょう。助産師課程を修了するまでには時間がかかりますが、試験勉強を怠らずに臨めば合格の可能性は十分にあります。なお、受験者数は看護師の約3%程度となっており、看護師・保健師と比べて少ない傾向です。

令和3年の助産師国家試験では、一般問題が1問1点(75点満点)、状況設定問題が1問2点(70点満点)で、145点中87点以上の得点で合格となっています。
(出典:厚生労働省「第107回保健師国家試験、第104回助産師国家試験及び第110回看護師国家試験の合格発表」

助産師の仕事で給料を上げるポイント

助産師の給料

助産師は、医療業界の中でも比較的給料が高めの職種です。経験年数や勤務年数に応じて昇給も見込まれるため、生涯を通して安定した収入を得ることができるでしょう。

しかし、いくつかのポイントを押さえると、助産師としての給料をより増やすことができます。ここでは、助産師の仕事で給料を上げるポイントを4つ紹介します。

役職者を目指す

病院で勤務する場合、看護部長・看護師長・看護主任などに就任すると、役職手当が加算されます。役職手当の額は職場により異なりますが、看護部長で約7~10万円、看護師長で約4~7万円、看護主任で約2~5万円が目安です。

ただし、看護師長以上の管理職に就くためには10年以上経験を積む必要があり、今すぐに収入を上げることは難しいでしょう。管理職にふさわしい判断力と指導力を養うためには、日々努力して仕事に取り組むことが大切です。

夜勤を増やす

助産師は夜間も新生児の世話や分娩に対応するため、シフト制で日勤と夜勤を繰り返します。夜勤者には、1回につき約1~2万円の夜勤手当が支給されるため、収入を上げたい人は夜勤を検討しましょう。

夜勤を増やせば給料は上がりますが、身体への負担が大きくなるというデメリットがあります。夜勤のスタッフは日勤に比べて少ないため1人当たりの業務量が多く、仮眠が取れないことも珍しくありません。生活リズムが崩れると体力的・精神的に厳しく日常生活に支障が出るため、夜勤を増やす場合は体調を崩さない程度に留めましょう。

助産院の開業を目指す

収入を増やすためには、独立して助産院を開業する方法もあります。しかし、開業助産師は自営業となるため、収入が保証されているわけではありません。助産院を開業して間もない頃は、収入が下がる可能性もあります。

また、開業助産師には、1人で母子を支えていくための十分な知識・技術が必要です。分娩を扱う助産院の開業基準では、「経験年数5年以上・分娩件数200件」が最低基準として定められています。助産院開業を目指す人は、まずは病院勤務を経て助産師としてのキャリアを積むことから始めましょう。

条件の良い職場に就職・転職する

最も速やかに助産師の給料を上げる方法は、条件が良い職場に就職・転職することです。給料を上げるためには、夜勤手当・資格手当・分娩手当・地域手当などの待遇が充実している職場を選びましょう。

分娩手当が用意されている場合、分娩1回につき約1~2万円が支給されるため、同じ業務内容であっても手当の有無で給料が大きく変わります。また、応募先の賞与実績や有給休暇取得実績なども確認しておくと安心です。

勤務地にこだわらない場合は、助産師の給料が高い地域に就職・転職することも、給料を上げるために有効な手段といえます。転職サイトを利用する際には、全国の求人情報を豊富に取り扱っているサイトを選びましょう。

まとめ

助産師は、妊娠・出産・産後において母子を支え、生涯にわたり女性の性と健康をサポートする仕事です。助産師の全国平均給料は約570万円で、医療職の中でも高い傾向にあります。助産師の職場には病院・診療所・クリニックなどがあり、助産師として働くためには看護師免許と助産師免許が必要です。

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