問題
Aさん(94 歳、男性)は、要介護1で、妻(84 歳)と2人暮らしであった。肺炎(pneumonia)で入院治療していたが本日退院し、介護老人保健施設に初めて入所した。現在の障害高齢者の日常生活自立度判定基準はランクB-2、認知症高齢者の日常生活自立度判定基準はランクIIaである。食欲は良好で、食事の姿勢や動作は自立している。部分義歯で不具合はなく、口腔内の異常はない。 入所後3日。Aさんは「家では朝起きてすぐに歯磨きをして、口の中をすっきりさせて1日が始まった。ここでは、歯磨きは食後に介助すると言われたが、私は嫌だ」と言い、不満な様子である。Aさんはベッドから車椅子への移乗に介助が必要であるが、歯ブラシとコップとを用いて自分で歯磨きができる。
Aさんへの入眠に向けた援助でもっとも適切なのはどれか。
- テレビをつける
- 足浴を実施する
- そのまま様子をみる
- 睡眠薬を処方してもらう
【解答】
- 入眠困難への対処にはなっていないうえ、これから消灯というタイミングでもあり、不適切です。
- 入眠へ向けた援助として適切な対応です。
- Aさんは何らかの対処を求めて看護師に訴えています。
- 睡眠薬には転倒・転落につながる副作用のリスクもあり、とくに高齢者では影響が出やすいため、慎重に検討する必要があります。
現場ではこうする!

現場で大切なのは、「なぜ患者さんが入眠困難なのか?」を患者さんとの会話から引き出すことです。傾聴では、ただ相手の話を聞けばいいというのではなく、相手の気持ちをくみ取るなど、何か抱えている問題はないかとアセスメントしながら聞く姿勢も重要です。足浴をしながらコミュニケーションを図ると効果的でしょう。
健康な人であっても、ハイキングなどで足を酷使したあとの足湯温泉などは、格別なものです。全身浴でなく部分浴でも大きな効果があることが分かるでしょう。
全身浴はかなり患者さんの体力を要するケアですが、全身浴は困難と思われるケース(人工呼吸器装着中、術後まもなく、終末期など)でも部分浴なら可能になることがあります。とくに前述の「(1)血流やリンパ液の循環を促進する」「(3)温熱効果によりリラックスを促す」については清拭とは段違いの効果が期待できるため、清拭に加えて部分浴ができないかどうか、積極的にアセスメントする姿勢が望まれます。
簡便性も部分浴の大きな特徴で、設問のように消灯時の訪室というあまり時間が取れない場面でも、さっと実施できることがメリットのひとつです。大きなバケツが用意できなくても、代わりに洗面器を使ったり、ビニール袋に湯を入れて片足ずつ部分浴するという工夫もできるでしょう。
ひと手間を加えるのであれば、足浴に使う湯に香りの元となる精油(エッセンシャルオイル)を垂らすと、さらにリラクセーション効果が高まります。40~42℃くらいの湯に精油を1~3滴ほど垂らしてよくかき混ぜ、約5~10分間足を浸けておきましょう。精油の種類は患者さんの好みに合わせればいいですが、設問のケースでは安眠効果を持つラベンダー、ベルガモット、マンダリンなどがお勧めです。足浴の場合、抗菌作用があるティートリーなどもよく使われます。
ただし、精油は脂溶性(水に溶けにくい性質)であるため、よくかき混ぜても皮膚に精油が直接触れてしまい、ときに皮膚トラブルを起こすことがあります。お湯とよくなじませるためには、無香料のバスオイル10mLに精油1滴を溶かしてから湯に入れる方法もあります。また、高齢者には精油の効果が強く現れるおそれがあるため、あまり濃度を高めないほうが無難でしょう。
別の視点からいえば、1日のもっと前のタイミングからの働きかけも重要です。例えば、日中に散歩へ連れ出して適度な運動をしてもらうとともに、陽の光を浴びることでサーカディアンリズム(概日リズム)を整えることも、患者さんに良質な睡眠を促すことにつながるでしょう。睡眠薬に頼る前に、やるべきことをやりたいですね。
監修:医療法人鵬志会 別府病院 看護部長 行徳倫子
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解説
足浴の効果としては、(1)血流やリンパ液の循環を促進する、(2)足の皮脂や汗を除去して清潔を保つ、(3)温熱効果によりリラックスを促す、といったことが期待できます。いずれも心身を爽快にさせ、リラクセーション効果をもたらすことで、患者さんを入眠しやすい状態へといざなうことができます。安易に睡眠薬を使うよりも前に、看護師がベッドサイドで提供できるケアを検討することが望ましいでしょう。※出典:【一般問題】2016年 第105回 過去問題(午後37)基礎看護学