看護師向け新型コロナウイルス対応のためのオンラインプログラム

ナースぷらす 編集部からのコメント

新型コロナウイルス感染患者さん(特に集中治療室に入院中)に対応している看護師向け新型コロナウイルス対応のためのオンラインプログラム「プロジェクト・フローレンス」の日本語版が完成しました。日本語版プログラム開発にたずさわった看護師の寺本美欧さんに開発の経緯をうかがいました。

「プロジェクト・フローレンス日本語版」

アカウント登録方法・コンテンツの詳細はこちらの動画をご参照ください。

動画URL:https://youtu.be/95Q3Pq7FZrI

アカウント登録URL:https://sana.ai/create-account?token=d4bedaa0-5a21-45f1-a6f9-3d37cde41793 

オンラインプログラムを開発するまで

新型コロナウイルスが猛威をふるっていたピーク時、私は留学のためニューヨークにいました。まさか留学中に、しかも世界で一番被害が大きい都市ニューヨークに自分がいるとは夢にも思いませんでした。3月1日にニューヨーク州で初めての新型コロナウイルス患者の症例がでてからは、まるで森林の火災のように市内全体をあっという間に脅かしていきました。一週間後の3月8日には感染者数が106名、緊急事態宣言発令とともに大学院の授業もオンラインへの移行が決定。さらに1週間後の3月15日は729名。私が日本に一時帰国をした日には15000名を越えていました。帰国後も毎日大使館からニューヨークの感染者数・死亡者数がメールで届き、凄まじい桁数を見てもなかなか実感がわきませんでした。

9年前の東日本大震災が起こったとき、私は看護師を目指す高校生でした。新聞やテレビで報じられていた病院の様子を今でも鮮明に記憶しています。テレビに映る看護師と自分の未来を重ねながら、その時何もできなかった自分は「もし次にこういう出来事があったら絶対看護師として誰かの役に立ちたい」と心に決めていました。ニューヨークの病院で看護師をしている方や、日本で働く大学時代の友人達から悲惨な状況を聞きながら、またしても一番看護師が必要な時に自分は学生で何も出来ないと無力感でいっぱいでした。

そのような最中、ニューヨークで知り合ったNursing educator(看護教育者)の方から一通のメールをもらいました。彼が所属するMount Sinai Hospitalが新型コロナウイルスに対応する看護師向けのオンラインプログラムを作ったので見てほしい、という内容でした。早速使用してみると、質問形式で知識レベルを確認することができ、人工呼吸器やショックなど集中治療にまつわる内容が非常にわかりやすく単元ごとにまとめられていました。スタイリッシュなフォーマットと、何よりスマートフォンひとつあればいつでも知識を確認できるという手軽さにとても感動しました。日本のナースにも届けられないか、と小さな思いから始まり、たくさんの人の協力を得て今回日本語版の完成に至りました。

多くの支えがあってできた日本版

今回のプログラムの翻訳版を快く賛同し無償で作成してくださったのはSana labsというスウェーデンの会社です。毎日何通もメールでやり取りをしたり、困ったときにはオンライン会議を行い、時差があるにもかかわらずスムーズにやり取りが行われました。「出資してくれる病院が見つからないのですが…」と相談したところ、これは完全に会社として無償でやっていることだから気にしなくていい、とお返事がきました。遠く離れた日本のためにここまでやっていただけることに本当に感銘を受けました。

3日で翻訳家によるサンプルが完成した後、内容が日本の医療に沿うものかどうかを修正・加筆する作業に入りました。私自身、現場からしばらく離れていることと、今回新型コロナウイルス患者の対応を行っていないため、大学時代からの親友に助けを求めたり、救急や集中治療領域でエキスパートだと思う看護師の知人の皆様にお願いをしたところ、快く引き受けていただきました。「このやり方は日本と少し違う」「日本の学会の文書ではこう書いてある」と多角的にご指摘いただき、Nursing educatorと相談しながら日本版を修正していきました。私一人では絶対に成し遂げられなかったことです。

あらゆる方面でプログラムの拡散が実現

プログラムの拡散の過程でも、多くの方に賛同していただきました。看護の学会で知り合った先生方や、FacebookやTwitterなどのSNS、久しぶりに連絡をとった大学時代の友人まであらゆる方面から拡散にご協力していただきました。対面で会えない今、プログラムの作成から修正、拡散まで全部がオンライン上で行われました。「なんとか日本の看護師さんの力になりたい」という思いをこれほど多くの人が支えてくださり、実現に向けて手を差し伸べてくださったからこそ叶えることができました。このプログラムに込められた思いをお伝えしたく、この記事を書かせていただきました。

5月25日に全国の緊急事態宣言が解除されたばかりです。散歩中に小学一年生の集団登校とすれ違ったときに、ありふれた日常が戻りつつあることへの尊さを感じました。友達と外食をする、好きなアーティストのライブに行く、同窓会や結婚式に行く、せっかく取り戻しかけている「日常」をまた手放さないためにも、第二波に備えなければいけないという危機感を感じました。私も6月から看護師として臨床現場に復帰します。学習者自身の心身の健康と学ぶ環境が担保されてこそ、学びは功を成すと考えます。どうか、このオンラインプログラムが皆様のお役に少しでも立てることを願うとともに、一番の本望はこのプログラムが使われなくなる日が一日でも早く訪れることです。


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nursing.learning.lab2019@gmail.com (寺本 美欧)


 

寺本美欧(てらもと みお)さん看護師、大学院生

 

上智大学総合人間科学部看護学科卒業後、都内大学病院ICU病棟に就職。その後、埼玉県の地域密着型病院脳卒中センターへ転職。2019年9月よりアメリカ・NY州にあるコロンビア大学教育大学院の修士課程に在学中。専攻は成人教育学とリーダーシップ。「すべての看護師に最高の教育の場を」をモットーに、看護師の継続教育のシステム構築を目指す。海外大学院留学記ブログ「看護師ちゅおのアメリカ大学院留学記」日々更新中。

看護師ちゅおのアメリカ大学院留学記
http://blog.livedoor.jp/chuochan/

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