• 2025年5月18日
  • 2025年5月16日

スキン-テアとは? 褥瘡・表皮剥離との違いや具体例・予防方法を解説

 

スキン-テアは、高齢者の方を中心に、日常生活の中のさまざまな場面で起こる可能性がある創傷です。たとえば、入浴・着替えの際や、ベッドからの移動時、車椅子への移乗時などに、ちょっとした摩擦や圧力が加わることで、皮膚が損傷することがあります。高齢者の看護・介護においては、スキン-テアのリスクを理解し、適切な予防策を講じることが大切です。

この記事では、スキン-テアとは何かといった基礎的な事項から、スキン-テアの予防ポイントまで分かりやすく解説します。

■監修者
本多 洋介(新東京病院所属)

岡山大学医学部卒業 / 現在は新東京病院勤務 / 専門は整形外科、脊椎外科。

スキン-テアとは

スキン-テアとは、摩擦やずれによって皮膚が裂ける・剥がれるような外傷性の創傷のことです。特に高齢者に多く見られ、加齢による皮膚の薄化や乾燥、弾力性の低下が主な要因です。

一般社団法人 日本創傷・オストミー・失禁管理学会の資料では、スキン-テアの具体例として、以下のように記載しています。

  • 四肢がベッド柵に擦れて皮膚が裂けた(ずれ)
  • 絆創膏を剥がす時に、一緒に皮膚が剥がれた(摩擦)
  • 車椅子等の移動介助時にフレーム等に擦れて皮膚が裂けた(ずれ)
  • ネームバンドが擦れて皮膚が裂けた(摩擦)
  • リハビリ訓練時に身体を支持していたら皮膚が裂けた(ずれ)
  • 体位変換時に身体を支持していたら皮膚が裂けた(ずれ)
  • 更衣時に衣服が擦れて皮膚が裂けた(摩擦・ずれ)
  • 転倒した時に皮膚が裂けた(ずれ)
  • ベッドから転落した時に皮膚が裂けた(ずれ)

(出典:一般社団法人日本創傷・オストミー・失禁管理学会「テアについて」

スキン-テアは、日常生活の些細な動作が原因で発生しやすく、たとえばベッド柵や車椅子のフレームに擦れるケースや、衣類の着脱時に皮膚が引っ張られるケースで生じます。また、医療用テープや絆創膏を剥がす際の摩擦も一因となることがあります。

スキン-テアの分類

STARスキンテア分類システムは、スキン-テアの評価と管理を標準化するための指標です。創傷の状態に応じて5つのカテゴリーに分類されます。

カテゴリー1a
皮膚や皮弁が元の位置に戻せる状態であり、色の変化がないものを指します。

カテゴリー1b
同じく皮膚を戻せるものの、蒼白や薄黒い変色が見られるケースです。

カテゴリー2a
皮膚や皮弁が正常な位置に戻せず、色の変化がない状態となります。

カテゴリー2b
戻せないうえに皮膚の変色が見られる場合を指します。

カテゴリー3
皮弁が完全に欠損している状態であり、最も重度のスキン-テアとされています。

まずはプロトコルに従い、出血を抑えた後、傷口を洗浄し、可能であれば皮膚や皮弁を元の位置に戻します。その後、組織欠損の程度や皮膚の色を、STARスキンテア分類システムを用いて評価します。

特に皮膚や皮弁が蒼白、薄黒い、または黒ずんでいる場合は、血流障害の可能性があるため、24~48時間以内に再評価を行うことが推奨されます。
(出典:一般社団法人日本創傷・オストミー・失禁管理学会「テアについて」

スキン-テアと褥瘡の違い

スキン-テアと褥瘡はどちらも皮膚の損傷を指しますが、原因や発生のメカニズム、特徴には大きな違いがあります。

スキン-テアは、摩擦やずれ、軽い外力によって皮膚が裂ける急性の損傷です。特に高齢者に多く見られ、皮膚の薄さや乾燥、弾力性の低下が要因となります。

褥瘡は、長時間の圧迫によって血流が悪くなり、皮膚やその下の組織が壊死する慢性的な皮膚損傷です。寝たきりの方など、同じ部位に長時間体重がかかることで発生しやすく、一般に「床ずれ」とも呼ばれます。主に骨の突出部分にできやすく、発生を防ぐためには定期的な体位変換やクッションの使用が大切です。

スキン-テアと表皮剥離の違い

表皮剥離は、皮膚の表面(表皮)が摩擦や外力によって部分的または広範囲に剥がれる状態です。一般的に、やけどや湿疹、医療用テープの剥離などが原因で発生し、年齢に関係なく起こる可能性があります。

一方で、スキン-テアは表皮剥離の一種ではありますが、特に高齢者に多く見られる特徴的な皮膚損傷です。

スキン-テアのリスクアセスメント

スキン-テアのリスクアセスメント

スキン-テアのリスクアセスメントについて、個体要因と外的要因をそれぞれ紹介します。

個体要因

全身状態

  • 加齢(特に75歳以上)により皮膚が薄くなり、弾力が低下
  • 長期的なステロイド薬や抗凝固薬の使用による皮膚の脆弱化
  • 低活動性による筋力低下や血行不良
  • 過度な日光曝露歴(屋外作業やレジャーによる影響)による皮膚のダメージ蓄積
  • 抗がん剤や分子標的薬治療、放射線治療歴による皮膚の脆弱化
  • 透析治療による皮膚の乾燥や脆弱化 ・低栄養状態や脱水による、皮膚の修復力の低下
  • 認知機能低下による自己管理の難しさ

皮膚状態

  • 乾燥や鱗屑(皮膚のカサつきやフケのような状態)
  • 紫斑(皮下出血によるあざ)
  • 浮腫(水分の滞留による皮膚の腫れ)
  • 水疱(小さな刺激で皮膚が剥がれる)
  • ティッシュペーパー様(皮膚が極端に薄く、乾燥してカサカサした状態)
外的要因

患者行動

  • 痙攣や不随意運動による皮膚の摩擦や衝撃
  • 不穏行動(落ち着きがない状態)により物にぶつかるリスクの増加
  • ベッド柵や車椅子などの硬い物への接触

 管理状況

  • 体位変換や移動介助(車椅子やストレッチャー使用時)で生じる摩擦
  • 入浴や清拭の際の強い刺激
  • 医療用テープ剥離時の皮膚創傷(テープテア)
  • 抑制具や医療用リストバンドの装着による刺激
  • リハビリ中の動作による摩擦や衝撃

(出典:公益社団法人 日本海員掖済会 名古屋掖済会病院「在宅・施設におけるスキン-テア」

スキン-テアの予防をするポイント

スキン-テアの予防をするポイント

スキン-テアの予防と適切なケアは、虐待の疑いを避けるためにも非常に重要です。日頃から皮膚の状態に気を配り、適切な対策を講じましょう。

以下では、スキン-テアを予防するポイントを3つ紹介します。
(出典:国立研究開発法人 科学技術振興機構「スキン-テアが多発している患者に愛護的なスキンケアを行い 新たなスキン-テアの発生を予防した1事例」
(出典:独立行政法人 国立病院機構 浜田医療センター「皮膚・排泄ケア認定看護師の活動:『スキン‐テア』について」

皮膚を清潔に保ち保湿をする

スキン-テアを防ぐためには、皮膚の清潔を保ちつつ、しっかり保湿することが重要です。清拭の際は、ゴシゴシこすらず、泡立てた石けんや弱酸性の洗浄剤を使用して優しく洗いましょう。

洗浄後は、しっかり水分を拭き取ったうえで、保湿剤を塗布し、皮膚の乾燥を防ぐことが効果的です。特に、高齢者の皮膚は薄くなっており、水分が蒸発しやすいため、こまめなケアが必要です。

ベッド柵へぶつかる可能性を減らす

スキン-テアの主な外的要因の1つに、ベッド柵や家具への接触があります。これを防ぐために、ベッド柵にはクッション性のあるカバーを取り付けるとよいでしょう。

また、患者さん自身の皮膚を保護するために、アームカバーやレッグウォーマー、長袖・長ズボンの衣服を着用してもらうことも有効です。患者さんが注意を払っていても、睡眠中に寝返りをうって無意識のうちに柵へぶつかる可能性があるため、事前に対策を講じるのが大切です。

患者さんを引っ張らず優しく触れる

移動や体位変換の際に強く引っ張ると、摩擦やずれが生じて皮膚が裂けやすくなります。そのため、介助時はできるだけ皮膚に負担をかけないよう、優しく支えることを意識しましょう。

また、移動時にはシーツやスライディングボードを活用し、持ち上げるのではなく、滑らせるように動かすことで、摩擦を最小限に抑えられます。

スキン-テアが起きた場合のケア方法

スキン-テアが起きた場合のケア方法

スキン-テアが発生した場合、適切なケアを行うことで治癒を促し、新たな損傷を防ぐことが重要です。まず、傷口を清潔にするために、生理食塩水や微温湯で優しく洗い流します。ゴシゴシこするのではなく、できるだけ刺激を与えないように注意しましょう。その後、ガーゼや清潔な布で軽く押さえ、出血がある場合は圧迫止血を行います。

裂けた皮膚(皮弁)が残っている場合は、無理に取り除かず、できる限り元の位置に戻します。ピンセットなどを使って優しく伸ばしながら整え、その上から適切な創傷被覆材(ドレッシング材)を貼付します。

ドレッシング材は、シリコーンゲルメッシュやポリウレタンフォームなど、剥がす際に皮膚への負担が少ないものを選ぶとよいでしょう。固定の際は粘着力の強いテープではなく、筒状包帯などを使用し、皮膚への負担を軽減する工夫をします。

また、感染予防のために、発赤や腫れ、痛みなどの症状がないか観察することも重要です。皮膚が脆弱になっているため、周囲には非アルコール性の皮膚被膜剤を塗布し、保護を徹底しましょう。
(出典:公益社団法人 日本海員掖済会 名古屋掖済会病院「在宅・施設におけるスキン-テア」

まとめ

スキン-テアは、皮膚が外部からの摩擦や圧力によって裂けた状態で、高齢者や皮膚が脆弱な方に起こりやすい症状です。褥瘡とは、皮膚が長時間圧迫されることで血行が悪くなり、組織が壊死するもので、スキン-テアとは原因や症状が異なります。

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スキンテアは病院だけでなく、施設や自宅などいろいろな場所で起こることがあります。褥瘡よりは治りやすいものの、単に縫合すればいいというものではありません。皮膚が非常に弱いため、縫合した部分の皮膚が糸で裂けてしまうのです。裂けた皮膚を元の位置に戻した上で、縫合糸の代わりとなる細めのステリテープなどで固定し、創傷被覆材で保護します。ガーゼは剥がす際にまた皮膚が裂けることがあるため、避けてください。ほとんどの場合、完全に元の位置に皮膚を戻すことができないため、辺縁の部分に関しては2次治癒が必要になってしまいます。保湿やクッション剤などでの予防が重要です。

※当記事は2025年2月時点の情報をもとに作成しています

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