医療現場において、手術後や尿路障害のために膀胱留置カテーテルが必要となる患者さんは少なくありません。膀胱留置カテーテルは尿毒症の予防をはじめ、さまざまな場面で活躍しますが、挿入時には合併症の可能性もあるため、適切な管理が求められます。
当記事では、膀胱留置カテーテルの概要や利用目的、種類、挿入手順などを解説します。実際の現場で膀胱留置カテーテルを行う際の参考にしてください。
本多 洋介(Myクリニック本多内科医院 院長)
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Myクリニック 本多内科医院(神奈川県横浜市)院長。2009年、群馬大学医学部卒。伊勢崎市民病院、群馬県立心臓血管センター、済生会横浜市東部病院を経て、2024年6月より現職。総合内科専門医、循環器内科専門医。 |
膀胱留置カテーテルとは
膀胱留置カテーテルとは、膀胱内にカテーテルを挿入して留置し、持続的導尿処置を行うことです。膀胱留置カテーテルでは、カテーテル先端部分に取り付けられたバルーンを膨らませる方法で留置を行います。
膀胱留置カテーテルとバルーンカテーテルの違いは、持続的導尿処置そのものを指すか、処置に使用する管を意味するかです。膀胱留置カテーテルを実施する際にはバルーンカテーテルを使用して、膀胱内部に溜まった尿を排出させます。
ただし、バルーンカテーテルを「膀胱留置カテーテル」と呼ぶケースもあり、同様の意味と解釈することも間違いとは言えません。「管」を意味するバルーンカテーテルや膀胱留置カテーテルは、単に「バルーン」と呼ばれることもあります。
(出典:横浜市立大学「尿道カテーテル留置について」)
膀胱留置カテーテルを利用する目的

膀胱留置カテーテルは主に、尿路の障害や疾患があり、自力で排尿できない患者さんの尿失禁や尿路閉塞対策として利用される処置です。膀胱留置カテーテルはそのほか、以下の状況で利用される可能性があります。
- 尿量を正確に測定する必要がある時
- 尿検体を採取する時
- 手術後に安静の必要がある時
- 全身麻酔下で手術を行う時
- 泌尿器や生殖器の手術を行った時
膀胱留置カテーテルを実施し、持続的に尿を排出すると、尿毒症などの合併症の予防や全身管理が可能です。ただし、膀胱留置カテーテル自体にも尿道損傷、膀胱萎縮、膀胱結石などの合併症リスクが伴うことから、危険性を意識したうえで実施する必要があります。
膀胱留置カテーテルの種類

膀胱留置カテーテルは太さや容量、ルーメンの数などが異なるため、適応疾患、患者さんの状態、年齢などに応じた使い分けが必要です。以下では、膀胱留置カテーテルで使用する管の主な種類と使い分けの基本を紹介します。
太さ
膀胱留置カテーテルの太さは、「Fr(フレンチ、フレ)」で確認します。適切な管の太さは患者さんの年代によって変化し、一般的な基準は、以下の通りです。
新生児~生後6か月 | 5~6Fr |
---|---|
乳幼児 | 6~8Fr |
思春期前の小児 | 10~12Fr |
青年 | 12~14Fr |
成人 | 14~18Fr |
ただし、成人の患者さんに対してもカテーテル閉塞が懸念される状況では、20Fr以上を選択することがあります。
容量
先端部分に取り付けるバルーンにも、さまざまな容量があります。成人の患者さんに対しては10mLを選択することが一般的であるものの、前立腺を切除する手術を受けた影響などで出血の管理が必要な場合は、30mLを選択する可能性があります。小児の患者さんに対しては、2.5~5mLを選択することが通常です。
ルーメン
膀胱留置カテーテルには、排液ルーメン・バルーンルーメンの付属する「2way」、排液ルーメン・バルーンルーメン・注入用ルーメンの付属する「3way」があります。一般的に選択される種類は、外部との交通が少なく、感染症リスクを軽減できる「2way」です。3wayは主に、カテーテルの留置中に膀胱洗浄を実施する可能性がある状況で選択されます。
先端部
先端部分の形状には、直線状タイプ(ホイッスルチップ)・湾曲したタイプ(チーマンカテーテル)・先穴タイプなどがあります。一般的に選択される種類は、直線状タイプです。直線状タイプの先端部分は丸みを帯びた形状になっていることが多く、粘膜を損傷するリスクを軽減しつつ、挿入を行えます。
先端部が湾曲したタイプは主に尿道が狭窄している患者さんに対し、無理なくカテーテルを挿入したい場合に選択される種類です。先穴タイプは主に、ガイドワイヤーを使用してカテーテルを挿入する状況で選択されます。
膀胱留置カテーテルの手順

膀胱留置カテーテルを実施する際には必要な物品を用意し、ケアの内容・目的を患者さんに伝えたうえ、同意を得ることが必要です。同意を得た後は患者さんの羞恥心に配慮し、カーテンなどで周囲を覆い、以下の手順で膀胱留置カテーテルを実施します。
1 | 患者さんを脱衣させ、体位を整える |
---|---|
2 | 膀胱留置カテーテルキットを開封し、必要な物品をベッド上に配置する |
3 | 手指衛生を行った後、滅菌手袋を装着する |
4 | バルーンに蒸留水を注入して異常がないことを確認し、確認後は蒸留水をシリンジに戻す |
5 | 陰部を消毒する |
6 | カテーテルを取り出し、潤滑剤を塗布する |
7 | 患者さんに深呼吸してもらいつつカテーテルを挿入し、尿の流出を確認する |
8 | 減菌蒸留水を注入し、バルーンを膨らませる |
9 | 正常に留置されているかを確認したうえ、カテーテルを固定する |
10 | 採尿バッグを設置し、カバーで覆う |
11 | 患者さんの衣服を整え、使用した物品を片付ける |
カテーテル挿入中に異常な抵抗を感じた場合は無理をせず、一旦抜去してください。挿入が困難な場合は無理に継続せず、医師に相談したうえで、判断をあおぐことも重要です。
膀胱留置カテーテルの注意点

膀胱留置カテーテルの実施中は陰部を清潔に維持し、感染予防に努める必要があります。患者さんの安全を守るためには、採尿バッグやカテーテルを適切に管理することも重要です。
以下では、膀胱留置カテーテルを実施した患者さんをケアする際に看護師が意識したい注意点を解説します。
感染予防の徹底
膀胱留置カテーテルの実施中は膀胱内と身体の外部がつながり、細菌が侵入しやすい状態です。カテーテル挿入中は自浄作用が低下することもあり、尿路感染症にかかるリスクが高まるため、予防対策を徹底しましょう。尿路感染症が悪化すると、腎盂腎炎、前立腺炎となるリスクがあるため、膀胱留置カテーテルの必要性をアセスメントし、早期に抜去できるか検討が必要です。
具体的には、入浴やシャワー浴を毎日実施して、陰部を清潔に維持することが重要です。入浴時にカテーテルのキャップを付け外す時は、アルコール入りのウエットティッシュなどで拭きましょう。
尿路感染症を予防するには、定期的なカテーテル交換も欠かせません。シリコン製カテーテルは4週間に1回、ラテックス製カテーテルは2週間に1回を1つの目安と考え、適正頻度を守って交換しましょう。
バッグの管理
採尿バッグは就寝中も含め、膀胱より低い位置に維持する必要があります。ベッドで就寝している場合は入眠時、採尿バッグを柵に結ぶ、もしくはベッド下に置く方法で、適正位置に維持しましょう。布団で就寝する患者さんの場合はマットなどを敷くことで段差を作り、足元の布団の外に採尿バッグを置いてください。
入院中の患者さんに対しては病室を訪問する度、採尿バッグの位置を確認します。採尿バッグを適正位置に維持する重要性を説明し、患者さん自身にも意識してもらうとより安心です。
採尿バッグに過剰な量の尿が溜まると逆流するリスクがあることから、定期的な排出が欠かせません。入院中の患者さんに対しては毎日時間を決めて、尿を排出してください。
カテーテルの管理
膀胱留置カテーテルは、カテーテル周囲に炎症が起きた場合、尿道と皮膚に瘻孔が形成される場合があるため、押し潰される、もしくは引っ張られることがない位置に固定します。患者さんの体動によってカテーテルが引っ張られ、抜けるリスクを軽減するため、多少のゆとりを持たせた状態で固定することも重要です。
固定に使用するテープは皮膚トラブルを防止するため、1日1回以上、貼り替える必要があります。テープの位置を毎回変更する方法によっても、皮膚トラブルの防止が可能です。
まとめ
膀胱留置カテーテルは、全身管理が必要な重症な状態、または尿路障害や手術後などに使用され、尿を排出するためにカテーテルを膀胱に挿入します。カテーテルの種類やサイズは患者さんに合わせて選び、手順や管理には感染予防が重要です。適切な固定、バッグの管理、定期的なカテーテル交換が必要で、患者さんの安全を守るためには細心の注意が求められます。
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※当記事は2025年2月時点の情報をもとに作成しています
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