社会人として働いてから看護師を志し、資格取得を目指す方は、養成所に通う費用の一部を給付金として受け取れます。支給条件が設定されてはいるものの、教育経費の50~70%を受け取れるため、看護師を目指して努力している最中の支えになるでしょう。
当記事では、看護師を目指す方が受け取れる専門実践教育訓練給付について、対象者や支給金額、手続き方法を詳しく解説するため、ぜひ参考にしてください。
看護師を目指す人も活用できる専門実践教育訓練給付
働く方のキャリア形成を支援し、雇用の安定や就職の促進を図るために役立つ制度として、「教育訓練給付制度」があります。教育訓練給付制度は、厚生労働大臣が指定する教育訓練を修了した際に、受講費用の一部が支給される制度です。
教育訓練給付制度には、その教育の内容に応じて「専門実践教育訓練」「特定一般教育訓練」「一般教育訓練」の3種類が存在します。なかでも、中長期キャリア形成となる教育訓練に支給されるのが、専門実践教育訓練給付制度です。社会人経験者で看護師を目指す方には、「専門実践教育訓練給付」という資格取得支援制度が適用される可能性があります。
(出典:厚生労働省「専門実践教育訓練給付制度のご案内」)
(出典:厚生労働省「専門実践教育訓練給付金に関するよくあるご質問」)
(出典:厚生労働省「教育訓練給付制度」)
(出典:政府広報オンライン「教育訓練給付制度があなたのキャリアアップを支援します」)
それでは、制度の対象となる講座や支給対象者、支給金額、申請方法について見ていきましょう。
専門実践教育訓練給付の対象となる講座は?
看護師資格取得を目指す方が専門実践教育訓練給付の対象となるのは、看護師・准看護師・保健師・助産師などの資格取得を目標とする教育課程を受講した場合です。給付対象講座を開設しているのは、主に保健師養成所・大学院・短大専攻科・助産師養成所・看護師養成所・短大などの教育訓練施設です。
夜間や定時制で行われる課程や専門学校の職業実践専門課程、専門職大学・専門職短期大学・専門職学科の課程も対象となる場合があります。いずれにしても、資格取得に必要な最短の期間での修了が求められます。
(出典:厚生労働省「専門実践教育訓練給付制度のご案内」)
(出典:厚生労働省「教育訓練給付制度」)
なお、現在制度の対象となる講座は、厚生労働省の教育訓練講座検索システムで検索が可能です。
支給の対象となる人
専門実践教育訓練給付金は、初めて受給する方と2回目以降の受給となる方で、対象となる条件が以下のように異なります。
初めて受給する方 |
---|
|
2回目以降の受給となる方 |
---|
|
いずれのケースも、離職後1年以内であれば、一般被保険者資格を喪失しても受給可能です。ただし、教育訓練を途中で辞める場合や、定められた訓練期間中に修了できなくなった場合、その後の支給はありません。なお、妊娠・出産・育児・疾病・負傷などのやむを得ない事情があれば、最大で20年、給付の適用対象期間延長となります。
(出典:政府広報オンライン「教育訓練給付制度があなたのキャリアアップを支援します」)
(出典:厚生労働省「専門実践教育訓練給付金に関するよくあるご質問」)
支給される金額
専門実践教育訓練給付金の支給額は、訓練開始から6か月ごとに計算されます。期間内の給付金の下限額は4,001円です。基本的には年間40万円を上限として教育訓練経費の50%が支給されます。ただし、修了後1年以内に特定の資格を取得し就職した場合、教育訓練経費の20%が追加で支給され、上限が年間56万円に増額されます。
訓練期間 | 基本支給額(50%)上限 | (基本+追加)支給額(70%)上限 |
---|---|---|
1年以下 | 40万円 | 56万円 |
2年以下 | 80万円 | 112万円 |
3年以下 | 120万円 | 168万円 |
4年以下 | 160万円 | 224万円 |
専門実践教育訓練給付金の上限額は168万円(訓練期間3年の場合)です。なお、法令上最短4年の訓練を受講している場合、3年目受講終了時の支給上限額に4年目受講相当分の上限56万円が上乗せされ、最大224万円となります。また、10年間で複数回受講する場合の支給額は、合計で168万円が限度です。
(出典:厚生労働省「専門実践教育訓練給付金に関するよくあるご質問」)
(出典:ハローワーク「教育訓練給付制度」)
申請の手続き方法
専門実践教育訓練給付制度を申請する際には、受講前の事前手続きと受講後の支給申請手続きが必要です。受講前の手続きは、キャリアコンサルティングを受けてのジョブ・カード作成が前提条件となります。
申請に必要な書類は、以下の通りです。
受講前の手続きに必要な書類 |
---|
|
支給申請に必要な書類 |
---|
|
支給申請は、受講開始日から6か月ごとに行う必要があります。受講修了後の支給申請期間は、受講修了日の翌日から起算して1か月以内です。追加給付を受ける場合の申請期間も、同様に定められています。
(出典:厚生労働省「専門実践教育訓練給付金に関するよくあるご質問」)
(出典:ハローワーク「教育訓練給付制度」)
看護師を目指す方が条件を満たすと受給できる教育訓練支援給付金
看護師を目指す方で、専門実践教育訓練給付制度を利用し、かつ特定の要件を満たす場合、教育訓練支援給付金を受給できます。教育訓練支援給付金は、2025年までの特別措置として設けられた制度です。
(出典:ハローワーク「教育訓練給付制度」)
(出典:厚生労働省「専門実践教育訓練給付金に関するよくあるご質問」)
(出典:厚生労働省「専門実践教育訓練給付制度のご案内」)
以下では、受給の対象条件や支給される金額、申請方法について解説します。
支給の対象となる人
教育訓練支援給付金の給付対象者となるには、基本手当の受給資格がなく、かつ受講開始日に離職済みである必要があります。また、手当が支給されるのは出席した日の分だけです。そのほかの諸条件は、以下の通りとなります。
- 一般被保険者でなくなってから1年以内に専門実践教育訓練を開始するかた
- 専門実践教育訓練を修了する見込みがあること
- 専門実践教育訓練の受講開始時に45歳未満であること
- 受講する専門実践教育訓練が通信制又は夜間制ではないこと
- 受給資格確認時において離職していること。また、その後短期雇用特例被保険者又は日雇労働被保険者になっていないこと
- 会社役員、地方自治体の長に就任していないこと
- 教育訓練給付金を受けたことがないこと(平成26年(2014年)10月1日前に受けたことがある場合は例外があります)
- 専門実践教育訓練の受講開始日が令和7年(2025年)3月31日以前であること
(引用:政府広報オンライン「教育訓練給付制度があなたのキャリアアップを支援します」)
教育訓練支援給付金は、受講中の出席率や成績が良好であることが前提です。2か月間の出席率が8割未満になった場合や、成績不良や休学により修了見込みがなくなった場合は、支給対象から外れます。また、この制度は2025年3月31日までの期限つきである点にも注意が必要です。
(出典:政府広報オンライン「教育訓練給付制度があなたのキャリアアップを支援します」)
支給される金額
教育訓練支援給付金の支給金額は、受給者が離職する直前の6か月間に支払われた賃金額を基に計算されます。支給金額の割合には個人差がありますが、基本手当(失業給付)の日額の80%が目安です。
基本手当の日額は、離職前6か月間の賃金合計を180で割り、得られた賃金日額の80%から45%の範囲内で決定されます。基本手当の日額を求める計算式は、以下の通りです。
基本手当の日額=離職前6か月間の賃金合計÷180(賃金日額)×(45%~80%)
上記の計算式によって、それぞれの受給者に対して支給される給付金の日額が決定されます。
(出典:政府広報オンライン「教育訓練給付制度があなたのキャリアアップを支援します」)
申請の手続き方法
教育訓練支援給付金を申請する際は、専門実践教育訓練給付金の申請と同様、事前の手続きが必要です。事前手続きは、受講開始日の1か月前までに受講者本人が自分自身で行う必要があり、専門実践教育訓練の給付金手続きと同時またはそれより後に実施します。
事前申請に必要な書類は、以下の通りです。
受講前の手続きに必要な書類 |
---|
|
支給申請は専門実践教育訓練の受講中もしくは受講終了後に、管轄のハローワークで行います。支給申請に必要な書類は、以下の通りです。
支給申請に必要な書類 |
---|
|
支給申請は、ハローワークでの失業認定と合わせて行います。頻度は、原則として2か月に1回です。
(出典:ハローワーク「教育訓練給付制度」)
まとめ
社会人になってから看護師を目指す方は、特定の条件を満たすことで「教育訓練給付制度」を利用できます。資格取得のために養成所に通っている場合、教育訓練経費の50~70%が支給されます。申請手続きはハローワークで行えるので、給付金を利用したい方はお住まいの地域のハローワークに相談しましょう。
看護師資格を取得した方は、ぜひマイナビ看護師にご相談ください。看護職専門のキャリアアドバイザーが、ご自身に合った就職・転職をサポートいたします。
※当記事は2023年12月時点の情報をもとに作成しています