• 2023年5月18日
  • 2024年10月29日

終末期医療とは? ケアの内容と課題・看護師の関わり方も解説

 

社会の高齢化が進むなか、患者さんが希望通りの最期を迎えるための終末期医療の重要度は今後さらに増していくでしょう。看護師は病院や施設、また訪問での看護で終末期医療に関わり、患者さんやご家族の身体的・精神的サポートを行うことになります。

当記事では、終末期医療とはどのようなものか、ケアの内容や看護師の役割を詳しく解説します。終末期についての理解を深めたい方や、終末期医療に関わりたいと思っている看護師の方はぜひ参考にしてください。

終末期とは?

終末期(ターミナル期)とは、最善の治療を行っても病気が命に与える影響を軽減できず、患者さんが近い将来に死を迎えるだろうと予想される時期のことです。

終末期は病気や患者さんの状態によって、「急性型終末期」「亜急性型終末期」「慢性型終末期」の3つに大きく分けられます。
(出典:日本学術会議 臨床医学委員会終末期医療分科会「対外報告 終末期医療のあり方について-亜急性型の終末期について-」

急性型終末期

急性型終末期とは、救急医療などによって適切な治療を行っているにもかかわらず、患者さんの死が迫っていると判断される時期です。

急性型終末期の定義は、下記のいずれかに該当するケースとされています。

  • 脳死と判定された場合
  • 生命維持を機械に依存し、生命維持に必要な臓器の回復見込みがない場合
  • 選択できる治療法がなく、数時間もしくは数日以内の死亡が予測される場合
  • 積極的な治療の開始後に、回復不可能な病気の末期と判明した場合

急性型終末期の定義は治療者の視点で構成されており、いずれのケースも患者さんの死が近いことを示している点が特徴です。
(出典:日本学術会議 臨床医学委員会終末期医療分科会「対外報告 終末期医療のあり方について-亜急性型の終末期について-」

亜急性型終末期

亜急性型終末期とは、がんなどの治療が難しい病気の進行により、生命予後の予想とともに患者さんの死が近いと判断できる時期です。

亜急性型終末期はさまざまな定義がされており、代表的なものでは下記のケースが挙げられます。

  • がんの治療を放棄した時点から、患者さんが死亡するまでの期間
  • 病状の進行により、患者さんの生命予後が半年もしくは半年以内と考えられる時期

など

亜急性型終末期は、終末期の判断から患者さんの死亡までに一定の期間がある点が特徴です。
(出典:日本学術会議 臨床医学委員会終末期医療分科会「対外報告 終末期医療のあり方について-亜急性型の終末期について-」

慢性型終末期

慢性型終末期とは、最善の治療を行っても病状の好転や進行阻止が見込めず、近い将来における患者さんの死が避けられない状態となった時期です。

慢性型終末期と判断されるケースは主に、悪性腫瘍・脳卒中・呼吸不全・認知症といった高齢者の罹患が多い病気に集中しています。

高齢者の終末期は経過が多様で、余命の予測が困難です。高齢者が含まれることが多い慢性型終末期においても、患者さんの余命に関する具体的な期間は設定されていません。
(出典:日本学術会議 臨床医学委員会終末期医療分科会「対外報告 終末期医療のあり方について-亜急性型の終末期について-」

終末期の患者さんに見られる特徴

終末期の患者さんに見られる特徴

終末期の患者さんが死を受け入れるまでには、さまざまな感情が交錯します。終末期の患者さんの心理状態は、キューブラー・ロスによる5段階モデル(死の受容モデル)で示されています。

ただし、5つの心理段階は順番が入れ替わることもあれば行き来することもあり、すべての患者さんが同じ過程を辿るとは限りません。

5段階モデルの定義をもとに、終末期の患者さんに見られる特徴を理解しておきましょう。

否認

余命がわずかであると伝えられると、患者さんは事実を受け入れられずに否認します。頭では分かっていたとしても、心が追いつかない状態です。受け入れがたい事実からの自己防衛の手段といえます。

延命治療をあきらめなければならないという事実からの逃避や、周囲の声への反発が強くなることもあります。自分の認識と周囲の考えが一致せず、孤独感に苛まれるケースも少なくありません。

怒り

否認の段階がすぎると、次第に余命がわずかである事実を受け止められるようになります。しかし、次の段階では「なぜ自分が」「どうして自分だけが」と怒りの感情がわき上がります。

怒りの気持ちを家族にぶつける患者さんもいれば、医療関係者に皮肉を言う患者さんもいるでしょう。死が迫っている本人にしか分からない思いや感情であり、周囲は怒っている理由を理解できずに戸惑うこともあります。

取引

取引の段階では、患者さんは奇跡を願い、神仏にすがって死を先延ばししたいと考えます。信仰している神仏がない患者さんでも、死が迫ると何かにすがろうとするのが特徴です。

人助けや寄付など善い行いをして取引を試みることもあります。何かしらの罪悪感を抱いている患者さんの場合は、罪を償おうと考えることもあるでしょう。

抑うつ

奇跡が起こらないことを悟り、神仏にすがっても死を回避できないことを理解すると、諦めや絶望により気持ちが落ち込みます。現状を悲観して虚しさを感じることもあるでしょう。死期が近いことを、頭だけでなく心でも受け入れつつある段階です。

家族と別れることへの不安や悲しみは、気力を失うことにもつながります。神仏を否定的に考える患者さんも少なくありません。

受容

受容は、余命がわずかであることを受け入れて人生の終わりを諦観する最終段階です。否認・怒り・取引・抑うつなどで感情が揺れ動いた結果、事実を受け入れられる状態になります。

死は誰にでも訪れることであり、自然な流れであると認識します。「穏やかに過ごしたい」「疲れた」などの心理状態から、周囲や看護師への関心が薄れることもあるでしょう。否認や怒りの段階に比べて言葉数が少なくなるケースも多く見られます。

終末期医療とは?

終末期医療とは?

終末期医療(ターミナルケア)とは、終末期にある患者さんに単なる延命治療は行わず、QOL(Quality Of Life)を重視した医療を提供することです。患者さん本人・家族・医療チームの3者で綿密な話し合いを行い、基本的に患者さんの希望に合わせる形で適切な医療・ケアを選択します。
(出典:日本医師会 生命倫理懇談会「超高齢社会と終末期医療」

また、終末期医療とは性質が異なるものの、いくつかの類似したケアもあります。

以下では、終末期医療と類似している4つのケアを解説します。

緩和ケア

緩和ケアは、身体の痛みや心のつらさを和らげるためのケアです。特にがん患者さんの治療・療養において、緩和ケアの重要性は広く認識されています。

がんになると、病気や治療による身体の痛みだけではなく、将来への不安や「家族に迷惑をかけている」という心のつらさを経験する方も多くいます。がんを原因とする苦痛を和らげ、患者さんが前向きに治療を受けることでQOLの改善につなげることが、緩和ケアの目的です。

緩和ケアはがん治療の初期から行われる点が、終末期医療との違いです。
(出典:厚生労働省「緩和ケア」

看取りケア

看取りケアは、医師から余命の診断を受けたときに、患者さん本人や家族の希望によって行われるケアです。「看取り介護」とも呼ばれ、主に自宅や介護施設において、介護・介助を中心としたケアを実施します。

看取りケアの目的は、患者さんの苦痛をケアによって和らげ、尊厳を保った心穏やかな最期を迎えられるよう支援することです。

終末期医療のケアは医療行為を含むのに対し、看取りケアは日常生活のケアを主に行う点に違いがあります。

ホスピスケア

ホスピスケアは、死が間近に迫っている患者さんが最期まで自分らしく生きられるよう、患者さんのトータルペインを和らげるケアのことです。

ホスピスケアで行うケア内容は、患者さんが感じる身体の痛みや心のつらさを和らげるものであり、緩和ケアと大きな違いはありません。

ただし、「がんの診断時」からケアを始める緩和ケアに対して、ホスピスケアは「患者さんの死が迫っていると診断されたとき」からケアを提供する点に違いがあります。

エンドオブライフケア

エンドオブライフケアは、死について意識を持ち始めた患者さんが、人生の最期までQOLを保った生き方ができるように支援するケアです。患者さんが死を感じたとき・生命について大切な選択をするときのつらさに関わりを持ち、患者さんが最善な選択をできるように支援します。

エンドオブライフケアの特徴は、患者さんの診断名や健康状態、年齢などに関係なく提供される点です。

エンドオブライフケアは実際に死が迫っている患者さんのほか、死への不安を感じる多くの方も対象としている点に、終末期医療との違いがあります。

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終末期医療で行うケアの内容

終末期医療で行うケアの内容

終末期医療では患者さんの身体的・精神的苦痛を取り除くことで、QOLの向上を目指します。ケアは主に「身体的ケア」「精神的ケア」「社会的ケア」の3つに分けられ、それぞれで提供するケア内容やポイントは異なる点が特徴です。

以下では、終末期医療で行う3つのケアについて、具体的な内容を解説します。

身体的ケア

身体的ケアは、患者さんが感じる身体の痛みやつらさを緩和するケアです。主に下記のようなケアを行います。

  • 医療用麻薬や鎮痛剤の投薬
    終末期の患者さんは病気による痛みを感じやすくなります。モルヒネなどの医療用麻薬や鎮痛剤を投与し、患者さんの痛みを取り除くケアです。
  • 食事ができない方の栄養補給・水分補給の対応
    食事をとりにくくなった患者さんには、料理を食べやすいようにすり潰す、経管栄養による栄養補給を行うなど、工夫が必要です。
  • 身体の清拭
    患者さんが清潔に毎日を過ごせるよう、全身の清拭を行います。
  • 寝たきり状態の患者さんの体位変換
    寝たきり状態の患者さんは床ずれが出るおそれがあります。床ずれ防止のため、定期的な体位変換が必要です。

精神的ケア

精神的ケアは患者さんが感じる恐怖や心配を取り除き、平穏に過ごせるようにするケアです。主に下記のようなケア内容を行います。

  • 患者さんの話を傾聴する
    患者さんの話を傾聴して、感情を表に出せるよう手助けします。患者さん自身が病気や余命を受容しやすくなり、「何をしたいか」という希望も引き出せるようになるでしょう。
  • 趣味など楽しめる環境を用意する
    患者さんが残された時間を有意義に過ごせるよう、環境を整えることも大切です。趣味を楽しめる場を用意し、やり残したことの完遂を支援します。
  • 家族と過ごせる時間をつくる
    患者さんが家族に対して感じる心配を軽減できるよう、患者さんと家族が過ごせる時間をつくります。患者さんと家族のつながりを保つことは、残される家族のためにも必要なケアです。

社会的ケア

社会的ケアは、医療費による経済的な不安や遺産などの問題について、患者さんが感じる苦痛を和らげるケアです。社会的ケアでは主に下記のようなケアを提供します。

  • 医療ソーシャルワーカーによる経済的問題の解決支援
    患者さんや家族が抱える医療費負担に対し、医療ソーシャルワーカーが中心となって問題解決を支援します。関係機関との連携・調整をしながら、活用できる制度などの情報提供を行うことが、主なケア内容です。
  • 遺品整理や遺産相続のサポート
    家族間で遺品や遺産をめぐる争いが起こらないか不安な患者さんのために、遺品整理や遺産相続のサポートを行います。

終末期医療を受けられる場所にはどのような選択肢がある?

終末期医療を受けられる場所にはどのような選択肢がある?

終末期医療を受けられる場所には、主に「病院」「介護施設」「在宅」の3つの選択肢があります。

患者さんは選んだ場所で終末期を過ごしつつ、ケアを受けます。患者さんの状態や希望に合う場所を選択することが重要です。

3つの場所について、それぞれの特徴と選ぶメリットを解説します。

病院で終末期医療を受ける

病院で終末期医療を受ける場合、患者さんは主に緩和ケア病棟で過ごすことになります。緩和ケア病棟は患者さんが療養できる環境が整備されており、質の高いケアを提供できる施設です。

また、病棟内には医者や看護師がおり、患者さんの急変時にはすぐに医療関係者が駆けつけて対応してくれます。患者さんと家族が病状に心を遣う必要がなく、残された時間を安心して過ごせる点がメリットといえるでしょう。

しかし、緩和ケア病棟には入棟基準が設定されており、誰もが利用できるわけではありません。入院料や差額ベッド料もかかり、患者さんと家族に高額な費用負担がかかる可能性があります。

介護施設で終末期医療を受ける

終末期医療を提供する介護施設は、一部の特別養護老人ホームや介護老人保健施設です。施設内で終末期ケアについての共通理解があり、往診などのケアシステムが整っている介護施設において、終末期医療が提供されています。

介護施設で終末期医療を受けるメリットは、施設に入居して24時間体制でのケアを受けられる点です。食事・排泄・清拭を中心とした手厚いケアを受けられるため、終末期に家族が感じる負担を大きく軽減できます。

介護施設は病院よりも自由が利きやすく、患者さんの希望に合った終末期の過ごし方ができる点もメリットです。ほかの利用者さんや介護スタッフとのつながりも作りやすく、孤独を感じにくい環境といえます。

在宅で終末期医療を受ける

在宅での終末期医療は、住み慣れた家で最期の時間を過ごしたい患者さんに対し、可能な範囲でのケアを提供します。医師や看護師の定期的な訪問はあるものの、基本的には家族が主体となってケアを行うことが特徴です。

在宅で終末期医療を受けるメリットは、患者さんがリラックスできる環境が最初から整えられている点です。患者さんと家族の時間も充実でき、社会的なつながりを保ちながら毎日を過ごせます。

ただし、在宅では家族が慣れない介助を毎日行わなければならず、家族の負担が大きくなる点には注意しましょう。医療関係者はケア方法の指導や支援だけではなく、家族の精神面へのケアも行います。

終末期医療の課題

終末期医療の課題

日本は高齢化が進んでおり、終末期医療は今後さらに注目を集めると見られています。

しかし、終末期医療には現状でさまざまな課題があります。患者さんの希望に合った終末期医療の提供が難しいケースも少なくありません。

以下では、終末期医療の主な課題とそれぞれの解決策について説明します。

在宅での生活を希望する人が多い

終末期医療を在宅で受けたい、家族と過ごしたいと希望する患者さんは多くいます。

患者さんの希望を叶えることが一番であるものの、在宅での生活は下記の条件が必要であり、簡単には実現できません。

  • 家族の協力
    在宅での生活には家族の協力が不可欠です。家族にもそれぞれの暮らしや仕事があるため、協力を得るには患者さんと家族が十分に話し合いをして、関係者全員が納得する必要があります。
  • 医療機関との連携
    終末期医療は、診療や支援を行う医療機関との連携がなければ実施できません。医療機関が自宅の近くにあることはもちろん、土日や深夜にもサポートを得られるかが課題となります。
  • 看取りの知識
    在宅での終末期医療では、看取りも在宅で行います。在宅で看取りができる環境は整いつつあるものの、患者さんの家族は看取りに不安を感じているでしょう。看取りの知識を広く普及させ、家族が不安なく看取りできるようにしなければなりません。

本人の意思確認ができない

どのような終末期医療を行うかや、尊厳死の選択を尊重するためには、本人の意思確認が必要です。本人が元気なときに作成した「リビング・ウィル」で、事前の意思表示もできます。

しかし、患者さんのなかには意識が不明瞭な状態にある方や、リビング・ウィルの準備をしていない方もいます。患者さん本人の意思決定が基本であるものの、本人の意思確認をできないことが多い点が、終末期医療の大きな課題です。

本人の意思確認ができないときは、家族が患者さんの意思を推定できるか、できないかによって判断が分かれます。

家族が患者さんの意思を推定できる場合は、家族が推定した患者さんの意思を尊重して、終末期医療の方針を決めます。

対して、家族が患者さんの意思を推定できない場合には、家族と医療チームで十分に話し合うことが大切です。患者さんが大切にした考え・行動をもとに、患者さんにとって最善と考えられる方法を選択します。
(出典:厚生労働省「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」

医療倫理に抵触する

高齢化が進む近年の日本において、患者さんのQOLを重視する終末期医療の考え方は浸透しつつあります。

しかし、医療を提供する医療関係者にとっては、終末期医療が医療倫理に抵触すると感じられるケースがあります。終末期の患者さんが尊厳死を選択すれば、延命措置よりも終末期のケアを優先しなければならないためです。

終末期医療に携わる医療関係者は、所属する医療機関の終末期医療ガイドラインを確認しましょう。終末期医療ガイドラインは終末期における医療関係者の行動指標であり、どのような場面で医療を提供するか、どのような意思を尊重すればよいかが分かります。

終末期医療での看護師の役割

終末期医療での看護師の役割

終末期医療で看護師に求められる役割は、主に下記の4つです。

  • 疾患や症状についての正確な知識・スキルを持つ
    終末期の患者さんに対して、看護師は身近な医療職としてケアを提供します。ケアを通して患者さんが感じる苦痛を和らげるには、疾患や症状についての正確な知識・スキルが必要です。
  • 患者さんの身体的ケア・精神的ケアを行う
    終末期医療の身体的ケア・精神的ケアは、看護師が中心となって提供するケアです。看護師は患者さんの希望・状態に合わせた看護計画の立案と、ケアの提供をして、患者さんが残された時間を心穏やかに過ごせるよう努めます。
  • 家族への精神的ケアや支援を行う
    看護師は家族とコミュニケーションを取り、家族が感じている不安や心配に寄り添います。面会時間の調整や緊急時の連絡、在宅でのケアを行うときの指導・支援も看護師の役割です。
  • 介護職などの他職種や関係機関と連携する
    終末期医療では医師・看護師のほかに、介護士・理学療法士・管理栄養士・医療ソーシャルワーカーなど多くの職種が関わりを持ちます。患者さんのQOLを重視したケアを実現するため、看護師は他職種や関係機関との連携を行うことが大切です。

看護師は医療・看護の知識を活かして患者さんと家族へのケアを行い、職種間の連携・調整を行うなど、終末期医療における中心的な役割を担います。

終末期医療に携わる看護師に適した資格

終末期医療に携わる看護師に適した資格

「看取りケアパートナー」「終末期ケア専門士」は、終末期医療に関わる代表的な資格です。ほかにも、直接関係はなくても終末期の患者さんのケアに役立つ資格はさまざまあります。

緩和ケア病棟で働く看護師の方や終末期の患者さんに寄り添った医療を提供したいと考えている看護師の方は、どのような資格が役立つのかチェックしておきましょう。

看取りケアパートナー

看取りケアパートナーは、一般社団法人みんなのプライドが認定する民間資格です。学べる主な内容は、次の通りです。

  • 看取りに必要な基礎知識
  • 看取りの心理的な支援方法
  • 社会保障制度や介護保険サービスの利用の流れ

終末期の症状や看取りに関する知識だけでなく、各種制度や手続きに関する知識も幅広く学べます。看取りケアパートナーの概要と取得方法は、下記の通りです。

受講資格 なし
取得方法 資格取得講座を受講して認定試験を受ける
取得費用 一括払い:29,000円/分割払い:2,980円×10回

教材で学習を行い、受講期間内に自宅で認定試験を受けます。合格基準は100点満点中70点以上です。受講開始から約3か月で資格を取得する方が多く見られます。受講開始から6か月までは受講サポートを受けられるため、自分のペースで学習を続けられます。
(出典:「一般社団法人みんなのプライド」
(出典:生涯学習のユーキャン「看取りケアパートナー 講座」

終末期ケア専門士

終末期ケア専門士は、一般社団法人日本終末期ケア協会が認定する民間資格です。終末期ケア専門士に求められる知識は、下記の通りです。

  • 終末期ケアの基礎知識
  • 疾患別終末期ケアの知識
  • 看取りに必要な基礎知識 など

終末期の患者さんや家族をサポートするために必要な知識を身につけることで、根拠にもとづいた終末期ケアを実施できるようになります。看護師だけでなく緩和ケアチームに加わる管理栄養士・作業療法士・理学療法士などにも需要があります。

終末期ケア専門士の概要と取得方法は、下記の通りです。

受講資格 規定の免許があり実務経験年数を満たす者
取得方法 パソコン試験(CBT試験)に合格後、登録申請を行う
取得費用 受験料:11,000円
認定登録料:11,000円
更新料:無料または5,500円(更新期間5年)

看護師が受験する場合、実務経験が2年以上必要です。受験申し込みを行い、受験資格該当審査を通過できれば試験を受けられます。合格基準は明記されていないものの、合格率は65%前後で受験者の半数以上が合格しています。
(出典:一般社団法人日本終末期ケア協会「臨床ケアにおけるスペシャリスト「終末期ケア専門士」」

家族ケア専門士

家族ケア専門士は、一般社団法人日本終末期ケア協会が認定する新しい民間資格です。第1回認定試験は2025年6月に実施されます。学べる主な内容は、下記の通りです。

  • 家族の在り方に関する知識
  • 疾病別家族ケアの知識 など

家族が患者さんと関わるうえで知っておくべき知識や、よりよい家族ケアの方法を学べます。家族観を捉えなおすことで、サポートする家族を尊重した接し方や声掛けができるようになります。

家族ケア専門士の概要と取得方法は、下記の通りです。

受講資格 規定の免許があり実務経験年数を満たす者
取得方法 パソコン試験(CBT試験)に合格後、登録申請を行う
取得費用 受験料:11,000円
認定登録料:11,000円
更新料:ココリンク非加入者のみ作業手数料5,500円

看護師が受験する場合、実務経験が2年以上必要です。更新期間は5年ごとで、ココリンク加入者であれば更新費用はかかりません。
(出典:一般社団法人日本終末期ケア協会「家族ケア専門士とは」

メンタルケア心理士®

メンタルケア心理士®は、医療福祉情報実務能力協会が認定する民間資格です。学べる主な内容は、下記の通りです。

  • 生化学と心理学の基礎知識
  • カウンセリングに関する基礎知識と技法 など

患者さんや家族の悩みに寄り添い、終末期の患者さんの心理状態を理解するために役立つ資格といえます。医療現場だけでなく、介護職や教育、サービス業などさまざまな現場で必要とされています。

メンタルケア心理士®の概要と取得方法は、下記の通りです。

認定申請資格

こころ検定2級に合格しており、下記のいずれかに該当する者

  • メンタルケア心理士®教育課程を修了している
  • 認定心理士の資格を保有している ・産業カウンセラーの資格を保有している
  • メンタルケア学術学会が定める「学士・修士申請規定」を満たし、文部科学省の定める4年制大学心理学部、学科または心理隣接学部、学科卒業者で証明できる
取得方法 CBT試験でこころ検定2級(メンタルケア心理士資格申請級)に合格後、登録申請を行う
取得費用 資格登録料:5,600円

メンタルケア心理士®の資格を取得するには、こころ検定2級の合格が必須条件です。学習領域は医学に関わる内容が多く、看護師の方が取得を目指しやすい資格といえるでしょう。
(出典:LCM メンタルケア学術学会「学会認定資格/メンタルケア心理士(R)」

終末期医療に携わる看護師が関連する資格を取得するメリット

終末期医療に携わる看護師が関連する資格を取得するメリット

終末期の患者さんをケアする看護師が関連する資格を取得することで、以下のメリットが得られます。

  • 終末期の患者さんに適切なケアができる
  • 臨床ケアの専門性を高められる
  • 患者さんの家族に寄り添ったサポートができる

終末期の状態や余命期間は患者さんによって異なります。専門的な知識を身につけることで、患者さんと家族にとって適切な医療ケアを提供しやすくなるでしょう。患者さんと家族に安心感を与えられることもメリットの1つといえます。

知識を活かして経験を積むことで、看護師としてのキャリアアップにもつながります。

まとめ

終末期医療とは、死を避けられなくなった患者さんに対して、延命措置ではなく患者さんの希望に合ったケアを行うことです。在宅で終末期医療を受けることを希望する患者さんも多くいるものの、家族の協力や医療機関との連携が必要です。病院で終末期医療を行う際は、看護師は患者さんの身体的・精神的ケアをしながら医療力としての知識を活かすことになります。

終末期医療に関わりたい方は、マイナビ看護師でターミナルケアを実施している病院の求人をぜひ探してみてください。看護業界に精通したキャリアアドバイザーが希望に沿った求人をご紹介することも可能です。

※当記事は2024年8月時点の情報をもとに作成しています

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