「臨床心理士とはどんな資格? 」「臨床心理士になるにはどうしたらいいの? 」など、臨床心理士資格に関して詳しく知らない方も多いでしょう。臨床心理士は、日本臨床心理士資格認定協会が認定する心理学に関する民間資格です。
この記事では、臨床心理士資格の取得方法や難易度、更新制度について解説。試験の概要もまとめているので、資格取得をめざす方はぜひ参考にしてください。
臨床心理士とは
臨床心理士とは、臨床心理学の知識や技術を用いて、心理的な問題にアプローチする専門家のことです。
臨床心理士は日本臨床心理士資格認定協会が認定する民間資格で、資格認定は1988年にスタートしました。2022年4月1日時点では、39,576名が臨床心理士として認定されています。
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臨床心理士になるには

臨床心理士になるには、臨床心理士試験に合格する必要があります。
ここでは、臨床心理士試験の受験資格や概要について解説しているので、受験をする方はしっかりと内容を把握しておきましょう。
臨床心理士試験の受験資格
臨床心理士試験は、以下7つのうちいずれかの受験資格基準に該当し、証明資料を提出できる人に受験資格が与えられます。臨床心理士試験を受験する予定がある方は、自身が受験資格を得られるのかしっかりと確認しておきましょう。
- 日本臨床心理士資格認定協会が認定する第1種指定大学院を修了し、受験資格取得のための所定条件を充足している
- 日本臨床心理士資格認定協会が認定する第1種指定大学院を修了し、修了後1年以上の心理臨床経験を含む受験資格取得のための所定条件を充足している
- 日本臨床心理士資格認定協会が認定する第2種指定大学院を修了し、修了後1年以上の心理臨床経験を含む受験資格取得のための所定条件を充足している
- 日本臨床心理士資格認定協会が認定する第2種指定大学院を修了し、修了後2年以上の心理臨床経験を含む受験資格取得のための所定条件を充足している
- 学校教育法に基づく大学院で、臨床心理学またはそれに準ずる心理臨床に関する分野を専攻する専門職学位課程を修了している
- 諸外国で上記①または③いずれかと同等以上の教育歴および日本国内における2年以上の心理臨床経験を有している
- 医師免許取得者で、取得後2年以上の心理臨床経験を有している
なお、②③④⑥⑦に記載のある「心理臨床経験」とは、教育相談機関や医療施設、心理相談機関などで、心理相談員やカウンセラーとしての勤務経験を指します。給与を得て働くことを原則としているため、ボランティアや研修員などは認められません。
臨床心理士試験の概要
臨床心理士試験は例年7~8月に受験申込が行われ、一次試験の筆記試験は10月中旬に、二次試験の口述面接試験は11月中旬に実施されています。試験地は一次試験・二次試験ともに東京で、合格発表は12月下旬頃です。
一次試験(筆記)の内容
一次試験は、マークシート形式の問題と論文形式の問題があります。
<マークシート形式>
臨床心理士として理解しておくべき専門基礎知識の問題が中心です。
臨床心理査定や臨床心理面接、臨床心理的地域援助、それらの研究調査に関する基本的な専門知識などが問われます。また、臨床心理士に関する倫理や法律に関する基礎知識のほか、臨床心理士としての姿勢や態度に関する問題も出題されます。
問題数は100問で、試験時間は2時間30分です。
<論文形式>
心理臨床に関する1つのテーマについて、1,001字~1,200字の範囲内で論文を書きます。
試験時間は1時間30分です。
二次試験(面接)の内容
二次試験は、2名の面接官による口述面接試験です。
専門知識や技術の習得度を確認されるのはもちろん、臨床心理士としての基本的な姿勢や態度を見られます。また、臨床心理士として欠かせないコミュニケーション能力もチェックされます。
試験合格後は交付・登録手続きが必要
試験に合格しただけでは、「臨床心理士」として認められません。
合格通知を受け取ったら、所定期日までに資格認定証書の交付手続きが必要です。交付手続きが完了すると、日本臨床心理士資格認定協会から「資格認定証書」と「資格登録証明書(IDカード)」が発行されます。
臨床心理士試験の難易度

臨床心理士試験は簡単な試験とはいえません。過去5年における臨床心理士試験の受験者数・合格者数・合格率は、以下のとおりです。
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
2017年 | 2,427人 | 1,590人 | 65.5% |
2018年 | 2,214人 | 1,408人 | 63.6% |
2019年 | 2,133人 | 1,337人 | 62.7% |
2020年 | 1,789人 | 1,148人 | 64.2% |
2021年 | 1,804人 | 1,179人 | 65.4% |
過去5年を見ると、臨床心理士試験の合格率は65%前後で推移しています。
専門性の高い試験のため、しっかりと対策をしておかないと合格は難しいでしょう。一次試験の筆記だけでなく、二次試験の面接対策も必要です。
参照元:日本臨床心理士資格認定協会「「臨床心理士」資格取得者の推移」
臨床心理士には資格更新制度がある

臨床心理士は専門的資質の維持・向上のために自己研修が求められていることもあり、5年ごとの資格更新が義務付けられています。資格更新をするには、所定の要件を実施して得られるポイントが必要です。
ポイントを得られる研修会や活動の内容
臨床心理士資格の更新の際には、下記の①~⑥の教育研修機会に①②のいずれかを含めた3項目以上にわたって参加し、計15ポイントを得る必要があります。
①日本臨床心理士資格認定協会が主催する研修
<臨床心理士研修会>
講師参加 | 4ポイント |
発表者 | 4ポイント |
受講者 | 2ポイント |
<心の健康会議>
シンポジスト | 3ポイント |
指定討論者 | 3ポイント |
司会者 | 3ポイント |
参加者 | 2ポイント |
②一般社団法人日本臨床心理士会もしくは地区または都道府県単位の当該臨床心理士回が主催して行う研修会など
<ワークショップ型研修会>
講師参加 | 4ポイント |
発表者 | 4ポイント |
受講者 | 2ポイント |
<定例型研修会>
年6回以上開催の研修会へ1年間の継続参加者 | 4ポイント |
③一般社団法人日本臨床心理士会が認める関連学会での諸活動
<年次大会>
口頭発表 | 4ポイント |
シンポジスト | 3ポイント |
指定討論者 | 3ポイント |
司会者 | 3ポイント |
参加者 | 2ポイント |
<ワークショップ型研修会>
講師参加 | 4ポイント |
発表者 | 4ポイント |
受講者 | 2ポイント |
<定例型研修会>
年6回以上開催の研修会へ1年間の継続参加者 | 4ポイント |
<研修誌、機関誌への研究論文の発表>
原著 | 10ポイント |
小論文 | 6ポイント |
④一般社団法人日本臨床心理士会が認める臨床心理学に関する研修会
<ワークショップ型研修会>
講師参加 | 4ポイント |
発表者 | 4ポイント |
受講者 | 2ポイント |
<定例型研修会>
年6回以上開催の研修会へ1年間の継続参加者 | 4ポイント |
⑤一般社団法人日本臨床心理士会が認めるスーパーヴァイジー経験
スーパーヴィジョンの開始および終了時に 所定の報告書を一般社団法人日本臨床心理士会の事務局に提出する |
3ポイント |
⑥一般社団法人日本臨床心理士会が認める臨床心理学関係の著書の出版
原著に準ずるもの | 12ポイント |
その他 | 10ポイント |
論文の発表や著書の出版などは高いポイントが得られます。一方で、研修に受講者として参加するだけでは2ポイントしか得られないため、資格更新のためには積極的に活動する必要があるといえるでしょう。
参照元:日本臨床心理士資格認定協会「臨床心理士資格更新制度」
臨床心理士に必要な5つの素質

臨床心理士は、教育分野・福祉分野・産業分野・司法分野などさまざまな分野で活躍可能です。どの分野で働く場合でも、心の専門家として人間的資質や倫理観が問われます。実際に日本臨床心理士資格認定協会では、臨床心理士の倫理綱領を定めて具体的な倫理観やポイントを述べています。
ここでは、日本臨床心理士資格認定協会が定めている倫理綱領をもとに、臨床心理士に必要な素質を詳しく紹介します。臨床心理士として働くならほとんどの職場で求められるようなスキルでもあるため、臨床心理士を目指している方は確認しておきましょう。
参照元:公益財団法人 日本臨床心理士資格認定協会「臨床心理士の職業倫理」
1.責任感があること
日本臨床心理士資格認定協会が定める倫理綱領の第1条には、「基本的倫理(責任)」が挙げられています。
基本的倫理(責任)とは、いわゆる「臨床心理士は、関わる人々の基本的人権を尊重し、信条や思想で差別をすること・自らの価値観を矯正することはしない」という義務や、「自らの知識や能力について十分に自覚したうえで、専門家としての活動を行う」という責務を示しています。
臨床心理士は、単純に幅広い専門知識を有することよりも、臨床心理士としての強い責任感をもつことのほうが大切といえるでしょう。
2.向上心があること
臨床心理士に必要な素質には、向上心も必要です。これは、日本臨床心理士資格認定協会が定める倫理綱領の第5条「職能的資質の向上と自覚」としても示されています。
時代の流れや環境の変化にともない、人々が抱える心の問題の傾向も変わっていきます。クライアントの幅広い悩みや価値観に対応できる臨床心理士になるには、資格取得後も常に最新かつ専門的な知識・技術を身につけ、専門家としての資質向上に努めなければなりません。
向上心を保つためには、臨床心理士向けの研修や学会に積極的に参加するなどして、最新の知識を取り入れようとする勤勉性が欠かせないといえるでしょう。
3.秘密を守れること
日本臨床心理士資格認定協会が定める倫理綱領の第2条では、「秘密保持」が記載されています。
臨床心理士は、クライアントからの相談を受けるうえで、個人に関するさまざまな情報を得ます。臨床心理士とクライアントとの関係は、あくまで臨床心理学にもとづくケアを行う専門家と心のケアを求める相談者です。
社会的契約にもとづく関係性であることを自覚したうえで、その関係を適切に維持するためにも、業務上知り得た個人情報や秘密をクライアントの同意なしで第三者に開示してはなりません。
臨床心理士は、クライアントの秘密を保護する責任があります。
4.他職と連携を取れること
臨床心理士は、他職と連携を取りながら業務を進める場面が多くあります。たとえば、医療・保健分野で働く臨床心理士の場合、チーム医療の一員となって主治医や看護師と日常的に緊密な連携を取るのが基本です。
患者さんやクライアントを多方面からケアするために、多職種連携は欠かせません。そのため、他職と問題なく連携を取れる臨床心理士は非常に重宝される存在となるでしょう。
また、他職と連携を取るためには、自ずとコミュニケーション能力が必要となります。連携力だけに着目せず、コミュニケーションスキルもしっかり磨いておくとよいでしょう。
5.倫理観があること
臨床心理士には、倫理観も求められます。倫理観とは、人として遵守すべき善悪の判断や価値観、物事の捉え方のことです。最低限の倫理は法律としても定められていますが、心理職として活躍するのであれば、それ以上の倫理観をもつことが重要といえます。
基本的な倫理観は、前述の通り「関わる人々の基本的人権を尊重し、信条や思想で差別をすること・自らの価値観を矯正することはしない」ことなどが挙げられます。加えて、ここまで紹介した「専門家としての資質向上に常に努める・相談業務上で知り得た個人的な情報を外部に漏らさない」といった部分も、臨床心理士に必要な倫理観として含まれます。
「人として守るべき普遍的な基準」を超え、「人として臨床心理士として守るべき考え方」をもった臨床心理士は、幅広い分野で活躍できるでしょう。
臨床心理士の資格に関する疑問

ここでは、臨床心理士の資格に関する疑問をQ&A形式で回答します。臨床心理士をめざす方は、しっかりと疑問を解消しておきましょう。
Q.臨床心理士は国家資格?
臨床心理士は日本臨床心理士資格認定協会が認定する民間資格であり、国家資格ではありません。
心理系の国家資格は公認心理師のみです。公認心理師は2018年9月に第1回目の試験が行われ、年々資格取得者が増えています。
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Q.臨床心理士になるには何年かかる?
高卒の人が臨床心理士をめざす場合、大学の4年間と大学院の2年間で最低でも6年かかります。第2種指定大学院を修了した場合は、さらに心理臨床経験が1年以上必要です。取得までに時間がかかるほか、試験も簡単ではないため、根気強く勉強する必要があります。
Q.臨床心理士の資格は独学で取得できる?
臨床心理士の資格認定試験は、指定大学院または専門職大学院を修了したのちに受験できるため、独学だけで取得することはできません。
独学で心理学の資格を得たいという方は、独学で取得できる心理士資格の取得を検討してみると良いでしょう。
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まとめ
臨床心理士は日本臨床心理士資格認定協会が認定する民間資格です。資格認定がスタートした1988年から約35年ほどの歴史があり、心理カウンセラーをしている方が主に保有している資格といっても過言ではないでしょう。看護師のなかにも、臨床心理士資格を有している人はたくさんいます。
臨床心理士の資格を取得するには、大学院を修了し、資格試験を受けて合格しなければなりません。試験の合格率は例年65%前後と簡単ではないため、しっかりと試験対策をする必要があります。
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