臨床心理士は、心理療法により人々の心の健康をサポートする心理専門職の1つです。患者さんの成長や回復を支援できることに、大きなやりがいを感じる臨床心理士は少なくありません。医療系職種のなかでも、心理学やメンタルケアに興味がある方は、臨床心理士を目指してみてはいかがでしょうか。
当記事では、臨床心理士の概要・仕事内容や就職先、臨床心理士資格の難易度・取得方法から将来性や求められる資質までを詳しく解説します。
臨床心理士とは? 公認心理師・心理カウンセラーとの違いも
臨床心理士とは、公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会の認定を受けた心理専門職です。心理的アプローチにより、患者さんの悩みや問題を解決へ導きます。1988年から検定試験が実施されており、2021年4月1日時点で38,397人が臨床心理士として認定されています。
(出典:公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会「臨床心理士とは」)
下記は、厚生労働省による臨床心理士の定義に関する引用です。
臨床心理士とは、臨床心理学にもとづく知識や技術を用いて、人間の“こころ”の問題にアプローチする“心の専門家”である。公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会(昭和 63 年設立。以下、「認定協会」という。)が資格認定を行っている。
(引用:厚生労働省「臨床心理士について」)
臨床心理士と同じ心理系資格の1つに、「公認心理師」があります。公認心理師は、2017年に施行された「公認心理師法」にもとづく、心理職のなかで唯一の国家資格です。臨床心理士との業務内容に大きな違いはないものの、公認心理師の業務には心の健康に関する教育・情報提供を行うことなども含まれます。
(出典:e-Gov法令検索「公認心理師法」)
また、「心理カウンセラー」は患者さんの相談に応じる職業全般を指す言葉で、必要な資格がないため、個人により能力が大きく異なります。心理カウンセラーとして本格的に活動したい場合は、社会的評価の高い臨床心理士もしくは公認心理師の資格を取得することがおすすめです。
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臨床心理士の仕事内容
臨床心理士の仕事内容は、精神疾患を特定して投薬治療を試みる精神科医とはアプローチが異なります。臨床心理士の仕事は、心理学の専門的技術・知識を活かして患者さんの心の問題を解決に導くものであり、主な業務区分は、以下で紹介する4つに分けられます。
臨床心理査定(心理アセスメント)
臨床心理査定とは、心理テストや面接を通して患者さんの主訴・個性・背景を把握し、総合的判断で課題を見極め、自己理解及び問題解決を支援することです。患者さんの話を受容的な態度で聴きつつ、問題を客観的に判断するための冷静な対応が必要となります。
下記は、臨床心理査定に用いられる主な3つの手法です。
- 観察法…患者さんの行動や発言をもとに、情報収集・分析を行う方法
- 面接法…会話の中で患者さんの理解・分析を行う方法
- 検査法…質問票(心理テスト)の回答から分析を行う方法
状況に応じて知能検査や発達検査などを実施し、他職種の専門家とともに検討するケースもあります。
臨床心理面接
臨床心理面接とは、患者さんと個別に面談を行い、臨床心理学的方法を用いて問題解決を援助することです。面接時間は1時間程度で、面談の回数などは患者さんの状況や心理療法により異なります。
下記は、臨床心理面接で用いられる臨床心理学的方法の一例です。
- 来談者中心療法…患者さんの話を聞きながら問題を見立てる方法
- 認知行動療法…考え方や行動に変化を与え、ストレスを軽減する方法
- 家族療法…問題が起きている本人とその家族を対象として支援を行う方法
- 集団療法…同じ症状・境遇を持つ複数人らが、自分の経験を語りながら成長へつなげる方法
(出典:一般社団法人日本臨床心理士会「面接で行う相談・支援方法」)
臨床心理面接は臨床心理士の中核的な業務であり、高度な判断力や実行力を要します。臨床心理士により採用する手法は異なるものの、どのようなケースでも主観的にならず、患者さん一人ひとりにふさわしい選択をすることが大切です。
臨床心理的地域援助
患者さんが抱える問題によっては、了承を得たうえで所属するコミュニティや医療機関へ働きかけ、多方面からのアプローチにより解決を図ることもあります。たとえば、患者さんが子どもであれば、家族、教師、教育委員会、地域の福祉課などへ協力を仰ぐことが考えられます。
また、特定の患者さんに限定せず、地域やコミュニティと協力し、地域社会の心の健康を広く守ることも臨床心理士の役目です。行政・医療機関・企業・教育機関などと連携し、地域住民のさまざまな悩みに応じます。予防や健康推進のために心の健康に関する啓蒙活動を行うことや、災害時に被災者のメンタルケアを行うことも地域援助に含まれます。
調査・研究
臨床心理士としての専門性を高め、より有効性の高い手法を見出すためには、研究業務が必須です。活動で得た知識や見解を明らかにすることを目的とした、論理的な調査・研究活動も求められます。時代とともに対人関係や人々が抱える問題は変化するため、臨床心理学では常に探求心を持って学ぶことが重要です。
研究結果を学会や講演会、論文などで発表することもあります。研究発表活動は自らの知見を広めるだけでなく、他職種や一般住民の理解を促し、より健康的な社会を築くためにも有効的です。
臨床心理士の就職先・活躍の場
近年はメンタルヘルスが重要視されていることから、臨床心理士の認知度が高まり活躍の場が増えています。また、臨床心理士の技術・知識は多方面で応用が利くため、さまざまな場面で活躍できるでしょう。
臨床心理士の働く場所は、大きく分けて5つあります。勤務場所により、対象者や業務内容が異なるため、自分の希望に応じた職場を選択しましょう。
医療・保健分野
医療・保健分野といっても、勤務先により業務内容や対象者が大きく異なります。医療分野では、心療内科・精神科・小児科などに配属され、医師や看護師との連携を取りつつ、病気や事故の治療の一環として精神的フォローに応じます。患者の家族の心理相談を受けることや、退院後の生活について助言をすることもあるでしょう。
保健分野では、引きこもり・いじめ・各種依存症へのフォローや家族相談といった、日常的なメンタルケアや予防改善支援が中心となります。 下記は、医療・保健分野における臨床心理士の主な勤務先です。
- 精神病院
- 総合病院
- 診療所(クリニック)
- 保健所
- 精神保健福祉センター
- リハビリテーションセンター
(出典:一般社団法人日本臨床心理士会「臨床心理士の活動の場」)
臨床心理士は、病院では職員として、保健所などの公的機関では公務員として勤務することになります。
教育分野
スクールカウンセラーや教育相談員として、生徒や教職員の相談に応じる臨床心理士もいます。スクールカウンセラーの主な業務は、生徒や教職員との面接相談やコンサルテーション、教職員や保護者へ向けた講習などです。
生徒の保護者と面談の場を設けることや、生徒と教職員の間を取り持つ役目を担うこともあります。学校という集団の中では、生徒だけでなく教職員や保護者もフラストレーションを抱えやすいため、あらゆる方面への気配りや柔軟な対応が必要です。
下記は、教育分野における臨床心理士の主な勤務先です。
- 教育委員会
- 幼稚園、小学校、中学校、高等学校
- 教育センター
(出典:一般社団法人日本臨床心理士会「臨床心理士の活動の場」)
教育分野で働く場合は、指導者としての資質はもちろん、生徒と信頼関係を築くための包容力や忍耐力も必要となるでしょう。
福祉分野
福祉分野では、主に子ども・女性・障がい者・高齢者へ対して心理的支援を行います。福祉分野における臨床心理士の仕事内容は、虐待やDVに対する心理的支援・認知症介護者や障がい者へのメンタルケア・家族へのサポートなどです。臨床心理学の知識だけでなく、福祉分野の知識や、対象者の傾向に応じた知見も必要となるでしょう。
下記は、福祉分野における臨床心理士の主な勤務先です。
- 児童相談所
- 児童福祉施設
- 障がい者作業所
- 発達障害支援施設
- 女性相談センター
- 母子生活支援施設
- 養護老人ホーム
- 老人福祉施設
(出典:一般社団法人日本臨床心理士会「臨床心理士の活動の場」)
福祉分野では複雑な精神状態や人間関係を抱える方も多いため、本人や周囲の人々の感情を汲み取りつつ、臨床心理士としての専門的な対応が望まれます。
労働・産業分野
労働・産業分野の臨床心理士は、一般企業の社員として勤め、従業員の精神面をサポートします。近年では労働環境改善のため臨床心理士を配置する企業が増えており、厚生労働省でも事業のメンタルヘルス対策として企業内相談窓口の設置を呼びかけています。
(出典:厚生労働省 こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「メンタルヘルスに関する社内相談窓口設置のポイント」)
労働・産業分野で働く臨床心理士の主な仕事内容は、従業員のカウンセリングや相談対応、休職者及び復帰者へのフォロー、メンタルヘルスチェックなどです。産業医や保健師と連携を取りつつ、病気の早期発見や予防に努めます。また、就職希望者の相談に応じ、就職支援を行うこともあります。
下記は、労働・産業分野における臨床心理士の主な勤務先です。
- 企業内相談室
- 企業内健康管理センター
- 公共職業安定所(ハローワーク)
- 障害者職業センター
(出典:一般社団法人日本臨床心理士会「臨床心理士の活動の場」)
企業で働く際は、管理職や外部と連絡を取り合うこともあるため、一般的なビジネスマナーも必要となるでしょう。
司法・矯正分野
司法・矯正分野における臨床心理士の仕事内容は、非行・犯罪へのフォローアップ、離婚訴訟での相談対応、受刑者へのカウンセリングや集団療法、精神鑑定などです。
臨床心理士の判断が鑑定者の命運に関わる可能性もあるため、慎重かつ正確な判断が求められます。また、裁判員や、被害者とその家族への心理的支援も行います。
下記は、司法・矯正分野における臨床心理士の主な勤務先です。
- 家庭裁判所
- 少年院
- 少年鑑別所
- 保護観察所
- 刑務所
- 拘置所
- 警視庁
- 警察関係機関
司法・矯正分野の求人数は多くないとはいえ、心理的支援が求められる分野であるため、一定の需要が見込まれるでしょう。
臨床心理士の働き方
臨床心理士の働き方は、職場によって異なります。
下記は、メンタルクリニックの現場で働く臨床心理士の1日の流れの一例です。
1 | 面談予約の確認 |
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出勤後、当日の面談予約を確認します。患者さんの状況によっては医師との連携・情報共有も必要です。 |
2 | 面談の準備 |
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予約されている面談の前に、面談記録などで前回までの内容を確認します。 |
3 | 面談の実施 |
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相談室で患者さんと面談を実施します。必要に応じて心理検査を行うケースもあります。 |
4 | 面談記録の作成・共有 |
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患者さんに行った面談の内容から面談記録を作成します。面談記録の詳細は医師と共有し、今後のカウンセリングについても協議します。 |
また、患者さんからの電話・メール相談への対応なども臨床心理士の仕事です。そのほか、書類整理などの事務仕事や翌日の準備も行って退勤となります。
出勤形態・休日は?
臨床心理士の出勤形態や休日は、職場ごとに異なります。ここでは出勤形態・休日の例を確認しましょう。
- 出勤形態
臨床心理士の出勤形態は、常勤・非常勤で大きく異なります。常勤の臨床心理士は9~18時勤務の実働8時間など、所定の勤務時間で働く点が特徴です。勤務時間は施設の営業時間に合わせるため、勤務先が病院や入所型施設の場合は夜勤があるケースもあります。
非常勤の臨床心理士は、出勤時間の自由が比較的利きやすい点が特徴です。週3日・1日あたり4時間勤務や、日中のみ勤務など、自分に合った出勤形態で働けます。
- 休日
休日についても、施設の休業日に合わせて取ることが基本です。土日祝が休みになる学校や企業では、臨床心理士も土日祝に休日を取ります。一方で、定休日がない職場ではスタッフが交代で休日を取ります。
臨床心理士になるには?
臨床心理士になるには、公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会が実施する臨床心理士試験に合格し、臨床心理士資格の認定を受ける必要があります。
臨床心理士試験の受験資格を得るためには、4年制大学卒業後、指定大学院を修了する方法が一般的です。下記は、臨床心理士の受験資格取得までの代表的なルートです。
- 第一種指定大学院を修了する
- 第二種指定大学院を修了し、1年以上の実務経験を積む
- 専門職大学院を修了する(一次試験が一部免除)
(出典:公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会「臨床心理士資格認定事業」)
下記に当てはまる場合も、臨床心理士資格試験の受験資格を得られます。
- 外国で指定大学院と同等の教育歴を持ち、日本国内で2年以上の心理臨床経験がある
- 医師免許取得者で、免許取得後に2年以上の心理臨床経験がある
(出典:公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会「臨床心理士資格認定事業」)
また、臨床心理士資格は取得後に5年ごとの更新が義務付けられています。資格更新のためには、資格取得後の5年間でポイントとして判定される研修会・学会・諸活動に参加し、計15ポイント以上の取得が必要です。
臨床心理士試験の概要
臨床心理士試験は年1回実施されています。令和4年度の資格審査スケジュールは下記の通りです。
資格審査申請書類請求期間 | 令和4年7月4日~令和4年8月12日 |
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受験申込受付期間 | 令和4年7月5日~令和4年8月31日(当日消印有効) |
筆記試験(一次試験) | 令和4年10月15日(土) 東京ビッグサイト(東京都江東区有明) |
口述面接試験(二次試験) | 令和4年11月12日(土)、13日(日)、14日(月) 東京国際フォーラム(東京都千代田区丸の内) |
合格発表 | 令和4年12月下旬予定 |
資格審査スケジュールは年度によって異なるケースがあるため、受験する方はあらかじめ公式サイトでスケジュールを確認しましょう。
臨床心理士試験の筆記試験(一次試験)は、マークシートによる多肢選択方式試験と、論文記述試験の2種類が行われます。口述面接試験(二次試験)では自己PRや受験動機を中心に、臨床心理士としての適性を見る質問が多い傾向です。
臨床心理士試験の難易度
近年における臨床心理士試験の合格率は、下記の通りに推移しています。
年度 | 受験者数(人) | 合格者数(人) | 合格率(%) |
---|---|---|---|
H29 | 2,427 | 1,590 (24) | 65.5 |
H30 | 2,214 | 1,408 (9) | 63.6 |
R1 | 2,133 | 1,337 (6) | 62.7 |
R2 | 1,789 | 1,148 (4) | 64.2 |
R3 | 1,804 | 1,179 (9) | 65.4 |
(引用:公益財団法人 日本臨床心理士資格認定協会「「臨床心理士」資格取得者の推移」)
おおむね64%前後の合格率となっており、受験者10人のうち約6人が合格できる難易度です。
難関の資格試験が多いなかで、合格率が64%前後の臨床心理士試験は難易度が極端に高いわけではありません。しっかりと試験勉強・対策をして臨めば、十分に合格が狙えるでしょう。
臨床心理士の平均年収
臨床心理士資格は民間資格であるため、平均年収を示す公的なデータは存在しません。 ただし、賃金構造基本統計調査などの統計では、臨床心理士が属するカウンセラー(医療福祉分野)の給与データが存在します。カウンセラー(医療福祉分野)の統計上の分類は「他に分類されない保健医療の職業(その他の医療従事者)」です。
カウンセラー(医療福祉分野)の平均年収 |
---|
423.4万円 |
423.4万円はあくまでもカウンセラー(医療福祉分野)全体の平均であり、実際の給与額は勤務先の規模・雇用形態・就業年数などの条件により異なる点に注意してください。臨床心理士として働いている方のなかには、約500万~600万円の年収を得ている方もいます。
また、就職先を探す際は求人の年収だけではなく、手当や福利厚生に注目することも大切です。基本給に加えて手当や賞与などが支給される職場は、高収入を狙いやすくなります。
子育てや家族の介護をする方は、産休・育休や介護休暇が取れる職場であるかも確認しましょう。
臨床心理士の将来性とキャリアアップ方法
現代はストレス社会といわれており、多くの方が不安や悩みを抱えています。また、高齢化による介護問題や、母子家庭の増加といった社会背景もあり、さまざまな領域で臨床心理士の重要性が認識されつつあります。
しかし、臨床心理士資格は比較的取得しやすいため資格保有者が多く、正社員求人が少ない傾向です。臨床心理士として正社員で働きたい方や、高収入の職場で働きたい方は、臨床心理士資格の取得だけで満足せず、キャリアアップを目指すことが重要です。
ここでは、臨床心理士のキャリアアップ方法を3つ解説します。
公認心理師など関連資格を取得する
臨床心理士資格に加えて、公認心理師などの関連資格を取得することで、心理専門職としての知識・スキルの高さを証明できます。
公認心理師資格は心理職の国家資格であり、医療・保健分野や教育分野、福祉分野など幅広い分野で活躍できる資格です。臨床心理士が活躍できる場所で公認心理師資格は需要が高く、資格を取得すれば採用で有利になることもある・資格手当の対象となるなどのメリットがあります。
ほかに有用な関連資格は、下記の通りです。
キャリアコンサルタント資格 | 職業選択やキャリア形成の支援に関する能力を証明する資格 |
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精神保健福祉士資格 | 精神障害がある方への支援に必要な知識・技能を証明する資格 |
社会福祉士資格 | 福祉の相談援助に関する知識・技能を証明する資格 |
3つの関連資格は、いずれも活用できる分野がある程度決まっています。臨床心理士として活躍したい職域・環境を考えたうえで、取得する資格を決めましょう。
大手企業や大規模病院の正規雇用を目指す
臨床心理士がキャリアアップするためには、勤務先からの支援が受けられるかどうかも重要です。キャリアアップ支援は規模の大きい会社ほど充実している傾向があるため、大手企業や大規模病院の正規雇用を目指しましょう。
臨床心理士が勤務先から受けられるキャリアアップ支援としては、主に下記のものが挙げられます。
- 企業内・院内での勉強会の実施
- セミナーや研修への参加
- 公認心理師など資格取得の支援
- キャリアパスの整備
また、大手企業や大規模病院は福利厚生や賞与といった待遇が充実している傾向にあり、正規雇用を目指せば昇給の可能性もあります。将来的に独立を考えている場合は自己資金が必要となるため、高収入を目指せる勤務先を選ぶことが大切です。
独立してカウンセリングルームを開業する
臨床心理士としての専門性を活かせる仕事がしたい方、収入の限界をなくしたい方は、独立開業するキャリアアップ方法がおすすめです。実際に、臨床心理士のなかには独立してカウンセリングルームを開業する方もいます。
臨床心理士が独立するメリットとして、働き方やカウンセリング料金を自分で決められる点が挙げられます。また、独立すると売上の大部分を利益にできるため、収入の限界がなくなるのもメリットの1つです。
ただし、開業したカウンセリングルームの経営を軌道に乗せるには、臨床心理士としての知識・経験や資金が必要です。まずは企業や病院に勤務する臨床心理士で働き、十分な知識・経験を積んだうえで独立開業を検討しましょう。
臨床心理士に求められるもの
臨床心理士を目指すかどうか悩む方へ向けて、ここでは臨床心理士に求められる考え方や能力を紹介します。
現時点で自分に向いていないと感じる場合でも、勉強や経験を重ねるうちに、臨床心理士としてふさわしい能力を身につけられるでしょう。臨床心理士を目指す強い気持ちがある方は、適性にとらわれず挑戦することも大切です。
倫理観
臨床心理士の判断や助言は、患者さんの人生に大きな影響を及ぼします。したがって、臨床心理士は人々の尊厳や人権を尊重し、常に責任を持った言動を行うことが重要です。具体的には、中立性の確保・秘密保持の厳守などが挙げられます。また、思いやりの心や配慮といった高い人間性も必要となるでしょう。
日本臨床心理士資格認定協会では倫理委員会が設置されており、倫理に反した行為には厳正な措置が施されます。
(出典:公益財団法人 日本臨床心理士資格認定協会「臨床心理士の職業倫理」)
コミュニケーション能力
臨床心理士は患者さんや関係者らとの面談・面接が中心となる業務であるため、コミュニケーション能力が必要です。患者さんや相談者のなかには、話すことが得意でない方や、臨床心理士に対して懐疑的な方もいます。相手の心を開き信頼を得られるかは、臨床心理士の力量にかかっているともいえるでしょう。
また、臨床心理士は他職種と連携する場面も多いため、自分の意見に偏らないことも大切です。ミーティングや情報共有を円滑に行うための、ビジネスシーンにふさわしいコミュニケーション能力も必要となります。
観察力
臨床心理士には、患者さんの心情や状況の変化に気付くための観察力が必要です。患者さんが発する言葉だけでなく、仕草・服装・表情といった非言語メッセージを汲み取れるかどうかで、カウンセリングの質が大きく変わります。
たとえば、患者さんが「今日は調子がよい」と言ったとしても、表情が明るくない場合は、実際にはあまり調子がよくないことがうかがえます。身なりが乱れていれば、気持ちや時間に余裕がなかったと想像できるでしょう。患者さんの些細な変化や違和感が、問題の核心につながることもあります。
精神力
臨床心理士には、深刻な相談が寄せられることも珍しくありません。患者さんの辛い気持ちに流されると、業務に支障をきたす恐れがあります。相手の気持ちに寄り添いつつ、客観的に対応する精神的な強さが必要です。
また、臨床心理士は1日に複数人からの相談に応じることもあるため、精神的負担が多い職業であるといえます。患者さんへのサポートだけでなく、自分自身のメンタルケアも行い、安定した精神状態を保てるよう努める必要があります。
まとめ
臨床心理士は心理専門職の民間資格であり、心理面接を中心に心の健康を支援する仕事です。活躍の場は、医療・保健分野から教育、産業まで多岐にわたり、今後の需要も高まる傾向にあります。高い倫理観やコミュニケーション能力を持つ方は、臨床心理士に向いているといえるでしょう。
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※当記事は2023年1月時点の情報をもとに作成しています