HCUはどのような治療を行うところか、詳しく知らないという方もいるでしょう。HCUには心筋梗塞や急性心不全、くも膜下出血などの重症化リスクが高い患者さんが入院しており、医師や看護師、リハビリ職などの多職種が連携して治療を行っています。
この記事では、HCUの施設基準やICUとの違いを解説。また、HCUの看護師の役割と仕事内容のほか、向いている人の特徴も紹介します。
HCUとは
HCUとは「High Care Unit(ハイケアユニット)」の頭文字を取った略称で、日本語では「高度治療室」や「準集中治療管理室」と呼ばれています。HCUは、ICUと一般病棟の間の立ち位置で、主に大手術の後や重症化リスクの高い患者さんが入院しています。
2022年末時点のHCUの病床は、全国で7432床です。HCUの病床は東京都の982床を筆頭に、埼玉県に675床、大阪府に587床、神奈川県に582床、福岡県に474床と、都心部に多い傾向にあります。
参照元:日本集中治療医学会「各都道府県別 ICUおよびICUに準ずる治療室のベッド数」
施設基準
厚生労働省の「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」によると、HCUの施設基準は、以下のとおりです。
- 専任の常勤医師が常時1名以上いること
- ハイケアユニット入院医療管理を行うにふさわしい専用の治療室を有していること
- 救急蘇生装置(気管内挿管セット、人工呼吸装置など)、除細動器、心電計、呼吸循環監視装置を治療室内に常時備えていること(治療室が特定集中治療室と隣接しており、共有しても緊急の事態に十分対応できる場合はこの限りではない)
- HCU勤務の看護師は、HCUに勤務している時間帯はHCU以外での夜勤を行わないこと
- 「ハイケアユニット用の重症度、医療・看護必要度に係る評価票」の基準を満たす患者が8割以上いること
- 「ハイケアユニット用の重症度、医療・看護必要度に係る評価票」の記入は、院内研修を受けたものが行うこと
上記の基準を満たした治療室でないと、HCUとして認められません。
参照元:
厚生労働省「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」
厚生労働省「ハイケアユニット用の重症度、医療・看護必要度に係る評価票 評価の手引き」
主な対象疾患
HCUで治療する主な疾患や症状は、以下のとおりです。
- 心筋梗塞
- 急性心不全
- 急性呼吸不全
- 大動脈解離
- ショック
- くも膜下出血
- 脳梗塞
- 意識障害
- 急性中毒
- 心肺蘇生後
- 大きな手術の術後
HCUでは、主に術後の経過観察が必要な患者さんや重症化リスクのある患者さんの治療を行います。重病であっても、急変の可能性が低い慢性疾患の場合は対象となりづらいようです。
HCUに関わる職種
HCUでは、多職種で治療にあたっています。HCUで活躍する主な職種は、以下のとおりです。
- 各診療科の主治医
- 麻酔科医
- 救急医
- 看護師
- 薬剤師
- 診療放射線技師
- 臨床検査技師
- 臨床工学技士
- 理学療法士(PT)
- 作業療法士(OT)
- 言語聴覚士(ST)
- 事務職員
各診療科の主治医のほかに麻酔科医や救急医など、多くの部門の医師が携わっています。また、看護師や薬剤師はもちろん、理学療法士や作業療法士といったリハビリ職、診療放射線技師や臨床工学技士といった技術職がいるHCUもあります。
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HCUとICUの違い
HCUとICUは、いずれも症状の重い患者さんの治療を行いますが、重症度によってそれぞれの入室基準が異なります。
HCU | ICU | |
---|---|---|
対象患者 | 専門的な治療が必要な患者 | 重症患者 |
看護師の配置基準 | 4対1 | 2対1 |
以下では、HCUとICUの違いを、入室基準と看護師の配置基準の2つに分けて解説します。
入室基準
HCUには、急変する可能性があったり一般病棟の看護配置ではケアが難しかったりする患者さんが入室します。HCUへの主な入室経緯は、「ICUからの転室」「救急外来からの入室」「術後管理のための入室」の3パターンです。
一方、ICUには主に生命の危機にあるような重症の患者さんが入室します。医師や看護師が24時間体制で生命維持を行うのが特徴です。
看護師の配置基準
HCUとICUの看護師の配置基準は、厚生労働省の「基本診療料の施設基準等」によって定められています。
ハイケアユニット入院医療管理料の施設基準の項目によると、「常時、当該治療室の入院患者の数が四又はその端数を増すごとに一以上であること」と定められています。つまり、HCUでは患者4名に対し看護師1名以上の配置が必要です。
一方、特定集中治療室管理料の施設基準等の項目によると、「常時、当該治療室の入院患者の数が二又はその端数を増すごとに一以上であること」と定められています。つまり、ICUでは患者2名に対し看護師1名以上の配置が必要です。
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HCUの看護師の役割と仕事内容
HCUで働く看護師の役割と主な仕事内容は、以下のとおりです。
- 人工呼吸器やそのほかの医療機器の管理
- 手術後の経過観察
- 入院生活におけるサポート(食事・入浴・排泄介助)
- 患者さまと家族の心のケア
- 一般病棟への転棟支援
- 退院支援
HCUには心筋梗塞や急性呼吸不全、大動脈解離、くも膜下出血など、さまざまな疾患を抱える患者さんが入室しています。そのため、人工呼吸器や心電計などの医療機器をモニタリングし、つねに患者さんの状態を把握しておかなければなりません。また、できるだけ早く一般病棟への転棟や退院ができるように、身体回復のためのケアや日常生活を送るサポートを行います。
看護師にはそれぞれの疾患の症状や治療法のほか、医療機器の見方・操作方法などの知識が求められます。急変する可能性のある患者さんも多くいるので、些細な変化に気付ける観察眼も必要です。
HCUに向いている看護師の特徴
ここでは、HCUに向いている看護師の特徴を4つ紹介します。
観察力がある
HCUの看護師には、些細な変化に気づける観察力が必要です。
HCUにいる患者さんは重症度が高く、いつ容体が急変してもおかしくありません。そのため、「血圧が少し下がってきた」「脈が速くなった」など、微細な変化にすぐに気付くことが重要です。
また、「違和感がある」「何かおかしい」など、勘が鋭い看護師もHCU勤務に向いているでしょう。患者さんの変化を察知することで、容体の急変を事前に防げる場合があります。
スピーディーに対応できる
HCUの看護師は、正確なアセスメントをして素早く対応する必要があります。
患者さんが急変した場合、少しの時間のロスが予後に影響を及ぼす可能性があるため、対応に迷っている暇はありません。素早く対応するために、的確に状況を把握する「判断力」とすぐに行動できる「決断力」が必要です。
体力がある
HCUは24時間体制で治療を行っており、緊急入院や急変も多く、多忙を極めるため、体力的なタフさが求められます。また、ADL(日常生活動作)が低下している患者さんの体位交換やおむつ交換を行う際には、物理的な力が必要となります。
さらに、HCUは急変と隣り合わせの環境なので、つねに緊張感がありプレッシャーも大きいでしょう。そのため、心身ともにタフな看護師がHCUに向いているといえます。
勉強熱心である
科目・疾患を問わず、積極的に学ぶ姿勢がある方がHCU勤務に向いているでしょう。
HCUでは最先端の治療が行われているので、新しい医療機器や治療法、薬に触れる機会が多い傾向にあります。また、対象の科目・疾患が限定されず、さまざまな病気やケガを抱える患者さんの治療をするため、幅広い知識が求められます。
HCUの看護師になるには
HCUの看護師になるために、特別な資格は必要ありません。希望すれば、新人看護師でも配属される可能性はあります。
HCU看護師としてスペシャリストを目指す方は、急性期看護に関する資格を取得すると良いでしょう。たとえば、「クリティカルケア認定看護師」や「急性・重症患者看護専門看護師」がおすすめです。
まとめ
HCU勤務は、数多くの疾患に携われるのでスキルアップにつながります。症状の重かった患者さんが回復したときには、大きな達成感も得られるでしょう。
HCU看護師になるために、特別なスキルやキャリアは必要ありません。「急性期看護を極めたい」「看護師として数多くの経験を積んで成長したい」とお考えの方は、HCU看護師をめざしてみてはいかがでしょうか。
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