• 2022年2月18日
  • 2022年8月9日

ICUとは? 看護師の役割やHCU・NICUの違いを解説

 

治療室の種類の中でも、「ICU/集中治療室」は多くの人が耳にしたことがあるのではないでしょうか。「ICU」という名前を漠然と知ってはいるものの、具体的にどのような治療室なのか理解できていない人も多いでしょう。

この記事では、ICUの施設概要や人員の配置基準、HCU・NICUとの違いを解説。また、ICUにおける看護師の役割や求められること、役立つ資格などを詳しく解説しています。

ICUとは?

ICUとは、「Intensive Care Unit(インテンシブケアユニット)」の頭文字をとった略称で、救命できる可能性のある重篤な患者に対し、集中治療医・看護師が24時間体制で集中的に治療や看護を行うことを目的とした治療室です。「集中治療室」とも呼ばれています。

ICUには高度の診療機器やモニタリング用機器が整備されており、医師・看護師の診療体制も一般的な治療と比較して、より手厚いのが特徴です。入院病棟で容態が急変し生死の境をさまよう状況に陥った入院患者のほか、適切な処置を受けたものの継続して管理が必要となる患者、手術後も高度管理が必要となる患者を受け入れています。

ICUの施設基準と看護師の配置基準

ICUは区分によって施設基準と看護師の配置基準が異なります。下記は、区分別の施設基準・看護師の配置基準(一部)をまとめた表です。

区分 施設基準 看護配置
救命救急入院料 入院料1
  • 専任医師が常時勤務
  • 麻酔科医師などとの医療体制の整備
4:1
特定集中治療室管理料 管理料1
  • クリーンバイオルーム
  • 専任医師が常時勤務
    (うち2人は5年以上のICU経験がある医師)
  • 専門性の高い専任看護師が週20時間以上勤務
  • 専任臨床工学技士が常時勤務
2:1
ハイケアユニット入院医療管理料 管理料1
  • 専任常勤医師が常時勤務
  • 病床数30床以下
4:1
脳卒中ケアユニット入院医療管理料
  • 神経内科および脳外科での経験が5年以上ある常勤医師が常時勤務
  • 常勤理学療法士もしくは常勤作業療法士が専任配置
  • 病床数30床以下
3:1

 

救命救急入院料はその他の基準として、「救命救急センターを有していること」も挙げられます。脳卒中ケアユニット入院医療管理料以外の区分では、入院料および管理料の数字が上がれば上がるほど、施設基準はより厳しくなります。

ICUでは医師や看護師のほかに、臨床検査技師や臨床工学技士、理学療法士、作業療法士など、あらゆる医療従事者の配置が必要です。また、区分によって、ICUに携わる医師や看護師が行うモニタリングチェックの基準が異なります。

参照元:厚生労働省「(令和元年度第11回)入院医療等の調査・評価分科会【別添】資料編」

ICUで治療する疾患

ICUでは、主に以下のような疾患・症状がある患者の治療を行っています。

  • 呼吸不全
  • 敗血症
  • 心不全
  • 弁疾患
  • 冠動脈疾患
  • 大動脈疾患
  • 食道癌
  • 肺癌
  • 膵癌
  • 脳腫瘍
  • 脳動脈瘤
  • 肺炎

ICUでは外科や内科問わず、重篤な急性機能不全の患者様に対して幅広く治療を行っています。

日本と諸外国におけるICUの病床数

日本と諸外国におけるICU病床数は、以下のとおりです。

日本と諸外国におけるICU病床数は、以下のとおりです。

ICU等合計病床数 人口10万人当たりICU等病床数 ICU等合計病床数当たり死亡者数
米国 77,809 34.7 0.8529
ドイツ 23,890 29.2 0.2851
イタリア 7,550 12.5 3.8026
フランス 7,540 11.6 3.2838
スペイン 4,479 9.7 5.6039
英国 4,114 6.6 6.7884
日本 17,034 13.5 0.0299
引用:厚生労働省「ICU等の病床に関する国際比較について」

日本のICU等合計病床数は17,034床で、人口10万人当たりのICU等病床数は13.5です。面積が広く人口も多いアメリカと比べると差が大きいように感じますが、アメリカのICU等合計病床数あたりの死亡者数が0.8529人であることに対し、日本は0.0299人です。
日本は諸外国と比較しても、ICU等合計病床数あたりの死亡者数が群を抜いて低いことから、非常に質の高い医療を提供しているということがわかります。

ICUとHCU・NICUの違い

ICUとHCU・NICUの違い

ICUと似た治療室の種類として、「HCU」「NICU」が挙げられます。

  ICU HCU NICU
概要 集中治療室 高度治療室 新生児集中治療室
対象患者 重篤度の高い患者 やや重篤度の高い患者 早産児・低出生体重児を含む何らかの疾患がある新生児

以下では、HCUとNICUについて詳しく解説します。

HCUとは

HCUとは、「High Care Unit(ハイケアユニット)」の頭文字をとった略称です。日本語では、「高度治療室」や「準集中治療管理室」と呼ばれています。

ICUと一般病棟の中間的な存在に位置しており、急性期患者および重症患者など、ICUと比較してやや重篤度の低い患者を受け入れています。HCUに配置される職種は医師・看護師・薬剤師など、ICUと同様ですが、治療施設の規模やICUの設置状況によって異なります。

NICUとは

NICUとは、「Neonatal Intensive Care Unit(ネオネイタルインテンシブケアユニット)」の頭文字をとった略称であり、「新生児集中治療室」を指します。

ICUは対象となる疾患が特に限定されていませんが、NICUは早産児や低出生体重児、または何らかの疾患がある新生児に限定して治療・看護を行います。いわゆる、「赤ちゃんのための集中治療室」といえるでしょう。NICUに配置される職種は施設によってさまざまですが、基本的に新生児専任医師(1人)と看護師(新生児3人あたり1人以上)、臨床心理士、社会福祉士などが基本です。

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ICUにおける看護師の仕事内容

ICUにおける看護師の仕事内容

ICUに勤務する場合、一般病棟とは少々異なる仕事を担うこともあります。ICU勤務を視野に入れている看護師の方は、どのような業務を行うのかあらかじめ理解しておくと、スムーズに異動・転職がしやすくなるでしょう。

以下では、ICUにおける看護師の仕事内容を詳しく解説します。

患者の状態管理

ICUに勤務する看護師の最も重要かつ基本的な役割が、患者の状態管理です。
看護師はICUに入院している患者のバイタルサインや心電図モニターからわかる情報のほか、尿量や医療機器が正しく作動しているかどうかなど、あらゆる情報に気を配りながら注意深くチェックしなければなりません。

また、ICUに入院する患者はADL(日常生活動作)が低下している人が多いため、患者の状態を見ながら清拭や爪切り、マッサージなども行います。一般的な入院病棟と比較しても、その回数は多い傾向にあるといえるでしょう。

モニタリングとアセスメント

患者の状態を24時間体制で監視し、異常の早期発見に努めるモニタリングも、ICUに勤務する看護師の重要な役割です。24時間体制で患者の状態を確認するなかで細かな変化を読み取った場合は、いち早く医師に報告しなければなりません。

また、単純に医師に報告するだけでなく、状態変化から読み取った患者データをもとにアセスメントを行うことも重要です。一般病棟でもモニタリングとアセスメントは行うものの、生命の危機に陥った重篤度の高い患者を担当するICUの看護師は、患者の様子を注意深く見てより詳細なアセスメントを行う必要があります。

医療機器の管理・操作

ICUに勤務する看護師は、患者に対して適切な治療を行うために欠かせない医療機器の管理や操作も行います。ICUでの使用頻度が高い医療機器は、心電図モニターやシリンジポンプ、人工呼吸器などです。
これらの医療機器がうまく作動しなかったり、操作を間違えたりしてしまうと、患者の命に重大な影響を及ぼす可能性があります。そのため、ICUに勤務する看護師は、ICUで使用するすべての医療機器についての知識をもったうえで、適切に管理・操作を行わなければなりません。

サーカディアンリズムのケア

サーカディアンリズムとは概日リズムのことで、いわゆる「昼夜の生活リズム」を指します。サーカディアンリズムのケアは、ICUに勤務する看護師ならではの特徴的な業務といえるでしょう。

ICUに勤務する看護師は、寝たきり状態で体内時計に影響の出ている患者に対し、夜の時間帯にきちんと眠れるよう、適切な時間に清拭や投薬、口腔ケアなどの各種ケアを行います。

患者の家族のケア

突然の事故や患っていた病気による容態の急変などが原因で、ICUに入院することとなった患者は数多くいます。数日前までの姿からは想像もできない姿で病室のベッドに横たわる患者を見る家族のショックは、計り知れません。ICUに勤務する看護師は患者本人だけでなく、その家族へのケアも重要な業務です。

ICUに勤務する看護師に求められること

ICUの様子

厚生労働省の「集中治療室(ICU)における安全管理指針」には、看護師の在り方について以下のように記載されています。

(b) 看護師

  •  看護師の配置については、患者の重症度に応じた看護が行える体制とすること。業務を安全に遂行する上で必要とされる人員を、配置すること。具体的には、患者の重症度等に応じて患者2人に対して看護師1人以上常時配置すること。
  •  ICU勤務に専念できるよう専任にすること。
  •  事故防止に配慮して、以下のような勤務体制を整えること。
    •  新人や部署異動直後の職員に対しては、医療安全に関する初期研修を提供すること。
    •  職場内教育においては、経験者と組み合わせるなどの工夫をするとともに、現場での指導・監督が可能となる人員配置等の余裕ある人事管理を行うこと。
    •  特に夜間など人員が少ない際には適切な人材を配置するように留意すること。
  •  ICUに勤務する看護師には、重症患者看護の専門職としての知識・技術、例えば、重症集中ケア、救急看護に対する知識・技術を磨く機会を与えること。
  •  看護師は病態生理の理解と患者の綿密な観察を行い、異常を早期発見して早期対応に努めること。

引用:厚生労働省「集中治療室(ICU)における安全管理指針」

ICUは重篤度の高い患者が入院するため、一般病棟よりもインシデントが発生する可能性が高まります。そのため、重症患者2人に対し、1人以上の看護師の常時配置が義務付けられているのです。
配置される看護師には、患者の重症度に応じて適切に対処できる看護能力と各種業務を安全に遂行できる能力が求められています。

また、つねに一定の水準で医療や看護を提供できるよう医療研修などを定期的に開催し、知識や技術を磨く機会を設けることも求められています。ときには、ほかの職種と連携して業務を進めることもあるため、コミュニケーション能力も重要といえるでしょう。

ICUに勤務する看護師の1日の流れ

ICUに勤務する看護師

ICUに勤務する看護師の仕事内容は、日勤と夜勤によって異なります。日勤では患者のケアが中心で、夜勤では時間管理が重要です。働く時間帯で動き方は大きく異なるため、それぞれどのような業務を担うのかをあらかじめ理解しておきましょう。

以下では、ICUに勤務する看護師の1日の流れを日勤・夜勤別に紹介します。

日勤の場合

日勤のICUナースの1日の流れは、下記のとおりです。

7:30~9:30 出勤・情報収集・申し送り
出勤をしたら、まずは受け持ち患者の情報収集を行い、夜勤スタッフから申し送りを受ける
9:30~12:00 ラウンド(見回り)・看護
院内の見回りや受け持ち患者の看護・ケア(点滴の交換準備・清拭・投薬・吸引など)を行う
12:00~13:00 休憩
13:00~16:30 ラウンド(見回り)・看護
午前中にできなかったケアの続きや、モニタリング・アセスメント、家族へのケアなどを行う
16:30~18:00 申し送り・看護記録の記入・退勤
夜勤スタッフへ申し送りを行い、看護記録や看護計画の記入を済ませて退勤する

日勤で働くICUナースの業務は、ラウンドや看護がメインです。看護内容は受け持ちの患者の疾患や症状によって異なります。なお、申し送りから看護記録を記入するまでに、危険予知訓練(KYT)としてインシデントの共有を行うこともあります。

夜勤の場合

二交代制勤務の場合、夜勤は夕方17:00~翌朝8:00(職場によって1時間程度前後する)が主な勤務時間となります。夜勤で働くICUナースの一般的な1日の流れは、下記のとおりです。

17:00~18:30 出勤・情報収集・申し送り
出勤をしたら、まずは受け持ち患者の情報収集を行い、日勤スタッフから申し送りを受ける
18:30~21:00 ラウンド(見回り)・看護・就寝前準備
院内の見回りや受け持ち患者の看護・ケアを行う。一通り終わったら、就寝前の準備としてバイタルサイン測定や投薬、口腔ケアなどを行う
21:00~22:00 休憩
22:00~24:00 ラウンド(見回り)・救急患者さんの受け入れ
院内の見回りや体位交換などの看護を行うほか、救急搬送後緊急入院となった患者や容態が急変し重症化した入院患者の受け入れなどを行う
0:00~2:00 仮眠
スタッフと交代制で仮眠する
2:00~5:00 ラウンド(見回り)
院内の見回りや体位交換・陰部洗浄などの看護を行う。また、必要に応じて点滴の交換準備なども行う
5:00~7:00 看護・モーニングケア
バイタルサイン測定や点滴・経管栄養、投薬を行う。あわせて口腔ケアや清拭などのモーニングケアも行う
7:00~8:00 申し送り・看護記録の記入・退勤
日勤スタッフへ申し送りを行い、看護記録や看護計画の記入を済ませて退勤する

夜勤は日勤に比べて勤務時間が長いものの、業務内容は比較的穏やかなのが特徴です。しかし、患者の容態が夜間に急変したときや救急患者が発生したときは忙しく、かつ詳細なアセスメントも必要となります。そのため、休憩や仮眠が取れないことも少なくありません。

ICUに向いている看護師の3つの特徴

ICUに向いている看護師

ICUでは、「観察力が高い」「冷静に対応できる」「コミュニケーション能力が高い」といった特徴をもつ看護師が重宝されます。以下で詳しく解説します。

1.観察力が高い人

意識がない・動けないなど重篤度の高い患者が多く入院するICUでは、観察力の高い看護師が重宝されます。優れた観察力のある看護師は、患者が見せる一つひとつのサインを見逃さないため、ICUで活躍できるでしょう。

2.冷静かつ柔軟な対応ができる人

ICUでは、一般病棟よりも患者の容態が急変することが多々あります。そのため、冷静に対応できる看護師がICU勤務に向いているといえるでしょう。冷静に状況を把握したうえで、適切かつ柔軟な処置のできる看護師がICUでは重宝されます。

3.コミュニケーション能力が高い人

看護師として働くうえでコミュニケーション能力は大前提として必要ですが、ICUではより重要視される傾向にあります。ICUに勤務する看護師にとって、患者の家族のケアも重要な仕事のひとつです。より重篤な症状を抱えるICU患者の家族は大きな不安と戦っているので、患者だけでなくその家族に対して、適切に声掛けをしたりコミュニケーションを取ったりすることが求められるのです。

ICUの看護師になるには? 有利な資格はある?

ICUの看護師になるために勉強している女性

ICUの看護師は、適正を見極められたうえで配属が決まるケースがほとんどです。そのため、新人看護師が突然ICU勤務となることは、ほぼありません。

また、看護師としての経験を数年以上積んでいる人も、資格を取得しておいたほうがICU勤務を希望する際に有利になるでしょう。ICU配属を目指す看護師に有利な資格は、以下のとおりです。

  • BLS
    「Basic Life Support」の頭文字をとった略称で、一次救命処置のことです。BLS資格を取得した看護師は、一次救命処置の知識があると認められます。
  • ACLS
    「Advanced Cardiovascular Life Support」の頭文字をとった略称で、二次心肺蘇生法のことです。ACLS資格を取得した看護師は、二次心肺蘇生法の知識があると認められます。
  • JPTEC
    「Japan Prehospital Trauma Evaluation and Care」の頭文字をとった略称で、プレホスピタルケア(病院前救護)に関する専門知識・技能を有していることが認められる資格です。
  • 3学会合同呼吸療法認定士
    呼吸療法に関する専門的な知識と技術を有していることが認められる資格です。「呼吸療法認定士」とも呼ばれています。
  • NST専門療法士
    静脈栄養・経腸栄養を用いた臨床栄養学に関する専門的な知識と技術を有していることが認められる資格です。「栄養サポートチーム(NST)専門療法士」とも呼ばれています。

資格によって、認定の審査方法や条件、費用は異なります。働きながらでも取得できる資格は数多く存在するため、ICU勤務を希望する看護師の方は取得をめざしてみると良いでしょう。

まとめ

ICU(Intensive Care Unit)とは、救命できる可能性のある重篤な患者に対し、医師・看護師が24時間体制で集中的に治療や看護を行うことを目的とした治療室のことです。対象患者の疾患は限定されておらず、主に重篤度の高い患者を受け入れています。

ICUの看護師は、適正を見極めて配属されるケースがほとんどのため、自らICU配属を希望するのであれば関連する資格を取得するのがおすすめです。

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