• 2022年1月20日
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公務員の保健師とは? 仕事内容から給料・試験倍率まで徹底解説

 

保健師の資格を持っている人や、看護師から保健師へのキャリアチェンジを検討している人の中には、保健師資格を持つ公務員として働くことに興味がある人もいるでしょう。雇用が安定しているイメージのある公務員ですが、公務員の保健師はどのような職場でどのような仕事を担っているのでしょうか。

当記事では、公務員の保健師の概要や主な職場、それぞれの勤務先における保健師の仕事内容について解説します。公務員の保健師の平均年収や、公務員の保健師になるための方法も併せて確認し、自分が公務員の保健師に向いているか判断する際の参考にしてください。

公務員の保健師とは?

公務員の保健師とは、地方自治体の保健所や保健センターなど、行政が管轄する機関で公務員として勤務する「行政保健師」のことです。行政保健師の仕事内容は働く場所によって異なりますが、健診や病気に関する情報提供を行い、地域で暮らす住民の健康を守ることが主な役割となります。

保健師が公務員として働くのは珍しいことではありません。市区町村に就業している保健師の人数は2018年末時点で29,666人であり、保健師全体の約56%を占めています。保健師が行政へ就業することは、むしろ保健師の主要な選択肢であるといえるでしょう。
(出典:厚生労働省「平成30年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」

保健師は行政機関以外にも、次のような職場で活躍することができます。

■保健師の主な就業先・業務内容

職種 就業先 主な業務内容
産業保健師 民間企業(一般企業) 従業員の健康管理
病院保健師 病院などの医療機関 医療機関での健康管理・健康相談
学校保健師 学校などの教育機関 病気やケガの応急処置
生徒や学生の健康相談

このように、保健師は行政機関をはじめとする多様な場所で活躍することができます。今後、保健師としてのキャリア形成を考えている人は、以下の記事もぜひ参考にしてください。

地方公務員ではなく国家公務員の保健師もいる?

行政保健師は、都道府県や市区町村で働く地方公務員が大部分を占めています。厚生労働省などの省庁で働く国家公務員もいますが、就業している人数が少ないといった理由により、詳しい情報があまりない状態です。

地方公務員の仕事内容は自治体によって異なりますが、福祉や教育、公衆衛生(感染症対策・感染症予防)、まちづくりなど、地域に深く関わる業務を行います。対象となる住民との距離が近く、自分の仕事に対する反応が直接見られるケースも多いため、やりがいを実感できる機会も多数あります。

一方、国家公務員は、政策を実現するための調整や国会対応など、国全体の制度に関わる仕事を担っています。「世の中を大きく変えたい」「国全体をより暮らしやすい社会構造にしたい」と考えている人に向いている職業といえるでしょう。

【職場別】公務員の保健師の仕事内容

病院との調整を行う保健師の女性

「公務員の保健師」と一口に言っても、職場によって仕事内容や勤務スタイルが異なります。では、公務員の保健師はどのような職場でどのような仕事に携わっているのでしょうか。ここでは、公務員の保健師の主な勤務先と、それぞれの職場における代表的な業務・仕事の傾向について解説します。

保健所

都道府県や特別区、指定都市、政令市、中核市が設置している「保健所」は、より広域的で専門性の高い視点から地域住民の健康をサポートする業務を行う行政機関です。

保健所に勤務する保健師は全国で7,485人と多く、全国の保健師総数の20.7%を占めています。都道府県や保健所を設置している特別区・市では、本庁に勤務する保健師より保健所に勤務する保健師が多いため、同じ職場に先輩保健師がいる場合も多いでしょう。
(出典:厚生労働省「令和2年度 保健師活動領域調査(領域調査)」

保健所で働く保健師が担う仕事は、行政サービスを必要とする家庭への訪問や保健指導、病院など関係各所との調整など多岐にわたります。専門的で広い視点から行う地域の保健福祉計画の策定や管理、人材育成・講義の実施なども、保健所勤務の保健師が担う大きな役割の1つです。
(出典:厚生労働省「平成30年度 保健師活動領域調査(活動調査)」

保健センター

市区町村が設置できる「保健センター」は、主に母子保健や老人保健などを通して地域住民が健康に暮らすためのサポートを実施している行政機関です。

市区町村の保健センターで活躍する保健師の総数は11,707人であり、保健師の総数の37.7%を占めています。保健所の有無にかかわらず、各自治体に就業する保健師全体の約3〜4割程度が保健センターに勤務していると考えられるでしょう。
(出典:厚生労働省「令和2年度 保健師活動領域調査(領域調査)」

保健センターは、保健所よりもさらに地域に密着した行政サービスを提供しています。そのため、保健センター勤務の保健師は主に次のような仕事を担当します。

■保健センター勤務の保健師の主な仕事内容

  • 母子健康管理(母子健康手帳の交付、妊産婦・新生児訪問、乳幼児健診、育児相談など)
  • 健康診断(生活習慣病検診、がん検診など)
  • 老人保健(機能訓練教室の実施など)
  • 健康や病気、健康増進に関する啓蒙活動・健康指導

(出典:厚生労働省「平成30年度 保健師活動領域調査(活動調査)」

地域包括支援センター

「地域包括支援センター」とは、地域に暮らす高齢者とその家族が安心して暮らせるようにサポートを行う行政機関を指します。2021年4月時点で全国で5,270か所(支所を含めると7,305か所)もの地域包括支援センターがあるため、行政保健師として就業する可能性も低くはないといえるでしょう。
(出典:厚生労働省「地域包括ケアシステム」

地域包括支援センターで保健師が担当する業務は自治体によって異なりますが、主に次のような業務を行います。

■地域包括支援センター勤務の保健師の主な仕事内容

  • 総合支援業務
    高齢者や家族の相談対応を行い、過去の相談事例などをふまえて相手に必要な公的サービス・制度などの紹介や関係する施設への仲介を行う。
  • 指定介護予防支援(介護予防ケアマネジメント)
    要介護状態となることを事前に防ぐため、介護予防ケアプランなどを作成する。予防医療・予防介護に必要な行政サービスを受けられるよう調整し、認知症予防などにつなげる。

(出典:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「地域包括支援センターの業務実態に関する調査研究事業報告書」

少子高齢化が進む日本では、老人保健や介護といった分野の重要性が年々高まっていくと考えられます。地域包括支援センターが果たす役割も、これに伴い大きくなっていくでしょう。

公務員の保健師の平均年収はいくら?

公務員の保健師の平均年収

公務員に対し「収入や福利厚生が安定している」というイメージ・印象を持つ人も多いでしょう。ここでは、地方公務員として働く保健師の給料やボーナスの平均を紹介します。

■地方公務員として働く保健師の平均収入

地方公務員の平均月収:378,048円

地方公務員のボーナス:約168万円

地方公務員の平均年収:約622万円

(出典:総務省「令和2年4月1日地方公務員給与実態調査」

なお、上記に示した平均月収は基本給に各種手当を加えた金額です。ボーナスは4.45か月分として算出しており、いずれも変動する可能性があることに留意してください。

■関連記事
保健師の平均年収は? 看護師との違い・年収アップの方法も解説

公務員の保健師になるには?

公務員の保健師の試験を受ける女性

公務員の保健師になるためには、保健師資格を取得したうえで公務員試験を受験し、合格する必要があります。東京都や大阪府を参考に、自分の志望自治体における保健師の採用情報(募集要項)を確認し、試験情報や受験資格、試験日などを事前にチェックしておきましょう。

■公務員の保健師の試験内容(例:東京都・大阪府)

東京都

第1次試験
  • 一般教養(択一式)
  • 専門知識(択一式・記述式)
  • 小論文(課題あり)
第2次試験 口述試験(個別面接2回)
(出典:東京都福祉保健局「保健師の募集について(令和4年4月1日付採用)」

大阪府

第1次試験
  • 教養考査(小論文)
  • 専門考査(択一式)
第2次試験
  • 個別面接
  • 集団討論(6〜9人)
  • 模擬インタビュー
(出典:大阪府「令和3年度 大阪府職員採用選考案内」

なお、年度によって欠員状況や採用予定者数・受験者数も異なるため、採用倍率は変動します。難易度や合格基準は高めに設定される傾向にあるため、十分な対策が必要です。

■保健師(地方公務員)の採用倍率(例:東京都・大阪府)

近年の採用倍率(参考)
東京都

3.0~7.0倍が目安。

※2011年度~2020年度において、最高倍率は2017年度の7.0倍、最低倍率は2014年度の2.6倍。

大阪府

2019年度…11.0倍

2020年度…2.4倍

(出典:東京都福祉保健局「東京都職員(保健師)採用試験 実施状況及び試験問題」
(出典:大阪府「令和元年度大阪府職員採用選考実施状況」
(出典:大阪府「令和2年度大阪府職員採用選考実施状況」

公務員の保健師は地域の住民とふれ合う機会も多く、社会貢献を通してやりがいを実感できる職業です。仕事に関する勉強が好きな人や、さまざまな事情を抱える相談者の立場や気持ち・心理に寄り添える人は、公務員の保健師としてのキャリアアップを検討してみましょう。

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まとめ

公務員の保健師とは、地方自治体の保健所などで働く「行政保健師」のことです。施設や自治体によって職務内容が異なることに留意しましょう。

公務員の保健師になるためには、保健師資格を取得したうえで公務員試験に合格する必要があります。採用倍率は年度や志望する自治体によって異なるため、不安に感じる場合はほかの職場への就職・転職活動と並行して対策を行うことも検討しましょう。

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