
仕事ができるようになるためにはさまざまな能力が必要ですが、能力以前に必要な「最低限の条件」があります。この条件を満たせずにいると「インシデント・アクシデント」は絶えず生じます。今回は、仕事ができるための「最低条件」についてご紹介します。
多忙だからこそ、身を守る
あなたにとって、仕事ができるための最低条件とはなんだと思いますか?
それは、「マニュアル遵守」だと私は考えています。
以前、勤務していた職場で、スタッフが降圧剤やステロイド剤などの入った薬袋を別の患者に飲ませるというミスをしました。重大な問題として扱われ、対策がたてられた2週間後に、さらに別のスタッフがまったく同様の事故を起こしました。
もともと、配薬時にはマニュアルがあり、基本的な手順の詳細は周知されるようになっていました。しかし、上司が当事者に理由を確認したところ「忙しかったから」という返答でした。
私は25年以上、看護師として働いてきましたが、「多忙」という言葉では表現できないほどの多重業務を幾度となく経験しました。そのため、「忙しかったから」といいたくなる気持ちは痛いほど共感できます。しかし、忙しいからこそ、自分と患者さんの身を自らが守る意識をもってほしいと思います。
私たちが日ごろ、特に意識をしなくても行うことができている作業は、多忙、眠気、疲労などの身体的・精神的要因に影響を受けやすく、「ケアレスミス」が生じやすいといえます。だからこそ、マニュアル遵守を意識化することで事故を未然に防ぐことが大切なのです。
心理的盲点を認識する
あなたはふだん、業務マニュアルが存在しているにもかかわらず、
・マニュアルは、当たり前のことが書いてあるだけなので流し読み程度ですませる
・遵守するに越したことはないが、書かれているとおりにやらなくても、今まで問題なかったので大丈夫
などといった理由で、マニュアルを省略してしまうことはありませんか?
マニュアルに掲載されている内容は、基本が書かれているからこそ、「わかったつもり」になりやすいです。そのぶん、「心理的盲点」(=うっかり見落としてしまうこと)には注意をする必要があります。
自分の手順が間違っていることに気づかず、「マニュアル通りにやっていると思いこんでいた」という事例も決して少なくはありません。
マニュアルさえ守れば、事故が起こらないというわけではありませんし、マニュアルに頼りすぎることで起こるミスも存在します。しかし、マニュアルの逸脱によって生じるミスは、自信を損なう原因にもなりえますし、マニュアルに従わない「自己流」は、スタッフ育成の視点からみても、決して好ましいこととはいえません。
「誰にでも心理的盲点は存在する」ことをしっかりと理解し、問題なくできている業務もこの機会に再確認していきましょう。
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