特定行為看護師になるには
  • 2024年5月18日
  • 2024年5月17日

特定行為看護師になるには | 受講資格・研修の概要・かかる費用を解説

 

キャリアアップをめざして、特定行為研修を受ける看護師の方もいるでしょう。特定行為研修を修了することで、21区分38行為の特定行為を行えるようになります。

この記事では、特定行為研修の受講資格・研修時間・研修場所・費用を解説。特定行為看護師になるメリットも紹介しているので、受講予定の方はぜひ参考にしてください。

特定行為看護師とは

特定行為看護師とは、医師の指示を待たずに特定行為を実践できる看護師のことです。2015年10月に厚生労働省が施行した「特定行為に係る看護師の研修制度(通称:特定行為研修)」を修了することで、特定行為を行えるようになります。

特定行為研修の修了者数は、制度が始まった2015年は259名でしたが、2023年は6,875名と毎年右肩上がりに増えています。2023年時点で修了者数の合計数は35.506名です。

なお、特定行為研修を修了した看護師は「特定行為看護師」または「特定看護師」と呼ばれていますが、特定行為看護師という資格はなく、あくまでも通称です。

参照元:厚生労働省「特定行為研修制度の現状及び推進策の推進状況等について」

特定行為とは

特定行為とは診療の補助であり、看護師が手順書に従って行う場合に、実践的な理解力・思考力・判断力のほか、高度かつ専門的な知識・技能が必要とされる行為のことです。以下の21区分38行為を指します。

特定行為区分の名称 特定行為
呼吸器(気道確保に係るもの)関連 経口用気管チューブ又は経鼻用気管チューブの位置の調整
呼吸器(人工呼吸療法に係るもの)関連 侵襲的陽圧換気の設定の変更
非侵襲的陽圧換気の設定の変更
人工呼吸管理がなされている者に対する鎮静薬の投与量の調整
人工呼吸器からの離脱
呼吸器(長期呼吸療法に係るもの)関連 気管カニューレの交換
循環器関連 一時的ペースメーカの操作及び管理
一時的ペースメーカリードの抜去
経皮的心肺補助装置の操作及び管理
大動脈内バルーンパンピングからの離脱を行うときの補助の頻度の調整
心嚢のうドレーン管理関連 心 嚢のう ドレーンの抜去
胸腔ドレーン管理関連 低圧胸腔内持続吸引器の吸引圧の設定及びその変更
胸腔ドレーンの抜去
腹腔ドレーン管理関連 腹腔ドレーンの抜去(腹腔内に留置された 穿せん 刺針の抜針を含む。)
ろう孔管理関連 胃ろうカテーテル若しくは腸ろうカテーテル又は胃ろうボタンの交換
膀胱ろうカテーテルの交換
栄養に係るカテーテル管理(中心静脈カテーテル管理)関連 中心静脈カテーテルの抜去
栄養に係るカテーテル管理(末梢留置型中心静脈注射用カテーテル管理)関連 末梢留置型中心静脈注射用カテーテルの挿入
創傷管理関連 褥じょく 瘡そう 又は慢性創傷の治療における血流のない壊死組織の除去
創傷に対する陰圧閉鎖療法
創部ドレーン管理関連 創部ドレーンの抜去
動脈血液ガス分析関連 直接動脈 穿せん 刺法による採血
橈とう 骨動脈ラインの確保
透析管理関連 急性血液浄化療法における血液透析器又は血液透析 濾ろ 過器の操作及び管理
栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連 持続点滴中の高カロリー輸液の投与量の調整
脱水症状に対する輸液による補正
感染に係る薬剤投与関連 感染徴候がある者に対する薬剤の臨時の投与
血糖コントロールに係る薬剤投与関連 インスリンの投与量の調整
術後疼とう痛管理関連 硬膜外カテーテルによる鎮痛剤の投与及び投与量の調整
循環動態に係る薬剤投与関連 持続点滴中のカテコラミンの投与量の調整
持続点滴中のナトリウム、カリウム又はクロールの投与量の調整
持続点滴中の降圧剤の投与量の調整
持続点滴中の糖質輸液又は電解質輸液の投与量の調整
持続点滴中の利尿剤の投与量の調整
精神及び神経症状に係る薬剤投与関連 抗けいれん剤の臨時の投与
抗精神病薬の臨時の投与
抗不安薬の臨時の投与
皮膚損傷に係る薬剤投与関連 抗癌剤その他の薬剤が血管外に漏出したときのステロイド薬の局所注射及び投与量の調整

特定行為は21区分ごとに研修があります。2023年時点では、「栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連」の研修を終了した看護師が最も多く、6,875名中5,611名でした。

参照元:
厚生労働省「特定行為とは」
厚生労働省「特定行為区分とは」
厚生労働省「特定行為研修制度の現状及び推進策の推進状況等について」

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認定看護師・専門看護師・診療看護師との違い

認定看護師・専門看護師・診療看護師との違い

看護師のキャリア展開として、認定看護師や専門看護師、診療看護師(NP)などがあります。それぞれの違いを知って、自分に合うキャリアを確認しましょう。

認定看護師

認定看護師とは、「特定の看護分野において熟練した看護技術や知識を用いて、水準の高い看護を実践できる」と、日本看護協会から認定を受けた看護師のことです。

認定看護師になるには、実務研修が通算5年以上(うち3年以上は認定看護分野の実務研修)が必要です。認定看護師教育を修了し、認定看護師認定審査に合格することで資格を取得できます。

2023年12月時点で、24,096人が認定看護師の資格を取得しています。

参照元:日本看護協会「認定看護師(Certified Nurse)とは」

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専門看護師

専門看護師とは、「特定の専門看護分野において、卓越した看護実践能力を有する」と、日本看護協会から認定を受けた看護師のことです。

専門看護師になるには、「看護系大学院において専門看護師教育課程を修了している」「実務研修が通算5年以上(うち3年以上は専門看護分野の実務研修)」といった、2つの条件をクリアする必要があります。そして、認定審査(書類審査・筆記試験)を受けて合格したら、専門看護師認定登録を行います。なお、5年ごとに更新が必要です。

2023年12月時点で、3,316人が専門看護師の資格を取得しています。

参照元:日本看護協会「専門看護師」

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診療看護師(NP)

診療看護師(Nurse Practitioner:NP)は、日本NP教育大学院協議会による認定資格です。患者さんのQOL向上のために、多職種と連携・協働し、倫理的かつ科学的根拠に基づき、一定レベルの診療を行える看護師を指します。

診療看護師(NP)になるには、実務経験が通算5年以上必要です。日本NP教育大学院協議会が認める大学院修士課程のNP養成コースを修了し、NP資格認定試験に合格することで資格を取得できます。なお、5年ごとに更新が必要です。

参照元:日本NP教育大学院協議会「診療看護師(NP)とは」

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特定行為看護師になるには

特定行為看護師になる方法

特定行為看護師になるには、特定行為研修を修了する必要があります。受講資格・研修時間・研修場所・費用は以下のとおりです。

研修の受講資格

受講資格は、看護師免許を有していることです。

厚生労働省では、特定行為研修の受講者として3~5年以上の実務経験を有する看護師を想定していますが、経験年数は絶対条件ではありません。看護師の資格を保有している人であれば、受講資格があります。

科目ごとの研修時間

研修には共通科目と区分別科目があり、それぞれ研修時間が定められています。

共通科目

科目 時間
臨床病態生理学 30時間
臨床推論 45時間
フィジカルアセスメント 45時間
臨床薬理学 45時間
疾病・臨床病態概論 30時間
医療安全学 10時間
特定行為実践 45時間

区分別科目

科目 時間
呼吸器(気道確保に係るもの)関連 9時間
呼吸器(人工呼吸療法に係るもの)関連 29時間
呼吸器(長期呼吸療法に係るもの)関連 8時間
循環器関連 20時間
心嚢のうドレーン管理関連 8時間
胸腔ドレーン管理関連 13時間
腹腔ドレーン管理関連 8時間
ろう孔管理関連 22時間
栄養に係るカテーテル管理(中心静脈カテーテル管理)関連 7時間
栄養に係るカテーテル管理(末梢留置型中心静脈注射用カテーテル管理)関連 8時間
創傷管理関連 34時間
創部ドレーン管理関連 5時間
動脈血液ガス分析関連 13時間
透析管理関連 11時間
栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連 16時間
感染に係る薬剤投与関連 29時間
血糖コントロールに係る薬剤投与関連 16時間
術後疼とう痛管理関連 8時間
循環動態に係る薬剤投与関連 28時間
精神及び神経症状に係る薬剤投与関連 26時間
皮膚損傷に係る薬剤投与関連 17時間

参照元:厚生労働省「特定行為研修とは」

研修場所

特定行為研修は、指定研修機関で実施されています。研修機関によって実施されている科目が異なるので、受講予定の方はしっかりと確認しておきましょう。

なお、2023年8月時点で全国に373機関あります。また、実施頻度が高いと想定される特定行為をまとめた「領域別パッケージ研修」を行っている機関は、2023年2月時点で193機関あります。

参照元:
厚生労働省「【特定行為に係る看護師の研修制度】指定研修機関について」
厚生労働省「特定行為研修制度の現状及び推進策の推進状況等について」

費用

費用は研修機関や区分別科目によって異なり、30万~250万円ほどかかります。受講予定の方は、研修機関の募集要項を確認しましょう。

なお、特定行為研修には支援制度があります

教育訓練給付

一定の要件を満たした雇用保険の被保険者、または被保険者でなくなってから1年以内の方が、受講費用の4割(上限20万円)を受給できる制度です。

人材開発支援助成金

事業主が雇用者に対して、職務に関連した専門的な知識や技能を習得をさせるための職業訓練等を計画的に実施した場合に、受講費用や受講期間中の賃金の一部を助成する制度です。

地域医療介護総合確保基金

いくつかの都道府県では、地域医療介護総合確保基金を活用して、受講生やその受講生が所属する施設に対して、受講料や代替職員雇用の費用といった支援を行っています。

参照元:厚生労働省「これからの医療を支える 「看護師の特定行為研修」」

特定行為看護師になるメリット

特定行為看護師になるメリット

特定行為看護師になることで、キャリアの幅が広がります。特定行為看護師は、医師の指示を待たずに手順書に従って迅速に医療処置を行うことが可能です。そのため、急性期病棟や手術室、訪問看護など、専門的な医療処置を必要とする患者さんが多い病棟や診療科で重宝されるでしょう。

また、特定行為看護師は一般の看護師よりも高いスキルを持っているため、基本給がアップしたり資格手当が支給されたりと、給料面で優遇されることも。特定行為看護師として経験を積むにつれ、さらなる給与アップも期待できるでしょう。

まとめ

特定行為看護師は、在宅医療の推進のほか医師の働き方改革に伴うタスク・シフト/タスク・シェアの推進を担う役割として期待されています。今後、特定行為看護師のニーズはさらに高まると予想されており、活躍の場は広がるでしょう。

特定行為看護師になるには、時間と費用がかかります。しかし、特定行為看護師になることで、キャリアアップや給与アップが叶う可能性も。スキルアップしたい分野がある方は、特定行為研修の受講を検討されてみてはいかがでしょうか。

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