• 2022年5月30日
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認定看護師とは? 役割や分野・資格取得の条件を丁寧に解説

 

看護師としてのキャリアアップを考えている方の中には、「認定看護師」という資格認定制度を見聞きしたことがある方もいるでしょう。認定看護師の資格を取得する過程で、看護に関する知識やスキルを深められるとされていますが、認定看護師は看護の現場でどのような役割を果たしているのでしょうか。

当記事では、認定看護師の役割や認定を受けられる看護分野の概要、認定看護師になるための条件や流れを解説します。新認定制度に対応するための移行手続きも併せて確認し、看護師としてのスキルアップを目指しましょう。

認定看護師とは?

認定看護師とは、特定の看護分野において熟達した高度な知識・看護技術を持っている看護師として、日本看護協会の認定を受けた方を指します。

認定看護師の数は年々増加しており、2021年12月時点では22,577人の認定看護師が全国各地で活躍しています。認定看護師が活躍する職場は多岐にわたり、病院やクリニックなどの医療機関のほか、訪問看護ステーションや介護保険施設などに勤務する認定看護師も少なくありません。
(出典:日本看護協会「専門看護師・認定看護師・認定看護管理者」
(出典:日本看護協会「認定看護師ってどんな看護師? 」
(出典:日本看護協会「認定看護師数 推移」

認定看護師の3つの役割

近年、医療や看護の現場で高度化・専門分化が急速に進む中、認定看護師の役割は以下の3つが挙げられます。

(1)実践
認定を受けた看護分野における専門知識に基づいて適切な判断を行い、熟練した看護技術を発揮して高い水準の看護を実践することが認定看護師の役割の1つです。

(2)指導
一般の看護職に対し、自らの看護実践を通して専門知識や看護スキルを指導し、職場全体で高水準な看護ケアを行えるよう育成を推進することも、認定看護師の大切な役割です。

(3)相談(コンサルテーション)
看護の現場では、1人の看護師では解決困難な問題・疑問に直面することもあります。認定看護師は、このような状況に直面した看護職・その他職員の相談を受け、解決策や改善策を提案する役割も担います。

(出典:日本看護協会「専門看護師・認定看護師・認定看護管理者」
(出典:日本看護協会「認定看護師ってどんな看護師? 」

現行の認定看護師の21分野

「認定看護分野」とは、熟練の看護スキルや高度な専門知識を必要とする看護分野として、日本看護協会が認定した分野を指します。認定看護師を目指す場合、それぞれ自分に適した認定看護分野を選択したうえで、勉強を進める必要があります。

分野名 英語表記 特徴
救急看護 Emergency Nursing
  • 救急医療の現場で病態に応じた救命活動や的確なトリアージの実施
  • 患者さん・家族に対するサポートの早期開始
皮膚・排泄ケア Wound, Ostomy and Continence Nursing
  • 創傷管理
  • 排泄管理
  • 皮膚・排泄の自己コントロール・セルフケアのサポート
集中ケア Intensive Care
  • 患者さんの病態変化の予測
  • 重篤化・二次的合併症の予防
  • 早期リハビリテーションの実施
緩和ケア Palliative Care
  • 苦痛症状の緩和
  • 喪失・悲嘆へのケア
がん化学療法看護 Cancer Chemotherapy Nursing
  • がん化学療法薬の適切な取り扱いと投与管理、副作用症状の緩和
  • 副作用症状対策・セルフケアのサポート
がん性疼痛看護 Cancer Pain Management Nursing
  • 疼痛の評価と患者さんに合わせたケア
  • 適切な薬剤を用いた疼痛緩和
訪問看護 Visiting Nursing
  • 在宅療養者の自己決定を尊重したセルフケア支援
  • 状況に応じた看護スキルの提供・管理
感染管理 Infection Control
  • 感染症の調査監視(サーベイランス)
  • 各施設における感染状況の評価
  • 感染対策・管理システムの構築
糖尿病看護 Diabetes Nursing
  • 血糖管理・マネジメント
  • 疾病の管理と療養生活のサポート
不妊症看護 Infertility Nursing
  • 生殖医療を受ける方への情報提供
  • 自己決定のサポート
新生児集中ケア Neonatal Intensive Care
  • ハイリスク新生児における病態変化予測
  • 重篤化の予防
  • 生理学的安定および発育促進のケア
  • 適切な親子関係構築のためのサポート
透析看護 Dialysis Nursing
  • 安全で苦痛の少ない透析管理
  • 療養生活におけるセルフケア・自己決定の支援
手術看護 Perioperative Nursing
  • 手術侵襲の最小限化
  • 二次的合併症予防のための安全管理
  • 手術中・手術前後における継続的な看護の実践
乳がん看護 Breast Cancer Nursing
  • 患者さんのセルフケア・自己決定支援
  • ボディイメージの変容により発生する問題への支援
摂食・嚥下障害看護 Dysphagia Nursing
  • 摂食機能・嚥下機能のアセスメント
  • 誤嚥性肺炎や窒息、脱水、栄養低下の予防
  • 安全で適切な摂食・嚥下訓練の検討と実施
小児救急看護 Pediatric Emergency Nursing
  • 小児患者さんの病態に応じた救命活動・トリアージの的確な実施
  • 育児への不安や虐待への対応
  • 子ども・親の権利擁護
認知症看護 Dementia Nursing
  • 認知症における各期に適したケア体制の構築
  • 療養環境の整備
  • 行動心理症状の予防と緩和
脳卒中リハビリテーション看護 Stroke Rehabilitation Nursing
  • 脳卒中患者さんの重篤化予防
  • 早期リハビリテーションの検討と促進
  • 機能回復のための適切な支援
がん放射線療法看護 Radiation Oncology Nursing
  • 副作用症状の予防や緩和
  • セルフケア支援
  • 安全で苦痛の少ない治療が可能な環境の提供
慢性呼吸器疾患看護 Chronic Respiratory Nursing
  • 各病期に適した呼吸器機能のアセスメントと管理
  • 呼吸リハビリテーションの検討と実施
  • 急性増悪予防を目的とするセルフケアのサポート
慢性心不全看護 Chronic Heart Failure Nursing
  • 生活環境の調整とセルフケア支援
  • 心不全増悪因子に関する評価・モニタリング

(出典:日本看護協会「認定看護師」

なお、認定看護師の制度は現在移行期にあり、現行の認定看護分野は2026年度をもって教育終了となることに注意しましょう。

1-3. 新たな認定看護師の19分野

認定看護師の新たな制度は、2020年度から現行制度と並行して実施されてきましたが、2027年度以降は新たな認定看護師制度のみとなります。

分野名 英語表記 特徴
感染管理 Infection Control
  • 感染予防・管理システムの構築
  • 感染予防・管理に関する評価とケアの改善
  • 感染サーベイランスの立案と実施、評価
  • 感染兆候のある方への適切な薬剤臨時投与
がん放射線療法看護 Radiation Oncology Nursing
  • 患者さんの心身および社会的アセスメント
  • セルフケア支援
  • 医療被曝に対する安全管理スキル・防護技術
がん薬物療法看護 Cancer Chemotherapy and Immunotherapy Nursing
  • 適切な投与管理・危機管理、症状の緩和
  • 在宅療養時における治療管理
  • 患者さんや家族による主体的な意思決定支援
  • 療養生活の支援
緩和ケア Palliative Care
  • 痛みや周辺問題の評価と対応・緩和
  • 症状マネジメント
  • 家族が感じる喪失や悲嘆への対応
クリティカルケア Critical Care
  • 重篤化回避
  • 安全で苦痛の少ない早期回復へのサポート
  • 投薬管理
  • 呼吸器管理からの離脱の判断
  • 点滴薬剤の安全かつ確実な管理
呼吸器疾患看護 Respiratory Nursing
  • 呼吸症状のモニタリングおよび評価
  • 重症化の予防
  • 療養生活支援・調整
  • 症状緩和マネジメント
  • 呼吸器管理からの離脱の判断
在宅ケア Home Care
  • QOLの維持・向上、およびセルフケア支援
  • 患者さんが抱える課題に対する解決策の提案
  • 在宅療養移行のサポート・多職種との協働や連携
  • 気管カニューレなどの安全な交換
  • 褥瘡や壊死組織の安全な除去
手術看護 Perioperative Nursing
  • 手術関連の苦痛ケア
  • 手術中の患者における急変や緊急事態への対応
  • 病態の的確な判断による安全かつ適切な処置の実践
小児プライマリケア Pediatric Primary Care
  • 重篤な子どもなどの重症化予防
  • 的確なトリアージ ・ホームケア指導
  • 虐待の予防と早期発見、子どもの事故防止
  • 安全かつ適切な気管カニューレ交換の実施
新生児集中ケア Neonatal Intensive Care
  • ・ハイリスク新生児における急性期の管理、個別ケアと家族形成支援
  • 虐待のリスクに関する予測と予防
  • 安全かつ適切な気管カニューレの交換
心不全看護 Heart Failure Nursing
  • 心不全症状のモニタリングおよび評価
  • 重症化予防
  • 地域での療養生活支援・調整
  • 症状緩和に向けたマネジメント
  • 持続点滴中の薬剤の安全かつ的確な投与量調整
腎不全看護 Nephrology Nursing
  • 病状の悪化予防および早期発見
  • 症状マネジメントとセルフケアサポート
  • 患者さんの自己決定に関する支援
  • 安全かつ的確な透析管理
生殖看護 Reproductive Health Care
  • 専門知識に基づく妊孕性評価
  • 意思決定の支援
  • 妊孕性の温存と受胎調節についての指導
摂食嚥下障害看護 Dysphagia Nursing
  • 摂食嚥下機能の評価および適切な援助・訓練の提供
  • 誤嚥性肺炎や窒息などを防止するためのリスク管理
糖尿病看護 Diabetes Nursing
  • 血糖管理・マネジメント
  • 透析予防と療養生活の支援
  • 予防的なフットケア
  • 安全かつ的確なインスリン投与量調節
乳がん看護 Breast Cancer Nursing
  • 術後合併症の予防・緩和を目的とするケア
  • 意思決定の支援
  • 治療に伴う女性性と家族の支援
  • 乳房検診 ・乳がん治療関連合併症の予防と管理
  • 安全かつ的確な創部ドレーン抜去
認知症看護 Dementia Nursing
  • 認知症症状のマネジメント
  • 療養生活における環境整備
  • コミュニケーション手段の提案
  • 患者さんの意思決定支援、社会的・心理的支援
  • 抗けいれん剤などの的確な臨時投与
脳卒中看護 Stroke Nursing
  • 重篤化回避を目的とするモニタリング、ケア
  • 早期離床支援
  • ケアマネジメントおよび意思決定支援
  • 抗けいれん剤などの的確な臨時投与
皮膚・排泄ケア Wound, Ostomy and Continence Nursing
  • 褥瘡の総合的なマネジメント
  • ストーマケアや専門的な排泄管理・スキンケア
  • 同行訪問の実施・マネジメント
  • 褥瘡や壊死組織の除去、陰圧閉鎖療法の実施

(出典:日本看護協会「認定看護師」

認定看護師の新たな認定制度では、より専門性の高い知識・スキルや理解力、思考力、判断力が求められる「特定行為」を行うための研修が組み込まれています。看護師として取り組める仕事が増えれば、さらなるキャリアアップ・昇給につなげられるでしょう。

認定看護師になるには? 一連の流れ

認定看護師になるには? 一連の流れ

認定看護師の資格を取得することにより、認定看護分野における専門性を高め、看護師としてのキャリアアップを目指せます。認定看護師の資格を取得するための一連の流れは以下の通りです。

(1) 認定看護師の認定を受けるのに必要な要件を満たす
(2)

認定看護師教育機関に入学し、所定の課程を修了する

※A課程:特定行為研修なし(2026年度で終了)

※B課程:特定行為研修あり

(3) 認定看護師認定審査(筆記試験)を受ける
(4) 認定看護師認定証の交付を受けるために看護師名簿に登録する
(5) 5年ごとに更新審査(自己研鑽や看護現場への貢献などに関する審査)を受ける
(出典:日本看護協会「認定看護師」

認定看護師に求められる条件

認定看護師教育機関に入学するためには、「看護師免許の取得」と「通算5年以上の実務研修(特定看護分野の実務研修3年以上を含む)」の2点を満たす必要があります。特定看護分野の実務研修は、各分野によって内容が異なりますが、全般的に以下のような内容が求められます。

  • 特定看護分野における通算3年以上の看護経験を持つ
  • 特定看護分野での患者さんを5例以上担当した実績がある

たとえば、がん化学療法看護では「がん化学療法を受ける患者さんの多い病棟などで、通算3年以上の看護ケア実績を持つこと」などが挙げられます。また、緩和ケアでは、「緩和ケアを受ける患者さんを5例以上担当した実績があること」などが求められます。希望する看護分野で求められる実務研修内容を確認しておきましょう。
(出典:日本看護協会「認定看護師」
(出典:日本看護協会「特定看護分野の実務研修内容の基準【A課程教育機関】」
(出典:日本看護協会「特定看護分野の実務研修内容の基準【B課程教育機関】」

認定看護師になれる学校・費用

認定看護師になるためには、受験条件を満たしたうえで認定看護師教育課程のある教育機関の入学試験を受けて合格し、所定の課程を修了する必要があります。時間数や開講期間などは、その教育機関がA課程なのかB課程なのかによって変わります。

  A課程認定看護師教育機関 B課程認定看護師教育機関
時間数 600時間以上 800時間前後
開講期間 6か月~1年以内 1年以内
方法 集合教育 主に集合教育
(一部e-ラーニングの場合もあり)
(出典:日本看護協会「認定看護師」

認定看護師教育機関の入学試験に関する出願期間・試験日・合格発表日などの詳細は、学校によって異なります。9〜11月ごろに出願、11〜12月ごろに試験、その1〜4週間後ごろに合格発表という日程の学校も多く見られますが、1月ごろに出願を受け付ける学校もあります。

なお、検定料や入学金、授業料などの学費も、学校や認定看護分野によって異なります。たとえば、日本看護協会の会員が看護研修学校(B課程教育機関)に通学する場合は、以下のような費用が必要となります。

  • 検定料…5万円
  • 入学金…5万円
  • 授業料…112万円(例:クリティカルケア学科)

(出典:日本看護協会 看護研修学校「2022年度 認定看護師教育課程 特定行為研修を組み込んでいる教育課程(B課程教育機関)募集要項」

認定看護師になるための審査

認定看護師教育課程修了後には、日本看護協会による「認定看護師認定審査」を受ける必要があります。Web申請を行い審査料を振り込んだうえで、必要書類を提出しましょう。

認定審査は、筆記試験(四肢択一のマークシート方式)によって行われます。審査結果はWeb上で個別に発表されるため、確認を忘れないようにしましょう。合格者は認定料の振り込みやWeb上での認定登録情報の登録といった手続きを行うことで、認定看護師として活躍できるようになります。
(出典:日本看護協会「審査に関するご案内 認定看護師」

現行から新たな認定看護師に移行する方法

現行から新たな認定看護師に移行する方法

すでに現行の認定看護師資格を取得している方は、特定行為研修を受講し、必要な手続きを行うことで新たな認定看護師資格へと移行できます。現行から新たな認定看護師資格に移行する際のポイントは下記の通りです。

特定行為研修の受講 指定研修機関や特定行為区分に関する制限はありません。自分に必要と思われる特定行為区分の研修について、自分が学びやすい機関で受講しましょう。
移行手続き 特定行為研修以外の追加履修は不要です。日本看護協会で移行手続きと名簿への登録を行いましょう。
移行後の認定看護分野

移行後の認定分野は、次の(1)〜(3)のいずれかになります。

(1)現在取得済みの認定看護分野
(2)統合した分野
(3)分野名を変更した分野

(出典:日本看護協会「新たな認定看護師への移行」

認定看護師と専門看護師の違い

専門看護師とは、特定の分野における深い専門知識や卓越したスキルを活かして、高品質なケアを患者さんや家族に提供できる看護師を指します。認定看護師が看護現場のスペシャリスト的な存在であるのに対し、専門看護師は看護分野全体のスペシャリストであり、求められる役割・仕事内容も認定看護師より多くなります。

また、認定看護師と専門看護師では、資格の難易度や特定分野の項目数などにも違いが見られます。看護師として将来どのような働き方をしたいか考えたうえで、どちらを目指すのか検討しましょう。

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まとめ

認定看護師とは、特定の看護分野で高度な専門知識・熟練のスキルを有すると認定された看護師を指します。認定看護師になるためには、必要な条件を満たしたうえで認定看護師教育課程を修了し、認定審査に合格する必要があります。専門看護師などほかの資格と比較したうえで、自分のキャリアプランに適した資格の取得を目指しましょう。資格取得支援がある環境もあるので以下のリンクからチェックしてみてください。

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※当記事は2022年4月時点の情報をもとに作成しています

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