• 2022年3月2日
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専門看護師とは? 資格取得の条件・メリット・認定看護師との違い

 

看護師がキャリアアップを図るための手段の1つが、「専門看護師」や「認定看護師」の資格取得です。専門看護師・認定看護師はいずれも看護師の上位資格であり、いわゆる「深い看護技術と知識をもった看護のスペシャリスト」ともいえます。

そこで今回は、専門看護師を中心に概要や目指すための方法、認定取得のメリット、認定看護師との違いなど基礎知識を徹底的に解説します。専門看護師の役割や仕事内容を知りたい・専門看護師の認定を取得してスキルアップを図りたいと考えている現役看護師の皆さんは、ぜひ参考にしてください。

専門看護師とは?

専門看護師とは、特定の分野において水準の高い看護ケアを効率よく行える、深い看護知識と技術をもちあわせた看護師のことです。専門看護師制度は、日本看護協会が日本看護系大学協議会と連携・認定しています。

スタンダードな看護師資格の上位資格でもあり、専門看護師認定資格の取得は看護師がキャリアアップを図るための手段の1つとなっています。

専門看護師の認定資格を取得している看護師数は、2021年12月時点で全国2,944人(※1)でした。2010年からは200〜300人程度のペースで増加しており、医療ニーズの高まりにより今後も徐々に増加するでしょう。
(※1出典:公益社団法人日本看護協会「都道府県別専門看護師登録者数(日本地図版)」
(出典:公益社団法人日本看護協会「専門看護師」

専門看護師の6つの役割

専門看護師は、特定の看護分野において下記6つの役割を担うことが特徴です。

役割 詳細
(1)実践 個人や家族・集団に対し、卓越した看護を実践する
(2)相談 ケア提供者(看護者を含む)に対し、コンサルテーションを行う
(3)調整 必要なケアを円滑に行うため、保健・医療・福祉に携わる職員間のコーディネーションを行う
(4)倫理調整 個人や家族・集団の権利を守るための「倫理的問題や葛藤の解決」を図る
(5)教育 ケアの質を向上させるための「看護者に対する教育的役割」を果たす
(6)研究 専門知識・技術の向上・開発を図るための「実践の場における研究活動」を行う

上記の役割を見て分かるように、専門看護師は現場における実践・指導能力だけでなく、倫理調整や研究能力も重要となります。
(出典:公益社団法人日本看護協会「専門看護師」

専門看護師の13分野

専門看護師で認定されている専門看護分野、いわゆる特定分野は、2022年1月現在下記の13分野となっています。

分野名 英語表記 特徴
がん看護 Cancer Nursing がん患者の身体的・精神的苦痛を理解し、患者さんやその家族に対し質の高い看護ケアを提供する
精神看護 Psychiatric Mental Health Nursing 精神疾患患者や心のケアが必要な患者さんに対し、質の高い看護ケアを提供する
地域看護 Community Health Nursing 学校保健・産業保健・保健行政・在宅ケアのいずれかの領域で質の高い看護ケアを提供し、地域発展に貢献する
老人看護 Gerontological Nursing 高齢者施設において、高齢者ならではの健康問題をもつ利用者のQOL向上を目的に、質の高い看護ケアを提供する
小児看護 Child Health Nursing 子どもが健やかに成長できる療養生活を支援し、ほかの医療スタッフと連携しながら質の高い看護ケアを提供する
母性看護 Women’s Health Nursing 周産期の母子や家族への支援、女性ならではの健康サポートを含む質の高い看護ケアを提供する
慢性疾患看護 Chronic Care Nursing 慢性的な心身の不調を抱える患者さんの健康管理・療養支援や、生活習慣病の予防を含む質の高い看護ケアを提供する
急性・重症患者看護 Critical Care Nursing 緊急度の高い重症患者に対して、集中的かつ質の高い看護ケアを提供し、家族の支援や医療スタッフ間の調整による環境整備を行う
感染症看護 Infection Control Nursing 地域や施設内における感染症予防と発生時の患者に対する適切な対策・質の高い看護ケアを提供する
家族支援 Family Health Nursing 患者さんの回復促進に向け、個々のセルフケア機能の向上も含む質の高い看護ケア・支援環境を提供する
在宅看護 Home Care Nursing 在宅療養中の対象者やその家族のセルフケア機能を維持しながら在宅療養を続けられるため、質の高い看護ケア・支援環境を提供する
遺伝看護 Genetics Nursing 対象者の遺伝的課題を見極め、診断や治療、予防に伴う意思決定や療養生活の支援を行い、医療ケアの体制構築・ゲノム医療の発展に貢献する
災害看護 Disaster Nursing 災害の特性を踏まえたうえで、有限の人的・物的資源の中で適切な看護ケアを提供し、防災体制の構築や災害看護の発展に貢献する

(出典:公益社団法人日本看護協会「専門看護師」

なお、専門看護師になるためには上記すべての分野について知識・技術が必要なわけではありません。いずれかの分野で認定されれば、「専門看護師」として認められます。国内で特に登録者数(認定者)が多い分野は、がん看護です。

専門看護師になるには? 一連の流れ

専門看護師の認定審査を受けている様子

下記は、専門看護師になるための主な流れです。

(1) 専門看護師の認定を受けるのに必要な要件を満たす
(2) 認定審査(書類審査・筆記試験)を受ける
(3) 認定審査に合格したら、専門看護師認定登録を行う
(4) 認定取得以降、5年ごとに資格更新を行う
(出典:公益社団法人日本看護協会「専門看護師」

上記の通り専門看護師は、看護実績を含む必須要件を満たしたうえで認定審査に合格しなければ、認定資格を取得することができません。一般的な看護師の上位資格といわれることからも分かるように、取得の難易度はやや高いといえます。

なお、専門看護師はレベル保持のために認定更新制となっており、認定を受けてから5年ごとに更新審査を受けなければなりません。更新の際にも一定の条件が定められていること・税込30,800円の更新審査料が発生することにも注意してください。

専門看護師に求められる条件

専門看護師になるためには、当然ですが「看護師免許」をもっていることが必須です。その他必須とされている条件が、「看護系大学院において専門看護師教育課程を修了し、かつ5年以上の実務研修経験があること」となっています。なお、実務研修期間5年以上のうち3年は、取得を目指す専門分野の実務研修でなければなりません。

専門看護師に求められる条件
  • 「看護師免許」をもっていること
  • 看護系大学院において専門看護師教育課程を修了していること
  • 5年以上の実務研修経験があり、うち3年は専門分野の実務研修であること
(出典:公益社団法人日本看護協会「専門看護師」

専門分野の実務研修は、フィールドもある程度定められています。一例として、がん看護・老人看護・感染症看護の実務研修について下記に紹介します。

分野 実務研修におけるフィールド
がん看護 行っている業務のうち、半分以上をがん看護に費やしている
老人看護 高齢者(65歳~)に対する老人看護の実務研修を行っている
感染症看護

下記いずれかに関する感染症看護の実務研修を行っている

  • 医療施設などにおける感染管理活動
  • 困難な問題を有している感染症患者などに対する看護
(出典:公益社団法人日本看護協会「専門看護分野の実務研修におけるフィールドについて」

専門看護師になれる学校・費用

専門看護師を目指せる学校は、専門看護師教育課程のある看護系大学院が挙げられます。このような大学院に入学するためには、大学院の選抜試験に受験し、合格しなければなりません。

看護系大学院の一般的な入学試験スケジュールは、下記の通りです。

願書受付期間

第1期:入学希望年度の前年度7月ごろ

第2期:入学希望年度の1月ごろ

試験日 願書受付期間終了から約2週間~1か月後
試験方法(選抜方法) 書類審査・学力試験・口述試験・面接・小論文など
合格発表日 試験日終了から約10日~2週間後

また、入学検定料や入学料、授業料は大学院によって細かに異なります。例として、下記は東京女子医科大学の入学検定料・入学料・授業料です。

検定料 30,000円
入学料

300,000円
※東京女子医科大学の看護学部卒業者の場合は200,000円

授業料 900,000円/年
(出典:東京女子医科大学「大学院 博士前期課程」

日本看護協会の公式ホームページからは、専門看護師教育課程のある看護系大学院を探すことができます。なお、都道府県によっては教育機関がなかったり、希望の分野がなかったりする可能性があることに注意してください。

専門看護師になるための審査

専門看護師の審査は、主に書類審査と論述式の筆記試験となります。筆記試験は事例問題・総合問題の2ジャンルが出題され、いずれも100点ずつの配点です。試験時間は、2ジャンルあわせて120分となります。

また、審査を受けるためにはまず「資格認定制度 審査・申請システム」でWeb申請を行います。申請書類を作成し、審査料(税込51,700円)を振り込んだのち、申請書類を提出しましょう。

審査の合否は、Web申請を行ったシステムページと同様のサイト(「資格認定制度 審査・申請システム」)にて開示・発表されます。なお、その1週間後には日本看護協会の公式ホームページにて1か月間公表します。

合格者は、「資格認定制度 審査・申請システム」からすみやかに専門看護師登録手続きを行いましょう。このとき、税込51,700円の認定料を振り込む必要があります。認定料を振り込んだのち、「資格認定制度 審査・申請システム」にて認定登録情報の確認および公開情報を登録すれば、専門看護師登録手続きは完了です。
(出典:公益社団法人日本看護協会「専門看護師」
(出典:公益社団法人日本看護協会「審査に関するご案内 専門看護師」

【状況別】専門看護師になるのに大学院に通う方法

専門看護師になるのに大学院に通う方法

2019年12月時点で登録されていた全専門看護師を対象としたアンケート(有効回収数:838名)において、「就学中の就労状況」データでは下記のような結果となっていました。

所属していた施設に「常勤スタッフ」として就労し続けていた 24.9%
施設に所属はしていたものの、就学中は休職していた 21.7%
所属していた施設に「非常勤スタッフ」として就労し続けていた 4.1%
就学に伴って、所属していた施設を退職した 42.1%
(出典:公益社団法人日本看護協会「2019年専門看護師活動実態調査結果」

上記のアンケート結果から、実務経験を積みながら大学院に通うことはやや大変となるものの、決して不可能ではないことが分かります。

また、専門看護師を目指して大学院に通う方法は、状況によってあらゆる方法に分けられます。

専門学校卒の場合

専門学校卒の場合、大卒ではなくても看護師としての実務経験があれば大学院に出願できる可能性があります。大学院によって条件は細かに異なるため、事前にチェックしておきましょう。

大卒の場合

看護系大学以外の大学出身でも、出願資格は十分にあります。現在、看護系大学以外の大学に通っている場合は、希望分野の専門看護師を目指せる大学院を探すとよいでしょう。

働きながら専門看護師を目指す場合

働きながら専門看護師を目指す場合は、長期履修学生制度など就労しながら履修できる制度がある大学院を探すことがおすすめです。ただし、仕事と勉強の両立は決して簡単ではなく、努力が必要となることに注意してください。

専門看護師の認定を取得するメリット

専門看護師の認定を取得するメリット

専門看護師の認定を取ると、高度な知識やノウハウが身に付くことで活躍の場が広がり、やりがいも増えます。さまざまな仕事を任せられるようになれば、結果として給与アップや待遇改善も期待できるでしょう。

ここからは、専門看護師の認定を取得するメリットや、認定を取得することで働き方にどのような変化が生じるのかを詳しく紹介します。

4-1. 今までよりも活躍の場が広がる

専門看護師の認定取得による、最も大きなメリットが「活躍の場が広がる」ことです。特定分野におけるプロフェッショナルとなることで、配属している診療科だけでなく、他部署に配属している医療チームや個々のスタッフからも頼りにされるでしょう。結果として多くのやりがいにつながることも魅力です。

実際に、2019年度の専門看護師活動実態調査では、専門看護師の役割のうち「実践」「教育」の部分において最も成果をあげたと回答している専門看護師の方も多くいました。

「実践の部分において成果をあげた」と回答した専門看護師 33.7%
「教育の部分において成果をあげた」と回答した専門看護師 18.5%
(出典:公益社団法人日本看護協会「2019年専門看護師活動実態調査結果」

このように、専門看護師は現場での看護実践能力だけでなく、後輩看護師や准看護師の看護教育・人材育成においても発揮する資格といえます。

給料が上がる可能性がある

専門看護師の認定を取得すると、給与アップにつながる傾向にあります。実際に全体の約30%の医療施設では、業務成績に関係なく、専門看護師の認定取得により賃金の優遇を行っています。主な優遇措置は「資格手当」で、平均手当額は12,926円です。
(出典:公益社団法人日本看護協会「看護職の賃金 処遇の現状と改善に向けたポイント」
(出典:公益社団法人日本看護協会「2012 年 病院勤務の看護職の賃金に関する調査」

なお、上記のデータは2012年~2015年度のデータであり、高齢化社会の加速により医療ニーズが高まった現在では、賃金優遇を取り入れている医療施設がさらに増加している可能性があります。

院内外で人脈を形成できる

専門看護師になると、院内外での人脈を形成できる点もメリットです。専門看護師は院内の「調整」も重要な役割であり、複数診療科の医師や看護師、さらに各種専門職(臨床検査技師・理学療法士・薬剤師など)との連携だけでなく、ほかの医療機関や地域の介護福祉関係者・医療ソーシャルワーカーとも連携する機会があります。

このように院内のみならず、院外にまで人脈が広がり、看護専門分野の研修会や新人看護師が受講するセミナーの講師として呼ばれるケースも少なくありません。人脈の広がりは、結果として自分自身の成長にもつながるでしょう。

専門看護師の主な就職先

専門看護師の主な就職先

専門看護師の主な就職先は、医療機関(一般病棟・外来病棟・救急指定病院など)です。さらに、分野によっては企業や学校などでも大いに活躍でき、専門看護師の就職先は幅広いといえるでしょう。

具体的な活躍フィールドは、2019年度の専門看護師活動実態調査で公表されています。下記は、特に多かった専門看護師の活躍フィールドです。

病棟 64.4%
一般外来 39.3%
教育部門 30.1%
看護専門外来 25.5%
(出典:公益社団法人日本看護協会「2019年専門看護師活動実態調査結果」

専門看護師と認定看護師の違い

専門看護師と認定看護師との違い

看護師資格の上位資格には、専門看護師だけでなく「認定看護師」もあります。認定看護師とは、特定分野において熟練した看護知識・看護技術を用いて質の高い看護ケアを提供する看護師のことです。実践・指導・相談の3つの役割を担う、いわゆる看護現場のスペシャリストといえます。

  専門看護師 認定看護師
概要 看護分野全般のスペシャリスト 看護現場のスペシャリスト
役割 「実践・相談・調整・倫理調整・教育・研究」の6つ 「実践・指導・相談」の3つ

やや似ている認定資格ですが、専門看護師は現場での活動だけでなく、看護教育・研究の分野でも役割を果たすことのできる「看護分野全般のスペシャリスト」です。専門看護師のほうが狭き門となる分、成長や給与アップが見込める認定資格といえるでしょう。
(出典:公益社団法人日本看護協会「専門看護師」
(出典:公益社団法人日本看護協会「認定看護師」

専門看護師と認定看護師のどちらを資格取得すべき?

専門看護師と認定看護師はいずれも専門性の高い看護師の上位資格であり、キャリアアップや給与アップを目指す看護師の方にはおすすめの資格です。では、専門看護師と認定看護師では、どちらの資格を取得すべきなのでしょうか。下記に、それぞれの資格取得が向いている人を説明します。

<専門看護師が向いている人>

  • 看護分野全般の知識をもったうえで、医療機関・患者さんの橋渡しをしたい人
  • 対象分野の専門的知識や技術を深く身に付けたい人
  • 看護系大学・大学院に在籍している人、または看護系大学・大学院を卒業した人
  • 患者さんとその家族を倫理的な面からサポートしたい人

<認定看護師が向いている人>

  • 現場での実践力にこだわり、特定分野の知識や技術を身に付けたい人
  • 看護の現場において、患者さんにより質の高いケアを提供したい人
  • 看護学校・専門学校に在籍している人、または看護学校・専門学校を卒業した人

専門看護師・認定看護師は、いずれも水準の高い知識と技術が求められます。各資格の役割を理解し、自分に適した資格はどちらなのかをしっかり検討したうえで、資格取得によるキャリアアップを図りましょう。

まとめ

専門看護師とは、日本看護協会が日本看護系大学協議会と連携・認定している資格であり、特定の分野において水準の高い看護ケアを効率よく行える、深い看護知識と技術をもちあわせた看護師のことです。特定の看護分野において全6つの役割を担っており、いわゆる「看護分野全般のスペシャリスト」として活躍することができます。

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