• 2023年9月16日
  • 2025年8月21日

バイスタンダーとは? 役割・救命処置の手順・注意点を解説

 

何らかの事故や病気で倒れている方に救命処置を行うのは、決して医療従事者だけではありません。街中を歩いているときに傷病者を見かけたら、「バイスタンダー」として一次救命処置を実施する必要があります。

この記事では、バイスタンダーの概要や役割、一次救命処置の流れを紹介します。また、バイスタンダーが与える救命率への影響、救命処置をする際の注意点を解説しているので、ぜひご一読ください。

バイスタンダーとは

バイスタンダーとは、傷病者が発生した場面に偶然居合わせた人のことです。
たとえば、家族が突然倒れたとき、職場で同僚が意識を失ったとき、道端で見知らぬ人が倒れていたときなど、誰もがバイスタンダーになる可能性があります。

英語の「bystander」は本来「傍観者」という意味ですが、救命の現場ではもう一歩踏み出す存在として捉えられます。ただ見ているだけではなく、119番通報や心肺蘇生、AEDの使用など、できることを行う人こそが真のバイスタンダーです。救急隊が到着するまでのわずかな時間にとった行動が、その人の命を左右することもあります。

バイスタンダーの役割

バイスタンダーの主な役割は、救急隊が到着するまでの間に命をつなぐ行動をとることです。具体的には、意識や呼吸などの確認、119番通報、一次救命処置が挙げられます。

基本的に、119番通報から救急車が現場に到着するまでには数分~10分程度の時間がかかります。この間に傷病者の発見者であるバイスタンダーが適切な応急処置を施すことによって、傷病者の命や今後が大きく変わることもあるのです。

一次救命処置の手順

一次救命処置とは、心肺が停止した人に対して、救急隊が到着するまでの間にバイスタンダーが行う初期対応のことです。主な内容は、「意識と呼吸の確認」「胸骨圧迫による心肺蘇生」「AEDの使用」です。人工呼吸は、必要に応じて実施します。

以下では、一次救命処置の手順について解説します。

1.安全確保と反応確認

まず周囲の安全を確認し、危険がないことを確かめます。傷病者の肩を軽くたたきながら大声で呼びかけ、反応の有無を判断します。反応がない場合や判断に迷う際は、心停止の可能性があります。

2.119番通報とAED要請

大声で周囲に助けを求め、119番通報とAEDの手配を依頼します。一人の場合は、まず通報を行ってから救命処置を開始します。

3.呼吸の確認

胸と腹の動きを10秒以内で観察し、普段どおりの呼吸があるかを確認します。呼吸がない、または異常な呼吸の場合は心停止と判断します。

4.胸骨圧迫と人工呼吸

胸の真ん中に手のひらを重ね、約5cm沈む強さで圧迫します。テンポは1分間に100~120回で、絶え間なく継続します。人工呼吸の技術がある場合は、30回の胸骨圧迫と2回の人工呼吸を組み合わせます。

5.AEDの使用

AEDが到着したら電源を入れ、音声案内に従って電極パッドを貼付します。解析後、電気ショックが必要な場合は周囲の安全を確保してから実施します。

6.心肺蘇生の継続

救急隊到着まで心肺蘇生を継続し、AEDによる解析を2分おきに繰り返します。あきらめずに処置を続けることが救命につながります。

参照元:一般財団法人日本救急医療財団「救急蘇生法の指針」

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バイスタンダーの行動が救命率に与える影響

バイスタンダーによる応急手当は、心停止傷病者の救命率に劇的な効果をもたらします。

東京消防庁の2022年のデータによると、バイスタンダーによる目撃のある心停止傷病者5,343人のうち、応急手当が実施されたのは2,710人(50.7%)でした。

搬送人数 収容前
心拍再開者数
収容前
心拍再開率
1ヶ月生存者 1ヶ月生存率
応急手当あり 2,710人 522人 19.3% 300人 11.1%
応急手当なし 2,633人 288人 10.9% 89人 3.4%

バイスタンダーによる応急手当がある場合とない場合を比較すると、病院収容前の心拍再開率は約1.7倍高くなり、1ヶ月生存率においては約3.2倍もの差が生じています。

時間の経過とともに救命のチャンスは低下します。しかし、バイスタンダーによる救命処置があることで、その低下を大幅に抑制可能です。救急車が到着するまでに10分程度かかることを考えると、この間の応急手当が生死を分ける重要な要因になるといえるでしょう。

参照元:東京消防庁「応急手当の重要性」

バイスタンダーが救命処置を行う際の注意点

バイスタンダーが救命処置を行う際の注意点

バイスタンダーが傷病者に対して一次救命処置を行う場合は、下記2つの点に注意が必要です。

人工呼吸をするときは専用のマスクを使用する

バイスタンダーが傷病者に人工呼吸を行う場合は、可能な限り専用マスクを使用しましょう。双方のいずれかが感染症に罹患している場合、相手への感染が懸念されるためです。なお、人工呼吸用のマスクがなかった場合は、救急隊に急病人を引き継いだのち、速やかに接触部分の洗浄・消毒を行いましょう。

手袋やガーゼを使用する(患部に直接触れない)

傷病者が出血している場合は、患部に直接触れると傷口からウイルスや細菌が侵入することによって、感染症リスクが高まります。したがって、可能な限り手袋の装着とガーゼでの患部圧迫(止血)を実施しましょう。なお、使用した手袋やガーゼは、感染症予防のために直接触れないようにして破棄します。

バイスタンダーによる救命処置の事例

バイスタンダーによる救命処置の事例

バイスタンダーの救命処置によって救われた命は、数多くあります。最後に、バイスタンダーによる救命処置の事例を3つ紹介します。

駅のホームで倒れた方を駅員が協力して応急手当を行い救命した事例です。

男性がホームで倒れたとの連絡が改札に入りました。そこで、駅員のうち1名が119番通報を、もう1名がホームへ向かいました。傷病者を観察したところ呼吸と脈がなかったので、駅員2名(うち1名は救命講習修了者)により心肺蘇生を実施しました。その後、救急隊が到着するまで、心肺蘇生が続けられました。救急隊の到着後除細動※が実施され、救急車内で傷病者の呼吸と脈が回復しました。

東京消防庁「応急手当救命実例」

会社で倒れた方に同僚が応急手当を行い救命した事例です。

会議中に男性が呼吸困難になって倒れました。しばらくして呼吸が停止し脈も感じられなくなったため、すぐに周囲の同僚2名(救命講習修了者)が心肺蘇生を実施しました。

到着した救急隊が除細動を実施したところ、救急車内で呼吸と脈が回復しました。

東京消防庁「応急手当救命実例」

意識不明となった妻に夫が応急手当を行い救命した事例です。

自宅で寝ていた妻が突然唸り声を上げた後、呼吸と脈がなくなりました。現場に向かう途中の救急隊はPHSを使って夫と連絡をとり、心肺蘇生を実施するように伝えました。夫は胸骨圧迫を救急隊到着まで続けました。

到着した救急隊が除細動を実施したところ、その場で呼吸と脈が回復しました。

東京消防庁「応急手当救命実例」

たとえ救命処置の知識を深く習得していない方でも、一次救命処置を行うことによって、命を救える可能性があります。

まとめ

心肺停止のような緊急時は、1秒の判断が生死を分けます。だからこそ、意識確認や119番通報、胸骨圧迫、AEDの使用といった一次救命処置の知識が必要です。実際に、バイスタンダーによる応急手当があるかないかで、救命率には大きな差が生じています。

バイスタンダーは、ただ現場に居合わせた人ではありません。勇気を持って行動することで、命を救う大きな力となります。大切なのは「何もしない」よりも「できることをする」という意識です。

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