• 2023年8月26日
  • 2023年8月24日

2025年問題で看護師が余るって本当? 看護師への影響や対策を解説

 

近年では、急速な少子高齢化の進行や労働人口の減少が叫ばれています。特に医療従事者は、現代においても高い需要に対して十分な供給がなく、人手不足の状態に陥っていることも実情です。

この傾向は今後も続くとされている一方で、「2025年問題では看護師が余る」という意見を見聞きしたことがある方もいるのではないでしょうか。

そこで今回は、2025年問題の概要から、2025年問題で看護師が余るといわれる理由、看護師に与える影響、さらに看護師が2025年問題に向けてできることまで詳しく紹介します。

そもそも2025年問題とは

2025年問題とは、超高齢化社会に突入するとされる2025年以降に起こり得るさまざまな社会問題の総称です。

2025年を迎えると、団塊の世代と呼ばれる方が全員75歳以上の後期高齢者となる一方で、若年人口や出生率は減少し、高齢化社会にさらなる拍車をかけるといわれています。労働力の確保・社会保障制度の構築が困難となり、結果としてさまざまな社会問題が生じると予想されています。

医療業界においては、医療従事者の不足はもちろん、社会保障費の増大や高齢者向け医療の提供体制の必要性増加といった点も懸念材料です。
(出典:厚生労働省「我が国の人口について」
    厚生労働省「全世代型社会保障構築会議の状況報告」

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2025年問題で看護師が余るといわれる理由

2025年問題で看護師が余るといわれる理由

2025年問題では多くの業界において人材不足が問題視されている一方で、看護師はむしろ余るという話を聞いたことのある方も少なからずいるでしょう。

2025年問題で看護師が余るといわれた理由は、医療コンサルティング会社であるグローバルヘルスコンサルティング・ジャパンが行ったシミュレーションがもととなっています。

厚生労働省は「平成26年度診療報酬改定」にて、1人の看護師が7人の患者さんを担当し手厚いケアを行う高度急性期病棟について、約35万7,500床から18万床へ減らす方針を定めました。
(出典:厚生労働省「平成26年度診療報酬改定の概要」

この方針が定められたのち、グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンは「改定された方針を実行することで、看護師は将来的に約14万人余る事態となる」と試算し、指摘しています。

つまり、2025年問題で余るとされた看護師は、厚生労働省によって方針が定められた高度急性期病棟で働く看護師を指しているといえます。したがって、必ずしもすべての看護師が就職難に陥るわけではありません。

実際は看護師が不足する可能性が高い

2025年問題で看護師が余るという話を見聞きし、焦りや不安を感じる看護師さんも多いでしょう。しかし、実際は看護師が不足する可能性のほうが高いといえます。

前述の通り、2025年問題では労働人口が減少し、看護師をはじめとした医療従事者の不足が懸念されていることも実情です。実際に、厚生労働省では医療従事者の需給に関する検討会の資料において「2025年には約6万~27万人の看護師が不足する」と試算しています。
(出典:厚生労働省「医療従事者の需給に関する検討会 看護職員需給分科会 中間とりまとめ案(概要)」

また、日本看護協会は「少子高齢化や人口減少が進行するなかで医療体制を適切に維持するためには、18歳人口のうち18人に1人の割合で看護職を目指してもらう必要がある」と強調し、看護師数が減少傾向にある状況に対して警鐘を鳴らしています。
(出典:公益社団法人 日本看護協会「2023 年「看護の日」イベント 「かんごちゃんねる」」

2025年問題が医療・介護分野にもたらす課題

超高齢化社会がさらに加速するとされる2025年、生活習慣病などの慢性疾患や認知症を抱える高齢者が増加し、医療施設・介護施設の需要はより増大化します。

複数の疾病や障害を抱える患者さんの健康問題は長期化するとともに、その複雑さも増すでしょう。さらに、治療を重視したこれまでの医療では対応できない方も増え、患者さんの疾病や障害の回復が望めなくなることも考えられます。

人材確保は、医療ニーズ増加への対応に向けた重要な課題です。しかしそれ以上に、看護職員不足が進むなかで、一人ひとりの看護師により高度な対応が求められることも覚えておきましょう。
(出典:日本看護協会「看護の将来ビジョン」

2025年問題が看護師に与える影響

2025年問題が看護師に与える影響

2025年問題によって、訪問看護提供体制の強化や社会ニーズに応える看護師基礎教育への抜本的改革などが求められており、看護や医療の環境は徐々に変化しています。

しかし、2025年問題が看護師にどのような影響を与えるのか、具体的に理解できていない方も多いのではないでしょうか。

2025年問題が看護師に与える4つの影響について、それぞれ詳しく解説します。

在宅医療や訪問看護の需要が高まる

近年では、高齢者が要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしができるよう、地域一体で医療・介護・生活支援などを提供する「地域包括ケアシステム」の構築が重要視されています。

地域包括ケアシステムを構築するためには、従来の病院完結型医療ではなく、地域完結型医療を提供しなければなりません。これにより、在宅医療・地域看護のニーズが拡大し、訪問看護師としての働き方が求められるようになるでしょう。

看護師免許を持った方が再雇用される

日本看護協会は、2025年以降は看護師不足にさらなる拍車がかかることを懸念し、潜在看護師の再就職を促しています。潜在看護師とは、「看護師免許を有しているものの、何らかの理由で看護の仕事に就いていない」という方のことです。

このような背景から、日本看護協会が潜在看護師の連絡先を把握できるよう、政府はマイナンバー制度を活用した看護師免許に関する情報管理システムの整備を検討しています。

また近年では、看護師免許を有する大学院生や教員による医療現場への一時的な派遣・応援といった異例の対応がとられたケースもありました。今後は、潜在看護師や離職者の再就職の促進に加え、看護師免許を有する方の柔軟な働き方の実現も見込まれます。

看護師の負担を減らす働き方改革が進められる

医療ニーズの多様化や看護職員数の減少が問題視されるなか、質の高い医療を提供するためには、勤務環境の改善を通して看護師の勤務負担を最大限軽減させることも重要です。

看護師の働き方改革においては、「看護師基礎教育の改革」「勤務間インターバルの確保」「夜勤回数の上限設定」「勤務環境改善マネジメントシステムの導入」などが要点となっています。医療機関側による取り組みのほか、看護師自身のスキルアップも求められていくことを覚えておきましょう。

准看護師制度が廃止される可能性がある

これまで看護職員は、正看護師・准看護師の2つに分けられていました。しかし、准看護師のカリキュラムでは2025年以降に高度化・多様化する医療ニーズに対応しきれなくなることから、日本看護協会は准看護師制度の廃止・正看護師の一本化の取り組みを強化しています。

准看護師制度の廃止については具体的に決まっているわけではないものの、准看護師学校養成所数は徐々に減少していることも実情です。また、看護師と比較して有効求人数も圧倒的に少ないことから、准看護師制度の廃止は目前といっても過言ではないでしょう。

なお、准看護師制度が廃止となっても、准看護師免許を保有している方がすぐに働けなくなるわけではありません。日本看護協会は、研修や進学支援を通じて准看護師から看護師へのキャリアアップをサポートする方針です。

看護師が2025年問題に向けて今後できること

看護師が2025年問題に向けて今後できること

看護師が2025年問題に向けて今後できることには、下記2つが挙げられます。

●地域包括ケアに応じたスキルを積む

在宅医療がより注目されていくであろう今後は、訪問看護など地域包括ケアに関するスキルを有し、かつ地域包括ケアを推進できる看護人材がますます求められるようになります。病院看護師としての基礎看護技術・スキルの習得だけでなく、訪問看護ステーションなど在宅看護分野で活躍できるかどうかも重要となるでしょう。

●専門的なスキルを身につける

医師不足に伴い、特定行為研修を受講・修了した特定看護師や認定看護師の需要はさらに高まります。専門的なスキルを身につけている看護師は、転職・採用においても有利となるでしょう。

まとめ

2025年問題とは、団塊の世代と呼ばれる方が全員75歳以上の後期高齢者となり、超高齢化社会に突入するとされる2025年以降に起こり得るさまざまな社会問題の総称です。

2025年問題によって看護師が余るという話は、高度急性期病棟で働く看護師を対象とした話であり、あくまでも試算となります。業界全体で見ると、実際は看護師不足に陥る可能性のほうが高いことを覚えておきましょう。

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※当記事は2023年6月時点の情報をもとに作成しています