• 2022年7月27日
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2025年問題による看護業界への影響|対策の方向性も紹介

 

超高齢社会に差し掛かった日本において、「2025年問題」は近年注目を集めつつあるキーワードです。2025年問題は高齢者人口の増加と関係があり、医療業界・看護業界にも影響を与えると考えられています。2025年問題という言葉を耳にしたことがある方でも、2025年問題が看護師にどのような影響を与えるかは知らない方が多いでしょう。

当記事では2025年問題が看護師に与える影響や、看護業界で進められている2025年問題への対策を紹介します。

2025年問題とは?

2025年問題とは、2025年に日本の高齢化率がさらに進むことで起こる、さまざまな社会問題の総称です。

2025年になると、第一次ベビーブーム(1947~1949年)に生まれた、いわゆる「団塊の世代」の全員が75歳以上の後期高齢者となります。一方で若い世代の人口や出生率は減少を続け、少子高齢化社会のさらなる進行により、労働力の確保や社会保障の構築が難しくなります。結果として社会構造や社会保障体制などに大きな影響を与えると予想されていることが、2025年問題の要点です。

2025年問題には、労働人口の減少、社会保障費財源の不足や医療費負担増加、高齢者向け医療提供体制の必要性増加などの問題が挙げられます。
(出典:厚生労働省「今後の高齢化の進展~2025年の超高齢社会像~」

2025年問題が看護師に与える影響

2025年問題が看護師に与える影響

2025年問題は日本の社会全体にさまざまな影響を与えるものであり、医療や看護の業界にも大きな影響を与えます。看護師として現在働いている方や看護師を目指している方は、今後の働き方やキャリアプランを考えるうえで、2025年問題の影響を理解することが大切です。

以下では、2025年問題が看護師に与える影響を3つ紹介し、どのような変化が起こり得るかも解説します。

看護師の不足

2025年問題の「労働人口の減少」や「高齢者医療の必要性増加」が影響することで、看護師の大幅な不足が起こるといわれています。

厚生労働省が公表している調査・推計資料によると、2025年における看護職員の供給推計は約175万~182万人です。一方で看護職員の需要推計は、労働環境の変化に応じて差は出るものの、約188万~202万人と推計されています。つまり、2025年には看護師不足が約6万~27万人に達する計算です。

上記の供給推計・需要推計はあくまでも推計値であり、2025年までに推計値がさらに変化する可能性はあります。しかしながら、2025年問題の影響として看護師の不足が起こる可能性が高い点は留意しましょう。
(出典:厚生労働省「医療従事者の需給に関する検討会-看護職員需給分科会-中間とりまとめ(案)」

在宅看護の拡大

政府は現在、地域包括ケアシステムの構築を推進しています。地域包括ケアシステムとは、高齢者ができるだけ住み慣れた地域で自分らしい暮らしを続けられるよう、地域内で総合的な支援を提供する仕組みのことです。

地域包括ケアシステムを構築するうえでは、在宅での医療・看護や介護の提供が重視されています。医療機関が地域医療の役割を果たすとともに、看護師も在宅看護へのニーズの高まりに対応して、訪問看護師としての働き方を求められるようになるでしょう。

訪問看護師の働き方は、従来の病院看護師とは異なります。患者さんの住まいを訪問して看護を提供する点が訪問看護師の特徴です。2025年問題は在宅看護のニーズ拡大と、看護師の働き方にも影響を与えることが分かります。
(出典:厚生労働省「地域包括ケアシステム」

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看護配置の見直し

地域包括ケアシステムの構築により、看護体制の軸が病棟から訪問看護へと移ることで、看護配置が見直されるようになります。

具体的な見直しの例が「病床機能の再編」です。急性期病棟と呼ばれる看護配置が7対1の病棟では、病棟が持つ一部機能の転換や、10対1配置への見直しを図るケースが現在よりも増加するでしょう。

病床機能の再編が行われると、病棟で働く看護師の必要数は減少します。しかしながら、看護師の需要が減少するわけではありません。あくまでも病棟看護と在宅看護の機能分担が進むだけであり、全体として看護師の需要は増加します。

病院勤務の看護師として働いている方は、現在勤めている職場で看護配置の見直しが行われるかどうかを注視することが大切です。

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2025年問題に向けた看護業界での対策

2025年問題に向けた看護業界での対策

2025年問題の影響に対処するために、看護業界においてもさまざまな取り組みが進められています。看護業界における取り組みとは、看護師や看護師が所属する施設のみが行うものではなく、行政・医療機関・業界団体が連携して進める対策です。
(出典:公益社団法人 日本看護協会「2025年に向けた看護の挑戦-いのち・暮らし・尊厳を まもり支える看護-看護の将来ビジョン」

以下では、日本看護協会が提示する対策の方向性をもとに、看護業界では2025年問題に向けたどのような取り組みが進められているかを解説します。

看護人材の確保

2025年問題による「看護師の不足」への対策として、看護業界では看護人材の確保が進められています。主な取り組みは「看護師養成数の確保」「働いている看護師の定着促進」「潜在看護師の再就業促進」の3つです。

看護師養成数の確保 看護師という職業をより魅力あるものにしたり、社会人や男性の看護領域への参入促進を図ったりといった取り組み。
働いている看護師の定着促進 労働環境の改善を図り、看護師の離職を防ぐ取り組み。
潜在看護師の再就業促進 再就業支援研修の拡充やナースセンターの活用により、離職した看護師の再就業を支援。

労働環境の改善

看護業界では看護師が働き続けられる環境を整備するために、労働環境の改善に取り組んでいます。主な取り組みは「労働時間管理や夜勤体制の改善」「看護の資格取得支援」「社会への情報発信」の3つです。

労働時間管理や夜勤体制の改善 長時間労働や夜勤時間・夜勤回数の是正を図るとともに、ハラスメントなどのリスクから看護師を守る取り組み。
看護の資格取得支援 看護師がキャリアパスを構築できる環境を整備するための取り組み。資格・キャリアに応じた役割付与や報酬の保障により、看護師のモチベーション維持も支援。
社会への情報発信 多くの女性が働く看護業界から、女性の労働の在り方について社会へと発信する取り組み。社会への情報発信を行うことで、看護師が働き続けられる環境整備についての理解を広め、労働環境の改善を促す。

地域医療体制の構築

看護業界では生活と保健・医療・福祉をつなぐ看護の観点から、地域医療体制の構築に向けた取り組みを進めています。主な取り組みは「地域における看護活動の内容的・量的な拡充」です。

たとえば地域にある訪問看護ステーションは、訪問看護を必要とする患者さんの暮らしを24時間ケアできるよう、ネットワークの強化や機能拡充が図られています。住民の健康不安への対応や重症化予防・介護予防のサービス提供なども、訪問看護ステーションで拡充が図られている機能です。

ほかにも医療機関では看護の専門外来設置を推進するなど、地域全体で在宅医療・看護をサポートする体制づくりが進められています。

地域医療体制の構築は、地域包括ケアシステムが目指す「地域内での総合的な支援の提供」につながる取り組みです。地域包括ケアシステムを構築するうえで、看護業界の取り組みは重要な役割を担っているといえます。

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まとめ

日本の超高齢社会がさらに進むことで起こる2025年問題は、看護師にさまざまな影響を与えます。主な影響は看護師の不足や在宅看護の拡大、看護配置の見直しです。看護業界も看護人材の確保や地域医療体制の構築などで、2025年問題への対策を進めています。

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※当記事は2022年6月時点の情報をもとに作成しています