• 2023年4月7日
  • 2023年4月6日

看護とはどのような仕事? 介護との違いや看護職の種類を解説

 

看護師や助産師、保健師などのいわゆる「看護職」が行う看護は業務内容が幅広く、さまざまな仕事を担当する必要があります。また看護の本質を知ることで、より責任感を持って業務に取り組めるほか、看護職を目指す気持ちがさらに強まるでしょう。

当記事では看護とは何か、看護の本質や業務内容を解説するとともに、看護職に向いている人の特徴も解説します。看護に関わっていきたいと考えている方は、ぜひ当記事を参考にしてください。

看護とは

看護とは、すべての年代の個人や家族、集団、地域社会に向けて、最大限の健康を取り戻し、可能な限り質の高い生活ができることを目的とした支援活動です。下記のような活動を通して、生まれてから最期のときを迎えるまでの間、生涯を通してその方らしく生きることを援助します。

◆看護の具体的な内容

  • 診療の補助
  • 療養上の世話
  • 苦痛・不安の緩和
  • セルフケアの支援
  • 病気の予防

ここでは、上に示した看護の具体的な内容について、それぞれ詳しく解説します。
(出典:公益社団法人 日本看護協会「看護とは」

診療の補助

看護職が行う看護業務の1つとして「診療の補助」が挙げられます。看護職が行う診療の補助は「医師が行う医療行為のサポート」「医師の指示に基づく医療行為の実施」の2つに大きく分けられます。

◆看護における診療の補助

医師の診療のサポート

【医師の問診の準備】
患者さんに関する情報収集や、必要な物品(薬剤や機器)の手配や診療を補助する手順の把握を行い、医師による問診や診察がスムーズに進むよう準備します。

【バイタルサインの測定および検査結果の収集】
心拍数や脈拍、血圧の測定など、その診療科における診療で使用することが多いバイタルサインを医師の診察前に測定し、検査結果をまとめて医師に報告します。

【医師が指示した検査の準備】
医師が必要と判断した検査の準備や手配を行います。採血や検尿のような検査では、医師の指示のもと、医師に代わって行うケースも少なくありません。

医師の指示に基づく医療行為 注射や点滴など、医師の指示のもとで医療行為を行います。

療養上の世話

保健師助産師看護師法では、看護師を「傷病者やじょく婦(妊産婦)に対する療養上の世話または診療の補助を行う者」と定義しています。医師の指示が必要となる「診療の補助」に対し、「療養上の世話」は看護職が主体的に判断できる業務であることを押さえておきましょう。
(出典:e-GOV法令検索「保健師助産師看護師法」

看護における「療養上の世話」とは、病気やケガ、妊娠・出産などの理由によって療養生活を送る方が、入院生活や日常生活を快適に過ごせるようサポートすることです。

◆療養上の世話(具体例)

  • 食事介助
  • 入浴介助
  • 排泄介助
  • 体位変換

看護職は、療養上の世話を通して、日々の患者さんの体調・状態をチェックし、変化や異常が見られないか観察します。看護職としての専門知識をもって患者さんの異変を早期に発見して医師に報告し、適切な処置・対応をとることも、看護の大切な役割の1つです。

苦痛・不安の緩和

患者さんの苦痛や不安を和らげることも、看護の重要な役割の1つです。患者さんは病気やケガによる身体的苦痛はもちろん、精神的苦痛や社会的苦痛、心理的苦痛、死への恐怖などさまざまな苦痛を抱えています。これらの苦しみを理解し、患者さんのQOL維持・向上を目指して、本人の意思決定に寄り添いながら最大限サポートすることが大切です。

また、患者さん本人だけでなく、家族の苦痛にも目を向ける必要があります。特に終末期では、患者さん自身の心と身体が少しでも安らかになり、家族が「よい看取りができた」と思えるような処置・ケアを考えます。

診療上・療養上の不安や、療養後の生活への不安を緩和できるよう支援することも重要な役割の1つです。患者さんや家族の気持ちに寄り添い、病気やケガを受容して患者さん自身を肯定できるような支援を行う必要があるでしょう。患者さんと家族が納得して医療を受けられるよう希望や意思の確認を何度も行い、意思決定を支援し続けることが大切です。

セルフケアの支援

持病や障がいがある方は、自分の「できないこと」に目が向きがちです。しかし、「できること」や「今後できるようになること」も少なくありません。看護職は、持病や障がいがある方の「どうありたいか」「どのように生きたいか」の意思を大切にしながら、「できること」を増やすための支援を行います。

セルフケア支援を通して持病や障がいのある方のセルフケア能力が向上すれば、「自分でできた」という自信や喜びにつながります。また、自分で必要なケアを行えるため、症状の悪化や合併症の出現も抑えられるでしょう。再入院の予防や日常生活の自立、本人が行いたい仕事や家事の継続も可能です。

このように、持病や障がいのある方のQOL(生活の質)を高め、よりよい日常生活・療養生活を送れるようにセルフケアの支援を行うことも、看護の大切な役割の1つとして挙げられます。

病気の予防

病気やケガの発生を未然に防ぎ、人々の健康をサポートすることも看護の大きな役割の1つです。たとえば、入院患者さんに対しては合併症の予防やじょく瘡の予防、転倒予防、院内感染の予防など、広い範囲での「予防」という考え方が求められます。誤薬や誤認の予防、治療中・手術中の事故予防など、業務上の事故も予防する必要があります。

また、病気やケガを抱える患者さんだけでなく、健康な人が病気やケガをしないよう、生活習慣・生活環境の改善を図ることも重要です。健康診断や予防接種に関する情報提供やサポート、食事指導や運動指導、生活習慣・生活環境に関するアドバイスなどを行い、疾病予防や健康増進につなげています。

看護と介護の違い

看護と介護の違い

看護と介護は、支援を必要とする方のケアやサポートを行うという点で共通しています。一方で、看護と介護はケアを行う目的や仕事内容など異なる点も少なくありません。そのため、看護職と介護職は職種が明確に区別されています。ここでは、看護と介護の違いについて確認しましょう。

◆看護と介護の主な違い

  看護 介護
ケアを行う目的 すべての年代の方に対し、心身の状態が回復・治癒するよう、患者さんや家族に寄り添いながら療養上の世話を行い、苦痛や不安を和らげる。 高齢の方や認知症のある方、障がいのある方に対し、安全で快適な生活が送れるよう生活全般のサポートを行う。
仕事内容
  • 医師の指示に基づいて医療行為を行う。
  • 看護に関する専門知識を用いて、診療のサポートや療養上の世話、病気やケガの予防などを行う。
  • 食事介助や入浴介助などの身体介助、掃除や洗濯のサポートなど対象者の生活援助を行う。
  • 対象の方がなるべく自立した生活を送れるようサポートする。
勤務する場所
  • 病院や診療所などで勤務する場合が多い。
  • 近年では在宅看護や訪問看護も増えている。
  • 介護施設や福祉施設、介護事業所などで勤務する場合が多い。
職種
  • 医療職(看護職)に該当
  • 看護師や助産師、保健師、准看護師の免許が必要
  • 福祉職に該当
    (例)介護福祉士・ケアマネジャー・介護職員初任者研修・実務者研修など

看護職の種類

看護業務に携わる職種を総称して「看護職」とよびますが、看護職には国家資格である「看護師」「助産師」「保健師」と、都道府県知事免許である「准看護師」が含まれます。所有する免許によって、役割や仕事内容、活躍の場が異なることに留意しましょう。 ここでは、各職種の役割や資格を取得する方法について詳しく解説します。

看護師

看護師

看護師は、「診療の補助」と「療養上の世話」を通して、病気やケガの治療を受ける方や介護を必要とする方、健康上の問題を抱えながら生活する方を支える職業です。患者さんの意思や立場に寄り添いながら、看護に関する専門的な知識や技術を用いて適切なケアやサポートを提供します。

また、患者さんと直接関わる機会が多い看護師は、「患者さんからの相談を受ける」「意思決定のサポートをする」といった心のケアも行います。医師や薬剤師、理学療法士などほかの医療スタッフと患者さんとの間のコミュニケーションを円滑化することも、看護師の役割の1つといえるでしょう。

看護師の資格を取得するためには、高校卒業後、大学の看護課程(4年以上)か、看護学校・短大(3年以上)で学んだうえで、看護師国家試験に合格する必要があります。なお、准看護師資格を取得している場合は「看護業務に3年以上従事している」「看護学校で2年以上修業した」といった条件を満たすことで看護師国家試験を受けられます。
(出典:厚生労働省 職業情報提供サイト(日本版O-NET)「看護師」
(出典:厚生労働省「看護師国家試験の施行」

助産師

助産師とは、分娩の介助や妊産婦の相談、妊娠中から産後までの母子に向けた保健指導など、主に出産に関わるケアを行う看護職です。看護職は一般に医師の指示なしでは医療行為を行えませんが、妊娠・分娩・産じょくの経過が正常である場合に限り、助産師が自身の責任で分娩を介助できます。妊産婦と新生児の健診や健康教育を行うことも可能です。

産婦人科などに勤務する助産師の場合、分娩介助を中心として、沐浴・授乳の介助や乳房マッサージ、育児指導、新生児のケアが主な仕事内容となります。不安定になりがちな妊産婦に対する身体面・精神面のサポートや、不妊治療や思春期における性の相談、更年期を迎えた方の支援を行うことも助産師の仕事の1つです。

助産師になるためには、看護師国家試験と助産師国家試験の両方に合格する必要があります。看護系大学(4年制)で助産師選択課程を修めた方は、卒業時に看護師国家試験と助産師国家試験の両方の受験資格を得られます。

助産師選択課程以外の課程を選んだ場合、看護師免許の取得後に専門教育を受けたうえで助産師国家試験にチャレンジしましょう。助産師の専門教育は看護系大学院や助産師養成所などで受けることが可能です。
(出典:厚生労働省 職業情報提供サイト(日本版O-NET)「助産師」
(出典:公益社団法人 日本助産師会「助産師とは 法律と定義」

保健師

保健師は主に市区町村や保健所といった自治体に勤務しており、乳幼児から高齢者までのすべての地域住民を対象として必要な保健サービスを提供する職業です。健康相談や生活習慣病を予防するための教室、喫煙者への保健指導、乳幼児健診・両親学級の実施など、保健師が支援する保健活動は多岐にわたります。

また、地域保健関連施策を企画・立案し、実施することも自治体勤務の保健師(行政保健師)の仕事の1つです。健康で災害に強いまちづくりにおいて重要性の高い役割を果たす職種ともいえるでしょう。なお、企業の医務室などで働く産業保健師や学校の保健室などで働く学校保健師は、従業員や児童・生徒の健康管理や保健指導を行うことが一般的です。

保健師になるためには、看護師国家試験と保健師国家試験の両方に合格する必要があります。看護系大学(4年制)で保健師選択課程を修めた方は、看護師国家試験と保健師国家試験の両方の受験資格を得られます。これ以外の課程の方は、看護師免許の取得後に、看護系大学院や保健師養成所などで専門教育を受ける必要があると押さえておきましょう。
(出典:厚生労働省 職業情報提供サイト(日本版O-NET)「保健師」

准看護師

准看護師は、医療機関などで看護や診療の補助に従事する看護職です。仕事内容は基本的に看護師とほぼ同じですが、准看護師は看護師や医師の指示・判断に基づいて業務を行う必要があります。自己判断での処置や臨機応変な看護は難しいことを押さえておきましょう。また、昇進が難しくキャリアを積みにくい点にも注意が必要です。

准看護師になるためには、各都道府県で実施される准看護師試験に合格する必要があります。中学卒業の場合は准看護師養成所や高校の衛生看護科で、高校卒業の場合は准看護師養成所で所定の課程を修了すれば、受験資格を得られます。

ただし、近年は准看護師養成所を看護師養成所に転換するなど、看護師養成への一本化が推進されています。大学進学せずに働きたい方は、准看護師から看護師を目指すキャリアパスもあることを押さえておきましょう。
(出典:公益社団法人 日本看護協会「准看護師制度について」

看護の仕事に向いている人の特徴

看護の仕事に向いている人の特徴

看護の仕事はやりがいも多く、全国的にも需要の高い職業ではあるものの、人の生死や健康に深く関わる仕事でもあります。医療現場で看護の仕事を無理なく続けるには、自分が看護の仕事に向いているかどうかについても考慮する必要があるでしょう。

ここでは、看護の仕事に向いている方の特徴を5つ紹介します。看護師に向いている方の特徴をふまえたうえで、自分の適性について考えてみましょう。

体力・精神力がある

勤務する病院や施設にもよりますが、入院病床がある病院の場合は交代制勤務となることが一般的です。夜勤や残業、オンコールなどによる勤務の長時間化・不規則化が考えられるため、一定の体力がなければ務まらないでしょう。体位変換や入浴介助、排泄介助など患者さんの看護ケアを行う際にも身体への負担がかかるので、体力をつけておきましょう。

また、救急外来や手術室、看取りが多い病棟の場合、人の生死に直面することも多く、体力面だけでなく精神面でのタフさも重要です。ミスを起こさないよう緊張感をもって業務を行い、患者さんや家族、同僚との人間関係をうまく構築する必要があるなど、精神力の強さも求められます。

コミュニケーションを取るのが好き

患者さんについて十分に理解し、健康状態や必要な支援を判断して適切な看護を提供することが看護職の主な仕事です。患者さんや家族とコミュニケーションを取り、信頼関係を築きます。患者さんや家族への傾聴・共感を心がけながら、意思決定のアドバイスやサポートができるようコミュニケーションスキルを磨きましょう。

また、患者さんに適切な看護を提供するためには、同僚の看護職や医師・薬剤師などほかの医療職とコミュニケーションを取り連携することも重要です。コミュニケーションが苦手ではなく、相手を尊重した会話や相手の立場・状況に応じた接し方ができる方は、看護職に向いているといえるでしょう。

責任感がある

倫理観や責任感のある方も、看護職としての適性があるといえます。看護職には「看護職の倫理綱領」といった倫理規定が定められており、倫理規定に基づいた看護観をもって職務にあたることが大切です。
(出典:公益社団法人 日本看護協会「看護職の倫理綱領」

また、看護職は人の生命や健康に関わる仕事であり、小さなミスや1つの判断でも患者さんの病状変化や、生命・健康を脅かす事態を引き起こしかねません。一つひとつの仕事や判断を慎重かつ効率よく行い、最後まで責任をもってやり遂げられる方が看護職に向いているといえるでしょう。

向上心がある

医療現場で働くためには、専門的な知識やスキルを身につけて実践することはもちろん、これらをアップデートしていくことが重要です。疾患や障がいなどに関する研究や、看護に関する知識・スキルは日々進歩を続けています。安全で効率的な看護を提供するためにも、常に新しい情報を取り入れ、知識やスキルについて積極的に学ぶ姿勢を大切にしましょう。

また、看護職としてキャリアアップする1つの方法として、「専門看護師」や「認定看護師」といった専門的な分野に関わる資格を取得することが挙げられます。これらの資格の取得には、看護職として働きながら勉強しなければなりません。自身の専門性を高めて看護技術をアップさせるためにも、高い向上心が必要となるでしょう。

協調性がある

看護職が働く職場には、同僚や上司・先輩・後輩の看護職だけでなく、医師や薬剤師といったほかの医療職、介護士や医療クラークなど多様な職種の方がいます。さまざまな職種の方がチームを構成して患者さんのケアを行うため、同僚の看護職はもちろん、連携が必要な職種の方とは人間関係をうまく構築する必要があるでしょう。

女性の多い看護職や立場・視点が異なる他職種とうまく連携を取るには、協調性が大切です。自分の人間関係にまつわるストレスを低減するためにも、相手の立場や状況、考え方を十分に理解したうえで配慮のある言葉遣い・行動を心がけましょう。

まとめ

看護とは人々の健康な生活を支えるために、傷病者や妊産婦の療養上の世話や診療の補助を行うことです。「看護職」と呼ばれる仕事には「看護師」「助産師」「保健師」「准看護師」があり、いずれも対象者に必要な援助を行います。

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※当記事は2023年2月時点の情報をもとに作成しています

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