• 2022年11月2日
  • 2023年12月28日

看護助手になるのはやめたほうがいい? 離職理由と長く働くコツを解説

 

未経験・無資格から医療・福祉業界での活躍を目指すにあたり、看護助手になることを考える方もいるでしょう。看護助手は看護師が専門性の高い仕事に注力できる体制を整えて、安全かつ質の高い看護を実現するためのサポートをする重要な役割を担っています。

しかし、看護助手は医療・福祉業界の将来を左右する人材である一方、「看護助手になるのはやめたほうがいい」といわれるケースもあることは事実です。看護助手の仕事内容や魅力とともに「やめたほうがいい」といわれる理由を知り、ご自身に合うキャリアプランを描くための参考にしてください。

看護助手とは?

看護助手とは、主に患者さんの世話や看護師のサポートを行う仕事です。看護師などの指示の下、看護チームの一員として看護の補助的な業務を行う仕事であり、看護補助者と呼ばれることもあります。看護助手は業務を行ううえで患者さんと接する機会が多く、看護師不足になりやすい医療業界においては重要な役割を担う職業です。
(出典:厚生労働省 職業情報提供サイト(日本版O-NET)「看護助手」
(出典:公益社団法人日本看護協会「看護チームにおける看護師・准看護師及び看護補助者の業務のあり方に関するガイドライン及び活用ガイド」

看護助手は看護師や准看護師とは異なり、専門資格を持っていなくても働けます。ただし、有資格者でなければ採血や注射などの医療行為はできない点に注意が必要です。

看護助手の仕事内容

看護助手の仕事内容は「周辺業務」と「直接ケア」に大別できます。

周辺業務とは、患者さんに直接接しない仕事のことです。具体的には、医療器具の準備・片付け・洗浄・管理や診察の準備などが周辺業務にあたります。また、病棟のベッドメーキングや清掃業務、備品の管理など、病院内の環境整備も看護助手の大切な仕事です。

また看護助手は、医師に検査結果を伝える役割や、患者さんに必要な書類を手渡す仕事といった、医師と患者さんとの橋渡しを担うこともあります。そのほか、カルテの整理や検体の移送など、都度必要な場所で活躍する仕事です。

直接ケアは、患者さんと直接関わる仕事を指します。医療行為にあたらない患者さんの世話は主に看護助手の仕事です。たとえば、患者さんの着替えの手伝いや食事の介助・排泄介助・おむつ交換・入浴介助などは基本的に看護助手が担当します。場合によっては、検査時の移送や独り歩きに不安がある患者さんのサポート、車椅子移動の補助なども必要です。

ただし、医療機関によっては看護師が直接ケアを担当し、患者さんの状態が落ち着いていると判断された場合のみ看護助手が直接ケアを指示される場合もあります。また、小規模な医療機関では看護助手が受付業務を兼任するケースもあります。看護助手の仕事を探す際にはあらかじめ求人情報をよく確認し、不安があれば採用担当者などに具体的な業務内容を確認するとよいでしょう。
(出典:厚生労働省 職業情報提供サイト(日本版O-NET)「看護助手」
(出典:公益社団法人日本看護協会「看護チームにおける看護師・准看護師及び看護補助者の業務のあり方に関するガイドライン及び活用ガイド」

看護助手になるのはやめたほうがいい? 看護助手の離職理由は?

看護助手になるのはやめたほうがいい? 看護助手の離職理由は?

看護助手の2019年度における正規雇用・非正規雇用を合計した離職率は29.9%であり、低いとはいえません。看護助手を目指す方は仕事の大変さを正しく理解したうえで、自分に合う職業であるかを見極める必要があるでしょう。
(出典:日本看護協会「2020年病院看護実態調査報告書」

以下では、看護助手の主な離職理由(退職理由)や仕事に伴う大変さを紹介します。

体への負担が大きい

看護助手は入院生活を送る高齢者の入浴介助や体位交換など、力仕事も担当します。また、看護助手の業務は忙しく、1日通して病院内を動き回ることもあるため、身体的な負担を感じやすい仕事です。

さらに身体的な負担だけでなく、看護助手はおむつ交換や排泄物の処理など、心理的な負担が大きい業務も行います。入院病棟に勤務する看護助手は、夜勤を含むシフト制で働くこともあり、ライフスタイルの変化がストレスにつながることもあります。

看護助手の業務内容に慣れないうちは特に身体的・心理的な負担を強く感じ、離職を考える方もいるでしょう。

人間関係が大変

看護助手は看護チームの一員として働きます。上下関係の厳しい職場に配属されると、医師や看護師の態度や性格の不一致などから、人間関係に苦痛を感じ、離職を考える方もいます。

また、医療行為を行わない看護助手の仕事内容は、看護師と比較すると限られているため、「雑用を押し付けられている」と感じることもあるでしょう。

給与が低い

2021年度における看護助手の平均年収は約304万円と、看護師の約499万円を下回ります。同じ職場で働く看護師との待遇面のギャップから離職を考えるケースもあります。
(出典:厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査 結果の概況」

ただし、看護助手と看護師では就職する際に要求されるスキルや経験が異なるため、待遇面のギャップが「不平等な扱いである」とはいいきれません。また、看護助手として就職した後に経験を積み、看護師へのステップアップを図れば、将来的に希望通りの待遇を得られる可能性もあります。

人手不足で忙しい

2022年度における看護助手の有効求人倍率は3.98倍であり、需要が供給を上回る人手不足の状態です。
(出典:厚生労働省 職業情報提供サイト(日本版O-NET)「看護助手」

また、看護助手として働いていると夜勤や患者さんの急変・急患対応などによる残業がしばしば発生します。忙しい職場では経験不足の看護助手を十分に指導する余裕がなく、先輩たちの仕事を見て業務を覚えなければなりません。自分から積極的にスキルを身につける姿勢がないと、教育体制の不足に不満を感じ、離職に至ることがあります。

さらに人手不足が深刻な職場は、新人看護助手とベテラン看護助手の二極化が進みやすく、新人がベテラン看護助手との心理的な距離にストレスを感じることもあります。

看護助手として働くメリット

看護助手として働くメリット

看護助手は「やめたほうがいい」といわれることもあるものの、大きなやりがいも存在するため、生き生きと働く方も多数います。また、看護助手は、早い段階で医療・福祉業界デビューを目指す方にとって、メリットが多数ある職業です。

以下では、看護助手として働くメリットや仕事のやりがいを紹介します。

未経験・無資格でも働ける

看護助手は医療行為(医行為)を行わないため、多くの職場は未経験・無資格者を受け入れています。そのため、看護助手は医師や看護師の働き方を間近で見て広範な知識を習得し、将来的に専門的な資格取得を目指したい方に向いている職業です。

さらに、看護助手は人手不足の仕事であるため、希望地域の求人を見つけやすい傾向があります。自宅から近い職場に就職すればワークライフバランスを確保でき、家庭と仕事の両立を図れるでしょう。

医療や看護の知識が身につく

看護助手は医療従事者の仕事を間近で見られるため、医療に関する幅広い知識を得られる点が大きなメリットです。病気やケガに関する知識はもちろん、患者さんのケアを行う際に看護師がどのような点に配慮しているかを学べます。病状や健康状態は患者さんによって異なるため、働く中でさまざまな対応力が身についていくでしょう。

また、医療の現場で患者さんと関わる中で、病気を抱える人とのコミュニケーション方法や介助方法も学べます。医療現場で得た知識は、仕事だけではなく日常生活や地域社会の中でも役立つでしょう。

医療・福祉業界へのキャリアをスタートさせられる

看護助手の中には医療現場で実務スキルを養いつつ、看護師・准看護師へのステップアップを目指す方もいます。看護助手として働きながら准看護師になるためには仕事の合間に全日制や半日制の准看護学校へ通学し、試験に合格したうえで免許を取得することが必要です。
(出典:一般社団法人日本准看護師連絡協議会「これから准看護師を目指す人」

看護助手への支援体制が充実している職場では、免許取得にかかる費用の一部を補助してもらえるケースもあります。准看護師として7年以上の実務経験を積めば通信制の看護師学校を利用し、看護師免許の取得も目指せます。
(出典:厚生労働省「看護師国家試験の施行」

また、目指すキャリアの方向性によっては看護助手として働きつつ、介護福祉士資格の取得も可能です。養成施設などに通うことなく介護福祉士資格を取得するためには、所定の職種で3年以上の実務経験を積み、実務者研修を受講したうえで国家試験に合格しなければなりません。看護助手は介護福祉士資格の定める「所定の職種」に含まれることから、医療の現場で働きつつ、介護分野のスペシャリストを目指せます。
(出典:公益社団法人社会福祉振興・試験センター「介護福祉士国家試験」

看護助手として長く働く方法は?

看護助手として長く働く方法は?

看護助手には体への負担や人間関係といった多くの離職理由があり、離職率も低いとはいえません。しかし、看護助手の仕事には大変な面もある一方、多くのメリットがあるため続けたいと感じている人も多くいます。看護助手を続けるかどうかで悩んでいる方は、ひとまず辞めたい気持ちを乗り越える工夫をしてみるとよいでしょう。

以下では看護助手として長く仕事を続けるためのポイントを4つ紹介するので、参考にしてください。

看護助手のやりがいを思い出す

「この仕事をしていてよかった」と感じられるかは、仕事を続けていくうえで大切なポイントです。看護助手の仕事に慣れるとつい忘れがちですが、看護助手の仕事にはさまざまなやりがいがあります。

たとえば、患者さんとのコミュニケーションは重要なポイントです。病気やケガで苦しむ患者さんが、コミュニケーションを取る中でだんだんと笑顔を見せてくれるようになると大きなやりがいにつながります。患者さんが退院する際などに感謝してもらえれば、仕事をやり切った達成感が生まれるでしょう。

また、看護助手の仕事はチームプレーです。ほかの医療スタッフとの連携が不可欠な仕事であり、働く中で連帯感が生まれることも多いでしょう。チームの中で自分が必要とされていることが実感できればやりがいが生まれます。

働きながら医療や介護に関する専門的な知識・スキルを身に付けられる点もポイントです。看護助手としての実務経験に応じて挑戦が可能になる資格もあり、スキルアップを目指せる点もやりがいにつながります。

資格取得を目指す

看護助手の仕事に伴う大変さは、自ら前向きな行動を起こすことで、ある程度は解消されます。前向きな努力が周囲に認められると人間関係の改善につながるほか、身体的な負担を軽減できる介助のやり方を習得すれば、体力の過剰な消耗を防げます。

看護助手として長く働くために、資格取得を通じて、実務に役立つ技能・知識を習得しましょう。以下は、看護助手の実務に役立つ技能・知識の習得につながる資格の例を示します。

メディカルケアワーカー®
メディカルケアワーカー®は、看護助手の地位や技能の向上を図るために創設された民間資格です。メディカルケアワーカー®を取得すると、看護助手として働くうえでの実務スキルを証明できます。

メディカルケアワーカー®を取得するためには原則、指定教育機関において所定の講座を受講し、医療福祉情報実務能力協会の運営する検定試験に合格することが必要です。ただし、1年以上の実務経験を持つ看護助手は講座を受講することなく、検定試験を受験できます。
(出典:医療福祉情報実務能力協会「メディカルケアワーカー®(看護助手)について」

看護助手認定実務者試験
看護助手認定実務者試験とは、「看護助手の即戦力として活躍できる知識・技術をどの程度備えているか」を客観的に証明するための試験です。看護助手認定実務者試験では、看護助手の役割や業務を遂行するために必要な基本技術、患者さんに対する理解などに関する問題がマークシート形式で出題されます。試験に合格するためには原則、正答率6割以上が必要です。
(出典:全国医療福祉教育協会「看護助手認定実務者試験とは?」

介護職員初任者研修
介護職員初任者研修は介護知識・介護スキルの基礎から応用までを身につけるために行われるものです。介護業界への就職・転職を希望する方はもちろん、家族を介護している方や医療職の方にも役立つ研修です。

介護職員初任者研修の研修時間は130時間となっています。
(出典:厚生労働省「介護員養成研修の取扱細則について」

介護福祉士実務者研修
介護福祉士実務者研修は、質の高い介護サービスの提供を目標に、基本的な介護提供能力を身につけるために行われるものです。国家資格である介護福祉士資格を取得するために修了が必要な研修でもあります。

介護福祉士実務者研修は介護職員初任者研修に加え、喀痰吸引などの内容も含まれる点がポイントです。研修時間は450時間ですが、介護職員初任者研修を修了している場合は320時間に短縮されます。
(出典:厚生労働省「介護福祉士資格の取得方法について」

活躍できる看護助手を目指す

仕事でうまくいかないことや失敗が続くと、仕事に対する自信やモチベーションが下がり、辞めたい気持ちにつながります。仕事ができる看護助手になり活躍の場が広がれば、やりがいが生まれて仕事が長続きしやすくなるでしょう。

活躍できる看護助手を目指すためには、下記のポイントを押さえるのがコツです。

  • 教わったことは必ずメモする
  • 積極的にコミュニケーションを取る
  • 1人で抱え込まない
  • 先輩の仕事のやり方を真似する
  • 落ち着いて1つずつ仕事を進める
  • 医療・介護の知識を積極的にインプットする

自分ですぐにできる対処法の1つは、メモを取ることです。医療現場は誰もが忙しく働いているため、先輩や看護師は同じことを二度教える余裕がないケースもあります。特に新人看護助手の場合は、教わったらメモを取るという流れを徹底し、メモを見返して自分でできることを増やすとよいでしょう。

また、1人で対処しきれない場合は早めに周囲に助けを求めることも大切です。余裕があるときは積極的に周囲のサポートをすれば、自分が困ったときに助けてもらいやすくなります。

転職活動を行う

どうしても看護助手の仕事がつらいときには、部署や勤務先を変えてみるのも1つの手です。

同じ病院内でも、一般病棟や療養型病棟、外来や手術室、検査室など、看護助手の活躍の場は多岐にわたります。病棟の場合は患者さんの身体介助がメインですが、外来の場合はストレッチャーや車椅子の搬送、器具の準備などが主な仕事です。部署によって仕事内容も変わるため、仕事が合わないという悩みは部署異動をすれば解消される可能性があります。一度上司や人事に相談してみるとよいでしょう。

仕事内容は勤務先によっても変わります。緊急入院や夜勤業務の有無、仕事内容の比重の差などを求人票で確認し、自分に合った仕事や働き方ができる職場に転職するのも有効な手段の1つです。転職活動を行う際には、看護助手経験や培ってきたスキルをアピールし、堂々とした態度で面接に臨むとよいでしょう。

まとめ

看護助手の中には、心身の負担や給与の低さを理由として離職する方もいます。ただし、看護助手の仕事に大きなやりがいを実感して生き生きと働く方も少なからずいるうえ、看護助手としての知識を学ぶことで仕事の負担は軽減される可能性もあります。

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※当記事は2023年9月時点の情報をもとに作成しています

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