• 2022年4月15日
  • 2022年4月15日

外来クラークとは? 病棟クラークとの違い・仕事内容・将来性も

 

医療機関で働く職業には医師・看護師・医療技術職などのほかに、医療クラークや医療事務が存在します。医療クラークはナースステーションなどで患者さんの入院手続きやカルテの代行入力といった医師のサポートを、医療事務は受付窓口の業務を担当します。

外来クラークは、外来診療における事務業務を担当しており、医師や看護師の業務をスムーズに進めるうえで、外来クラークは重要な役割を担う仕事です。

この記事では、外来クラークの概要から、外来クラークの仕事内容・年収・将来性、外来クラークに向いている方の特徴までを徹底解説します。医療関係の仕事に興味があり、外来クラークについて詳しく知りたい方は、ぜひご覧ください。

外来クラークとは?

外来クラークの仕事内容

前提として、病院で働くクラーク全体のことを「医療クラーク」と呼びます。医療クラークは、ナースステーションなどで医師のサポートを行います。

医療クラークの1つである外来クラークとは、病院・クリニックにおいて外来診療の事務業務を担当する仕事です。

外来は「入院ではなく院外から患者さんが来て診察を受けること」を指し、クラークは「事務員」を指します。外来クラークは、外来診療を受けたい患者さんの事務対応を行い、患者さんの診察がスムーズに進むようサポートする仕事です。

外来クラークと病棟クラークの違い

医療クラークには、大きく分けて外来クラークと病棟クラークの2種類に分類され、それぞれ特徴が異なります。ここでは、外来クラークと病棟クラークの違いを、3つのポイントに分けて紹介します。

・主な業務

外来クラークは、主に外来診療に必要な事務業務を担当します。一方、病棟クラークの主な業務は入院医療に必要な事務業務です。

・勤務場所

外来クラークの勤務場所は、病院・クリニックの入口にある総合受付、もしくは診療科ごとに設置された外来受付です。病院・クリニックの規模に関係なく、外来診療を行う施設であれば外来クラークの勤務場所があります。一方で、病棟クラークの勤務場所は、病棟内のナースステーションです。病棟クラークは、総合病院・大学病院などの病床数が多い医療機関で働きます。

■関連記事

外来クラークと医療事務の違い

医療クラークと似ている業務として、医療事務が挙げられます。ここでは、外来クラークと医療事務の違いを、3つのポイントに分けて紹介します。

・主な業務

外来クラークも医療事務も、どちらも事務業務を担当します。一方、医療事務は受付・案内業務などのほかに、会計処理やレセプト作成なども行います。また、外来患者さんを応対する外来クラークに対して、医療事務は外来患者さん・入院患者さんのどちらも応対します。

・レセプト業務の有無

レセプトとは、病院が行った医療行為の診療報酬明細書であり、健康保険組合などの保険者に医療費を請求するための書類です。レセプト業務は医療事務が担当する業務であり、外来クラークでは担当しません。

外来クラークの仕事内容

外来クラークの仕事内容は、大きく分けて下記の3つがあります。

  • 受付・案内業務
  • 書類・データ管理
  • 電子カルテの記入補助

いずれも事務作業ではあるものの、医療に関する一定の知識を求められることが、一般事務と外来クラークで異なる点です。外来クラークで働いてみたい方は、以下で紹介する3つの仕事内容を事前に理解しておきましょう。

受付・案内業務

受付・案内業務では、下記の業務を行います。

  • 外来患者さんが来院したときの受付対応

  • 外来患者さんの診察室への案内

  • 予約・キャンセルの電話応対

受付・案内業務における外来クラークの役割は、病院・クリニックに来院した患者さんへと、外来診療を利用する手続きや案内を行うことです。

具体例として、外来患者さんが来院したときの受付・案内業務は、下記の流れで行います。

(1) 患者さんの保険証や診察券を預かる

(2) 患者さんに問診票を渡し、記入してもらう

(3) 患者さんの問診表やカルテを準備し、診察室へと渡す

(4) 診察順の早い患者さんから順次、診察室へと案内する

(5) 診察後にカルテやレントゲン写真などを整理・保管する

外来患者さんの中には、診察順が来るまでの待ち時間で体調を崩す方もいます。待合室で待機している患者さんの様子を見て、体調に異変がないかなどを確認することも、受付・案内業務における外来クラークの重要な仕事です。

容体が悪化している患者さんを発見した際は、すぐに医師や看護師に報告し、対応してもらいます。

書類・データ管理

書類・データ管理では、下記の書類やデータを診察室へ伝達したり、診察後にPCへ登録・管理を行ったりします。

  • 問診票
  • カルテ
  • レントゲン写真
  • 検査データ
  • 報告書類
  • 紹介状
  • 診断書 など

診療を実施する診療科や、患者さんに入院の必要が生じた際は、報告ミスが生じないよう注意が必要です。

患者さんが他院へ転院するときに必要な紹介状は、医師に作成してもらう必要があります。医師に紹介状の作成を依頼したり、患者さんに紹介状の使い方を説明したりすることも、外来クラークの業務です。

患者さんが自院へと転院するときには、外来クラークが最初に紹介状を受け取ります。紹介状には「御机下」「御侍史」といった独特の言い回しがあるため、外来クラークで働く方は紹介状でよく使われる表現の意味を理解しておきましょう。

電子カルテの記入補助

近年は診療業務の効率化や正確な情報管理を求める観点により、電子カルテを導入する医療機関が増えました。電子カルテを導入している医療機関では、外来クラークが電子カルテの記入補助を担当するケースもあります。

電子カルテの記入補助とは、医師が患者さんに行った診療内容を、電子カルテへ代行入力する業務です。外来クラークが電子カルテの記入補助を行うことで、医師が診療業務に集中できます。

電子カルテには入力補助ツールが組み込まれているため、外来クラークが行う記入補助は難しい業務ではありません。一定の機械操作スキルや医学用語の知識は必要となるものの、電子カルテを導入している職場では記入担当者への教育が行われるため、未経験者でも安心です。

外来クラークが電子カルテの記入補助を行うときは、医師との連携が不可欠です。医師が行った診療の情報や疾患の評価、治療の計画をそれぞれ漏らさず電子カルテに記入しましょう。

外来クラークの一日

外来クラークの一日

外来クラークの業務内容は、勤務する医療機関ごとに違いがありますが業務スケジュールは、固定されていることが一般的です。

以下では、外来クラークの一日の業務の流れを、業務内容の例を挙げながら紹介します。

時間 主な業務 業務内容
8:20~8:30 配属先の診療科受付で診察の準備
  • PCの立ち上げ
  • 診察室や待合室の掃除
  • 予約患者さんのチェック
8:30~9:00 外来患者さんの受付・案内開始
  • 受付で保険証の確認
  • 問診票記入の案内
  • 診察前検査の案内
9:00~12:00 診療開始に伴う午前の窓口対応
  • 受付・案内業務
  • 電話での予約受付
  • 電子カルテの入力補助
12:00~13:00 お昼休憩
  • 交代でお昼休憩
13:00~16:30 午後の窓口対応
  • 受付・案内業務
  • 電話での予約受付
  • 電子カルテの入力補助
  • 書類・データ管理
16:30~17:00 翌日の準備
  • ・PCのシャットダウン
  • ・診察室や待合室の掃除と片付け

医療機関によっては、外来クラークが患者さんへの入院案内や、入院患者さんへの診察手配を行うケースもあります。

外来クラークの年収

外来クラークの年収

求人サイトの求人情報などを情報源として算出した外来クラークの年収は、約200万~300万円です。外来クラークの年収は、厚生労働省による正確なデータが存在しません。

外来クラークの年収は、地域ごとに偏りがあります。東京都や大阪府などの人口が多い都道府県では年収約260万~300万円の求人が多い一方で、地方の求人は約180万~230万円の求人が多い傾向です。ただし、地方であっても都市部に立地する医療機関では、250万円以上の年収を提示する求人も見られます。

また、パートで働く外来クラークの時給は約1,000~1,400円です。時給も地域ごとに偏りがあり、人口が多い都道府県では時給約1,300~1,400円の求人が多い一方で、地方の求人では約900~1,100円が多い結果となりました。

なお、看護師の平均年収は約492万円です。看護師には夜勤業務があるため、平均年収の水準が高いという特徴があります。
(出典:厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査」

外来クラークの将来性

外来クラークの将来性

近年では、医療の質を高めるために医療技術の高度化・複雑化が進み、医師や看護師にかかる負担は増しています。少子高齢化による医療人材の不足や患者数の増加も、業務を圧迫する要因です。

さらに、2024年4月には医師の働き方改革として、医師が行える時間外労働の上限規制適用が予定されています。医師の業務量は増える一方で、月あたりに行える時間外労働に上限規制ができることによって、医師の業務の負担分散が求められている状況です。
(出典:厚生労働省「医師の時間外労働規制について」
(出典:厚生労働省「医師及び医療関係職と事務職員等との間等での役割分担の推進について」

そこで、医師の負担を軽減する方法として、外来クラークを含む医療クラークが導入されました。厚生労働省では、「医療クラークの導入によって医師にかかる負担が軽減された」と評価しており、医療クラークの育成・導入を促進・奨励しています。
(出典:厚生労働省「チーム医療に不可欠な新たな人材ー医療クラーク導入の取り組みとその効果についてー」

外来クラークを含む医療クラークは、医師の働き方改革を成功させるために欠かせない役割を担っています。医師や看護師が従来行っていた外来対応・データ管理・カルテ入力などを担当する外来クラークは、将来的に一層の需要増加が見込まれる仕事です。

外来クラークになるには? 資格は必要?

外来クラークになるために検定試験の勉強をしている女性

外来クラークになるために必要な資格はありません。看護師資格の取得が必要となる看護師とは異なり、外来クラークは特別な資格や経歴がなくても働けます。

ただし、外来クラークを募集する医療機関に資格や経歴が全くない方が応募しても、採用されるとは限りません。外来クラークに必須資格は存在しないものの、医療機関側で採用条件に何らかの資格・経歴を設定しているケースがあります。

また、実際に外来クラークとして働くにあたって、業務に役立つ資格・経歴があったほうが安心です。外来クラークとして働くときに役立つ資格・経歴として、次の3つがあります。

・医療事務技能審査試験

医療事務技能審査試験は、各種医療制度や医療業務に関する知識・技能を審査する試験です。医療事務技能審査試験に合格すると「メディカルクラーク(R)」の称号が付与され、医療事務職に必要な能力を備えていることを示せます。
(出典:一般財団法人 日本医療教育財団「技能審査認定 医療事務技能審査試験(メディカルクラーク®)」

・医療秘書技能検定試験

医療秘書技能検定試験は、医療事務に関する専門知識・技能を評価する試験です。試験は1級・準1級・2級・3級の4段階が用意されており、自分のレベルに合った試験を受験できます。
(出典:一般社団法人 医療秘書教育全国協議会「医療秘書技能検定試験」

・事務業務や窓口対応などの勤務経験

一般的な会社で積んだ事務経験や窓口対応の経験は、外来クラークとして働くときに役立ちます。医療機関ではデータ管理や電子カルテへの入力にPC・タブレットを使用するため、PC操作ができると業務に役立ちます。

看護師から外来クラークへの転職はアリ??

看護師から外来クラークへの転職した女性

外来クラークは、無資格の方や医療系の業務が未経験の方も就職・転職が可能です。一方で、看護師などの医療系職種から外来クラークへ転職し、活躍する方もいます。

ここでは、看護師から外来クラークへの転職におけるメリット・魅力と、デメリット・注意点を紹介します。

外来クラークへ転職するメリット・魅力

看護師と外来クラークでは仕事内容に違いがあり、業務負担も変わります。外来クラークへ転職する具体的なメリット・魅力は、以下の4つです。

・看護師とは異なる形で患者さんと関わりを持てる

外来クラークは、病院の受付で患者さんと直接対面して受付対応や案内をします。診察室や病棟で働く看護師とは異なる形で患者さんと早期に関わることで、患者さんの違った一面を見られる点は外来クラークの魅力です。

・体力的な負担が少ない

外来クラークは、仕事時間の大部分を患者さんの受付対応やPC作業に費やします。看護業務や診察補助業務で多忙な看護師と比べて、外来クラークは体力的な負担が少ないというメリットがあります。

・育児やプライベートと仕事を両立しやすい

外来クラークの勤務時間は、病院の外来受付時間とほぼ同じです。夜勤・深夜勤もある看護師と比べて、外来クラークは勤務時間が安定していて残業も少ない傾向があります。病院が休みとなる土日祝日は外来クラークも休日となるため、育児や家族と過ごす時間を取りやすいでしょう。

・看護師経験によりスタッフから信頼を得やすい

外来クラークとして働くにあたっては、病院における外来診療の流れや専門的な医学用語を理解していることが求められます。看護師の経験がある方は、即戦力の外来クラークとして働けるため、スタッフから信頼を得やすいでしょう。

外来クラークへ転職するデメリット・注意点

看護師が外来クラークへ転職することには、デメリットもあります。外来クラークへ転職するデメリット・注意点は、次の3つです。

・PCスキルや事務スキルが求められる

外来クラークは、外来診療で発生する多くの書類・データを管理したり、診療後の電子カルテへの記入補助をしたりします。PCスキルや事務スキルが求められる仕事であり、PCでのデータ入力や事務処理が不慣れな場合は働きづらいと感じることもあるかもしれません。

・年収や待遇が下がる可能性が高い

看護師資格が必須の看護師と比較して、無資格でも働ける外来クラークは年収が低いことが特徴です。外来クラークをパートで募集する医療機関も多く、看護師から外来クラークへ転職すると年収や待遇が下がる可能性が高くなります。

・スタッフとの相性によっては働きづらい

外来クラークは、医師・看護師などの医療スタッフと連携して働くことが求められる仕事です。スタッフとの相性によっては情報の伝達や意思疎通がスムーズにできず、働きづらくなることもあります。

外来クラークに向いている方の特徴

外来クラークに向いている方の特徴

最後に、外来クラークに向いている方の特徴を3つ挙げて解説します。

・事務仕事が得意で、データや書類を適切に扱える方

外来クラークの仕事では、患者さんの診療に関わる多くのデータや書類を扱います。電子カルテへの入力を正確に行う必要があるため、データや書類を適切に扱える方は外来クラークに向いています。

・体調に不安を抱えている患者さんに親身な対応ができる方

外来診療を利用する患者さんは、自分の体調に不安を抱えています。患者さんが抱える不安に寄り添い、受付・案内で親身な対応ができる方は外来クラークに向いています。

・医療の現場と近い場所で働くことに興味がある方

外来クラークは、無資格・未経験でも医療機関で働ける職種です。「医療系の資格がないけど医療の現場で働ける仕事に就きたい」「地域の医療に貢献したい」と考えている方は、外来クラークに向いています。

まとめ

外来クラークは、外来診療の受付・案内業務と書類・データ管理、電子カルテの記入補助といった事務業務を担当します。外来クラークとして働くうえで必須の資格はなく、体力的な負担が少ない、生活と仕事を両立しやすいなどのメリットがあります。

マイナビ看護師では、看護業界に精通したキャリアアドバイザーが求職者様の転職・就職の希望条件をヒアリングし、条件にマッチする職場をご案内いたします。

※当記事は2022年3月時点の情報をもとに作成しています

著者プロフィール