• 2017年8月1日
  • 2021年10月14日

72時間ルール変更で「月夜勤増加&離職率アップ!?」

 

「72時間ルール」が変わって夜勤は増えた? 減った?
2016年の診療報酬改訂で、看護師の夜勤「72時間ルール」が変更になりました。「72時間ルール」の目的は、看護師の夜勤負担を軽減すること。では、改定により夜勤勤務は減ったのでしょうか?
夜勤時間数別の看護師の割合について、厚生労働省の発表した統計を見ていきましょう。

2015年10月の結果では、夜勤72時間以上の看護師の割合が38.9%。それに対し、2016年10月の結果は37.3%と、1.6%減少しています。この結果から、夜勤回数の多い看護師の人数は、月あたりで見るとわずかながら減ったといえます。

参照:中央社会保険医療協議会『夜勤時間別の病棟勤務の看護職員数』

1人あたりの月夜勤時間は増加傾向に!

それでは、「72時間ルール」の変更により、1人あたりの月夜勤時間はどうなったのでしょうか。2015年10月と2016年10月を比較してみると、常勤の2交代平均値4.7回、3交代準夜勤4.2回、深夜勤4.1回、非常勤の3交代準夜勤0.8回は、それぞれ回数に差はありませんでした。しかし、非常勤では2交代が0.7→0.8で0.1回増加、3交代の深夜勤では0.8→1.1と0.3回ずつ増加したという結果が出ています。

参照:中央社会保険医療協議会『看護職員1人あたりの月平均夜勤回数』

参照:日本看護協会『看護職員1人あたりの月夜勤時間数の分布』

病院側は「72時間ルール」の変更に対し、夜勤のできる非常勤スタッフの雇用などで対応はしているものの、常勤スタッフ1人あたりの夜勤回数は変わらず、非常勤では増加傾向に。総合的に見て、1人あたりの夜勤負担は増えているといえます。

実際に現場では、有給取得者が多い月や退職者が出た後など、人手が少ないタイミングには夜勤が1人1回ずつ増えていることがあります。どうしても増やせないときは、交代勤務の常勤スタッフを臨時で夜勤専従にするといった措置が行われることも。それだけ、病棟師長も夜勤を組むのが困難な状況に直面しているといえます。

夜勤が多い病院は看護師の離職率が高いってほんと?

次に離職率を見てみましょう。月72時間超の夜勤を行っている看護職員が50%以上の病院では、離職率は11.9%。それに対し、10%未満の病院は離職率が9.1%であり、2.8%の差がみられます。全体で見ても、夜勤時間の長さとその人数に比例して、離職率が上がっているという結果になりました。

参照:日本看護協会『夜勤看護職員に占める月夜勤時間数が72時間超の看護職員の割合別にみた離職率』

病院の規模別の離職率は、200床未満の小規模病院で上昇する傾向が出ていました。小規模病院では夜勤のできるスタッフの確保ができず、結果として、看護職員の離職につながっていることがわかります。

参照:日本看護協会『病床規模別の看護職員離職率 日本看護協会』

100床程度の小規模病院で勤務している看護師の話を聞いてみても、「新人看護師の定着率が低い」、「入職から3年以内での退職が圧倒的に多い」、という意見が多くありました。この背景には、大規模病院と比べて「昇給率が悪い、または経営不振で昇給そのものがない」、「教育体制が整っていない」というような、小規模病院ならではの苦しい事情がうかがえます。

まとめ

厚生労働省が行った夜勤72時間ルールの改訂は看護師の負担が考慮されていましたが、現場レベルでは、法改正だけで解決されるような簡単な話ではないというのが現状のようです。
問題の根底にあるのは、小規模病院を中心とした看護師の離職率の高さと、そこに残された看護師への負担かもしれません。まずはこういった小規模病院に看護師を集め、看護師の定着を促す対策がなされなければ、状況は変わらないのかもしれません。

文:看護師 水谷良介

著者プロフィール