日本精神保健福祉士協会は、医療保護入院の患者さんができるだけ早期退院できるようにするため、相談員が医師の指導を受けながら多職種と連携し取り組むといったガイドラインを作成しました。
相談員になれるのは、精神保健福祉士、精神障害者に関する業務に従事した経験を持つ看護師や准看護師、保健師、作業療法士など。平均年収は350~400万円とそれほど高くありませんが、賞与や手当などで優遇されている傾向にあるようです。
日本精神保健福祉士協会は、医療保護入院の患者ができる限り早期に退院できるよう支援する「退院後生活環境相談員」の活用を想定したガイドラインをまとめた。精神保健福祉法改正で2014年に創設された相談員の制度について、相談員として中心的な役割を担う精神保健福祉士(PSW)の視点に立ち、3カ月の入院期間を想定した退院までの流れなどを示している。【新井哉】
■退院見据え再入院につながる要因解決を
医療保護入院は、精神保健福祉法で定められている精神障害者の入院形態の1つ。自傷他害の恐れがある場合は措置入院や緊急措置入院となるが、医療保護入院は、自傷他害の恐れがないが指定医の診察の結果、入院が必要とされた場合、保護者の同意によって行われる。
厚生労働省は14年に出した通知で、医療保護入院が患者本人の同意を得ることなく行われる入院であることに触れ、「人権擁護の観点から可能な限り早期治療・早期退院ができるよう講じる」とし、退院後生活環境相談員が医師の指導を受けながら多職種連携の調整を図り、退院に向けて取り組むことを要望。相談員1人が「概ね50人以下の医療保護入院者を担当する」と配置の目安も示していた。
相談員になれるのは、精神保健福祉士に加え、精神障害者に関する業務に従事した経験を持つ看護師や准看護師、保健師、作業療法士など。ガイドラインは、精神保健福祉士が活用することを想定し、相談員の業務の流れなどを説明。入院時から退院を見据え、「退院時には再入院につながる要因を解決する必要がある」とし、病院内の精神保健福祉士が早期に介入する必要性を挙げている。
■病院が解決できない問題、事業者と協力も
退院後生活環境相談員の業務に関しては、入院時の早い時期に患者とその家族らと面接を行い、「入院中や退院後の心配事の相談をお受けします」や「生活を支援する制度を紹介できます」といった内容を伝え、相談員に選任されたことやその役割を、パンフレット(ツール)などを活用しながら患者に説明するよう促している。
また、入院期間を明確化し、退院に向けた取り組みを支援する「退院支援委員会」に関する業務を取り上げ、「誰による、誰のための委員会であるかを忘れてはならない」といった権利擁護の視点を持つことを要望。「入院継続の理由が社会生活上の問題である場合には生活環境を整えることが、最大の権利擁護となる」としている。
地域への移行や定着の支援の進め方については、「病院から本人が望む場所へ退院し、その人らしい暮らしを実現するために支援する」と説明。病院だけでは解決できない問題がある人には、地域の援助事業者と共に退院支援を考えていく必要があると指摘している。
医療介護CBニュース―2016年08月17日 16時00分掲載
出典:医療介護CBニュース