• 2021年9月13日
  • 2021年11月9日

妊活・卵子の老化防止に重要な栄養素「ビタミンE」の効果的な摂取方法

 

妊娠とは、ひとつの生命をつくり出すことですから、体内ではかなりの栄養素が必要になることは想像に難くないと思います。近年では、「妊活」という言葉もよく聞かれるようになり、妊活されているみなさんの栄養への知識欲も高まってきました。同時に、看護師として働くみなさんは、患者さんにアドバイスする機会も増えていると思います。

妊娠から出産にいたるまで、母子ともに健やかに過ごすためにはどの栄養素も重要なのですが、今回は生殖機能をサポートする栄養素である「ビタミンE」の効果的な摂取方法とサプリメントの選び方について紹介していきます。

管理栄養士・分子栄養学カウンセラー/篠塚明日香
写真/櫻井健司

ビタミンEは抗不妊ビタミン

ビタミンEは、もともと抗不妊因子として発見されました。ビタミンEの化学名称である「トコフェロール(tocopherol)」の語源は、ギリシア語でTocos(分娩)、Phero(引き起こす)、Ol(水酸基:分子構造)からきています。その後、抗酸化作用などが注目されるようになり、現在では老化防止のビタミンとして知られるようになっています。

抗不妊ビタミンといわれる理由は、性ホルモンを体内で合成するときにビタミンEが必要なためです。実際に、不妊治療の病院でも、子宮内膜の厚みが足りない症例に対してビタミンEの投与が行われています。また、男性の精子形成能が低い症例に対してビタミンEを投与することで改善が見られたという報告もあります。

ビタミンEが体内において下垂体や副腎などのホルモン産生臓器に多く含まれていることからも、性ホルモンに深く関わって生殖機能の維持に働いている栄養素ということが分かります。

ビタミンEは卵子の老化を防ぐ役割を持つ

ビタミンEは性ホルモンの合成に関わるほかに、その強い抗酸化力によって体の老化を防止している役割も持っています。たとえば、鉄が酸化して錆びるように、細胞も酸化によってダメージを受け老化を早めます。ビタミンEは、体内において細胞膜(細胞をつつんでいる膜)に多く存在しているのですが、ビタミンEは自らが酸化されることよって、わたしたちの細胞の酸化を防いでくれています。この性質を利用し、食品の酸化防止剤としても使われています。

卵巣や卵子も同じように、ビタミンEの抗酸化パワーに守られていますが、ビタミンEが不足することで老化しやすくなるといえます。加齢とともに妊娠率が下がってくるのは、卵子の老化(質の低下)も一因ですから、ビタミンEをしっかりと摂取し、体を酸化から守ることが重要です。その習慣が、老化を遅らせ自然な妊娠の手助けをすることにつながります。

ビタミンEの効果的な摂取方法

では、ビタミンEの性質を見ていきます。ビタミンEは脂溶性のため、油と一緒に摂取すると吸収がよくなります。それから、抗酸化力が強いということは、逆にいえば酸化しやすい性質であるということ。食品なら、うなぎ、アボカド、アーモンド、かぼちゃなどに多く含まれますが、これらは熱や光によって酸化しやすので、冷暗所に保管して早めに食べるようにしましょう。せっかく抗酸化を期待して食べても、すでに酸化していたのではベストな効果は期待できません。

また、覚えておきたいのは、ビタミンCを一緒に摂取すると相乗効果があるということです。ビタミンCとEはお互いに助け合うことで抗酸化作用がより強くなる性質を持っていますので、その作用を意識しつつ摂取するといいでしょう。

注意点としては、ビタミンEを多く消耗するような食事や生活をしている場合は、それらを控えることです。たとえば、喫煙、大量の飲酒、お菓子や加工品などの酸化した油を含む食品は体内で解毒が必要になります。解毒のときには活性酸素が発生するため、これが酸化ストレスとなりビタミンEを消耗する原因となってしまいます。いくら食事でビタミンEを摂取していても、吸収の邪魔をしてしまう要因のほうが多いと、妊娠の可能性を自ら下げることになり本末転倒です。

ビタミンEのサプリメントの選び方

ビタミンEは比較的、食事から摂取しやすく、摂取したビタミンEを体内に貯蔵できるため著しい欠乏はしにくい栄養素です。しかし、スポーツをしたり日光によくあたったりする場面では、酸化ストレスが増大しビタミンEを多く消費しますので、そのような習慣が多い人は、食事にプラスしてサプリメントの摂取を検討してもいいでしょう。

サプリメントには天然と合成のものがあるのですが、天然のほうが合成よりも体内での活性が高いと考えられています。市販されるときは、天然は「d型」、合成は「㎗型」と表記されて区別されていますが、一般的に流通しているものはほとんどが天然のd型だと思ってください。

そして、ビタミンEは細かく分類すると8種類あります。発見された当初は、αトコフェロールという種類のビタミンEの効能が注目され、他の7種のビタミンEの働きについてはよく分かっていませんでした。実際、現在でも処方薬となっているビタミンE製剤はαトコフェロール単体のものですし、市販のサプリメントの多くもαトコフェロール単体のものがほとんどです。

しかし近年では、αトコフェロール以外のビタミンEにも人体に有用な働きがあることが解明されてきています。そして、それらを複合的に摂取することで、より抗酸化力や体内での持続力が高まるため、栄養療法用のドクターズサプリメントでは複合タイプも売られています。実際に購入する際には、そのあたりも参考にしてみてください。

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