ツルゴール反応は、脱水症状の有無を確認する際に重要な指標として知られています。この反応は、皮膚の状態を観察することで体内の水分状態を把握する方法であり、医療現場や国家試験においても注目されるトピックです。特に、正確な理解と適切な実践が求められるため、医療従事者にとって重要な知識といえます。
この記事では、ツルゴール反応の概要と具体的な確認方法を中心に詳しく解説します。また、看護師国家試験での出題例や脱水症状の予防・治療方法についても取り上げるので、ぜひご覧ください。
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院 内視鏡治療センター所属)
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1991年に兵庫医科大学を卒業後、 兵庫医科大学、獨協医科大学を経て、1998年 医療法人協和会に所属。 2003年から現在まで、医療法人愛晋会中江病院の内視鏡治療センターで臨床に従事している。 専門分野はカプセル内視鏡・消化器内視鏡・消化器病。学会活動や論文執筆も積極的に行っており、日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本消化器病学会専門医・指導医・学会評議員、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医・学術評議員、日本消化管学会代議員・近畿支部幹事、日本カプセル内視鏡学会認定医・指導医・代議員を務めているほか、 米国内科学会(ACP)の上席会員(Fellow)でもある。 |
ツルゴール反応とは?
ツルゴール反応とは、脱水状態を評価する触診で見られる、触診部位の反応のことです。「ツルゴール」は皮膚の張りや弾力性を指す単語です。
患者さんが脱水状態になると皮下組織の水分量が減少して、皮膚の張りが失われます。ツルゴール反応を見る目的は、触診によって確認できた皮膚の張りをもとに、脱水状態の程度を評価することです。
(出典:宇都宮病院「高齢期での脱水症状における注意点」)
ツルゴール反応の確認方法
ツルゴール反応の確認方法は特別な技術が不要で、「患者さんの前腕や手の甲の皮膚を指で軽くつまみ、離す」ことだけです。患者さんの体液量が通常の状態であれば、つまんだ皮膚はすぐ(通常2秒以内)に元に戻ります。
一方で患者さんの体液量が少ない状態では、指を離してから皮膚が元に戻るまでに2秒以上の時間がかかります。特に皮膚が元に戻るまで10秒以上かかる場合は「ツルゴール低下」と呼ばれます。ハンカチをつまんだときのように皮膚のシワが戻らないため「ハンカチーフサイン陽性」と呼ばれることもあり、脱水を疑う必要がある所見です。
ただし、ツルゴール反応だけで患者さんの脱水を確定することはできません。ツルゴール反応のほかにも口腔内の乾燥や頻脈、末梢血管再充填時間の延長などを調べて、総合的に判断します。
(出典:日本離床学会「Q&A Vol.471 【ハンカチーフサインのコツ!】フィジカルアセスメントに関するQ&A」)
ツルゴール反応の確認が難しいケース
患者さんが下記のようなケースに当てはまる場合、ツルゴール反応の確認が難しくなる可能性があります。
- 高齢の方
- 慢性的な疾患を持つ方
- 肥満の方
高齢の方はもともと皮膚にシワが多く、皮膚をつまんでもシワが元に戻るかどうか分かりにくいことがあります。そのため、高齢の方でも水分量が多い鎖骨下付近の皮膚でツルゴール反応を調べるとよいでしょう。
また、慢性的な疾患を持つ方は皮膚の張りが低下していることが多く、皮下脂肪が過剰な肥満の方もツルゴール反応で正確に評価できない場合があります。慢性的な疾患を持つ方や肥満の方の脱水状態を評価するときは、ツルゴール反応以外の方法を実施して総合的に評価するとよいでしょう。
ツルゴール反応の理解は看護師国家試験で問われる

ツルゴール反応を理解できているかどうかは看護師国家試験で問われる場合があります。試験対策を進める看護学生の方は、ツルゴール反応についての知識を備えることが大切です。
以下では過去の看護師国家試験から、ツルゴール反応に関連する出題を紹介します。
第107回看護師国家試験(午後101)
第107回看護師国家試験では、午後の101問でツルゴール反応に関連する問題が出題されました。
【問題】
B教諭に付き添われて、A君は病院に到着した。来院時、A君のバイタルサインは、体温38.5℃、呼吸数26/分、脈拍128/分、血圧90/48mmHgであった。口唇粘膜は乾燥し、皮膚をつまむとゆっくり戻る状態であった。血液検査データは、赤血球580万/μL、白血球12,500/μL、Hb16.8g/dL、Na152mEq/L、K4.0mEq/L、Cl109mEq/L、クレアチニン0.9mg/dLであった。尿比重1.035。受診時の身長165cm、体重57kg(発症前60kg)。
A君の状態に対するアセスメントとして適切なのはどれか。
1.貧血である。
2.低カリウム血症である。
3.高ナトリウム血症である。
4.循環血液量が増加している。
5.ツルゴール反応は正常である。
(引用:厚生労働省「第104回保健師国家試験、第101回助産師国家試験、第107回看護師国家試験の問題および正答について」)
問題では、A君の状態に対する適切なアセスメントの選択肢が5つ挙げられています。
正解は3番の「高ナトリウム血症である」です。A君の血液中のナトリウム濃度は152mEq/Lと、基準値の138~144mEq/Lを超えていて、高ナトリウム血症を合併した脱水症(高張性脱水)と考えられます。
1番の貧血は、男性の場合における貧血の診断基準が13g/dL未満で、A君のヘモグロビン濃度が16.8g/dLであり不正解です。
また血液中のカリウム濃度は3.5~5.0mEq/Lが基準値で、A君は4.0mEq/Lであり、2番の低カリウム血症も違います。
4番の循環血液量の増加は、A君の体重が発症前の60kgから57kgに減少していることにより認められません。
5番のツルゴール反応が正常かどうかは、「皮膚をつまむとゆっくり戻る状態」であるため、正常ではないと分かります。
第111回看護師国家試験(午後103)
第111回看護師国家試験では、午後の103問で下記のようにツルゴール反応に関連する問題が出題されています。
【問題】
Aちゃん(2歳10か月、女児)は昨日から下痢と嘔吐を繰り返し、食事が摂れなくなったため、母親に抱かれて小児科外来を受診した。診察の結果、ウイルス性胃腸炎による中等度の脱水症と診断され入院した。入院時、体温38.2℃、呼吸数36/分、心拍数136/分であった。3日前の保育所の身体計測では身長90cm、体重12.5kgであった。
Aちゃんにみられる状態はどれか。
1.昏睡状態である。
2.流涙は普段と変わらない。
3.体重は3日前と変わらない。
4.排尿頻度は普段通りである。
5.皮膚のツルゴールは低下している。
(引用:厚生労働省「第108回保健師国家試験、第105回助産師国家試験、第111回看護師国家試験の問題および正答について」)
問題では、Aちゃんに見られる状態が問われています。
正解は5番の「皮膚のツルゴールは低下している」です。中等度の脱水症と診断されているため、皮膚のツルゴール(張り)は低下している状態が見られます。
なお、「ツルゴール反応による脱水状態の評価を行っているか」は問われていない点に注意してください。触診でツルゴール反応を確認していなくても、中等度の脱水症では皮膚のツルゴールが低下した状態は当然現れます。
1番の昏睡状態は高度の脱水症で見られる症状であり、中等度の脱水症である本問では該当しません。
2番の流涙は、中等度の脱水症では泣いても涙が出にくくなります。
3番の体重は、中等度の脱水症では体重減少が見られるため、3日前と体重が変わらない状態は正しくありません。
4番の排尿頻度についても、中等度の脱水症では排尿頻度が少なくなると考えられ、普段通りという回答は不正解です。
脱水症状の予防・治療方法

患者さんの脱水状態を評価するツルゴール反応を理解した看護師や看護学生の方は、患者さんに行う看護ケアの内容も把握しておきましょう。最後に、脱水症状の予防方法と治療方法を解説します。
予防方法
脱水症状の予防方法は、水分補給をこまめに行うことです。脱水症状は水分摂取量の減少、水分喪失量の増加、服用薬の影響の際に現れます。こまめな水分補給で体内の水分量を保てば脱水症状を予防可能です。
大人は1日に約1.5リットルを目安として、2~3時間おきに水分補給を行いましょう。子どもは大人よりも必要とする水分量が多いため、1日に約1.5~2リットルを目安に、こまめに摂取します。
また、高齢の方は気温や体調の変化に気付きにくく、喉の渇きもあまり感じにくいことが特徴です。口渇中枢の感受性の低下により喉の渇きを感じていなくても身体の水分量が減少しているケースはあるため、時間を決めて水分補給を行ったほうがよいでしょう。
(出典:東京都保健医療局「高齢者の1日の水分量」)
治療方法
脱水症状の治療方法は、脱水状態の程度や患者さんの健康状態によって異なります。水分とナトリウムのどちらが多く失われたかによって、水分欠乏型脱水(高張性脱水)とNa欠乏型脱水(等張性脱水、低張性脱水)に大別されます。臨床的には水分とナトリウムの両方が欠乏した混合性脱水がよく見られます。
軽度の脱水状態であれば、十分な水分補給と休息を取らせることで改善が見込めます。
一方で中等度以上の脱水症状では、水分補給と同時にナトリウム・カリウムといった電解質の補給も必要です。各種の電解質を含む経口補水液を摂取させるとよいでしょう。
高度の脱水症状では患者さんが昏睡状態に陥ることもあります。昏睡状態では水分の経口摂取ができないため、点滴などによる非経口摂取での水分補給が必要です。
また、脱水に伴って患者さんが嘔吐や下痢を起こしている場合は、対象となっている症状をコントロールできる薬の投与も行います。
(出典:MSDマニュアル家庭版「脱水」)
まとめ
ツルゴール反応は、患者さんの前腕や手の甲の皮膚を指で軽くつまんで離した際に、皮膚がどのぐらいの時間で元の状態に戻るのかを確認する検査です。正常な場合、およそ2秒以内に元の状態に戻ります。元に戻るまでの時間が長いほど、脱水症状が進んでいると考えられます。ツルゴール反応に関する知識は、看護師にとっては現場で求められるだけではなく、国家試験でも求められるものです。
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※当記事は2025年1月時点の情報をもとに作成しています
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