シバリングは、寒さや発熱により身体が小刻みに震える生理現象であり、体温を維持するための防御的な反応です。特に手術後の患者さんや発熱中の方々に見られることが多く、体内の酸素消費量が増加するなど、身体に与える影響も少なくありません。
当記事では、シバリングのメカニズムや対処法、シバリングが引き起こすリスクについて詳しく解説します。患者さんへの対応の仕方について深く知りたい方は、ぜひ当記事を参考にしてください。
シバリングとは
シバリングとは身体がガタガタ・ブルブルと小刻みに震える生理的な現象で、主に体温を上げるために起こります。寒さや発熱などで体温が下がったときに筋肉が不随意に収縮し、熱を発生させることで体温を維持しようとする反応です。
この現象は、英語の「shivering」から来ており、似たような言葉には「悪寒戦慄(おかんせんりつ)」があります。シバリングは、風邪やインフルエンザなどで発熱がある場合や、手術終了後に体温が低下した際に頻繁に見られる症状です。通常の寒さによる身震いとは異なり、比較的長く続き、体内での酸素消費量を増やすなどの影響があります。
(出典:独立行政法人国立病院機構 東京医療センター「シバリングへの対応」)
悪寒や熱性けいれんとの違い
シバリングは、悪寒や熱性けいれんと混同されがちですが、それぞれに異なる特徴があります。
悪寒は寒さを感じるものです。ただ、あくまで感覚的な反応であり、身体が体温低下や寒冷環境下に対して不快感を訴える反応とは若干異なります。身体の震えは起きないか、あっても軽微です。対してシバリングは筋肉が収縮することで生じる震えが特徴で、体温を上昇させる目的で起こり、比較的長く続きます。またシバリングは、手足を抑えると止められることがあります。これは、手足をおさえても止めることはできない痙攣と比較することができます。
熱性けいれんは、特に小児で見られる発熱時に起こる発作的なけいれんで、通常38度以上の高熱が伴います。意識を失うケースが多く、呼びかけにも反応しません。一方、シバリングでは通常意識があり、呼びかけに反応します。この意識の有無が、シバリングと熱性けいれんを区別する大きなポイントです。
シバリングはなぜ起こる?
シバリングは、主に体温低下によって起こる体温調節のメカニズムです。人間は恒温動物であり、体温が一定に保たれるように調整されています。人間の身体は、体温が低下するとまず末梢血管が収縮し、体内の熱を逃がさないようにします。
それでも体温が下がる場合に、骨格筋を短時間で何百回も収縮させ、熱を作り出そうとする生理現象がシバリングです。また、手術後や全身麻酔後には麻酔の影響で自律神経が乱れ、身体の温調節機能が一時的に低下することで、シバリングが発生しやすくなります。
(出典:独立行政法人国立病院機構 東京医療センター「シバリングへの対応」)
シバリングが起こりやすいタイミング
シバリングが特に起こりやすいのは、以下の2つの状況です。
- 発熱時
発熱は、体内の免疫系が病原体と戦っているサインです。風邪や感染症などで体温が上昇すると、脳の体温調節中枢の設定温度が高くなり、身体を新しいセットポイントに追いつかせるためにシバリングが起こります。特に、急激な体温上昇時によく見られる反応です。 - 術後
全身麻酔を伴う手術後にもシバリングが発生しやすくなります。手術中は、眠りと末梢血管を拡張させる麻酔薬の影響で体温が下がりやすくなるためです。術後に身体が目覚め始めると体温を上げようとする反応が起こり、シバリングが発生します。手術の際に分泌されるサイトカインという物質が体温調節中枢に影響を与えるのも、発熱やシバリングを引き起こす要因の1つです。
シバリングの危険性

シバリングが発生した場合に引き起こされることの多い症状は、以下の通りです。
- 酸素消費量が2倍以上に増加
- 交感神経が緊張する
- 眼圧・脳圧が上がる
- 身体の痛みが強くなる
シバリング中、筋肉の激しい収縮により身体の酸素消費量が通常の2倍以上に増えます。また、シバリングによって交感神経が過度に緊張し、血圧や心拍数が上昇することで、心筋虚血や心室性不整脈などの心疾患のリスクが高まる場合もあります。心肺機能が低下している患者さんや高齢者は危険な状況に陥る可能性があるので、特に警戒が必要です。
また眼圧や脳圧が上がるため、頭部や目に持病を抱える患者さんにも注意が必要です。手術後のシバリングにより、創部の痛みが強くなる方もいます。いずれの症状も術後の回復が遅れかねないため、シバリングを早めに抑えることが大切です。
(出典:独立行政法人国立病院機構 東京医療センター「シバリングへの対応」)
シバリングの評価
シバリングは軽度・中等度・重度の3段階に分類され、それぞれの症状に応じた対応が必要です。シバリングの評価には、BSAS(The Bedside Shivering Assessment Scale)がよく使用されます。以下はその判断基準です。
症状なし | 筋肉や首、胸部に触れてもシバリングが確認できない状態です。この段階では特に治療の必要はありません。 |
---|---|
軽度 | シバリングは首や胸部の一部に限られ、身体全体には広がっていない状態です。患者さんへの影響は少ないものの、注意が必要になります。 |
中等度 | 首や胸部に加え、腕にも不自然な動きが見られる状態です。酸素消費量が増加する段階に入るため、シバリングを軽減させる対応が求められます。 |
重度 | 体幹部や上下肢にまでシバリングが広がり、全身で不自然な震えが起こっている状態です。早急な対処が求められます。 |
中等度以上のシバリングが発生した場合、酸素やエネルギーの消費が大幅に増加するため、迅速な処置が必要です。適切な温熱療法や薬物療法を行い、症状の悪化を防ぎましょう。
(出典:独立行政法人国立病院機構 東京医療センター「シバリングへの対応」)
シバリングへの対処法

シバリングが発生した際には、迅速かつ適切な対応が必須です。まず、患者さんのバイタルサインを確認し、身体の状態を把握しましょう。特に体温の変動はシバリングの進行や緩和に影響するため、定期的な測定が欠かせません。
対処法としては、以下の3つが一般的です。
- 身体を温める
シバリングが起こった際には、保温ケアが重要です。ブランケットや加温システムを使用して身体を温め、患者さんの体温維持に努めます。ただし、解熱期に入ると身体が熱く感じるため、シバリングがおさまったら必要に応じてクーリングを行いましょう。 - 投薬
シバリングの症状が強い場合、医師の指示のもとでメペリジンやドキサプラム、トラマドールなどの薬物が投与される場合があります。 - 酸素投与
筋肉の酸素消費量が増加するため、酸素投与を行います。
患者さんの状態に応じて、適切な看護方法でシバリングを抑えることが大切です。
(出典:独立行政法人国立病院機構 東京医療センター「シバリングへの対応」)
シバリングの対応を行うときのポイント

シバリングの対応では、患者さんの安全と快適さを守るために、いくつかの重要なポイントがあります。看護師さんの役割で特に大切なのが、シバリング防止に向けた予防的介入や、影響を受けやすい患者さんに対する特別な配慮です。以下では、医療現場でシバリング対応を行うときのポイントを解説します。
予防的介入を行う
シバリング発生を防ぐには、事前の予防的な介入が有効です。基本となるのは保温の徹底で、ブランケットや温水マット、電気毛布などを使用して、体温を適切に保てるよう工夫する必要があります。患者さんの体温を定期的にチェックし、必要であれば調節を行いながら、最適な体温を維持していくことが大切です。
特に手術をする患者さんには、術中から体温管理しておくとシバリング予防につながります。また、室温の調節や暖かい衣類の提供、ベッドへの移動距離や移動回数を最小限に抑えるのも効果的な対策です。
さらに、患者さんの不安を和らげるために、十分な説明や安心感を提供するのも有効な予防方法です。精神的な安心感は、シバリングの発生を軽減させる要因となります。
影響を受けやすい人を把握しておく
シバリングのリスクが高い患者さんには、特に注意を払う必要があります。シバリングの影響を受けやすいのは、高齢者や心肺機能が低下している患者さんです。
これらの患者さんでは、シバリングによる酸素消費量の増加や血圧・心拍数などの上昇で身体にかかる負担が、ほかの患者さんよりも大きくなります。場合によっては、重篤な不整脈や混合性アシドーシスを引き起こしかねません。看護の際には慎重な観察と対応が必要となるため、事前に対象者の情報を把握しておきましょう。
まとめ
シバリングは、体温低下時に起こる自然な反応ですが、特に手術後の患者さんや高齢者などでは、注意が必要な症状です。重度のシバリングが続くと、酸素消費量の増加や心拍数の上昇など全身に負荷がかかるため、迅速な対応が求められます。
シバリングの予防を常日頃から心がけ、シバリングの影響を受けやすい患者さんに対してはより注意を向けておく必要があります。
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※当記事は2024年9月時点の情報をもとに作成しています
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